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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ 「この1音のために人生をかける程の情熱を注いだ」

スティーブ・ヴァイが Guitar Player誌 のインタビューを受け、その音源が配信されました。配信はPassion and Warfare の25周年記念ニューアルバム発売当日でしたが、実際のインタビューは4月のデュバイ訪問の前、3月後半ごろと思われます。インタビューはヴァイ先生の自宅スタジオ、ハーモニー・ハットで行われており、1時間半近く。

ニューアルバムのこと、Generation Axe のこと、Monsters Of Rock Cruise のことなど、多岐に及ぶ話題の一部を和訳してみました。

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素晴らしい色のコンソールですね。

私はシーフォーム・グリーンが大好きなんだよ。友人がサンダーバードだったか、車を買って見せてくれたんだ。その色が気に入ってシーフォーム・グリーンのギターも作ったんだ。スタジオについても、私は機材の色なんて何でもいい、というタイプではないのでね、スタジオの装飾にはインスピレーションが必要なんだ。シーフォーム・グリーンのコンソールを作ったし、それに合う色のカウチも入れたんだよ。

どういうコンソールなのですか?

私のデザインだ。ツリーオーディオに作ってもらった。古いコンソールはメンテナンスが大変だから、カスタムのコンソールを作ったんだよ。(ここからコンソールの機材説明が始まりますが割愛します。ご興味のある方は開始10分あたりの音声をチェックしてください)

そして今は Modern Primitive のミキシング作業中なのですね?

ああ、今はちょうど "No Pockets" をやっているところだ。Flex-able の頃、私は The Classified というバンドをやっていたのだが、Flex-able の後で、24トラックのプリアンプを手に入れたんだ。クレイジーに録音しまくった。そしてバンドがあった。私にはバンドでアルバムを出そうとかツアーに出ようとかいう野心はなくて、ただこれらのクレイジーな曲でギターを弾きたかったんだ。

ニューアルバムでのギアについて教えてください。

Modern Primitive ではいつもの LEGACY ではなくて古いアンプをこのテイストのために使ったんだ。多く使ったのは Fender のツインアンプでジョー・サトリアーニに借りたものだ。彼はこれをキース・リチャーズから買ったんだ。このアンプのサウンドが気に入ったんだが、少々ムラがあるんだ。

でもこの年代モノをツアーに持っていくのはしたくないので、これに似たアンプで、安定したものを作れるのは誰か、それを聞く相手は誰かというと、ジョー・ボナマッサだったのさ。アンプのことなら彼に聞けということさ。それで彼に聞くと「俺はそういう古いアンプを全部持ってる。それなら VICTORIA だ」と言うんだ。それで VICTORIA に電話して作ってもらったんだ。アルバムでは Fender と VICTORIA を良く使っている。

"We Are One" という曲では、ピックによっる繊細なアタック感が気になってね…ここだ。(曲を再生して示す)この音は凄く難しかったんだ。スライドにベンドにアームに全て使っている。

バイオリンでスライドをやっているような音ですね!

この音が大好きなんだよ。ボリュームはリトル・アリゲーターのボリュームペダルで操作している。オーバードライブは LEGACY でかけている。ディストーション信号のために失ってしまう音質のため、ジョーの Fender アンプからDIを取り出してメーカーに送ったんだ。だからここでクリーンでいながら、ディストーションのかかったサウンドが聞けるんだ。

ここの1音でも、私はボリュームペダルとワウペダルに同時に足を掛けているんだ。さらにアームを持って、ストレッチとベンドをやっている。この1音にだ!私はこの1音のために人生をかける程の情熱を注いだ。これは他人からしたら何の意味もないことかも知れないが、私には重要なことなんだ。とてもメロディックに仕上がっているだろう?

ここからの音は私にとっても新たな挑戦だったから、まず最初に瞑想から始めたよ。ここは全てアームと指だけで弾いている。
(訳者注:ここではエレキギターの生音でヴァイ先生が奏法を実演しています。"We Are One"のサウンドには多大なこだわりがあった模様です)

Passion and Warfare はリマスターしてボーナストラックをつけましたね。

私が Passion and Warfare を作った時にはCDはなくて、カセットとレコードの時代だった。だから全てが最高のハンドメイド機器を直列のアナログ・バイパスをして出している音なんだ。

当時私が読んだヴァン・ゴッホの本を思い出すよ。彼はどんなに金が無くても、腹が減っていても、絵を描くときには必ず最高のキャンバスと絵の具を使ったんだ。そのおかげで今の我々は素晴らしいアートを鑑賞できるんだ。

それで、私はヴァン・ゴッホにインスパイアされて、それをやろうと思ったんだ。当時、Passion and Warfare を作った時の私は最高のギアを入手することができた。でもデジタルの時代がやってきて、その初期にはアナログをコンバートする技術は現在のものに比べて随分劣っていたんだ。

それで、レーベルはアナログからのコンバートをやり、それがあのアルバムのCDの音になっている。あれの本当の音を聞くにはレコードを聞かなくちゃいけない。最近はレコードが復活して再リリースされたりしているけれど、デジタルをアナログにコンバートしてたりするんだ。私には意味が分からないよ。

だから今、リマスターしてCDを出せるいいところは、アナログのマスターテープから今の技術を使って最高のコンバーターでデジタル変換できることだ。

素晴らしいギタープレイヤーには素晴らしいユーモアのセンスがありますよね。あなたやエディ・ヴァン・ヘイレン、スティーブ・ルカサー、ジェイソン・ベッカー、ジョー・サトリアーニ・・・

思うにまず自分を楽しませる喜びからくると思うんだ。私は重くて緊張感のあるドラマティックなタイプではないから、自分が楽しいと思えるものが好きなんだよ。

イングヴェイ・マルムスティーンもそうですよね?

ああ!イングヴェイは最も面白い人間の1人だ。彼はもの凄く自信にあふれていて、いかにもイングヴェイなんだ。

あなたはG3では飽き足らずに Generation Axe という凄いツアーを始めるのですね!
(Generation Axe についてはこちらの過去記事をどうぞ)

多いほうがいいだろ?(笑)これはイングヴェイが言ってたんだ。私は多くのギタリストと弾くのが好きでね、夏にはG3もやるんだよ。G3と Generation Axe は違うフォーマットだ。私は複雑にしてみたいという思いがあってね、例えば5人の女性ギタリストを集めてアルバムを作ったらどうだろう?というアイデアもある。多くの優秀な女性ギタリストがいるからね。私がプロデュースしてツアーにも出るとかあってもいい。

とにかくある日、レコード会社の重役から連絡があって、ギターフェスティバルの話があったんだ。私はそういうのによく出ているから。それでツアーにも出ないかという話だったんだが、私はG3の範疇に踏み込むようなマネはしたくなかった。

それで、私が持っていたアイデアを提案したんだ。5人の特定の音楽ジャンルのギタープレイヤーを集めるという案さ。5人のギターアンサンブルなんて今までに聞いたことがないだろう?私は "Bohemian Rhapsody" のギター5本のアレンジを考えていたんだ。実際にはリハーサルの様子を見なければいけないが、ギター5本の "Bohemian Rhapsody" アンサンブルなんてコンセプトを考えただけでも楽しみだよ。

Highway Star のアレンジもやったんだが、5本のギターアンサンブルの Highway Star なんてとにかくぶっ飛びモノだ。

曲のアレンジは他のプレイヤーには譜面で渡すのですか?それとも個別のギタートラックで?

個別のギタートラックを送ったよ。

では Generation Axe の他のプレイヤーについて教えてください。まずはイングヴェイから。彼のどこが素晴らしいのでしょうか?

彼は非常にカラフルなんだ。彼はマスターであり、優れたイントネーションを持ったとてつもない名手だ。常にムーブメントの先頭にいる。彼は我々がとても可能とは思えないことを可能にする。そうしてハードルを上げて、我々のレベルを底上げしてくれるのは素晴らしいことだ。誰かがシーンにやってきて、今までに成されなかったようなことを成し遂げるということは、全ての人の為になるんだ。

彼のヴィブラートときたらもう最高だ、彼のトーンは全て彼の指にあるんだよ。だから彼を迎えることができて嬉しい、これはメタルの企画だからね。例えば別のジャンルのバージョンなら、私にエリック・ジョンソンラリー・カールトン、スティーブ・ルカサー、ロベン・フォードなど、今は思いつくままに名前を言っているのだけど、そういうことも出来る。

ヌーノはどうですか?

彼はとても手堅いプレイヤーだ。優れた弾き手だし、その指には素晴らしいトーンを持っている。彼はその場に簡単に馴染むことができるタイプだ。彼のトーンは調和できるんだ。アンサンブルでは主要なプレイヤーになるだろう。名手だし、彼とはクルーズで一緒だったから話す機会もあったので、優れた人物だと分かった。とても洞察力に富んだ反応ができるタイプだ。とても頭がいい。

クルーズですか、実は私もつい先日、Flower Power Cruise (60-70年代の音楽ものクルーズ船)で Jefferson Starship とプレイして戻ったばかりなんです。
(訳者注:インタビュアーのジュード・ゴールドさんは現在の Jefferson Starshipリードギターを弾いています)

そうなのか!グレースはまだバンドにいる?(元ボーカルのグレース・スリックさんのこと)

いえ、もう彼女は引退していませんが、グラミーで生涯功労賞を受賞しました。クルーズは楽しいですよね?

とても楽しいよ。私にとってはちょっと奇妙でもあったんだけど。私はずっとオファーを断ってきたんだけれど、今回のオファーはギャラが合うものだったのでね。彼らは私が初クルーズ参加だから、チケットを完売できると思ったんだよ。でも思うに、私をブッキングした人物は私が80年代の紫のスパッツをはいてる姿しか知らなかったんだろう、そう Monsters Of Rock Cruise だ。

(訳者注:実は今回のクルーズは速弾きギタリストをテーマにしたラインアップで、ほぼ同日程での同様なテーマのクルーズ(そちらの船にはイングヴェイが乗っていました)があったり、秋にも80年代HR/HMのクルーズが決まっていたこともあり、客足が分散してチケットの売れ行きはあまり良くなかったのです。)

それで、クルーズは80年代のロックバンドが集ったラインアップだった。古い友人達に再会して、彼らの音楽をまた聞けて楽しかったよ。例えば、ウリ・ジョン・ロートもいて、彼は実に極めたマスターだよ。セバスチャン・バックは素晴らしいフロントマンだね。彼の声は素晴らしい、あのジャンルにおいてベストの一人だ。

クルーズでは部屋を一歩出るとファンに遭遇しますが、どうですか、楽しめましたか?

ファンはとても敬意を払ってくれたけれど、そう簡単に散歩するという訳にはいかなくて、部屋にいたんだ。部屋で "Bohemian Rhapsody" のアレンジを仕上げたよ。

話を Generation Axe に戻しましょう。ザックはどうですか?

ザックは最高さ。ザックはもの凄く強力な推進力を持ったプレイヤーで邪魔をしないようにしなくちゃいけない。それと同時に彼はとてもいい奴なんだよ。面白くて賢いんだ。登場するプレイヤーは誰もがギターに対し深い献身をしているし、それぞれ個性的な方法で貢献している。

ザックのメタル音楽への姿勢はその情熱的な音に現れている。ザックがG音をヴィブラートしているときにはBフラットくらいのところにいるからね(笑)彼は正に正統的な良いメタルを演奏してきた。一方であまり知られていないけれど、ザックはアコースティックを美しく演奏するんだ。美しいピアノも弾くしね。

彼が "Bridge Over Troubed Water" をグランドピアノで弾くのを聞きましたよ。

ああ、彼はメロディックな音楽が好きなんだ。

トシンはどうですか?

ギターへの新世代の考え方、プレイを持っているから彼が好きなんだ。彼のギア、音の選択、ハーモニー感覚は全て進化しているし、彼の技術は恐ろしいほどだ。

世界と言うのはトップの足跡を残した先人の業績の上に新たな世代が道を作っていくのだよ。そういうもので、これは決して終わることはない。

例えば私の場合、ジミー・ペイジリッチー・ブラックモアブライアン・メイカルロス・サンタナ、アル・デ・メオラ、ジョン・マクラフリンなんかの音楽を聞いて影響を受けプレイしてきた。トシンの場合は直接聞いたことがないから分からないけれど、多分イングヴェイや私などかも知れない。

(訳者注:以前トシンは雑誌インタビューでジョー・サトリアーニやヴァイ先生の音楽でインストギター音楽を知り、Passion and Warfare を聞いてギターにのめりこんで行ったことを話していました)

私が若い頃、偉大なプレーヤーを聞いて、「よし、これだ!」と彼らをインスピレーションにして自分は何ができるかと考えた。彼らのプレイを盗んで、さらに進化させたというのは誤りかもしれない。彼らのプレイにはパーソナリティやオーラが含まれていて、実際にはそれを消化し進化させるなんてことはできないからだ。

トシンはシーンに現れて、まったく違うことをしている。アンダーグラウンドのムーブメントからやってきた彼はそれを次のレベルに進めた。複雑なだけではない、自然な美しさがある。彼のハーモニーは素晴らしいんだ。

私は多くの速弾きギタリストのプレイを聞いてきたが、彼らは速くて技術があるというだけで、同じスケールを繰り返しているだけだ。私はそこから誰かが抜け出してメロディックに、ハーモーニー的に違うアプローチをするのを見るのが好きなんだ。

こうしてトシンを加えることで、 Generation Axe には全く異なる要素を加えることができた。

8弦とか9弦のプレイヤーがバンドにいることで、ベースのいないバンドというのはどう思いますか?

素晴らしいと思うよ。進化の一部だと思う。ただヘヴィなリフを1日中弾いていたのでは弦の無駄遣いだと思うが、トシンは美しいコードを弾くんだ。私は8弦をスタジオで使うことはあるが、それをメインの楽器にしようとは思わないね。

デイヴ・リー・ロスと仕事をして学んだことは何ですか?

私は自分のキャリアを振り返ってみたときに、自分が信じられないほど恵まれていたことに感謝している。私は常に重要で必要な時期に素晴らしいメンターに恵まれてきた。

12歳から17歳の頃、人生で初めてのメンターになる高校の音楽教師だったビル・ウェスコット先生に出会った。彼から譜面の読み方、書き方、作曲、音楽理論の1から10までを教わった。彼は厳しくて素晴らしいメンターだったよ。

同じ頃、私はジョー・サトリアーニからギターを教わった。彼はいつだって素晴らしい。あの年頃にクールな先輩が自分の目の前にいるというのは感激さ。

私はサトリアーニにあなたを教えた時のことを聞いたのですが、普通の生徒とは全く違う凄い才能だったと話していましたよ。

それはうれしいな。音楽は私にとって自然なことだったが、楽器を弾くという技術力は全く持ち合わせていなかった。ひたすら努力して身に付けたんだ。

ジョーは寛大で、全ての知識を分け与えてくれた。彼は常にインスピレーションに溢れていて、とてつもなくいい耳を持っている。彼はいつでも美しいメロディーを体の内側で聴いているんだよ、そこから音楽が生まれてくるんだ。彼はスケールを弾いただけでも美しい音楽にしてしまうんだ。彼は常に楽器に敬意を払っていて、とてつもなく思いやりがある、たったの15歳でだ。

それから3人目はフランク・ザッパで、彼からは大量のことを学んだから数値で表すことなんてできない。そして、4人目がデイヴ・リー・ロスだ。デイヴは最上のカリスマを備えている。彼は当時正に「ロックスター」のデイヴだったのさ、今でもそれは残っているけど。彼には強固な自信があった。彼がどれほど真剣な張り詰めたタイプの人物かは誰も知らない。

彼はハードワーカーで、私はただのウブな変わり者だったんだ、普通のパフォーマー・ミュージシャンで。フランクとのプレイというのは常に間違えずに正しい音を弾くことで、オーディエンスのことは見ていなかった。ただフランクに弾いていたんだ。でもデイヴはアリーナで数万人に届くパフォーマンスをしてた。その点で彼は素晴らしいメンターだったよ。彼からどれほどの要素を教えられたか。

ビジネスの面でも、プレスの扱い方については彼は達人だ。ステージでの動き、有効的なパフォーマンス、これも彼は達人だ。彼の動きを見て学んだよ。彼は私のために女性ボディビルダーのチャンピオンを雇って動きを勉強させたし、強制的にジムに行かせた。おかげで私はヘルシーな身体作りができたんだ。フランクといたときの私の健康状態は悲惨だったから。

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Generation Axe のメンバー各人についての話は興味深かったです。イングヴェイってそんなに面白い人なんでしょうか・・・?

インタビュー中にジュードさんがしていたマグネット・ブレスレットを見て気になったヴァイ先生、同じものを愛用しているスタッフもいたようで、効用を聞いて、そしたらジュードさんからプレゼントされていました。(笑)