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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

アンディ・ティモンズ 「インターネットは呪いというよりは僕にとって恵みとなった」

コロナの影響により、収入の大半を占めるライブパフォーマンスの道が断たれたアーティストは皆が厳しい状況の中、手探りで活動を進めているのではないでしょうか。

Y&T のツアマネでもあるデイヴ・メニケッティ氏の奥様ジルさんが仲間のミュージシャンに話を聞き、彼らの状況をブログに書いていました。店舗を営業している小規模ビジネスなどと違い、ミュージシャンは行政の支援策の対象とならないそうです。

そのブログに名前の挙がったうちの1人が Winger のキップ・ウィンガーですが、彼が4月29日のインタビューで有料のストリーミング・ライブについてアンディ・ティモンズに話を聞いたというコメントをしていました。恐らくアンディから多くの情報を得たのでしょう。

4月半ばに公開された Thriving Rockstar のインタビューでは、アンディが様々な話題について大いに語っています。(乗ってくるとアンディはとてもおしゃべりですw)2時間近いやりとりのうち、興味深かった内容を和訳してみました。

 

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今のような状況になって、どうやっていますか?

いろいろ学んでいるところだ。ファンと直接つながれる時代になったことは喜ばしいことだね。僕は今年57歳になるんだけど、16歳くらいから活動をしているから、40年くらいやってることになる。インターネットが発達して(ファイル交換ソフトの)Napster が現れた頃には「ああ、これで僕の全人生の作品はもう無料になってしまうんだ…」と肩を落としたけれど、でも興味深いことにインターネットは呪いというよりは僕にとって恵みとなった。

僕のキャリアはインターネットが無ければ随分と違ったものになっていたと思う。僕は普通のキャリアパスを通ってこなかったから。1年中バンに乗ってツアーに出るとかね。

あなたはどちらかというとセッション・プレイヤーだったのでは?

どちらかというと、サイドマンという感じかな。Danger Danger のギグや、オリビア・ニュートン・ジョンのバンドでミュージック・ディレクターを15年務めたし、サイモン・フィリップスのギグにも参加した。これらは自分のバンドをずっと続けながらの活動だった。

僕はセルフ・プロモーションの分野では上手くはなかったけれど、例えばファンがライブで僕のビデオを録ってアップロードするよね。NAMMショウでのIbanezのコンサートの動画とか、オフィシャルなものではないけれど、僕のファンベースはそういうものを見たところから始まっているのではないかと思うんだ。

実は私もそうです。

ほら、それを言ってるんだ!そうやってファンが情報交換して土台ができてきたのだと思う。この前、エルビス・コステロのインタビューを聴いていたんだ。僕の大好きなソングライターで、実は音楽と同じくらいトークも好きなんだよ。それでソングライターへのアドバイスへの答えがこうだったんだ。

「自分の心と最高の力を尽くして作品を創れ、そうすればいつか、海の底で誰かがそれを見つけるだろう」

機知にとんだ素晴らしい言葉だと思う。心のこもった本物を創造して提供すれば、やがて人々はそれに気づくということさ。今の時代ではその発見を友人にシェアしてくれる。昔は学校で仲間から「これ聴いてみろよ」だったのが今ではそれが世界中に届くんだ。そして僕に直接コメントをくれる。とてもありがたいことだし、僕は恵まれている。それに僕はこれまでの人生を通じて最も学ぶ意欲に溢れ、学び続けているところなんだ。

テクノロジーが私たちにアクセスしやすく、使い易くなっていることも助けですね。以前はレコードレーベルの門番までたどり着き、その奥まで行かねばならなかったけれど、今はダイレクトにファンと繋がることができるのですから。

素晴らしいことだよね。どうしたら音楽で身を立てられるのか、インターネット時代の前からよく聞かれたのだけど、僕の答えはただ「優れていること」だった。まず優れた美しい作品があること、それからだよ、LAのレーベルを訪ねるのは。いつ、どこで、誰にアクセスするのかは、作品自体の価値、素晴らしさがあってからのことだ。

僕は幸運にも世界中をツアーで周ることができたけれど、素晴らしい演奏家でありながらツアーには出られなかったミュージシャンは各地にいたんだ。でも今は誰もが音楽を愛するのなら、エディ・ヴァンヘイレンやジョー・サトリアーニでなくてもその音楽をネットに上げて音楽コミュニティに参加することができる。そしてフィードバックを得られるんだ。最高だとか、ショボイとかね、とにかく続けることさ。

テクノロジーが浸透することで、ビデオにもクオリティが必要になってきました。

僕は学習途上にあるのだけど、テクノロジーについてはいつも友人のおススメに頼ってきたんだ。ギアについてもそうで、地元の楽器店の友人にエフェクターペダルの提案をもらってそれがシグネチャーにまでつながったこともある。

あなたのキャリアを振り返ると失敗を恐れず自信を持ってチャレンジしていますよね。

今振り返ると道の選択はいろいろとあったんだ。Danger Danger のギグと同じ頃に Tower of Power (ファンク・フュージョン・バンド)の話もあったんだ。友人がバンドにいて、ギタープレイヤーが辞めたから人を探していたんだ。1度ギグをやったら誘われた。どちらを選んでも良かったと思う。ただ子供の頃からの「ロックスターになりたい」という夢が勝ったんだ。結果 Danger Danger では最良のことも最悪のことも醜いことも全て体験した。その後のキャリア上の決断はこのときに得た教訓に従っている。

Danger Danger の加入前、テキサスでは Andy Timmons Band は結構成功していた。『Surfing With The Alien』が出て、凄腕ギタリストのシーンが活況になっていた頃だ。僕はデモテープを地元のリラティビティ・レコード代理店に送ったのだけど、「うちにはもうジョーとヴァイがいるから」と言われた。僕は簡単に落ち込んでしまって、メジャーレーベルとの契約がある Danger Danger のギグが僕の唯一のチャンスじゃないかと思ったんだ。

バンドに加入して直ぐに世界的なステージに立つことが出来たけれど、音楽的には僕が真に心から目指していたものではなかった。でも僕はこのバンドでの経験にずっと感謝しているし、バンドの皆とは素晴らしい友情を得た。元々の僕はロック・ガイだからね。

そういえば、息子のアレックスが16歳になって、免許をとったのだけど、彼の最初の車は大きなピックアップ・トラックなんだ。息子は最初はラップを聴いていたんだけど、そこから Slipknot や Pantera を聴くようになってね、ヴィニーもダイムバッグもここの出身だから知っているよ。でも Slipknot は知らなくて、息子が運転する車で聴かされたら、素晴らしくてすっかりハマったんだ。

それで僕は試しに僕が思い切りヘヴィを目指した Danger Danger の "Still Kickin'" をアレックスに聴かせてみたんだ。この曲ではレブ・ビーチと僕がソロの掛け合いをしているんだ。そしたら気に入ったようで、初めて父親がクールだと思ってくれたみたいだ。(満面の笑み)

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僕のキャリアの話に戻ると、僕は 『Ear X-tacy』をセルフでリリースして自分の作品を自由に創る喜びを感じていたんだ。あるとき、スティーブ・ヴァイがG3のギグに誘ってくれて一緒にプレイした。ライブの後で彼から話があって、彼が新たに始めるレーベル Favored Nations のアーティストに誘われた。彼が最初に声をかけた数人に入ったらしい。ワオ!だった。

彼はもちろん長年のアーティスト経験がある。だから制作にかかる費用やプロモーションの費用を除いて、収益についてはレーベルとアーティストで折半という契約はとても理に適っていると思ったよ。彼はアーティストが権利を持ち、レーベルはライセンスするんだと言った。

その後多数のデジタル・プラットフォームが利用可能な時代になると、僕が2011年に『Sgt. Pepper』アルバムを出すときには

「これまでのようなやり方でリリースもできるけれど、君が自分でレーベルを創って、自分でそれらのプラットフォームを使って配信できるよ」

とスティーブは言って更に僕の利益を考えてくれたんだ。彼はもっと自分本位の提案をすることだってできたのに、彼はいつだって良きアドバイスをくれるんだ。だから彼のことが大好きなんだ。クリエイティブな頭脳とビジネス脳とを持ち合わせた人物で、年上の兄のように慕ってとても尊敬している。

今は皆がストリーミングでライブをしていますね。

そうだよ!僕は StageIt (訳者注:ライブパフォーマンス中継のプラットフォーム。アンディはここで土曜の午後と夜の2公演を行っている)でのパフォーマンスをやっている。クリニックも沢山やってきたからバッキングトラックを使っての演奏には自信があった。それにファンとのチャットも楽しめるよ。

Bowling for Soup という楽しいポップ・ロック・バンド(テキサスのバンド)があってそこのジャレット・リディックからこのサイトを知ったんだ。彼と電話で話して教えてもらったのだけど、彼はこれを2009年からやっているんだ。あまり金銭的な話はできないけれど、恐らく彼はストリーミング・ライブだけで十分生活ができるんだ。

とにかく、僕は的確な人物に話を聞くことができ、土曜の正午と夜にショウをやっている。正午の回は欧州からも参加しやすいように、夜はここの人たちが参加しやすい。料金は「払えるだけ」なのでいくらでもいいんだ。今の経済状況を考えればそれがクールだと思う。(訳者注:このサイトではサイトで使えるコイン($5から)を購入してチケットを買う。ストリーミングですが、画質はさておき、音質はなかなか良いです)

それと、ファンがチップを払える機能もあるんだ。最初は変な感じがしたけれど、僕の4~5月の欧州ツアーはキャンセルされてしまったから、僕にとってはこれがプレイしてファンと直接に繋がれる機会なんだ。コメント欄にはファンからのリクエストがどんどん入るのが見える。

30分のショウに20分のアンコールが許容されている仕組みで、合計50分のセットだ。これだけあれば曲も十分プレイできるし、ファンと会話もできる。僕はこれを凄く楽しんでいるよ。それにコメントからすると、ファンもとても楽しんでいるようだ。今は皆に時間があるからね。

こういう状態になって思うのですが、私たちミュージシャンは1人では何もできません。ファンあってこそですし、他のミュージシャンやビジネスで世話になる人たちも必要です。皆がハッピーになる状況が理想です。

僕は自分が持っているものを心からありがたいと思うし、声を掛けてくれるファンには例えそれが最悪の日であっても気持ちよく接したいと思う。彼らにはそれに見合う尊敬を持って接したい。

僕は自分にとっての多くのヒーローと会う機会があったけれど、大抵は驚くほど良い体験ができた。自分の行いがまた更に次の人へ与える影響に気付くべきだ。それはファンとかそういう関係を超えて、地球上の全ての人との関係に言えることだ。例え意見が全く違って同意できない人であっても人としての尊厳と愛を持って接するべきだと思う。


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音楽業界で話題となっている有料ストリーミング・ライブですが、アーティストが実際のライブができる時期はまだ当分先となりそうですから、今後多くのアーティストが始めるのではないかと思います。アンディに話を聞いたキップも近く始めるかも知れませんね。

アーティスト側もカメラやマイク等の機器に初期投資が要るものの、1人ででき、機材の手配も飛行機や車の移動も要らず、会場費も発生しない低コストのストリーミングに世界中の観客を集めることができれば、チケットの価格が安くても十分成り立ちます。それにチップ制度によってかなりの収入を集めることも可能です。

デヴィン・タウンゼントも StageIt でライブを始めた1人でかなり成功しています。彼は病院への寄付を目的としており、$20のチケット販売制ながら数千の観客を集めているようです。素晴らしい!アメリカの小規模な会場でのライブはチケットが$20~30位ですから、ストリーミングで同価格帯のチケットに価値を見出すファンが大勢いるというのはさすがだと思います。