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ジョエル・ホークストラ Part 4 「良いリズム・ギターを弾くことに加え、『いかに弾かないか』ということも重要だ」

Whitesnake のジョエル・ホークストラが自身のサイド・プロジェクトの VHF について、またギタープレイについて語った Part 4 です。私が2月に行ったインタビューはこれで全掲載完了です。ジョエルのWhitesnake 以外の活動について、ギタープレイへの考え方など、多くの方に知ってもらえたら幸いです。VHFは特に私の推しプロジェクトです! 質問と和訳:Green

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ー VHF の方はどうなっていますか?プロジェクトについても説明してください。

JH: VHF は(前作のEPから)4年になるかな。ドラマーのトッド(Todd Vinny Vinciguerra)は僕の友達で21歳でMI(音楽専門学校)に行っていたときのルームメイトなんだ。元は彼がジャムしてドラム・ビートをレコーディングした。そしてトニー・フランクリンに連絡したんだ。彼は素晴らしいプレイヤーで僕の大好きなベース・プレイヤーさ。あのトーンといい、グリッサンドといい最高さ、彼はタイトな固いタイプじゃなくて、ただあのサウンドとフィールが素晴らしいのさ。

それで彼がトッドのプレイの上にベースを入れたらとてもクールになった。それでEPを創らないかという話になって、僕も参加したんだよ。正直に言うと、あれは僕の作業が莫大だった。彼らが録音したものはクールだったけど、聴きやすいものじゃなかった。それで僕はギターで何トラックも入れて様々なことをやったし、(エフェクトとしての)ヴォーカルもいくつも入れた。そうした結果、聴き手に馴染みやすく、聴いて面白いものにできたと思う。

それで2作目をやろうという話がきたときに、僕が言ったのは、僕の作業量が多過ぎるってことだった。だって彼らのパートは、ドラム・パートなら1本で完成だ。でも僕はギターで8トラックも入れる。ドラマーの8倍の作業量があるってことさ。悪気はないけど、ギターパートを入れるというのは作業量が多いんだ。

それで僕が提案したのは4人目のメンバーを入れて少し作業を手伝ってもらうということだった。プロダクションやキーボード、ドラム・ループなんかをやってくれる人。これはメタル・アルバムじゃないし、僕らのテクニックを見せびらかすような必要もない。Pink Floyd の影響を受けた実験的音楽で、ストーナー・ロックっぽい感じかな。「見てくれ!俺はこんなに速弾きできるんだぜ!」みたいな音楽じゃない。そういうのは避けたいんだ。もうそういうのには飽きたよ、僕は違う分野をやりたい、僕の内側を表現するようなプレイで、テクニックに固執するのではなく。

ー VHFは普段あなたのやっている音楽とは少し違っていて、あなたのそういう面を人々が聴けるというのも良いと思います。

JH: バラエティということだよね。VHFのやっていることはアーティスティックな信憑性を高めてくれると思う。僕が単にハード・ロックをプレイしているだけでなく。特に Cher での僕しか知らない人は、「あいつはポップスを弾いてる奴だな」って思うだろうから、じゃあこれ聴いてみて、と言えるよね。まあ、VHF のアルバムっていうのは2~3枚しか売れないものだから、(笑)意義としては僕自身のアーティストとしての信憑性を高めるということ。最終的には自分の愛する音楽をやるということが重要なのさ。僕はああいう音楽が好きだからね。まぁ、どんな作品になるのか、楽しみに待っているよ。トッドが早々とセカンドの話を公にしちゃったけど、制作はまだこれから。でも僕もぜひあれをやりたいんだ。

ー 日本ではインストゥルメンタルの音楽にもファンがいると思いますよ。

JH: ああ、そうだね。欧州でもそういう土壌はある。米国ではまだトレンドにしか皆が注意を払わない感じだね。誰もがポップ・スターになりたがっていて、そういう音楽をやらなきゃと思っているようだ。僕はそういう世間的な流行にのったクールな男に成りたいなんて気持ちは何年も前に捨てた。そんなものはどうでもいいんだ。

僕はただ良い人間でいたい、勤勉に働いて、評価してもらえたらいい。僕がやっているギグというのは流行最先端の音楽ではない。Cher だってレトロな音楽だし、TSOだってレトロでニッチな分野の音楽だし、Whitesnake だってレトロだ。若い子にはアンクールに見えるだろう、でもそういう批判や戯言はもうどうでもいいんだ。

僕は自分のベストのスキルを出して演奏するし、与えられた全ての機会に感謝している。僕にとっては父親であることが重要だし、子供たちにより良い人生をおくってもらいたい。僕の人生で一番重要なことはそれだ。だから僕は世間のタレントコンテストみたいなものには興味がないし、ギタリストとして、ミュージシャンとして最高の自分を出すことに注力しているよ。それら全てのバランスをとった人生を目指している。

ー VHFの音楽はあなたのスキルだけでなく、アーティスティックな面も出ていて素晴らしいです。

JH: ありがとう。そういうことなら僕のインスト・ソロアルバムの The Moon Is Falling とかは正にそれだと思うよ。あれは風変りなギターサウンドを目指して、ペダルとかいろいろ実験的に用いたからね。変拍子だったり、アレンジも風変りで、自分に何かが起き始めるきっかけになったものだ。(訳者注:自主制作だったこのアルバムが米国のギター雑誌から注目されました)アーティスティックなイノベーターという方向を向いていた。ハード・ロック路線の僕のイメージが軌道に乗るよりもずっと前の話だ。僕がギターを始めたきっかけはハード・ロック音楽への愛なんだから、(今の状況が)しっくりきているよ。

Jhamp ー あなたにはギター収集癖があったと思いますけど、ギブソン以外のギターや、アンプやエフェクター・ペダルなどについての収集癖はどうですか?

JH: ギター収集癖は確かにあるよ。(笑)でもギアについては、それぞれのギグに最適な物さえあればいいから、特にないんだ。Whitesnake は特にレス・ポールサウンドが求められるギグだ。レブはハムバッカーでフロイド・ローズ搭載のいわゆるスーパー・ストラトサウンドだよね。だから僕がレス・ポールサウンドを提供することは重要だ。アンプは Friedman の BE-100 だ。アルバムでは Marshall も使ったけど、Victory 他 Mezzabarba も使っている。

Cher のギグでは、多様な楽曲をプレイしなくちゃならないから、ストラトテレキャスター、ジャズ・マスター、ダブルネックも使う。Jackson PC1 は Cher と前に出るところで弾いているから目立つだろう。あれもスーパー・ストラトだよね。あとアコースティックも弾く。

TSOでは視覚的な華やかさを狙って多種のギターを使う。あれはヴィジュアルが重要な要素になっているショウだから。僕が加わった最初の年はほぼ1本のギターで通していたんだ。でもショウを体験して、もっと視覚に訴え、楽しめるものにしようと考えたんだ。ここで全部言えないくらい、沢山のギターを使っている。11本か12本くらい。Flying V、Explorer、今年は Modern V も加わった。Friedman 製テレキャスター、ハワード・ロバーツのシグナチャーのセミ・アコースティック、あと Jackson にもちろんレス・ポールも。ここで忘れているエンドーズ先があったら申し訳ない。

全てはそのギグに何が最適かということ。その中で僕は楽しむことにしている。僕は新しいギターが大好きなんだよ。

ー アンプやペダルを大量に収集するのが好きなギタリストもいますよね。ジョー・ボナマッサとか。

JH: ジョーは飛びぬけた才能の持ち主で、大金を持ってるからさ!彼は本当に素晴らしいからそれに相応しいよ。僕もかつては大きなペダルボードを使っていたんだけど、今の Whitesnake ではあまりペダルは使わない。ディレイとリバーブがソロで要るだけさ。僕は Fractal Axe-Fx をエフェクトのみに使っている。モデリングは使わないんだ。だから、Friedman アンプと Fractal Axe-Fx 、それにトミーがくれる曲のテンポ bpm を聴いて、それくらい。切り替えはほとんど自分でやるけど、自分の立ち位置から離れるときにはギター・テクに切り替えてもらう。全体的には昔ながらの使い方だよ。

TSOでは Fractal Axe-Fx を全てに使っている。ステージにはアンプがないんだ。だってレーザーとパイロで全部溶けちゃうからね。(笑)Cher では大きなペダルボードを持ち込んだけど、結局は Friedman アンプと Fractal Axe-Fx を使った。僕の前任者のサウンドにできるだけ近づけたんだ。ギグごとに何かが変わるんだよ。

ー 優れたセッション・ドラマーのケニー・アロノフがこう言っているのを読みました。「ギタープレイヤーの最も重要な技能の1つはリズムギターの弾き方にあるのに、多くの奴には分かっちゃいない」と。ギタープレイに最も重要なものは何でしょう?

JH: ケニーの言うことには賛成だね。リード・プレイにも重要だ。リード・プレイがいいリズムのタイミングにシンクロしていなければ最悪だ。それから、良いリズム・ギターを弾くことに加え、「いかに弾かないか」ということも重要だ。だって、ボーカルが入っていて、オーディエンスが聴いているのに、うるさく弾いていては最悪だろう?

僕のアルバム Dying To Live を聴いてみると、ボーカルが入っているときのバックグラウンドのリズムギターはとてもシンプルなのに気付くだろう。ガチャガチャとリフを弾こうとは思わなかった、そんなことをする意味はないからね。だから僕は出来る限りシンプルにして、シンガーの歌が止まるとギターで応じたり、リードを入れたりしたんだ。もちろん、正しいリズムでのギタープレイは最も重要なことだよ。

ー ギターの上達に重要なことは?

JH: 練習あるのみだ。いろいろな方法があるよね、例えばエディ・ヴァン・ヘイレンは楽譜の読み方やクラシック系の人がやるような両手を独自に動かす練習はしてこなかったと思うよ。でも彼は彼のやり方でプレイを切り開いたイノベーターだ。タッピングの凄腕スタンリー・ジョーダン、ジャンゴ・ラインハルトイングヴェイ・マルムスティーンジョー・パス、トミー・エマニュエル、これらの優れたプレイヤーは皆それぞれ異なるユニークなプレイヤーだ。でも彼らは全て1点の共通点があって、皆がギタープレイの習得に長い時間を注ぎ込んだのさ。自分が注ぎ込んだものが返ってくるんだ。

ギタープレイには様々な方法がある、そこがいいところなんだ。そしてエゴを捨て去ること。自分が最高のシンガーだなんて思うのは自分にとっても致命的で、いつだって更に優れたシンガーが登場するものなんだ。だから大切なのは自分が成り得る最高の人間になって、日々創造的に過ごすことだよ。自分の向かう先がはっきりしないこともあると思う、それは創造し続けることで自ずと分かるようになるだろう。ポジティブに考え、純粋な心を持つこと、そうすることで人生は自分が思いもしなかった方向へ進むんだ。

僕はブロードウェイの Rock Of Ages でプレイしたけれど、子供の頃にいつかブロードウェイでプレイするぞ、なんて決して思わなかった。でもこのおかげで僕の経済的状況は完全に変わったんだ。僕はあのショウを6年やって、自分のライブがあるときにはいつでも代役に頼んでそっちへ行けた。僕は長年どうやって家賃を払うかっていうストレスに向き合っていたけれど、あのお陰でもうその心配はなくなった。そこで尊敬する人々にも会うことができたしね。

Cher についても同じ。子供の頃、いつか Cher にギターを弾くんだ!なんて一度も思わなかった。でも今そのギグをやって本当に恵まれていると思うよ。バンドのミュージシャンは皆素晴らしいんだ。それに音楽界のアイコンである人とプレイして、2万人のアリーナ会場でのライブをやっている。素晴らしい体験だ。僕は従来の僕のオーディエンスとは全く異なる階層の人々に僕のギタープレイを見てもらえるんだ。これは素晴らしい機会で、その上僕はこのギグでギタープレイを上達せさることができ、ギャラが貰えるんだ。

ー では最後の質問です。あなたは何度か日本をツアーした経験がありますが、一番の思い出は何ですか?

JH: 大好きなところは、ファンがお菓子やギフトを持ってホテルのロビーに来てくれたり、そういう歓迎の行為をしてくれることだね。米国なんかとは全然違うレベルのもてなしだよ。あんなことは米国では絶対に起こらない。

それにとても細かいところまで聴いているよね。ギター雑誌の取材のとき、「あのリックでのあなたのピッキングはこの方向ですよね?」とか言われたことがあって、うわぉ!ここの人たちは見ているんだ!ってびっくりした。米国なら皆飲んだくれて、「イェーイ!」って言ってるだけなのにさ。日本だと細かいことを熱心に分析しているよね。そういう文化は素敵だと思うよ。皆がとても優しいし、思いやりがある。

これは誤解を招かないようにどう話したらいいのだか迷うんだけど、多くの(ファンの)女性が僕と会ったときに泣いたり、震えたりしてたんだ。これ冗談?って感じだ、僕はスターには程遠いのにさ。それなのに。とにかく、とても可愛いよね。感動するし、ほんの僅かの間でも、まるで自分が Beatles になった気分さ。素晴らしいよね。

それに日本はとても美しい国だ。いい人たちで敬意をもって接してくれるし、とても清潔だ。それに全てが完璧に機能している。だって日本でエレベーターのボタンを押したら、ドアは静かにスムーズに開くだろう?米国じゃドアが開くのにガラガラ音がするよ。あと、空港の手荷物受取所!日本では静かに回転しているよね。米国じゃまるで戦車が動いてるみたいに、ガラガラ音がしてるんだ!(笑)