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コンサートチケット価格上昇の複合要因

日本にもやっと洋楽コンサートが戻りつつあります。秋以降は多くのビッグ・アーティスト来日公演が控えています。

そんな中で、私が以前からモヤモヤしているコンサートチケットの値段と購入時の手数料について、Rolling Stone が掲載した記事をベースに考えてみたいと思います。

1.日本で開催されるビッグ・アーティスト来日公演のチケット代

a)8月に来日するビリー・アイリッシュ有明アリーナで1日のみ公演。
前方SS席2.5万円、その他殆どS席1.9万円

b)9月に来日するレディ・ガガベルーナドーム(西部ドーム)で2日間公演。
ステージ前のVIPは10万円、その周囲のゴールド席は5万円、それ以外殆どのアリーナ&スタンド席はSで1.8万円

c)11月に来日するKISSは東京ドームで1日公演。
前方SS席2.5万円、その他殆どS席2万円
(ステージ脇の席やミーグリとセットになったVIPチケット40万円などもある)

日本でもアリーナコンサートのチケットはS席でおよそ2万円が標準になってきている感があります。購入時にはこれにシステム利用料だの何だのと手数料が加わると思いますが、手数料合計で2千円以下くらいでは?チケット価格の1割以下なので、まだ許容範囲かなと感じます。

 

アメリカではコンサートチケットの価格だけでなく、手数料がとんでもないことになっています。

2.アリーナコンサートのチケットと手数料実例 in アメリ

a)2021年 Guns N'Roses 

スタンダード・チケット$275に対して、手数料が合計で$81.55で合計が$356.55。詳細不明ですが、多分日本のドーム公演でいうSS席かS席前方のチケットです。今の為替水準でいうとチケット代だけで3.7万円程で手数料含めると4.7万円程。
手数料の方は…チケット価格の3割に及ぶ手数料を上乗せするという恐ろしいぼったくり。 

b)2020年 Sons of Apollo

これは小ぶりのクラブ会場のため、チケット価格は日本に比べてとても安いです。ただし、手数料率が4割を超えています。(汗)

 

最近では、パンデミックと共存しつつ経済を再開するアメリカで更なるチケット価格の高騰が起きている模様です。

3.ブルース・スプリングスティーンのチケットがUS$5,000に怒りの声

Rolling Stone の記事の一部概要を以下で紹介します。記事にはTicketmaster側の主張も書いてありますが、和訳では割愛してありますので、それを読みたい人は元記事をご参照ください。

www.rollingstone.com

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ブルース・スプリングスティーンのチケットがUS$5,000で販売サイトに掲載されているのにファンが怒りの声を上げたが、異常なチケット価格の高騰はブルースに限ったことではない。

アデールのラスベガス・レジデンシー公演ではチケットはUS$670からで、最前列はUS$40,000だった!
レディ・ガガニュージャージーのスタジアムライブのサイドビュー席(片側からの視界のみで視界が一部隠れる可能性のある席)でUS$445.80、なおステージ前ピット席はUS$923.40。
Motley Crue/Def Leppard/Poison のピッツバーグでのスタジアム公演の前方席はUS$987.50。

(訳者ひとりごと:これらの数字を見るとデフレ国日本でのスタジアムライブのチケット価格がいかに米国よりも安いかわかります!しかも、アメリカではこの価格に手数料が3割くらい上乗せされますから)

これらの価格吊り上げはロックスターの強欲によるものだと思われがちだが、実際にはずっと複雑な複合要因によるものだ。コンサートにおける Live Nation の市場独占、そしてアーティストのツアーによる収入依存の高まり、テクノロジーの進化によってダフ屋が価格を吊り上げるプラットフォームが拡大したこと、市場を制御する政府の干渉が限られること。

いかにして Live Nation の市場独占はコンサート興行を変えたか。

1995年、Pearl Jam は Ticketmaster の法外な手数料とライブ興行への締め付けに業を煮やして、複数のプレイガイドを使う会場でのみプレイしようと考えた。しかし彼らは直ぐにそれはコンサートとして一般的でない会場でプレイすることになるのだと学んだ。1998年に次のツアーに出る段には、彼らは断念し、Ticketmaster の押さえる会場で広くプレイした。

Pearl Jam が Ticketmaster なしで全国ツアーをすることは基本的に不可能だと学んでから25年が経つが、状況は更に悪化を辿っている。SeatGeek のような会社はブルックリンのバークレイズ・センターのような大規模な会場と契約したものの、Ticketmaster はアメリカの主要コンサート会場の8割を支配下に置く。

ニューヨーク州上院議員 James Skoufis 氏は語る。「独占状態だから、健全な競争市場がないというだけでなく、あらゆる標準的問題をもたらす。競争市場であれば起こり得る結果一切なしに、彼らは課したいだけ幾らでも顧客から手数料を取れる

(訳者ひとりごと:アメリカでは彼らの独占により、コンサート会場での物販・飲食・駐車場というあらゆる売上に対して3割程の手数料が上乗せされている模様です。仮にチケットが安くても集客によって儲かる仕組みですね)

2010年の Ticketmaster と Live Nation の合併は指数関数的にこの2社を強力にした。

これにより、ファンはチケット購入価格を3割増額させるサービス手数料を受け入れざるを得なくなり、主要なイベントのチケット発売日にはリセール販売者が大部分のチケットを巻き上げるのを傍観するのみになった。近年では、ダフ屋を締め出す新たな革新的方法を見つけるのではなく、Ticketmaster はダフ屋にも簡単なチケット販売の方法(リセールサイトの整備)を供与して手数料を得ることにした。

多くの主要チケット販売会社同様に、Ticketmaster もダイナミック・プライシングの手法を使い始めた。需要によってチケット価格が大幅に変動するのだ。

最近のスプリングスティーンのチケット販売では、US$400のチケットがUS$5,000になるのをファンは目の前で目撃した。US$200半ばの一般的チケットはすぐさまなくなり、ファンはリセールサイトで価格の上がったチケットを買うか、US$1,000程もする正規価格のチケットを買うしかないのだ。

ダフ屋を締め出す手法として、Ticketmaster のファン認証技術もある。リセールしないファンにチケット購入の機会を最初に与えるのだ。譲渡不可のチケットはダフ屋を締め出し、正規価格のチケット価格を維持できる。しかしどこまで有効かは不明で、譲渡不可のチケットはやはり不便だ。

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こうして見ると、アメリカのコンサートチケットは1社の独占によりカオスになっていますね。アメリカの物価上昇なども価格上昇の要因だと思いますが。

翻って日本。全体的にチケット価格は上昇していますが、アメリカ程ではないし、法外な手数料という程でもない。日本にはまだ複数の興行主やプレイガイドがいるので、まだ競争が存在するのでしょうか。

とはいえ、日本では自分で購入時に座席を選べなくて、S席でも購入時には幅広いエリアのどこかわからない現状は改善して欲しいとは思います。

日本でも正規のリセール市場が整備されてきているし、チケット不正転売禁止法ができ、利益目的の転売が禁じられているなど、そのあたりは良いと思います。

今のアメリカのリセール市場は本当に異常ですね。ダフ屋だけでなく、皆が転売屋となって、チケット販売時にほとんどがリセールチケットに流れ、値段は上がっている。Ticketmaster は売り手と買い手から手数料を取るので、1枚のチケットの正規販売時から転売を重ねる間に何回手数料取るのだろうと思います。

しかし、このまま日本の経済成長がなくて、アメリカでインフレが続くと、洋楽アーティストの来日が減ってしまうのかも。日本公演では割が合わなくなってしまう、そんな未来が心配です。

関連記事としてコンサート・プロモーターのシェール氏のインタビューが過去記事にありました。

「世界最大のチケットサービスと世界最大のコンサートプロモーターの合併を許したんだ。その結果を理解せずに合併を許可した政治家は罪深い。

今や彼らは余りにも巨大で効率がいい。プロモーターとしては彼らのサービスを使うしかないんだ。それに彼らは会場と直で契約する。するとその会場を使おうとすると、チケットに関しては全く裁量を奪われてしまう。その結果、競争はもはや存在しない」

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