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アンディ・ティモンズ 「今の僕はとてもハングリーでいろいろ学びたいんだ」

2015年10月にオーストリア、ウィーンで行われたアンディ・ティモンズのインタビューが動画公開されました。視聴者からの質問などに楽しく答えるアンディが素敵だったので、概要を和訳してみました。ニューアルバムが楽しみです。

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あなたのギタートーンは本当に素晴らしいです。ペダルボードにあなたのギアが載っていますが、どうやったらあのトーンを出せるのでしょうか。

ありがとう。でもその前にまず自分のプレイだ。自分のゴールは何か、明確にしなくちゃいけないと思う。

ここにあるアンプはLone Star (Mesa/Boogie)で、僕は良く知っているから簡単に自分のトーンを出すことができた。でも様々なアンプがあるからね、どれを使っても自分の音を容易に見つけられるよう、耳を鍛えておくことは大切だよ。

例えば、僕のゴールがディストーションのかかったリードギターサウンドだとすると、多分これが若いロック・ギタープレイヤーの関心事だと思うんだけど、ディストーションをかければかけるほど、音は明るくて、ザラザラした音色になると思う。でも僕はそこを排除したい。十分にサステイン、オーバードライブを効かせて、音を途切れなく滑らかにしたいんだ。でもゲインを上げ過ぎたうるさい感じは避けたい。だからこれは丁度いいバランスを見つけることなんだ。(試奏する)

では、例えばここに200ユーロあったとしたら何を買えばいいですか?

そうだな、どんなアンプやペダルを使うかによるけれど、例えばここに僕の新しいシグナチャー・ペダルがある。JSSといって、とても素晴らしいんだ。(以下ペダルの説明)

ペダルというのはある程度、自分の目指すトーンを生み出すのに効果はある。僕もエリック・ジョンソンジミ・ヘンドリクスのトーンに憧れて研究したけれど、あの音を生み出すのはペダルじゃなくて、結局のところはプレイにあるんだ。弦をどのように弾いて、ダイナミクスや強弱、メリハリをつけるのか、全てはフレットボード上にあって、そこには簡単な近道は存在しないんだ。

では次の質問です。あなたはアルバム "AT Plays Sgt. Pepper" の全曲はあなたの記憶からプレイしてしまったというのは本当ですか?

そう、このアルバムの楽曲のアレンジは全て僕の記憶からやったんだ、"Within You, Without You" の中盤を除いてはね。あの曲はエキゾチックで子供の頃の僕には理解できなかったんだよ。だからこの曲のオリジナルのアレンジをやっていた時に、メロディに囚われていたんだけど、"Tomorrow Never Knows" のグルーヴを思い出したんだ。あの部分だけはオリジナルを聞きなおしたけれど、他の曲は良く知っていたから、レコーディングの為にオリジナルを聞きなおす必要はなかったんだ。全て僕の脳に曲があって、頭の中でその音が聞こえるんだ。

さらに僕にとってこのアルバムが個人的に意味があるのは、これをギター1本、オーバーダブなしでプレイしたからなんだ。頭の中で曲をイメージしたよ、僕には全ての楽器パートが聞こえてくる訳じゃない。ボーカルメロディとギターリフ、サウンドエフェクトやオーケストレーションは聞こえたかも。

"Lucy In The Sky With Diamonds" にはキーボードラインが必須だろう?だからメロディとベースラインが要るんだ。(試奏)とにかく曲を聞いてもらってその表側で聞こえる音とは別のラインの音も演奏したから、どう演奏するのか、技術的なことも含めてとてもチャレンジングだったよ。とても楽しかったよ、僕にとっては趣味でもあったんだ。

次の質問です。「私はギタープレイをタブ譜を使って練習していますが、今よりも上達するにはどうしたらいいのでしょう?」

彼は今とてもいい上達の過程にあると思うよ。僕がギターを練習していた頃はタブ譜や動画サイトなんてなかったから、ただレコードをかけてそれを注意深く聞いて自分のギターで音を探していた。そうすることで一番大切なもの、耳を鍛えることができたんだ。聞いた音を自分のギターのフレットボードで再現することはとても重要なことだ。自分とギターの関係を築くことができたんだ。

タブ譜はとても便利だよ、でもその前に自分で苦労して覚えていくことはとても重要だ。モーダルなアプローチというのは役には立つかも知れないけれど、僕にはときにスケールに囚われ過ぎに聞こえるね。例えば、1弦につき3音でのスケール上昇のエクササイズがあるけれど、学習としてやるのはいいと思うけれど、筋肉を鍛えたり、身体に覚えこませるという意味ではね。

でも本当に大切なのは音楽的にどうかということさ。だって音楽をやっているんだから。音楽というのは理論やエクササイズとは違うものだ。それらは役に立つことはあるけれどね。例えば、僕が演奏の仕事をするとき、キーボードの詳細な音源と楽譜が届く。譜面を見ながら演奏すると、ずっとそれを見ていなくちゃいけないからね、音を聞きながら演奏する方がずっと早いんだ。もちろん大変な仕事で骨は折れるけれど、僕自身にとっても学ぶことがずっと沢山あるんだ。

子供に労働の大切さを教えるのと一緒さ。だってお小遣いをあげてすぐに欲しいものが買えたら何も学べないだろう?僕の息子はアップル・ウォッチが欲しくて、妻のヘア・サロンでひと夏ずっと手伝いをしたんだ。それでお金を貯めてやっと息子はアップル・ウォッチを買ったんだ。音楽だってそれと同じだよ。

どんな状況で "Cry For You" を書いたのですか?

確か、1989年に僕はダラスから Danger Danger に加入するためにニューヨークへ引越したんだ。僕の彼女はダラスに残ったから、とても寂しくてね、アパートはバンドのボーカルのテッド・ポーリーとシェアしてたんだ。そのときに寂しい気持ちを曲にしたんだよ。曲は結果的に彼女との関係よりも長く続いた。今僕があの曲を演奏するときに考えるのは人生に問題を抱えた誰かのことだったり、ただ曲のエナジーを感じていたりだね。毎晩違う演奏になるし、今でもプレイするのが大好きな曲だ。

サイモンフィリップスとの演奏はどうですか?

最高だよ!まだまだやることが沢山あるんだ。僕らは1993年に初めて一緒にプレイしたんだ。アナハイムであったNAMMショウのイベントで、Ibanezが有名なロック・ギタープレイヤーを集めてライブをやったんだ。スティーブ・ヴァイジョー・サトリアーニ、ポール・ギルバート、レブ・ビーチにショーン・リーン、アレックス・スコルニクス。それで、Ibanezからそのイベントでのコア・バンドとしてサイモンとベース・プレイヤーのジョン・ディーズリーとプレイするよう頼まれたんだ。

サイモンは「いいよ、でも俺のソロ曲もプレイさせてもらえるならね」と条件を出したんだ。それで僕は他のギター・プレイヤー達と演奏する曲だけじゃなくて、サイモンの曲を覚えなくちゃいけなかった。

当時の僕はまだDanger Danger にいたから、世間にはヘアメタルのロック野郎だと思われてた。でもサイモンの音楽をプレイするというのは僕が本当にやりたかったことなんだ。ジョーやスティーブみたいに認知されたかったからね。僕はソロのギターインスト音楽を録音はしていたけど、まだ"Ear X-tacy" を発表する前だった。だからあの夜は僕にとっての特別な夜だったんだ。何しろ僕にとってのヒーロー、ジョーやスティーブとプレイするんだからね。そして97年にサイモンがギター・プレイヤーが必要になったとき、僕のことを思い出してくれたんだ。

彼との仕事では、ジャズのプレイを練習しなくてはいけませんでしたか?

いつもだよ。あのバンドに僕が持ち込んだのはたしかに、ロックのエッジだと思う。サイモンは彼の父親のジャズバンドでプレイして成長したけれど、彼はロックの人だ。人はフュージョンと言うけれど、ジャズ-ロックじゃなくて、ロック-ジャズなんだよ。繊細なハーモニーや独特のタイムがあって、僕の得意分野からは引きずり出されたよ。だって僕は単純な男だから。でも僕はチャレンジが好きなんだ。自分の得意分野から出るのはとても楽しいよ。

普段のあなたの練習について教えてください。

毎日、コーヒーの時間にやっているのは、iPadのアプリなんだ。ジャズのスタンダードが入っていて、自分でキーやテンポを設定できる。どんな感じか、ベース・ドラム・キーボードのありなしも選べる。(模範演奏)僕はこれで1時間くらいプレイするんだ。これで1日が気持ちよくすごせる。これを3年くらいやってきて、やっとほんの少し上達してきたかなって思えるよ。(笑)

ブルースはあまり聴きませんが、今の音楽の基盤になっている音楽だとは知っています。ブルースを演奏することはブルースが好きでなくても必要でしょうか?

いや、別にいいんだ。自分が共感を持てる音楽をやればいいんだよ。自分が好きでないものを無理にやっても成果が伴わないんじゃないかな。

僕自身はブルース・ガイじゃないけれど、僕の好きなギター・プレイヤー達、クラプトンやベック、エース・フレーリーだってブルースの影響を受けてる。僕は直接ロバート・ジョンソンから学ばなくても、彼に影響を受けたギター・ヒーロー達から学んでいるんだ。何世代にもわたる影響の繋がりからね。

でも僕が初めてアルバート・キングを聴いたのはスティーヴィー・レイヴォーンが亡くなってからだ。僕が初めてスティーヴィーがラジオでプレイしたのを聴いたときは、震えきってしまったよ。だってギター・キッズにとってブルースというのはあまりにシンプルで簡単なものだという思い込みがあったんだ。でも実際にはたった5つの音で人を感動させられるか、これは凄いことさ。

初めてアルバート・キングのベンディングを聞いたとき、「うわ、これだ!スティーヴィーはここから盗んだんだ!」って感動して、それから世代を遡って音楽を聞いたんだ。

僕は数年ごとに、様々なジャンルの音楽をやってみるんだ。今はジャズを学んでいるし、ブラジルのボサノバ音楽も学んでいるところだよ。ボサノバのアルバムを作るんだ。ブラジルで知り合ったボサノバ音楽の創始者の1人でもある人にプロデュースをやってもらえるんだよ。信じられないけど、素晴らしいことだよね。

今後のプロジェクトを教えてください。

盛りだくさんなんだ。まずはアンディ・ティモンズ・バンドのアルバムをリリースする予定だ。年末には製作は終わる予定なんだ。スケジュール調整が大変だけどね。ベース・プレイヤーのマイク・デーンと共同プロデュースになるよ、16年春には出せると思う。

演奏は完全なトリオじゃないんだ。作曲はトリオとして書いたけれど、追加のギターやキーボードも入ってる。少々のプロデュースをやったよ。マイクと最高の時間をすごした。僕のトーン探索の旅は全曲で続いているし、メインギターはこれだけど、数曲でSGスペシャルも少し使った。ヘヴィな弦を使って違うサウンドができたし、63年製のストラトも数曲で使った。このアルバムが最優先の仕事だ。

それに数年ぶりにサーフ・ギター・アルバムも予定している。"Beach can play Ringo" って言うんだけど、ミックスをやってるところさ。それにさっき話したボサノバのアルバムもある。あと、サイモンのバンドで5月に欧州へ戻ってプレイする。Protocolはぜひ次のアルバムもやりたいと思うよ。今の僕はとてもハングリーでいろいろ学びたいし、できる限り様々なミュージシャンとプレイしたいと思っている。

あと、来年の2月から3月にアメリカで短いツアーをやるんだ。ウリ・ジョン・ロスとジェニファー・バッテンと僕とのギターツアーだ。欧州には来年の夏か秋にアンディ・ティモンズ・バンドのニュー・アルバムのツアーで来れると思う。それにいつかジャズのアルバムを出せる日がくるかもね(笑)

あなたはその長年愛用しているギターにはあなたの何かが入り込んでいると思いますか?

まだそのギターをツアーに持っていくのかい?って聞かれることはあるね。ギターというのは2種類の木材といくつかのハードウェアからできている単純なものだ。実際に僕のスタジオにはこれよりいい音がするギターもあるけれど、このギターはとても個人的なもので、これを持って飛行機で旅するのはギャンブルみたいなものだけど、自分の分身みたいなものなんだ。僕のヴァイブが入っているよ。