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ジョー・サトリアーニ 「アーティストはアルバムを出すべきだ」

今週末から What Happens Next ツアーをカナダで始めるジョー・サトリアーニがカナダ メディアのインタビューに応えました。

現在の音楽ビジネスとミュージシャンの取るべき道について、サッチの見解が語られており、とても興味深かったので、一部を和訳してみました。

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Img_2633現在のポピュラー音楽の状況を見ると、ギターや楽器そのものの存在が脅かされる状況が近くやってくると思いますか?

2つの相反することが起こっていると思うんだ。1つはポピュラー音楽は常にチャンネルを変えるということさ、100年前に遡ってみれば実にクレイジーだよ。ピアノ音楽が人気になっては廃れ、トランペット音楽が人気になっては廃れ、ボーカル入りの音楽が人気になっては廃れ、ってね。ロックがここにあるのは、ロックもまた何かの音楽にとって替わったものだったということさ。

不穏な黒い雲として広がった中に希望の光が見えてきたのはインターネットだと思う。その暗黒の部分については、まだ対応できていないけれど、それはつまり、どうミュージシャンに報酬を還元するのかということだ。私たちは今だストリーミングから1セントを得ることもできていない。これはミュージシャンの経済活動を抹殺しているようなものさ。

一方で、インターネットは全てのミュージシャンに対して公平に世界中のオーディエンスを一瞬にして提供してくれた。例えば、私が月曜の深夜0時に What Happens Next をリリースすれば、1時までには世界中のあらゆる所のコンピューターかスマホを使うあらゆる年齢層の人々が聴くことができるんだ。ミュージシャンにとってそれはとてつもなく凄いことだよ、自分の芸術を世界中に広めることができるんだから。

これによって私のツアー生活は大きく変わったし、私の本当のオーディエンスが増えたと思う。説明しよう。これまでにヒットシングルを出して、そのせいでバンドのキャリアが駄目になってしまったバンドは実に多い。ポップラジオ局とテレビのあった世界で起きた奇妙なことだよ。

ところが、インターネットは生涯に渡るファンを創り出すことができる。そのファンたちはヒットシングルなんて気にもしないんだ。彼らはもっと現実的なレベルで音楽を大切に思う。彼らはお気に入りのミュージシャンが今どこにいるのかも知っているし、やがて彼らの街にやってくることも分かっている。

これは私にとってより自然で信頼できる見通しをくれた。次の2年間は世界中をツアーして、モントリオール、ムンバイ、パリ、ダラスにも行くんだという風にね。そうして私はまた次のアルバムを出すだろうし、それは世界のどの都市でも皆が手に入れることができる。ミュージシャンにとって実に画期的だよ!

その通りですね。一方で今ではバンドがネットでのフォロワー数でレコード契約を得たりしていています。

うーん、その質問にはイエスやノーで答えることはできないな。音楽のジャンルによるところもあるし。今ではアルバムではなくてシングルをリリースすると言っているのを目にすることはあるよね。それを言っているのは、いつもテレビで見かけるようなアーティストやツイッターでトレンド入りしているような類の人さ。

しかし、現実のキャリアを創る上で、アルバムは一連の作品として創作されなくてはならない。ファンに尊敬され、絆を創り、長いキャリアを築くために。これはトレンド入りすることを狙うようなこととは全く異なることだ。

なるほど。アーティストは今でもデビューアルバム、セカンドアルバム、というようにアルバムをリリースしていく必要がありますか?例えば、ラジオでヒットしそうな数曲だけをリリースするのでは?

例えば、私と君がバンドを結成してシングルを出したとしよう。それでツアーに出たとして、シングル以外に一体何を演奏するんだい?とても間抜けに見える。その話は今、未来を予想して皆が話していることだけれど、究極にはこういうことさ。

ここに新しく若いロックバンドがあったとする。世の中のトレンドはロックじゃないから、ロックのラジオ局なんて4つ程度で、世はヒップポップ全盛さ。彼らが生き残る為には10曲の本当にいい曲を書いて、毎年もしくは1年おきにアルバムを出し、ツアーに出て何度も同じ曲を演奏して、世界中のファンに会うことだ。クラブや小さな劇場かも知れない。でもこれをやらなければ、彼らは消えてしまうだろう。分かるかい、ポップの世界というのは、彼らを利用して、吸い尽くし、吐き捨ててしまうんだよ。

その通りですね。業界はそうやって若いアーティストを消費しては次に移ってきました。

ポップ音楽の制作というのはとても金がかかる。だからレーベルは複数のアーティストを抱えていないと生き残れないんだ。どんなジャンルにせよ、Eagles とか Metallica みたいに初期投資以降に継続して売れて、売上を稼いでくるアーティストが必要で、ビジネス的にはそうでなければ資産を減らすことになる。

だからこれは私の信念と経験から言うのだけれど、私はまだ世界中をツアーしてSONYからアルバムを出しているから。アーティストはアルバムを出すべきだ。

なるほど。ただあなたが始めた頃とはバンドのレコード契約については時代が変わってきました。当時はもっと特権的なことでしたし、あなたは既に名が売れていますから、新人バンドと比べれば大きな強みです。

ああ、でも当時の私は7晩連続でライブをやってどこにでも行ったし、時には1晩に2回ライブをやったりした。自分の音楽を広めるために、どこへでも、どんな小さなクラブでも呼んでもらえたらプレイした。忘れられがちだけど、そういうことが必要なんだよ。私は今でもやっている。実際のところ、ファンと自分の音楽を祝福しているのさ。彼らを落胆させることはできない、彼らの信頼に応えなくてはいけない。

けれど、インターネット後の世界ではミュージシャンが報酬を得ることが難しくなっている。多くのミュージシャンが音楽に人生を捧げることができないんだ、音楽では家賃を払うことができないからさ。Spotify はまだ配信サービスの中ではアーティストに払っている方だけど、それでも1ストリームで1セント以下だ。これでは1ヶ月あたり50万回のストリームがあってやっと貧困レベル直前の生活だ。こんなのはおかしいし、YouTube なんて支払いは最低のレベルだ。

確かに、名が売れているヘッドライナーでもこれは厳しい競争です。
最後に、多くのことを達成したあなたにとって、何かまだやりたいことはありますか?

自分がアルバムを聴いて影響を受けてきた人たち、ジミー・ペイジジェフ・ベックとプレイしたいね。先日はサミー・ヘイガーのチャリティ・ライブでタジ・マハールやケビン・クローニンと共演したんだ。素晴らしいコラボレーションだったよ、音楽をシェアして、ファンだけに対してでなく、違う音楽の道を歩んできた他のミュージシャンにも心を開いて、ともに集い魔法を起こすのさ。