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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ Part 1「私のシグネチャーモデルを創ったよ、グリーンなんだ」

スティーブ・ヴァイが8月26日(現地時間)に Tone-Talkライブチャットに登場しました。なんと2時間半近くギア及び思い出話等、沢山語ってくれました。ヴァイ先生は始終ご機嫌で、司会者が時間の心配をしても大丈夫と、様々なギタートークで盛り上がっていました。あまりに長いので、そのトークの一部をPart 1と2に和訳してまとめてみました。今週はPart 1です。

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Generation Axe で演奏した "Bohemian Rhapsody" 裏話

あの曲を5人で演奏するのは実に練習と規律が必要だったよ。全員にフレディのボーカルパートを分けたんだ。あれを5人のパワフルなギターでプレイするには全員がお互いの音に繋がっていなくてはならない。つまり、各自のレーダーは完全に他メンバーのしていることに同調していなくてはならない。まるでテレパシーが通じているようにね。

そして我々は非常に繊細なことにも気を配らなくてはいけない。ヴィブラートは無しだとか。世界一ワイルドなヴィブラート使いのザックや、名手のイングヴェイに対してヴィブラートは無しと言わねばならない。「この音はこうなんだ、PUはこっちを使って、ボリュームを落としてくれ」というように。最初の音と最後の音は全員が完全に合っていなくてはならない。

フレディ・マーキュリーがスタジオで自分のボーカルをオーバダブしていたとき、彼は天才だからあれは自然に出てきたんだ。それを5人のギターでやるためには、言わば呼吸も統一しなくてはならない程なんだ。私が少し動くことが演奏開始の合図になっていた。結果として素晴らしい演奏になったよ。

YouTube にも出ているけれど、実際はあんなモノじゃない、私のところにはライブのレコーディング音源がある。残念ながらリリースしたばかりのライブアルバムには収録されていないんだ、あれはアジアツアーからの録音だからね。でも私の戸棚にはあるから、近いうちに私がたっぷりとミックス作業をしよう。

Synergy アンプについて

Synergy アンプに出会ったときに、これは画期的だと思ったよ。私だけがそう感じたのかはわからないが、これまでよく秘密が保たれていたものだ。このシステムは実に機能的だ。例えば、君がギタープレイヤーなら、アンプを用意して、スイッチングシステムを準備して、それら全てを持ってツアーに出なくてはならない。ライブ会場ではPAシステムの最適なバランスを見極めなくてはならず、異なるマイクをそれぞれのアンプ(スピーカー)に取り付けなくてはならない。全く実用的じゃない。

私は多くても2台のアンプでツアーする。輸送面でもそれが賢明だし、トーンの一貫性を考えてもそうだ。でも2チャンネルのアンプ1台で沢山のアンプを使えたらどうだろう。アンプにはプリアンプ・セクションとパワーアンプ・セクションがあるがプリアンプ・セクションから殆どのサウンドがくる。ディストーションやEQのフレイバーもだ。アンプ製造会社はこの部分の開発に心血を注いでいる。

(アンプ製造をしている画面右側のデイヴ氏が補足:近年のアンプのサウンドはプリアンプ・セクションからきている。ヴィンテージ・アンプはパワー管のゲインによるサチュレーションが影響する。最近のハイゲインのものは殆どプリアンプでサウンドが決まり、パワーアンプを介さないことも)

この会社はブティック・アンプのメーカーからプリアンプ・セクションのライセンスを受けることでモジュールを創っているんだよ。これはモデリングじゃないんだ。真空管を使ったプリアンプなんだよ。私のアンプを実際に見せよう。このラックには6つの Synergy プリアンプが入っている。それぞれが2チャンネルで、Fractal(エフェクトのみで使用)に繋がり、そしてパワーアンプに繋がっている。ステレオ・セットアップになっていて、様々なアンプのサウンドが一瞬で手に入るんだ。私のシグネチャーモデルを創ったよ、グリーンなんだ。一般発売日については知らないのだが、間もなくだろう。

DLRバンドのマジソンスクエア公演でのハプニング

楽屋で凄く緊張していた。子供の頃に何度かそこに行ったことはあったけれど、自分がそこでステージに立つだなんて夢の世界のことだった。緊張しながらウォーミングアップしたり、弦を伸ばしたり、アームを動かしたりしていたんだ。

ところがトレモロユニットからアームを外してしまったんだよ。ギターからテールピースが飛び出してしまった格好で、自分でも何が起こったのかわからなかったよ。ステージのライトが点いて正にショウが始まろうとしたときだ、私はデイヴを見つめて声も出なかった。そうしたらライトが消えたんだ。(笑)パニックだよ。当時はバックアップに本物のJEMギター(ジョー・ディスパーグニー氏制作のパフォーマンス・ギター)を3本用意していたのでそれを使った。

世界一ラウドなギターアンプ

世界一ラウドなギターアンプはDLRツアーの私のアンプだよ。デイヴがギターの音が十分にデカくないと思っていてね、キャビネット6個プラス6~8個がステージ両側後方にあった。さらにステージの両端にもキャビネットが並んでいた。ステージ下にもモニターがあった。凄い音だったよ。当時の私のセットアップは、ギターからエフェクター、それから Bradshaw のスイッチングシステム、そこからラックへ行ってパワーアンプを通じてステージ周囲のスピーカーだ。何しろトレーラー11台分の機材を運んでいたツアーだったから。大量の照明機材設備でギネスブックの記録にも載ったくらいなんだ。

ある日、ジョー・サトリアーニサウンドチェックに招待したんだ。彼がステージに立ったときには機材がオフになっていたから、何の音もしなかった。そんな彼の意表を突いて私がギターコードを鳴らしたら、どうなるかわかるだろう?可愛そうなジョーは3フィートほど飛び上がっていたよ。(大笑)

ある日私は耳栓をするのを忘れてしまったんだ。それでステージに出てしまったら、余りの音量に肘を耳に突っ込みたくなるくらいだったよ。それなのにデイヴは耳の保護を何もしていなかった。どうして彼が平気だったのか不思議だけれど、きっとロックンロールの力だね。

"Tobacco Road" 秘話

Eat 'Em And Smile アルバムでデイヴが "Tobacco Road" と言った直後にギターで dive bomb をやっているのが、"Tobacco" と言っているように聞こえるのは今でも驚きを持って覚えていることだ。最近も息子にこの話をしたのだけど、どうして起こったのか分からないんだ。

dive bomb は意図してやったのだけど、あのときPUの磁力で弦が引き込まれ、外れるときにああいう音が出たのだろう。ギターが「タ-バッコ」って言ってるみたいだからね。実際にあれを再現する方法を考えたくらいだ。アームダウンして弦がPUにぎりぎりまで近づいたところで適切な個所をタップすると「バッコ」という音がするんだ。(ギターを出して説明)

ヴァン・ヘイレンの曲をどう学んだのか

もちろん練習はするが、エドワードの音は出せない。あれは彼独自のものだ。例えば "Hot For Teacher" のソロで彼と全く同じことをするのは気が進まなかった。まずはしっかり聞いてパートを練習する。エドワードのような素晴らしいトーンを持つ者のパートを学ぶのは自分のプレイの為にもなる。

しかし実際にプレイするときには、自分のヒネリを入れない訳にはいかなかった。私にはモノマネと音楽的な自分らしさを残す微妙な境界線がわかっていたんだ。だから私は後者を選んだ。私がステージでコピーを演奏することに意味は無いだろう。Alcatrazz でイングヴェイのコピーをするとか、Whitesnake でサイクスのコピーをするとか。

もちろん彼らのプレイを学ぶけれど、私には彼らのプレイはできない。でもなぜ彼らのプレイをする必要がある?誰かと同じ音を出そうとすることは、第一に自分自身を欺く行為だ。自分のユニークな潜在力を否定してしまう。

ギターの行方

Crossroads で使ったパールレッドの Jackson === 博物館に展示
Universe のプロトタイプ === エンジニアにあげたら、彼がそれを人に売った。そこから買い戻そうとしたら凄い値段だった。
ハート型トリプルネック === 3本のうち1本は Hard Rock Cafe、もう1本は自宅、もう1本はチャリティの福引で当てたアイルランドの少年。彼は1ドルで手に入れた。

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Part 2に続く