ミュージカル『Get Jack』コンセプト・アルバムを7月19日にリリースしたキップ・ウィンガーがメディアのインタビューに複数応えました。その中から、興味深かった内容の概要を和訳してみました。(インタビュー音源はこちらとこちら)
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あなたは何でもできそうな人ですよね、なぜ子供の頃にロックをやろうと思ったのですか?
そんなことないんだ。俺は子供の頃から兄弟と70年代のロックやポップをプレイしてた。そのバンドに集中してて、あちこちでプレイしたんだ、学校のプロムとかも。16でクラシック・ギターを始めたけど。その頃ガールフレンドがバレエをやるって言うから、バンドは夜だから昼間に俺も一緒にやって、そこでクラシック音楽を聴いた。素晴らしい音楽だ、誰が作ったんだ?って思ったよ。
少し説明すると、俺は15歳で高校を中退して、兄弟でバンド活動をしていたんだ。でもバンドが解散して、その後俺は一学期デンバー大学に通って、音楽理論と演技とシアター・ミュージカルを勉強していた。バレエの勉強もしていたから、自分の芸術的感性が高まっていたんだ。
コロラド州バレエ団ってのがあって、俺は学ぶのが早かったからプリンシパルにリクルートされたんだ。一時はバレエダンサーとしてやっていけるかも、と思ったこともあった。でも俺はロックスターになりたかったんだ。だからある時、団長のところに行って、俺はNYに行かなくちゃいけないから、バレエは辞めるって言ったのさ。
バレエのような芸術の世界とロックの世界とは随分と違うように思いますが、例えば、(バレエをやっていると)いじめにあったりはしませんでしたか?
いや。俺はどんな環境にも自分をカメレオンのように順応させ、どういうグループの人ともうまくやっていけるんだ。ずっと後のことだよ、Winger で成功してから、バレエのことで皆にからかわれたのは。
それに俺にとってのいじめ体験ってのは、メタリカが俺のポスターにダーツを投げてバッシングの対象になったときだ。あれは厳しかった。でも俺にとって大切だったのは常に今よりも優れたミュージシャンになるということだったから、それに集中した。
クラシックの演奏家になろうと思ったことはありませんか?
それはない。クラシック・ギターを習っていたけれど、早い時期に悟ったんだ。何時間も何年も訓練してきまった道を経て演奏家として身を立てる限られた枠というのは自分には向いていないと。俺は音楽をクリエイトしたいんだ。誰かと同じ道を歩もうとは思わない。
そしてあなたはクラシック作曲でグラミーにノミネートされましたね。
ああ、素晴らしい評価が得られた。(例のMTVですっかり名前がバッシングの対象になっていたから)クラシック作曲でグラミーノミネートされ、俺は自分自身の評判を取り戻すことができたと思う。とても困難な道だった。
授賞式で他の優れた作曲家の名前と共に自分の名前を見るだなんて、現実とは思えなかった。彼らは人生をクラシック作曲に捧げている中で、俺は全く違う世界からやってきた。彼らと名前を並べたことはとても光栄だ。
音楽のビジネスサイドの話を聞いてみたいのですが、あなたの主な収入源というのはクラシック作曲でしょうか、 Winger でのツアーでしょうか、ソロ活動又は著作権収入でしょうか?あなたはとても多くのことをしているので、興味があるのです。
俺は労働者だよ。俺の主な収入はソロコンサートからだ。それからバンドやソロとかのストリーミング収入があって、クラシック作曲でも収入はある。例えばクラシック界ではジョン・アダムスみたいな人は大金を稼ぐが、そんなじゃない。ともかく3つの活動それぞれから収入はある。
Winger で成功したときに、どう祝いましたか?成功してドラッグやその他の問題に囚われませんでしたか?
ゴールド・ディスクと写真を撮って両親に送ったよ。俺は高校中退していたから、まともな仕事にもありつけないだろうって思われていたんだ。父は素晴らしい人で、俺に高校中退したい理由を小論文に書かせたんだ。俺はバンドでツアーに出たかったし、学校の教育は俺に合っていなかった。父はそれで許可してくれたんだ。皆は驚いていたよ。それでゴールド・ディスクを取って父に自分の力を証明できたんだ。
俺はドラッグをやったことは一度もない。アリスは俺のことをブリーフケース・ロックスターって呼んでたんだ。当時俺は作曲の勉強をしてた。ツアーバスの後ろで(鞄から本を取出して)弦楽四重奏の勉強をしてたんだ。酒は多少飲んだけど、2012年に止めたんだ。アリスのバンドで俺は生真面目で厳格なタイプだった。アリス自身もそういう人だよ。
『Songs From The Ocean Floor』は素晴らしいアルバムですが、ビジネスとして厳しい状況で経済的にはどうやって生活したのですか?
あのアルバムは最初の妻が亡くなって、自分の評判もギグも無いとき、ただ音楽に向き合って書いたもので、当時の俺の心を吐露した日記帳のようなものだ。
俺は浪費家じゃないから、貯蓄があった。著作権収入も。これは随分と遅れて支払われるから。Monster Ballads (コンピレーション・アルバム)では4万ドルの小切手をもらったよ。そこここでギグはやっていたけど、どうやったのかわからない。2002年にはナッシュビルに引っ越したよ。
どうやって暗黒時代を抜け出したのでしょう。
2002年に Winger でツアーを再開した。ナッシュビルが気に入ってポールが引っ越して、俺も引っ越した。昔のアトランティックの知り合いがいたんだ。ギグを再開するのは難しかったけど、ジム・ピートリック(Survivor)のチャリティに呼ばれたり。アラン・パーソンズが電話をくれてシンガーに雇ってくれて、1年ほど彼のバンドで歌ったんだ。
あなたはロックの魂を持っているけれど、今あなたの心の糧はクラシックのようですね。
明確にしておかなくてはいけないと思うのだけど、ロックもクラシックもその両方が俺の心の糧となっているんだ。
今俺は交響曲を書いているのだけれど、難しくて死にそうなんだ。ここでスタバに行って休憩しようかなと思ったり。でも待てよ、もうすぐ Winger でステージに立って思い切りロックできるよな、と思うと気分がいい。俺の複数のキャリアが巡って相互に助けている感じなんだ。
クラシックの作曲は刺激的だけれども、まるで拷問のように難しいんだ。他の作曲者がどうなのかわからないけれど、これは本当に難しい。クラシックの作曲をせずには生きられない程好きでない限り、決して誰にも勧めない。これをやる唯一の理由は、やらずにはいられないからさ。
オーケストラがあなたの曲を演奏するのは格別の気分と思いますが、Winger でステージに立つのはどんな気分ですか?
俺は生まれながらのパフォーマーだから、ステージに立つと気分がいいよ。音楽というのはオーディエンスとの交流にある。家のリビングで練習する音楽ってのもいいけど、本当に音楽をやりたいのなら、オーディエンスの前で音楽をやらなくちゃいけない。
音楽というのは感情を伝える言語なんだ。人間の感情を身体を通して伝える言葉なんだよ。そこから高まりや感動が生まれるんだ。人と感情のこもった会話を交わすことなんだ。だから(音楽ジャンルの違いで)一方が他方より優れているということではない。
交響曲をオーケストラが演奏しているときもバンドがヘヴィな曲を演奏しているときも、俺は同じように感情を身体を通して伝えている。ただバンドが違うというだけなんだ。
私は多くのロッカーと話してきましたが、楽譜を読む人でさえ稀です。あなたがクラシックでやっていることを考えると、凄いと思うのです。
楽譜を読むこと自体は何も凄くないんだ。コミュニケーションの別の形態というだけさ。(あの素晴らしい)Beatles だって皆が譜面を読む訳じゃない。俺にとっては別のジャンルの人とコミュニケーションを取るための道具なんだ。
俺は決して音楽のジャンルで優劣があるとは思わない。芸術は芸術なんだよ。俺は自分の脳が機能するやり方をするし、人にはその人のやり方がある。芸術の素晴らしさは世の中に貢献することにあるのだから。
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アルバムのリリースに合わせて多数のインタビューをこなしているキップですが、更に Facebook でのライブチャットもこの2週間程で3回行っています。どうやらライブチャットが相当気に入ったようで、今後も期待できそうです。
そんなライブチャットでいくつか新たな情報が入りましたので、以下に列挙します。
- 2014年に川崎でレコーディングしたライブアルバムはまだミキシングの段階だが、いつかリリースする。
- 音楽を始めてからレコードデビューまで大量の録音音源をデジタル変換作業中。ウェブでサブスクリプション形式での公開を考えている。
- ソロアルバムの素材もかなりあるので、今後制作したい。
- いつかカバーアルバムを創りたい。カバーしたい曲は沢山ある。
日本ファン悲願の川崎ライブアルバム、いつかどうにかリリースしてください!