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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ Part 1 「達成するまで挑戦を止めなければ、失敗することなどない」

Everyone Loves Guitar というPodcastスティーブ・ヴァイの2時間に及ぶインタビューが公開(4/26)されました。インタビュアーとの相性が良かったのか、ヴァイ説法ゾーンに入った先生は有難いお話を2時間喋り倒します。長~いトークの一部概要を編集し、Part 1 & 2 に分けて掲載します。

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Morc2016vaitalk あなたは非常に優れた感覚というか第6感があるように思えるのですが、あなたにはメンターがいましたか?特に音楽の方向性について、「いいぞ、このままでいいんだ」と背中を叩いてくれるような?

皆と同じように私にも第6感などというものはない。しかし私のキャリアを振り返ると、1つとても役に立っていることがある。私はただ音楽を愛しているのさ。ギターを弾くということがたまらなく好きなんだよ。ギターは常に表現するための美しい道具だった。私の人生にはいろいろなことがあったが、1つ常に私が立ち戻る居場所があったのさ。創造の次元とでも言おうか。

ギターを構えて弾いていると私は想像をめぐらす、そこには外の世界や私自身や将来の成功など、何の期待もない。ただそこにあるのは純粋な創造の時だ。創造の衝動が生まれ、それが自分の身体に流れる。いつもそうなのだ、自分の創造のボタンを押すのだよ。それが最も好きな時で、第6感というものではない。言わば、自分の至福を追求するということだ。自分にとって刺激的なアイデアを追求するということさ。

そういった刺激というのはギターを弾く前から感じるのでしょうか?

いや、事前ではない。弾いているときに自然と起こるんだ。

なぜそれ程に自信を持てるのでしょう?

いや。自信というのは自分で何かが出来るのだと信じる必要がある。私は何も信じる必要はないんだ。ただやるんだよ。とても単純で簡単なことだ。例えばもし私がマラソンを走るのならば、私は十分な自信をつけなくてはならない。トレーニングしたりね。

自信という概念を超えた状態を説明するのは難しいな。傲慢に聞こえるだろう。とても単純なことだよ、素晴らしいアイデアが頭に浮かび興奮を覚えるのさ。そしてそれを追求するのみだ。我々は物事を複雑にしてしまう習性がある。どうやってこれをやるんだ?とね。それは常にアイデアがもたらす興奮を冷ましてしまう傾向にある。しかし、元々のアイデアに実直であれば、どうやって?という方法は自ずと姿を現すのさ。

浮かんだアイデアに対する素朴な興奮、純粋な喜びを持ち続けるならば、(その実行に伴う)障害や苦難は素晴らしい機会になるだろう。なぜなら、君自身がそれを機会と捉え、必要と考えるからだ。何かに取り組むことなくして解決は得られないのだよ。全ての挑戦はその答えにつながるのだ。しかし、「どうやって?」という不安な声に囚われるならば、これらの道がそこにあっても君の目には見えないものになってしまうだろう。

ロングアイランドのどこで育ったのですか?

カールプレイスという小さな町だよ。2ブロック先に住んでいたジョン・サージオは今でも友人で、彼が私のメンターだったのかも知れないな。当時の私は Led Zeppelin しか聴いていなかったのだが、彼が初めて Queen のコンサートに誘ってくれたり、Jethro Tull を聴かせてくれたりした。ジョー・サトリアーニの電話番号も彼にもらったんだ。それに町の不良少年グループとも仲が良くてバンドを組んでクラブで演奏したり、いろいろ楽しい思い出をつくった。

私は素晴らしい両親に恵まれて、母は物語に出てきそうなくらい理想の母親だったよ。私の父は当時バーテンダー酒類の営業をしていた。しかし彼は飲酒癖に囚われてしまい、家族の中で暫く問題だったんだ。でも幸運なことに、私が12歳のころ、彼は酒を止めたんだ。重い中毒者だったのに、ただスッパリとやめたんだよ、酒類の仕事を続けながらだ。酒のことを脇に置くと、彼は本当に面白くて素晴らしい人だった。私たちはとても絆の強い家族だったよ、今もそうだ。

子供の頃の一時期とはいえ、アルコール中毒の父がいたことは困難でもあった。家の中の問題を自分のせいだと感じてしまうようになる。そんなことを思わなくてもいいのに。私はドラッグの類には一度も手を出したことはない。12~13歳頃にタバコやマリファナを覚えたものだけど、15歳のときに悲惨な事件を見てから、決して手を出さないと決めたんだ。

フランク・ザッパと働いて圧倒された体験、また最も重要な教えは何ですか?

自分のヒーローと働くのはとても不思議な感覚だったよ。彼と一緒にいること自体が魔法のような体験だった。彼と話をするのは尻込みする体験だ。彼はとても注意深く話を聞き、言葉以上に話し手の意図まで汲み取ってしまう。そして彼の話を聞くときには心の準備をしておかなければならない、彼は常に真実を話すからだ。

フランクは私にとても難しいパートを与えたけれど、私には自分には必ずできるとわかっていた。スピードを落として何度も練習して少しずつスピードを上げていくんだ。誰だって必ず達成するという意志があればこの方法で弾けるようになる。私の意志はとてつもなく強固だった。達成するまで挑戦を止めなければ、失敗することなどない。私にとって挑戦は楽しみでもあった。フランクを驚かせると、とても嬉しかった。

彼から教わった最大のことは独立心だ。フランクは自由を体現していた人だ。彼の創造に対する意思は強固だった。彼は何かアイデアを得るとそれを探求し、形にした。誰かがやってくれるなどという甘えは一切ない。言い訳をするということは本当にやりたいと思っていないということだ。

あなたは完璧主義者だと思いますが、スタジオではどこまででも作業できます。どの時点でこれは完成したのだとわかるのでしょうか?

それは年齢と共に変化してきたな。私は元々サウンド・オン・サウンドのレコーディングが大好きでね、フランクと仕事をして多くを学んだよ。レコーディングについては完成したと確認するため、自分用のチェック項目があるんだ。「音楽らしく聴こえるか、エネルギーがあるか、正確か、サウンドは自分の求めていた最高のものか、等」主観的な評価だけれど、いくつもの規律がある。究極のところ、完成したかどうかは直感でわかるものだ。

私は多くのアーティストと話してきましたが、彼らの殆どは残念ながらビジネスにあまり関心がありません。あなたは若い頃から自分でレーベルを創ったりビジネスを行っていますが、それはどうやって学んだのですか?

創作活動とビジネスで使う脳は随分と違うものだ。私はなぜだかわからないが、いつもビジネスに取り組むのが好きでね。私は自分自身を管理し、面倒をみる責任を大いに楽しんでいる。その1つとして、自分の収入以下で生活することだ。収入の9割で生活し、1割をとっておくんだ。そうすれば金の面で不安に囚われることはない。

それから、多くの場合、ミュージシャンは(難しいものだと)ビジネスを恐れている。ビジネスは恐れるものではない、それは自分の役に立つものなんだ。基本的なビジネスを学ぶのは簡単だ。若いミュージシャンにとって自分のキャリアや金銭面でのコントロールができない障害になっているのは、難解なものだという恐れと人に任せて上手く行かなくなる恐れなんだ。

私の場合、一度たりともマネージャーが私に小切手を切るようなことななかった。私に報酬を渡せるのは私自身しかいない。私はこの責任と自由を楽しんでいるよ。

あなたの勤労倫理はどこからきているのですか?メンターがいたのでしょうか?

私は単に物事を成し遂げる感覚を楽しんでいるんだ。私の父は実に働き者で、3つの仕事を掛け持ちしていたよ。私の倫理の多くは兄のマイケルからきている。彼はとても厳しい勤労倫理の持ち主で、驚くほど働き者だ。私は創造するのが大好きなんだよ、同時に家族の時間を楽しむのも好きだ。

何かを達成するというのは、とても厳しいことではありませんか。人生でのバランスをどうとるのでしょうか?

それは君の期待値が大きすぎるからだよ。「物事を成し遂げる感覚」というのは世界を救うとか、世界的な成功を収めるとか、そんなことではない。例えば目玉焼きを焼くことでさえ、達成感が味わえるものだ。「物事を成し遂げる感覚」というのは充実した人生を生きるために最も強力で突出した道具なんだよ。

しかし、君の期待が現実離れしていると、その感覚を得ることはできない。なぜなら君はそれを未来に期待してしまうからだ。その場合、どれだけ君が物事を達成しても、決して達成感を味わうことはできない。それがエゴなんだ。エゴは決して満足しない。セックス、ドラッグ、金、これらにも言える。どれだけあってもエゴは決して満足しない。けれど一歩立ち止まり、素朴で純粋な喜びを見つけたなら、それは人生を発見したことになる。

全ての達成事項というのは一度に一歩ずつ、小さなものの積み重ねなんだよ。それら全てを楽しむことが人生に繋がるんだ。私は人生のある時期にエゴに囚われてしまった。常にもっともっとと求めていた。あれは終わることのない苦悩で牢獄に囚われているようなものだ。

あなたにとってこれまででトップ3の音楽体験は何だったでしょうか?

毎回違う答えになるかも知れないな。1つ目は音楽のことは何も知らなかったが、4歳の時にピアノを触ったことだ。すると、右側を触ると高い音が、左側を触ると低い音が出ることに気付いた。その時だよ、いろいろなモノがクリアに見えるようになった。それからだよ、私には音楽を聴くことで音楽が見えるようになったんだ。いわば音楽の構造が見えるのさ。音楽を創造するというのは終わることのない創造的プロセスだ。その音楽創造の方法が明らかになるんだ。

2つ目はギターを練習している人でも、他の分野で技能を磨いている人でも、これから話すことはあることだと思う。15歳でギター練習のときにあるピッキング・テクニックを練習に取り入れた。その時だよ、突然のひらめきのようにギターフレット上全てが広がり、自分で音楽理論が理解できたと思ったんだ。それまでは謎に包まれていたんだ。私には音楽を書き、様々な道具を作曲に活かすことができたけれども、それらをギター上に当てはめて理解することができなかった。ジョー・サトリアーニにギターを習い始めたとき、私は12歳だったんだが、それから3年間習っていた。ジョーは私のヒーローであり、素晴らしい教師だった。彼が音楽理論をギターに当てはめて教えてくれたんだ。

3つ目は確か Real Illusions ツアーのときだ。バルセロナ公演のとき、私はインフルエンザにかかってしまったようだった。1晩に2公演あったというのに。通常、ショウの最中には段取りやサウンドのことなど、様々なことが気になってしまうものだ。心が恐怖を感じてしまう。しかし、あの時は病気のせいか、激しい疲労のせいか、私は完全な降伏状態だった。自分のしていることだけに精神を集中したんだ。いや、まるで完璧な傍観者のような精神状態だった。クリエイティブな瞬間に高度に集中した意識下になる状態を私はウルトラ・ゾーンと呼んでいる。そのときの私のプレイは易々としていながら、エレガントで、美しかった。その日以来、ステージで演奏をするときにはあの状態を目指している。

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Part 2 に続く