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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

アンディ・ティモンズ Part 1 「僕には再び音楽ができるのかもわからなかった」

アンディ・ティモンズが Guitar World 誌がシリーズ掲載しているメンタルヘルスのインタビューに応えました。

www.guitarworld.com

この繊細な話題について、アンディが長年抱えてきた病、向き合い方、思うことなど、誠実に話してくれています。

アンディと同じく、これが誰かの役に立つことを願い、以下に和訳を掲載しました。

長いインタビューですので、2週に分けて掲載します。

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5年生のとき、何人かの女の子が僕に寄って来て言ったんだ、「どうして何でも深刻に取っちゃうの?」とね、多分僕が何かに反応したか落ち込んでいるように見えたのだろう。それを覚えているのは、僕が恥ずかしがりで引っ込み思案だったから。

僕は何が原因にしろ、気分が落ち込んでいると黙り込む時間があった。その歳頃ではそれが鬱だとは認識していなかった。悲しい気持ちで、僕はそれと折り合いをつけ、誰にも相談しなかった。ただ「これが僕でこれが人生なんだ」と思っていた。でもあの頃、人から僕は繊細だと思われていたのは明らかだった。

両親が離婚したのは僕が5歳のときで、父が家に居た記憶は余り無い。父とは人生を通じた長い関係を保ち、結局は同じ町に住み、よく集まった。でも僕の人生で、父と母が一緒でないことを不思議に思った時期が僕の不安定さに影響したんだ。

僕は4人兄弟の末っ子で、独りで過ごすことが多かった。なぜなら母が働きに出て養ってくれたから。他の多くのスーパーヒーローの様な母親と同じく、母は息子の為にすべきことをした。それはつまりフルタイムで働くことで、子供たちはずっと自分たちだけですごした。

兄たちが幼い僕の面倒をみてくれた。ある意味、兄たちが僕の父親代わりで、兄は全員僕のヒーローだった。歳の差が4年ずつで、ブライアンは僕の4歳年上、ジョンは8歳年上、マークは12歳年上。僕が音楽を好きになったのは、兄が皆熱心な音楽ファンで趣味でギターを弾いているから。それが僕を音楽の道に導いたのは疑いない。つまり、僕の人生に大きな男性の影響を与えたのは兄たちで、母からは勤労倫理の影響を受けた。

2007年にブライアンが鬱とアルコール依存で亡くなった。彼をもっと助けられたらよかったのだけど、彼がアルコールの問題を抱えているとは彼の死の1年前に初めて知った。彼は隠していたよ。思い返せば、その兆候はあったと思う。そして「気付かなかったなんて、何てバカだったんだ」と思ったけれど、僕が気付いたときには彼の依存はもう何年も続いていた。

僕は家に行き、彼を「救おう」としていた。依存問題で家族を亡くした人は「彼がそうしたいと思わなければ、君が彼にしてやれることではない」と教えてくれたけれど、僕は受け入れなかった。兄を守れると思ったんだ。兄は暫くはとても頑張ったけれど、結局は再発して亡くなった。

いつも自問しているのだけど、家族でこういうことを相談する家で育っていたら、兄はまだ生きていただろうか?兄が克服するチャンスはあったのだろうか?僕にはわからない。

子供の僕には、ギターと、レコードプレイヤーと、KISSとBeatles とロックンロールがあった。それが僕の基盤であり、慰めだった。当時起こっていた僕の感情的悩みを相談する人はいなかった。音楽が僕の避難場所だった。それは今でも変わらない。

音楽に向き合えば、他の全てのことは消え去るんだ。鬱の状態のときは、ショパンや Beach Boys を聴いていると涙が出た。感情の浄化さ。ギターと音楽はずっと僕にとってそのためにあった。それ無しの人生なんて考えられない。

音楽とは魂を育て、僕たちを実際に結びつけるものなんだ。ジョン・レノンは "There's A Place" を書き、ブライアン・ウィルソンは "In My Room" を書いた。僕はこれらの曲に共感した。彼らの話をしたら、涙がこみ上げてきたよ。

僕の家族は大抵、感情に関することは話し合ってこなかった。何でも楽観的で。母は最善を尽くそうと明らかに悪戦苦闘していた。忙しく働いて、家庭の全てを背負っていた。それでも母が不平を言うことはめったになかった。身を粉にして働いて、万事大丈夫だとしていた。当時はそういう風だった。でもご存じのとおり、物事が内に閉じ込められるのが長ければ長い程、問題は深刻になるんだ。

僕の世代の人間というのは、感情的問題を声に出して話したりしないんだ、弱さを認めることになるから。または少なくとも不名誉とされていた。でも現在では大人として僕はそういったことを話すことを弱さだとは思わない。むしろ、人間らしいし、ありのままで、誠実だと思う。

とても多くの人が悩んでいるんだ、これら非常に一般的でいかにも人間らしい特質をオープンに話し合うべきだ。そうすることで僕らは独りじゃないとわかるんだ。長年経ってから、僕の家族の多数が全く同じ問題を抱えていたと知ったんだ。家族で話をしなかったから、僕は知らなかったんだ。

自分で鬱だと自覚した瞬間があったとは言えない。次第にわかっていったんだ、自分には誰とも話したくない時期があって、内に閉じこもると。89年から93年の Danger Danger の頃を振り返ると、僕らは有名人が経験することの一部を体験できる程度には成功していた。何百万枚もレコードが売れた訳ではないし、外を歩くこともできた。でも数年間はMTVに沢山取り上げられたので、知名度はあった。

ツアーに出ると、毎日違う街を転々とする、全方向から女の子が追いかけてきて、ファンはサインをねだる。そして毎晩何千人もの人々の前でステージに立つんだ。そして、そうした全てのエネルギーと露出の果てに帰宅し、アパートの地下に座り考えるんだ。「今日は何をしよう?」その時さ、僕が重度の鬱に落ち込むのは。

救いを求めるところにまで至って、Danger Danger を去ってからテキサスに移り、精神科医に行った。その医者は僕が経験していた鬱を全て吐露するのを助けてくれた。僕は原因に気付いていなかったけれど、それは僕の人生の主要部分を終えたばかりだったからで、当然のことながら、嘆きの時間が必要だったんだ。

2011年まで話を進めると、僕が本物の助けを必要としていたのは明らかだった。というのは、僕は深い鬱に落ちていて、そこから出られるかどうかもわからなかった。僕はキャリアの大部分を通して耳鳴りに悩まされていたけれど、聴覚過敏という症状も進んでいた、音に対して敏感になるんだ。余りに症状が悪化して、僕は音楽を楽しむことができず、もはや演奏ができなかった。演奏するには、水泳競技者用の耳栓で音を遮断しなくてはならなかった。辛かったよ。

僕はずっと繊細で感情的な子供だった。今でも僕は子供で、自我が音楽の演奏能力に基づいているんだ。音楽は人生を通じての情熱だよ。僕は演奏で知名度を得たんだ。その能力が奪われると、僕はとても深い鬱に落ち込んだ。聴覚問題を解決できるのかもわからず、僕の生涯の天職が危機にあった。僕には再び音楽ができるのかもわからなかった。もしギターを弾けなくなったら、いったい僕は何なんだろう?僕は何をしていけばいい?

とてつもなく暗い時期だった。僕には自殺願望はなかったけれど、考えることはあった。例えば飛行機に乗るとき、「もしこれが墜落しても構わない」というように。人を傷つけたいなんて思ったことはないよ、もちろん。でも僕の生への執着は低かった。でも当時7歳の息子の為にこれを克服しなくてはならないとわかっていた。僕は当時48歳で良い人生を生き、後悔はなかったから、アレックス以外には理由はなかった。僕はこの世に生きていなくてはならない。息子を父の亡い子にしたくはなかった。息子にそんなことはできない。

(Part 2 へ続く)

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アレックス君への想いの箇所を読んで泣けました。ありがとう、アンディに力を与えてくれたアレックス君。今では大学生のアレックス君はメタル・ギターを弾いていて、時折、アンディにギターを教えてもらっているとか。幸せそうで胸が温まります。

今回のテーマに関連した過去記事はこちら。

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スティーブ・ヴァイ 北米ツアー開始で Hydra 演奏初披露!& Polyphia とMV共演

北米ツアー開始

9月28日からヴァイ先生が北米ツアーを開始しました。今回の注目点は欧州ツアーで見送られた Hydra でのパフォーマンス!遂に実現しました!重すぎるので、スタンドに設置してのパフォーマンスになっています。

ヴァイ先生がSNSに Hydra 演奏の動画を投稿しコメントしていましたので、和訳しました。

www.instagram.com

やあ、皆。私は北米ツアー皮切りの地、エルカホン(カリフォルニア)での初ライブ余韻からの恍惚にまだ浸ったままだ。オーディエンスの心温かなサポートには本当に驚かされたよ。そしてライブは素晴らしかった。エルカホンよ、ありがとう。

実際に "Teeth of the Hydra" を初めてライブ演奏したのがそれだ。私にはやり切る自信があったけれども、ビデオを撮影したのは1月で、私には直前の数週間しか練習する時間がなかった。だが Hydra と私の心が融合するように感じ、深い興奮に包まれて幸せだった。

今私は、このショウを米国全土で演じるというアイデアで意気揚々としている。そうできて光栄だ。ツアーに出発する、とてもワクワクするよ。ありがとう。

S

もう1つの北米ツアーの見所は、欧州ツアーではジョン・スコフィールドシグネチャーモデルをそのまま使っていましたが、ヴァイ先生の要望で美しいペインティングが施されたホロウボディが登場するところです。先生好みのヴィヴィッドでゴージャスなペインティング!(ボディ裏もゴージャスです。こちら3枚目)

 
 
 
 
 
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欧州ツアーの機材詳細は過去記事で。

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ツアー直前インタビュー

北米ツアーの前にメディアのインタビューにヴァイ先生が応えました。最近の出来事についてコメントしていましたので、インタビューの一部を以下にまとめてみました。

 

SNSでの双方向コミュニケーションの時代は気に入っている?

ああ、楽しんでいるよ。スマホInstagram を開いて友人たちが何をしているのかチェックするんだ。それに多くの者が驚くほどにクレイジーなプレイの一部を投稿しているね。とても刺激されるよ。

私はそれらを見て、これがどう私の役に立つのだろうかと考える。そして逆に私がこれにどう貢献できるのかも考える。

YouTube であなたのコピーを投稿しているビデオも見る?

よく誰かがそのリンクを送ってくれるんだよ、いつも感激している。

模倣は最高位の敬意の表し方だと思うけれど、失敗しているプレイは作曲者にとってどうなのだろう?

ハハ、彼らは素晴らしいよ。私としては、私よりも上手くない限りOKだ。(笑)ギターを愛する者たちの強力なムーブメントを目撃するのは素晴らしい。

Hydra ギターは "Teeth of The Hydra" 以外でも活躍しますか?

ああ、そう願うね。インスピレーションが湧き上がるのを待たねばならないのだが、1ヶ月ほど前に私にはあの楽器への新たなアプローチのイメージが湧いたんだ、曲が浮かんだのだよ。しかし、それに取り掛かるかどうかは別の問題で、大量の時間を必要とすることだ。私は間もなくツアーに出なくてはいけないからね、今年とそして来年ずっと。

久しぶりのライブのために、筋肉の記憶をたどって練習しなければいけないのかな?

肩の手術後にはその部分や周りの筋肉が弱まってプレイを妥協せざるを得なかった。速弾きしようとすると、自分の全てのテクニックを失ったように感じたよ。しかし、回復が進むと後は筋肉を鍛え直すだけだ。

実際にはステージに立ってから妥協せねばならないことがあるとわかった。4年ぶりのショウなのだが、ステージに立つと自分が無意識にやる動きがある。グラスゴーで最初の欧州ツアーライブを始めると、自分が以前と同じようにパフォーマンスするのがわかった。

しかし、手術以前と同じ動きをすることで、また自分を痛めることになるから、私は完全に脳を鍛え直して、動きを変えなくてはいけないと理解した。それが結果的に私の利益に資することを発見したよ。

余り動き回ることができないから、今弾いているものにより高く意識を集中することができる。以前のように「ここではこっちに動こう」などと考えないからね。パフォーマンスを変え、より深くパフォーマンスに集中し、音符と繋がることができた。

あなたの30年間のドキュメンタリーがオンラインで公開されていますね。観た感想はどうです?

プロデューサーのアラン・ベリーが凄い量のリサーチをしていることに驚いたよ。彼は私が誰も知らないし、気にもしないだろうと思っていたことまで調べ上げたんだ。面白いエピソードが入っているよ。あれが記録され、公開されたのは嬉しいよ、関心のある者には面白いだろう。

(ドキュメンタリーに関する過去記事はこちら)

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Polyphia とMV共演

9月28日のヴァイ先生北米ツアー開始に合わせたように、Polyphia と先生の共演MVが公開されました。

 

10月28日にリリースされる Polyphia のニューアルバム『Remember That You Will Die』に収録されているシングル "Ego Death" にヴァイ先生が参加したのは知っていましたが、まさかMVでも共演を果たすとは!

2020年のPIAお披露目イベントでヴァイ先生と Polyphia のティム&スコットが共演しており、以前からヴァイ先生が注目する次世代のギタリストとして彼らの名前が出ていましたから、これは必然の共演だったのかも。

2022年12月号の Guitar World 誌はヴァイ先生と Polyphia が表紙です。中身読むのが楽しみ!ちなみに表紙でヴァイ先生が手にしているマルチカラーのPIAは、今回の北米ツアー用にホロウボディのペイントをした工房(Bonvilliain Design Studio)の作品です。

 
 
 
 
 
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ジョー・サトリアーニ ギタリストへ10の最重要アドバイス

パンデミック後初めてのコンサート・ツアーを9月21日から開始したサッチ。2020年以降にリリースしたニューアルバム2枚を携えてのライブは豪華拡大版のショウになっている模様です。どうかどうか来日公演がありますように!

さて、今週は Guitar Player 誌のインタビューに掲載されたサッチのギタリストへのアドバイスを以下に和訳してみました。基本のアドバイスながら、どれも重要そうなものばかりです。

www.guitarplayer.com

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1.まずはチューニング

ギタープレイでこれがおろそかにされているのは可笑しいよ。多くの場合、インスピレーションが湧いて人はギターを手に取りプレイする。そうしてレコーディングされたアルバムさえある。ギタリストはインスピレーションの流れを阻害されるのを嫌がり、その素晴らしいパートをチューニングの外れたギターで弾いてしまうんだ。

ギターの音程が的確か、きちんと確認して指板を弾くときには常に音程を正確にすること。チューニングの合った演奏を積み重ねることで、それが自分のシグネチャー・サウンドの一部になる。

(訳者ひとりごと:アンディ・ティモンズが常に完璧なチューニングのギタリストとしてサッチの名前を挙げていました。正にそれがサッチのシグネチャー・サウンドの一部なんだろうなぁ)

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2.様々なところでピッキングしてみる

昔、ヘンドリックスのビデオをを観ていて、彼のピッキングする手が一箇所に留まっていないのに気付いた。彼は時にブリッジ付近でピッキングし、また時にはネックへ向けて手を動かす。彼のプレイのカギとなる要素だ。キース・リチャードもそう。

私もそれを試してみた。そうしたら、豊かなトーンの世界が開けたよ。

ピッキングする手を動かすことを学ぶんだ。そうすることで、フレーズ毎・個々の音のトーンを整えられる。それから、ピッキングの角度や使用するピックの箇所を変えてみること。トーンに多くのバリエーションが得られることに驚くだろう。

3.ベンディング時には正確な音程を出す練習を

ベンディングした音は原因と結果だ。どんな結果を望むかを決めるにあたって、どのように特定の音を意図して得るかを学ばねばならない。恐ろしいギターサウンドになるかも知れないし、美しいサウンドになるかも知れない。その結果を得るには、達成する方法を知らねばならない。

2弦上の音を押さえて、そこから2フレット下をベンドして最初の音を出す。1~3弦を使って、様々な指板上の位置でこれを繰り返す。

半音ベンド、全音ベンドとやってみる。ここでもチューニングを保つプレイを積み重ねるんだ。

4.スケール練習は音楽の上で

スケールのパターンを覚えるのは重要だが、ずっと練習だけをしてすごすと、直ぐに君のプレイはスケール・パターンのように聴こえるだろう。そんなもの聴きたい人はいないだろう?

音楽に合わせてプレイするのは、スケール・トーン、コード、コード進行について学んだことを実践するのに良い方法だ。

例えば、1つのモードで2コード・パターンの音楽をセットして、その上でジャムしてみる。しっかり聴きながらプレイすること。オーディエンスが聴くのはそれだ。

5.ルーティン練習を多彩に

私がギターを学んでいたとき、いくつかの練習に捕らわれてしまい、それを何度も繰り返した。私が理解していなかったのは、反復練習が逆効果だったこと。私のプレイが固くて音楽的でないものになっていた。

そんな習慣を破ろう。リラックスして日々のウォーウアップ練習を変えよう。バリエーション要素を増やそう。

音楽的でない、難しい速弾きをする日があれば、翌日はアルペジオに集中し、また翌日はスケールという具合に。

6.練習セッションを長引かせるな

スケール練習を延々とやることはできるが、ある程度やったら、止めて次に進む必要がある。

フィンガー練習ではコンサート会場をソールドアウトすることも、10億ストリーミング再生を得ることもできない。そういうルーティンは限定しよう。短くて生産的な練習にして、ただの練習に過ぎないのだと肝に銘じること。それはオーディエンスが聴きたい実際の音楽ではないんだ。

限られた貴重な時間を音楽を学び、プレイすることに使うこと。自分にとっても楽しめて、ずっと速く上達するだろう。

7.計画的反復練習によって新たなものを習得する

未知だったり、自分にとって自然でないものを習得する癖をつけよう。計画的反復練習によって習得するんだ。つまり、正しい方法でプレイを学ぶこと、誤った方法で延々とプレイするのではなく。

これはレニー・トリスターノ(サッチを教えたジャズ・ピアニスト)から学んだ。私が誤った音を出すと彼は言ったのさ「なぜそれを?次の音に自信が持てなければプレイするな」

私の悪い癖が自分のスタイルの一部になっていた。

悪いところを強化して悪い癖に捕らわれないよう気を付けよう。ゆっくりと注意深く、正しくプレイする時間を増やせば増やすほど、常に正しくプレイできる可能性が上がる。

8.パフォーマンス直前にストレッチはするな

ショウの前にストレッチするのは当然だとずっと思っていた。だがあるとき、ベーシストのマット・ビゾネットはショウの直前にいつも楽屋でリラックスしているのに気付いた。

同じ頃、アスリートがイベント直前にストレッチするのはむしろパフォーマンスに差し支えると言っていた記事を読んだ。それでルーティンを変えてみると、とても上手くいった。

直前でなく、パフォーマンスの何時間も前にウォームアップをしてみた。そうすると私のステージでのパフォーマンスが向上したように感じた。リラックスして、エネルギーの貯えを十分に感じたよ、やってみてくれ。

9.練習時の音量は控え目に

クレイジーな項目だ。人の耳が特定の音を異なる音量で聴く能力のことだ。高音は音量が大きいほどより高音に認識されるのに対し、低音は音量が大きいほどより低音に認識される。

この心理音響効果は強力に調査されてきた。音量を60から90デシベルに増加すると、元は6kHzの音程が30セント上昇して認識された。

なぜこの話をしているのか?君が適切に君の音楽を聴くためだ。

練習中は音量レベルを絞ろう。君がプレイしているもののトーンと音程を正確に認識できるように。君の耳にも良いし、君のご近所さんも感謝するだろう。

10.弦をキレイに保つ

弦がキレイで良い状態なら、より良い音程で弾けて、全てがクリアで美しく聴こえ、弦の持ちも良いだろう。

私は以前、イソプロピルアルコールを使っていて、それは効果があったのだが、弦がもろくなってしまった。今では Big Bends Guitar string wipes を使っていて、とてもいいよ。

いつも弦を換えるのが嫌なら、こういうクリーナーは弦をキレイにしてくれる。

 

 

スティーブ・ヴァイ 初めの30年間 ドキュメンタリー公開

Video Podcast制作家のアラン・ベリーさんが数年をかけたプロジェクトである、スティーブ・ヴァイのドキュメンタリー『Steve Vai - His First 30 Years the documentary』を9月7日に公開しました。脚本はヴァイ先生との共作です。

 

www.thetapesarchive.com

これまでヴァイ先生があちこちで話してきていた生い立ちからアーティストとして大成するまでのエピソードが、ここまで詳しくまとまって映像化されているのは初となります。しかもヴァイ先生全面協力なので、秘蔵写真や映像が多数使われており、ヴァイ・ファンには感激の内容になっています。

幼少期~青年期

これまでに聞いたことのある内容が殆どでしたが、初めて見る写真が多数で楽しいです。ヴァイ先生のお父様の声を先生自身が演じているのも楽しいですね。(クレジットには Reckless Fable とありますが、これはヴァイ先生の偽名で Western Vacation で使っていました)

でも、先生がアイスクリーム・トラックでバイトをしていたエピソードは初めて知りました。(笑)

トラックの冷蔵庫でビールを冷やしていたとか、ウェストベリーのお金持ちお嬢様の家でパーティをやって騒ぎが大きくなり警察が来たので、家の裏に駐車していたアイスクリーム・トラックに乗って、素知らぬ顔をして現場から立ち去ろうとしたところを警官に止められても、アイス販売時と同様に「何にしましょうか?」と返し、「もういい」と警官から解放された話に笑いました。

高校生の頃、ジョー・ディスパーグニーさんとの悪ガキ青春時代のお話はこちらの過去記事で詳しく読めます。

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2人で夜中に食べた「とろとろツナ」の話はそこで読めますが、その翌日にヴァイ先生がお腹を壊していたこと、そこでママのお手製アイスティーと間違えて料理油を飲んでしまい、吐いたことは初耳。(笑)それにしても冷蔵庫に何で料理油が入ってるの?先生、話を創ってない?

しかも体調最悪の中、アイスクリーム・トラックを返しに行く途中の寄り道ドライブスルーで車をぶつけて、ジョーを電話で呼ぶ始末になるとは。(笑)

バークリー&ザッパ時代

バークリー時代の話、フランク・ザッパとの話も過去記事で幾度も取り上げてきました。

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ザッパ時代のかなりクリアな映像も多数使われており、感激。中でもザッパから学んだことのうち、最も重要なこととして語られる「誠実さ」のエピソードには心打たれました。

ASCAPが著作権料の算出に使用するリード・シートの採譜仕事をするにあたり、小節の数によって権利料が増加するため、曲を変えない範囲で小節数を増やすかをザッパに訊くと「曲本来のままにしろ、そんな方法で金を稼いだりせん」と言い放ったザッパの言葉が先生その後の人生の道しるべになっていたのですね。ザッパとのエピソードはこちらの過去記事でも。

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Flex-Able』

"Attitude Song" が実はアリス・クーパーのオーディション用に前夜書かれたもので、タイトルはそのまま "The Night Before" であった。この話は以前聞いていましたが、興味深いエピソードです。

この頃、先生がギターレッスンをして稼いでいた当時のものと思われるノートが画面に登場しますが、これも興味深いです。

Alcatrazz と映画『Crossroads』

『Crossroads』の見せ場、ギター・デュエルのシーンでは、元々はライ・クーダーラルフ・マッチオのギター講師だったアーレン・ロスのプレイが使われる予定だったことは驚きでした。しかもそれが Sound Cloud で聴けるとは。

デイヴ・リー・ロス

この当時の話は過去記事にまとまっています。先日公開されたヴァイ先生とライターのグレッグ・レノフ氏とのインタビュー音源はこちらのGW誌特集記事の取材音源でした。

 

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それにしても、"Just Like Paradise" を『ビバリーヒルズ高校白書』のテーマ曲にというオファーがあったのに、金額がショボイという理由でデイヴのマネージャーが話をデイヴにも伝えずに断っていたという話は初耳で、何と勿体ない!と叫びたくなります。デイヴが未来の大金を失ったのは明らかですね。

この話で思い出したのが、全く正反対となるジョー・サトリアーニの話。『Surfing With The Alien』発売後に冬季オリンピック委員会から曲の使用許諾の依頼があり、サッチのマネージメントは賢かったので、「使用料は要らないから、曲を使うときには曲のタイトル・アーティスト名・アルバムの情報を画面に入れてくれ」と交渉。無料のサントラが手に入ったオリンピック委員会は試合の放送時にサッチの曲を多数使い、サッチ側は大きな宣伝効果を得たという、デイヴの場合とは真逆のマーケティング戦略でした。

JEM誕生

ヴァイ先生がパフォーマンス・ギターにスペックを渡して必要なギターを創ってもらったのはクニオ・スガイ氏という日本人の職人さんなのですね。そのとき制作された4本のギターは先生のギター・アーカイブで見たことのある特徴あるギターばかり。これがJEMの原型。

Ibanez がヴァイ先生獲得を狙って、先生の実家へクリスマス時期にギターを送ってクリスマスツリーの下に置いてもらったエピソードも面白い。営業努力の賜物でした。

Whitesnake と『Passion And Warfare』

デイヴが先生のソロ活動に反対していて、PAW アルバムの完成が遅れていたんですね。ところで、マザーシップ・スタジオが2016年にラッパーの 2 Chainz にUS$2.6Mで売却されていたということですが、当時の記事によるとUS$1.5Mとなっています。ちなみに先生はこの不動産を87年に33万ドルで購入していたそうなので、さすが先生は投資にも強い。

"Liberty" に AC/DC からサウンドサンプル使っていたとか面白い話も続々。"Ballerina 12/24" の声がインタビュアーさんのだったとか、"The Riddle" に使われている驚きの録音も。先生って本当に子供の頃から録音マニアで何でも録音してたのね。物持ち良いし。

"Answers" で使われている7音モチーフがザッパから教えられたものをアレンジしており、『Flex-Able』はもちろん、Alcatrazz "Wire and Wood" でも使っていたエピソードも興味深い。

『Passion And Warfare』の販売を渋った Capitol Records と別れて、クリフ・カルトレリさんと連絡をとり、Relativity Records から販売となったエピソードは仕事をする人の Passion がカギになる例ですね。アルバムの大成功を思うと、クリフさんに拍手を送りたい。

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ヴァイ先生結びの言葉

「私の身に起きた全てのことは、それ自体で完璧だったのだ。たとえ当時はそれで後退したり、地位なのか何にしろ喪失するように思えても、1つ1つが何かに繋がった。完璧だったのだよ」

 

Dirty Loops @ Billboard Live Osaka 2022.09.05 ポップスの皮を被ったリズム・モンスター

日本で観たライブレポをブログに書くのは、2020年の Queen+アダム・ランバート 以来となります。2年半もライブ・ミュージックのない時間が過ぎたのかと思うとパンデミックの及ぼした影響にがくぜんとします。

Dirty Loops のことを知ったのは最近です。まず、シンガーのジョナ・ニルソンのソロアルバムにヴァイ先生が参加したのです。この時点ではジョナのバンド活動のことまでは関心が向きませんでした。

その後、大注目しているギタリストのコリー・ウォンとDirty Loops が共作したアルバム『Turbo』のことを知り、YouTube をチェックしてみると、「こいつら、凄い!」とそのグルーヴに震えました。ギター界のニュースター&リズム・モンスターのコリーとヘンリックの共演は正にモンスター対決。

 

最後の決め手はヴァイ先生のニューアルバム『Inviolate』にベースのヘンリック・リンダーが1曲で参加したことです。ヴァイ先生が彼の才能に惚れ込んでプレイを懇願して実現したという経緯が更に興味を引きました。(その経緯については下の過去記事をご参照ください)

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彼らのバンドが生演奏するなら観ておきたい!とBillboard Live Osakaへ久しぶりに訪問。

さて、遂に2年半振りのライブです。しかし、依然コロナ禍とあって、開演前に会場側からの注意事項が伝達されました。「食事中以外はマスク着用、声出し禁止。演者への身体的な接触禁止」せっかくのジョナ前かぶりつき席でしたが、仕方ない、これがコロナ後のライブだと再認識しました。

客層はHR/HMやジャズ・フュージョン系のライブに比べると少し若くて、女性が半数くらい。これは珍しい。おじさんばかりのライブ会場に慣れているので、ちょっと新鮮。

ステージは客席から見て、右サイドがドラム(ドラムシールドの覆いあり)中央奥にベースアンプ、中央前に鍵盤、左サイドにサポートの鍵盤ブースの設置。メンバーの3人に加えてサポートのプレイヤーが鍵盤とバックボーカルで大活躍していました。

ボーカルのジョナはバンドの外見も担当できる爽やかイケメン、なのに黒いTシャツに黒いパンツで、ローディーさんと間違えてしまいそう。(汗)衣装考えようよ…

登場したジョナはMC少な目で、伸びやかなハイトーンで優れた歌唱を聴かせてくれました。さすがの実力。見事な上腕二頭筋や爽やか笑顔に目が行きそうになりますが、今日の私の目的はヘンリックのプレイを見ることなのだ!

お目当てのヘンリックはジョナの陰で見えにくい!のですが、バンド内で演奏しながら唯一ステージ上を動けるのが彼なので、ステージの両サイドに何度も来てはオーディエンスにサービスしてくれていました。そんなヘンリックにスポットライトを当てて欲しかったよ、照明さん!

昔のアーティスト写真と違ってヘンリックの髪型はトガってなくて、でもフェイス・ピアスやアイラインは同じでした。白いTシャツとパンツのシンプルな服装だけど、ゴツいハイカットのスニーカーが個性を演出。想像よりも小柄で体格的には日本人と大差ない感じ。

小柄で手も決して大きくはありません。それなのに6弦の Mattissonbass (見たことないメーカーでしたが、スウェーデンのメーカーと判明)の太い指板上をタランチュラのごとく左手が自在に動くわ、強烈なスラッピングと指引きに目を奪われました。

しかもこのベース、カッタウェイが異様なほど深い。ハイフレットの音を完全に使えるようデザインされている模様。その上、彼が目の前で弾いてくれたときに気付きましたが、フレットがヴァイ先生も使っていた True Temperament なんですね。ギターでは普及してきた感がありましたが、ベースで使っている人を初めて見ました。

このフレットについて、彼が Guitar World 誌でコメントしていました。(割と最近使い始めた模様)

www.guitarworld.com

全く通常のフレットのように感じるんだ。それがこれを採用した大きなポイント。チューニングが良くてコードプレイが改善した。ギターとベースにとって素晴らしい発明だよ。

彼らの演奏を聴いていると、アルバムよりもずっとリズミックでグルーヴしてて、間奏からのセッション・タイムはかっこいいフュージョン!全員腕利き!現代版のTOTOと言いますか、ポップスの皮を被ったリズム・モンスターだわ、これ!

バンドにおけるベースの役割が随分と大きいのにも驚きました。ベースをこんなにもフューチャーするのか!そのあたりについては先ほどのGW誌でヘンリックがこんな話をしていました。

ジョナ(Vo,Key)とアーロン(Dr)がベースパートの作曲に大きく関わっているんだ。そのせいでベースパートがとても奇妙なんだよ。多くはアーロンからきていて、特定のことを求められる。そうすると新しいことを学ばなくてはならないんだ。時にはそんな奇妙なラインをどうベースで弾くのか延々とフィンガリングも練習することになるけれど、感謝しているよ。

ライブ終盤ではノリの良いヒット曲を立て続けに。"Hit Me" ではジョナがオーディエンスを立たせて、コール・アンド・レスポンスを要求。

「声出し禁止」って言われてるんだけど…と戸惑いつつも、すっかり彼らのエネルギーとリズムに浸かった快感から、できる範囲で答えてきました。あー楽しかった。

ぜひ今度はコリー・ウォンと日本に来て『Turbo』全曲やって欲しい!


本日のセットリスト

01. Follow The Light
02. Accidentally In Love
03. Sayonara Love
04. Just Dance (Lady GaGa cover)
05. It Hurts
06. Old Armando Had A Farm
07. Next To You
08. Coffee Break Is Over
09. Wake Me Up (Avicii cover)
10. Circus (Britney Spears cover)
11. Baby (Justin Bieber cover)
12. Roller Coaster (Justin Bieber cover)
13. Breakdown
14. Work Shit Out

encore
15. Rock You
16. Automatic (Hikaru Utada cover)
17. Hit Me

"Rock You" で使用していたヘンリックの新しいピンク色6弦ベースにはなぜか Hard Off のストラップが!(爆笑)日本のお友達からのプレゼントでしょうか?笑える。

ちなみに、上に貼った "Follow The Light" のMVですが、コリーのPodcast で実現したコリーとヘンリックの対談によると、完全別撮りだそう。コロナ禍のため、スウェーデンアメリカで別に撮影しつつ、物理的に同じ空間にいるように見せるため、同じ照明・カメラ・ラグを揃え、カメラ位置も合わせて撮影したそうです。なるほど!

 

ニタ・ストラウス 「私の才能を無駄使いするのかどうかは、私が決めること」

7月12日にニタ・ストラウスがアリス・クーパーの今年秋のツアーには参加しないというSNSへの投稿をしてから4日後には、8月から始まるアイドル・ポップシンガー、デミ・ロヴァートのツアーに参加することを発表。メタル界を代表する女性ギタリストのニタによる驚きの転身にメタルファンに衝撃が走りました。

否定的な反応が多くのファンからあったようですが、ニタは大人のコメントでした。

「予想したよりも随分怒りの反応があったけど、感心のない人のことは何も言わないでしょう?だから反応があることは私のキャリアを気にしてくれるということ。でも私の才能を無駄使いするのかどうかは私が決めることよ」

 

デミのバックバンドは全員女性のガールズ・バンド。ニタはアリス前は女性バンド Iron Maidens にいたので、アリスバンドを経て再びガールズバンドに戻ることになります。

デミのツアーならビッグなショウでしょうし、プロダクションもしっかりした、ギャラの良い仕事なのだろうということは想像できます。ニタはソロ活動も続けているので、自分の音楽活動資金はポップ・アイドルのギグでしっかり稼ぐというスタイルもアリなのかも。ニタ2枚目のソロアルバムから下のシングルも公開されています。

 

ロック・ギタリストのポップ歌手サポートと言えば、古くはジェニファー・バッテンやグレッグ・ハウマイケル・ジャクソンヌーノ・ベッテンコートリアーナ、グレッグ・ハウは`NSYNCも、ジョエル・ホークストラシェールのギグをやっています。マテウス・アサトブルーノ・マーズでプレイしていました。こういう動きはもっと増えるのかも知れません。

ニタがロック界で尊敬されるアリス・クーパーのキャンプから飛び出すのは勇気のいったことだろうと思いますが、アリスの下で8年学んできたのですから、新たなチャレンジの時だったのでしょう。

www.guitarworld.com

最近の Guitar World 誌の記事によると、ニタは今年5月にデミ側から電話でオファーを受けました。「デミがポップからロック方面に進みたいので、ガールズバンドを組んでいるが、興味はあるか?」と。メインストリームの音楽にロックを持込めるチャンス、それにニタは興奮したそう。

この電話を受けてすぐにニタはアリスの部屋へ。「こういう話がきていて、今のツアーはできるけど、受けたら秋のツアーができない。それでもいい?」と相談したところ、アリスはニタをハグして「もちろんだ。そこで輝きなさい。君が学んだことを世界に示すんだ。君を誇りに思う」と言ったそう。しかも将来、ニタがアリスのバンドに戻る可能性も残されているのだとか。さすが、業界一の善人と言われるアリスの懐の深さ。

ちなみにアリスのバンドにはかつてのバンドメンバーだったケイン・ロバーツが戻ってくるそうです。オリアンティからニタと才能ある女性ギタリストのポジションになっていた感があったので、意外に思っていましたが、もしやニタが戻る可能性を残した助っ人の人選?

最近公開されたこちらのインタビューでニタが質問に回答した内容を一部まとめてみました。ニタは大のスティーブ・ヴァイ・ファンで有名ですが、そんな話が沢山出てきます。

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ギタリストが学ぶべき重要な3項目

1.他者との演奏方法

ギタリストは独りよがりになりがち。ギグを得るには様々なアーティストとプレイすること。様々な個性を持ったバンドやクルーと仕事をする術を身に付けること。

2.タイムマネージメント

時間を守ること。準備をしてくること。共に働く人に敬意を持つこと。

3.柔軟性を身に付ける

プロとしてその場での変更に機敏に対応できるようにする。

最高のトーンを持つギタリスト

ジョー・サトリアーニ。私はサトリアーニ・モデルのアンプ2種類を持っている。Peavey JSX と Marshall JVM410HJS 。彼のトーンが大好き。

音楽でこんなことが可能だと気付かされた体験

スティーブ・ヴァイ過去にも今でも彼の様にギターに語らせた人はいない。"Tender Surrender" はとてもセクシーなギターソング。"Yankee Rose" ではデイヴが英語で話して、スティーブがギターで話して会話していた。ギターで語れるのだと思った。私は言葉で語ることは苦手だけど、ギターでは語ることができる。

女性ギタリストの台頭

興奮している。記事によると、最も売れているシグネチャー・ギターは女性ギタリストのものだそう。私と、リジ―・ヘイルやセント・ヴィンセントの。

 Ibanez は女性アーティストのシグネチャー・ギターを増やして今では3モデルある。私とラリ・バシリオ、イヴェット・ヤング。

ニーリー・ブロッシュが Death Clock と強烈なライブをやっているのも最近観た。Iron Maidens のコートニーや、グレッチェン・メン、優れた女性ギタリストのリストはまだまだ続く。

ギター・デュエル

ヴァイやサトリアーニ、ポール・ギルバートとプレイしたことがあるけれど、ああいう私よりずっと優れたプレイヤーは決してプレイする相手と対決したりしない。彼らはそれができるけど、寛大で決してしない。

チャリティのイベントでスティーブの "Animal" を一緒に弾いたことがある。(訳者注:Jamathon 時と思われる)彼のバンドで彼の曲を弾くのだから、彼は簡単に私を打ち負かすことができるけれど、決してしない。彼は私のプレイを良く聴いて、更に美しく変化をつけてくれる。2人でダンスをしているような感じ。今後、偉大なプレイヤーと共演する機会があったらこの学びを活かしたい。

音楽の神殿に4人を祀るとしたら誰か?

アリス・クーパースティーブ・ヴァイジョー・サトリアーニ、ジェニファー・バッテン

ジェニファーは私たち皆が必要としていたギターヒロイン。スティーブとジョーは先駆者。

スターに会えてド緊張したこと

Generation Axe をボーイフレンドと Ibanez の人たちと観に行って、楽屋訪問のためにバックステージ・ドアで待っていた。扉を開けて招き入れてくれたのはスティーブ・ヴァイ本人だった。

そこでスティーブが一人ずつと挨拶をしていて、もしかしたら私の Ibanez シグネチャーが出た後だから、彼は私のこと知ってるかも?と期待しつつ、「ニタです、会えてうれしいです」と言ったけど、彼から特に反応がなくて、次の人に行ってしまい、私は恥ずかしくて落ち込んでいた。

でも歩き出す段になって、スティーブが振り返って「君はニタ・ストラウス?」って。「はい」と答えると、彼が両手で私の手を取って「君はインタビューでいつも私の良いこと言ってくれるね」と。もう床に崩れ落ちて死んでしまいそうだった!(発狂)

人生を変えた曲

"For The Love Of God" Steve Vai

ギターが歌って、語りかけるのを初めて聴いた曲。

写真は2019年の She Rocks Award にて:ヴァイ先生、ニタ、Nick Bowcott氏

She Rocks Award でニタが受賞したとき、プレゼンターのスピーチをしたのはヴァイ先生。受賞者パフォーマンスのため待機していたニタはそのスピーチに涙しそうになる。
ヴァイ先生は去り際に「セルフィ撮ろう!」と言ってこの写真を撮影。ニタは一生懸命に歓びの涙をこらえていた。(ニタのFBより)

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コンサートチケット価格上昇の複合要因

日本にもやっと洋楽コンサートが戻りつつあります。秋以降は多くのビッグ・アーティスト来日公演が控えています。

そんな中で、私が以前からモヤモヤしているコンサートチケットの値段と購入時の手数料について、Rolling Stone が掲載した記事をベースに考えてみたいと思います。

1.日本で開催されるビッグ・アーティスト来日公演のチケット代

a)8月に来日するビリー・アイリッシュ有明アリーナで1日のみ公演。
前方SS席2.5万円、その他殆どS席1.9万円

b)9月に来日するレディ・ガガベルーナドーム(西部ドーム)で2日間公演。
ステージ前のVIPは10万円、その周囲のゴールド席は5万円、それ以外殆どのアリーナ&スタンド席はSで1.8万円

c)11月に来日するKISSは東京ドームで1日公演。
前方SS席2.5万円、その他殆どS席2万円
(ステージ脇の席やミーグリとセットになったVIPチケット40万円などもある)

日本でもアリーナコンサートのチケットはS席でおよそ2万円が標準になってきている感があります。購入時にはこれにシステム利用料だの何だのと手数料が加わると思いますが、手数料合計で2千円以下くらいでは?チケット価格の1割以下なので、まだ許容範囲かなと感じます。

 

アメリカではコンサートチケットの価格だけでなく、手数料がとんでもないことになっています。

2.アリーナコンサートのチケットと手数料実例 in アメリ

a)2021年 Guns N'Roses 

スタンダード・チケット$275に対して、手数料が合計で$81.55で合計が$356.55。詳細不明ですが、多分日本のドーム公演でいうSS席かS席前方のチケットです。今の為替水準でいうとチケット代だけで3.7万円程で手数料含めると4.7万円程。
手数料の方は…チケット価格の3割に及ぶ手数料を上乗せするという恐ろしいぼったくり。 

b)2020年 Sons of Apollo

これは小ぶりのクラブ会場のため、チケット価格は日本に比べてとても安いです。ただし、手数料率が4割を超えています。(汗)

 

最近では、パンデミックと共存しつつ経済を再開するアメリカで更なるチケット価格の高騰が起きている模様です。

3.ブルース・スプリングスティーンのチケットがUS$5,000に怒りの声

Rolling Stone の記事の一部概要を以下で紹介します。記事にはTicketmaster側の主張も書いてありますが、和訳では割愛してありますので、それを読みたい人は元記事をご参照ください。

www.rollingstone.com

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ブルース・スプリングスティーンのチケットがUS$5,000で販売サイトに掲載されているのにファンが怒りの声を上げたが、異常なチケット価格の高騰はブルースに限ったことではない。

アデールのラスベガス・レジデンシー公演ではチケットはUS$670からで、最前列はUS$40,000だった!
レディ・ガガニュージャージーのスタジアムライブのサイドビュー席(片側からの視界のみで視界が一部隠れる可能性のある席)でUS$445.80、なおステージ前ピット席はUS$923.40。
Motley Crue/Def Leppard/Poison のピッツバーグでのスタジアム公演の前方席はUS$987.50。

(訳者ひとりごと:これらの数字を見るとデフレ国日本でのスタジアムライブのチケット価格がいかに米国よりも安いかわかります!しかも、アメリカではこの価格に手数料が3割くらい上乗せされますから)

これらの価格吊り上げはロックスターの強欲によるものだと思われがちだが、実際にはずっと複雑な複合要因によるものだ。コンサートにおける Live Nation の市場独占、そしてアーティストのツアーによる収入依存の高まり、テクノロジーの進化によってダフ屋が価格を吊り上げるプラットフォームが拡大したこと、市場を制御する政府の干渉が限られること。

いかにして Live Nation の市場独占はコンサート興行を変えたか。

1995年、Pearl Jam は Ticketmaster の法外な手数料とライブ興行への締め付けに業を煮やして、複数のプレイガイドを使う会場でのみプレイしようと考えた。しかし彼らは直ぐにそれはコンサートとして一般的でない会場でプレイすることになるのだと学んだ。1998年に次のツアーに出る段には、彼らは断念し、Ticketmaster の押さえる会場で広くプレイした。

Pearl Jam が Ticketmaster なしで全国ツアーをすることは基本的に不可能だと学んでから25年が経つが、状況は更に悪化を辿っている。SeatGeek のような会社はブルックリンのバークレイズ・センターのような大規模な会場と契約したものの、Ticketmaster はアメリカの主要コンサート会場の8割を支配下に置く。

ニューヨーク州上院議員 James Skoufis 氏は語る。「独占状態だから、健全な競争市場がないというだけでなく、あらゆる標準的問題をもたらす。競争市場であれば起こり得る結果一切なしに、彼らは課したいだけ幾らでも顧客から手数料を取れる

(訳者ひとりごと:アメリカでは彼らの独占により、コンサート会場での物販・飲食・駐車場というあらゆる売上に対して3割程の手数料が上乗せされている模様です。仮にチケットが安くても集客によって儲かる仕組みですね)

2010年の Ticketmaster と Live Nation の合併は指数関数的にこの2社を強力にした。

これにより、ファンはチケット購入価格を3割増額させるサービス手数料を受け入れざるを得なくなり、主要なイベントのチケット発売日にはリセール販売者が大部分のチケットを巻き上げるのを傍観するのみになった。近年では、ダフ屋を締め出す新たな革新的方法を見つけるのではなく、Ticketmaster はダフ屋にも簡単なチケット販売の方法(リセールサイトの整備)を供与して手数料を得ることにした。

多くの主要チケット販売会社同様に、Ticketmaster もダイナミック・プライシングの手法を使い始めた。需要によってチケット価格が大幅に変動するのだ。

最近のスプリングスティーンのチケット販売では、US$400のチケットがUS$5,000になるのをファンは目の前で目撃した。US$200半ばの一般的チケットはすぐさまなくなり、ファンはリセールサイトで価格の上がったチケットを買うか、US$1,000程もする正規価格のチケットを買うしかないのだ。

ダフ屋を締め出す手法として、Ticketmaster のファン認証技術もある。リセールしないファンにチケット購入の機会を最初に与えるのだ。譲渡不可のチケットはダフ屋を締め出し、正規価格のチケット価格を維持できる。しかしどこまで有効かは不明で、譲渡不可のチケットはやはり不便だ。

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こうして見ると、アメリカのコンサートチケットは1社の独占によりカオスになっていますね。アメリカの物価上昇なども価格上昇の要因だと思いますが。

翻って日本。全体的にチケット価格は上昇していますが、アメリカ程ではないし、法外な手数料という程でもない。日本にはまだ複数の興行主やプレイガイドがいるので、まだ競争が存在するのでしょうか。

とはいえ、日本では自分で購入時に座席を選べなくて、S席でも購入時には幅広いエリアのどこかわからない現状は改善して欲しいとは思います。

日本でも正規のリセール市場が整備されてきているし、チケット不正転売禁止法ができ、利益目的の転売が禁じられているなど、そのあたりは良いと思います。

今のアメリカのリセール市場は本当に異常ですね。ダフ屋だけでなく、皆が転売屋となって、チケット販売時にほとんどがリセールチケットに流れ、値段は上がっている。Ticketmaster は売り手と買い手から手数料を取るので、1枚のチケットの正規販売時から転売を重ねる間に何回手数料取るのだろうと思います。

しかし、このまま日本の経済成長がなくて、アメリカでインフレが続くと、洋楽アーティストの来日が減ってしまうのかも。日本公演では割が合わなくなってしまう、そんな未来が心配です。

関連記事としてコンサート・プロモーターのシェール氏のインタビューが過去記事にありました。

「世界最大のチケットサービスと世界最大のコンサートプロモーターの合併を許したんだ。その結果を理解せずに合併を許可した政治家は罪深い。

今や彼らは余りにも巨大で効率がいい。プロモーターとしては彼らのサービスを使うしかないんだ。それに彼らは会場と直で契約する。するとその会場を使おうとすると、チケットに関しては全く裁量を奪われてしまう。その結果、競争はもはや存在しない」

staytogether.hateblo.jp