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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

サトリアーニ、ルカサー、ティモンズ、ギルバート他 凄腕ギタリストたちが「やっておけば良かった」と思うこと

GW誌が集めた超一流のギタリストたちのギタープレイに関する「やっておけば良かった」ことアンケート集がとても興味深かったので一部を和訳してみました。全員に3つの質問をしています。(コメント自体は過去のインタビュー素材から集めたのかも)

各人の回答がその人のキャラクターを如実に語っていて、とても面白かったです。
サッチはさすがのプロフェッサー、ルークは一番面白くて自伝本まんま、アンディは真摯な人柄溢れる感じで、ポールはギター大好き音楽大好き!、アレックスはヴァイ先生級のインテリ!、ボナマッサってこういうキャラだったの!と。誰が何をしておけば良かったと言っているのか、また彼らのアドバイスを読むと勉強になります。

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ジョー・サトリアーニ

1)テクニック関連でやっておけば良かったこと

始めから最も快適な「右手のポジション」を見つけられたら良かったと思う。私はピッキングする手を固定するか浮かすのか、3度も劇的な変化を経てきた。最初は掌をブリッジのすぐ上のミュートスポットに置いていた。それから手の腹を固定するのは止めてみたが、苦難の練習の末に諦めた。次にピックガードの上に指を置いてみた。これで上手くいく演奏もあるが、全てに効く訳ではない。それで今ではそれが適切だと思われるところでその3つを全て使っている。まだ探求中なんだ!

2)理論関連でやっておけば良かったこと

理論というものは全て等しく役に立つものであり、危険なものでもある。音楽に関してはルールなどないということを覚えておくことだ、原因と結果だけなんだ。このアプローチを受け入れる鍵はあらゆる原因と結果の状況を学ぶことだ。それらを思い出し、それに応じてやってみるんだ。

人々に自分のメロディに沿って歌って欲しいのなら、複雑なものにしてはいけない。自分の曲で人々が立ち上がって踊って欲しいのなら、恐ろしい程遅いもしくは痛々しい程速い曲にはするな。理論は創造性を押さえつけ、月並みな結果へ導くときに危険なものとなる。心を自由に解き放てばギタープレイもあとに続くだろう。

3)もっと早くやっておけば良かったこと

スタジオ・レコーディングの技術をもっと学んでおけば良かったと思う。10代の頃に地元のスタジオで働いておくのが賢い選択だったのではないかな。そうすればレコーディング・スタジオの驚異の技について私の目と耳が目覚めたのではないかと思わずにはいられないんだ。

けれど、私の進んだ道の結果、私はステージに立ち、ライブパフォーマンスの技量を習得できた。これら3つの質問に答えたことで、古いスコットランドの諺を思い出したよ。「願いが馬ならば乞食も馬に乗る」(願うだけでは物事は成就しないという意味)正にその通りだ!

 

ティーブ・ルカサー

1)テクニック関連でやっておけば良かったこと

もっと練習しとけば良かった。

2)理論関連でやっておけば良かったこと

7歳か8歳で楽器を始めたときに読譜を学べばよかった。俺が勉強を始めたのは14のときだ。最初からやれば良かった。でもな、ロックンロールって奴はさ!譜面が読めるとどれだけ役に立ったか説明できない位だ、でもな、初見演奏ってのは時間がかかる。近道はないんだよ。

3)もっと早くやっておけば良かったこと

きちんと金の管理をしてパーティー三昧しなきゃよかったよ。子供ならいいが、大人になってからってのはマズい。だから俺は全部10年前に辞めた。20歳でやっときゃ良かった、残念だ。ああいうのは忍び寄ってきて、酷い終わり方をするんだ。

でも今は大丈夫だ、神に感謝だぜ。俺は18歳で20、30、40代の大人の部屋に放り込まれたんだ、1976年か77年から80年代の始めまで。ロックンロールが一番クレイジーだった頃だ。ある程度は楽しかったかも知れないが、時間と金と人生の浪費だった。

 

アンディ・ティモンズ

1)テクニック関連でやっておけば良かったこと

僕のキャリアの大半でエコノミーピッキングとスウィープの発想と実践を避けてきたと思う。僕の一部の曲ではこれらのテクニックが含まれているというのにね。自然にそうなったのだと思う。

今ではこれらのテクニックの十分な知見やそれらを磨く為の教材が十分にあるけれど、僕がプレイを学んでいた若い頃に手に入れば良かったと思う。でも「遅すぎることはない!」って言うよね、僕は今、毎日の練習メニューの中でこれらのテクニックにも取り組んでいる。上手くいけば僕のプレイに現れてくるだろう。

2)理論関連でやっておけば良かったこと

耳で学ぶことが音楽を習得し身に付ける最も確かで最良の方法だ。僕が子供の頃には山のような教材が無かったことはかなり幸運だったと感じている。僕はやがてレッスンを受けるようになったけれど、5歳から16歳まではほぼ独学だった。誰かにバレーコードとAマイナーペンタトニックスケールを教えてもらって、そこから覚えたんだ。

僕にはギターとレコード・プレイヤーがあった。ときどきTVを見るだろう、僕はロイ・クラークの「Hee Haw」(訳者注:全国放送されたカントリー音楽バラエティショウで、ロイ・クラークがホスト役だった)が大好きだった。でも僕はその音楽を自分のモノにしなくちゃいけなかった。つまり、耳で聞いてどうプレイするのか解明するんだ。

この実習は後年になって強化された。僕が曲を覚える場合、始めに譜面を読むとしたら、時間を掛けて耳で覚えるのとは逆に譜面に頼ることになる。視覚ではなく聴覚で習得するんだ、だって音楽の大半は聴覚の体験だろう?もちろんある種の音楽は耳で判別するには複雑なことがある。でも出来る限りの努力はしてからビデオや採譜したものを見るべきだ。

3)もっと早くやっておけば良かったこと

もっと熱心に自己鍛錬の練習をするべきだった。僕は始終プレイしていたけれど、練習をいつもしていたのではないんだ。大きな違いだよ!常にプレイしていることはもちろん必須だけれど、既に学んだことを強化する一方で常に新しいことを学ぶよう自分を鼓舞することは早く上達する方法なんだ。僕は55歳になってやっといい練習者になりつつある。結果は追って知らせるよ。

 

ポール・ギルバート

1)テクニック関連でやっておけば良かったこと

僕はあらゆる種類のおかしな「間違い」テクニックを身に付けていたけれど、結果的に役に立った。ギターを弾き始めて最初の2年間はアップストロークでしか弾かなかった。でもおかげでアップストロークが凄く上手くなったんだ!それから、僕はピックを多くの指で持ちすぎていて、それに逆アングルで持っていた。でもそのおかげで幅広いトーンと質感の引き出しが得られて今もずっと活用している。

オープンGでの僕のコード・フィンガリングも奇妙なんだ。ほんの数年前まで「間違った」やり方をしてるって気付かなかった。僕の腕には少し楽になるから、世界標準のGコードに変えてもいいけど、僕の変なやり方の方が色んなところで良い音がするんだ!

2)理論関連でやっておけば良かったこと

メロディはよくルートから外れてしまう、直接下の5thへ、6thや7thを弾くことなく。これはギターで弾くにはちょっとやっかいで、スケール上の全ての音を弾く練習をしてあると特に。もちろん僕はその練習をやってきた!僕の最近の実験ではこれらの音を飛ばすことで大きなメロディ上の発見があった。もっと早くに「Crazy Train の音(♭6)」を外してたらなあと思うよ。

3)もっと早くやっておけば良かったこと

この頃はステージにモニターをセットアップするとき、僕に必要なのは自分のギターの音と自分の声とスネア・ドラムの音だけ。かつてはシンバルやハイハットや皆の声のブレンドとかいろいろ欲しがったけど、そのせいでサウンドチェックが長く、究極のところ役に立たないものになっていた。The Beatles が60年代にスタジアムでプレイするとき、モニターは1つも無かったんだ。多くの場合、シンプルなのがいいのさ。そして常に耳栓を付けること!

 

アレックス・スコルニック

1)テクニック関連でやっておけば良かったこと

もっと早く学んでおけば良かったと思う主なテクニックはメンタルだよ。今じゃ「マインドフルネス」って言われてる、明瞭に集中して今に向き合うこと。ジャズピアニストのケニー・ワーナーが書いた名著と出会ったのは私がもう20代後半だった。私の持っている本の中でも最高の著作の1つだ。「エフォートレス・マスタリー あなたの内なる音楽を解放する」(訳者注:原題は"Effortless Mastery: Liberating the Master Musician Within" )にはミュージシャンにとってのこうしたコンセプトが書かれている。そして更に啓発的な作品に導かれるんだ、疑似科学的だったり、カルトっぽいものを注意深く避けながら。

今はスマホに優れたアプリが色々ある。例えばサム・ハリスの「目覚めよ」アプリとか。ジョン・マクラフリンは70年代に瞑想と東洋哲学を取り入れて実に良いお手本をみせたよ。私はそれに飛び込んで歳を取るにつれてやって良かったと思っている。でも若い頃の私はただロックしたかったんだ!皮肉なことに、ロック(岩)というのは静寂、平穏、内面の落ち着きと強さの完璧な隠喩だ。

2)理論関連でやっておけば良かったこと

私の後付け理論では音楽理論そのものについてこう思っている。不等号記号で表すならこうだ:音楽>理論。つまり、音楽が理論を創るので、その逆ではない。

音楽史とは音楽理論のタブーに満ちていて、後年になって我々の耳に受け入れられたものでできている。マイナー3rd をベンドして メジャー3rd に当てるというのは、ブルースの必需品だ。それにトライトーンはかつて悪魔の音と考えられていた。初めて出現した音楽家は恐らく洞穴に住む原始人で、キューブリックの「2001年宇宙の旅」の冒頭シーンと同じように音を創ることを発見したんだろう。彼らは「待て、教科書にはこのスケールにこの音は使えないって書いてあるぞ!」なんて考えてなかったさ。

確かに音楽理論はとても役に立つし、ある人たちにはお勧めだ。私はそれ無しでやっていたようにはもうプレイしない。だからといって誰にも必須ではない。自分の音楽的軌跡がどうあろうと、集中すべき最も大切なものは音楽であり、理論はその次だ。

3)もっと早くやっておけば良かったこと

別の楽器を習っておけば良かったと思う、特にピアノだ。15年程前にピアノを手に入れてただ音楽を楽しんでいる、お馴染みのギターから離れ、子供の頃聴いて育った映画やテレビのサウンドトラックや名曲、手の届くクラシックやジャズ曲などのレコーディングからピアノパートを勉強しているんだ。

音楽史とは音楽理論のタブーに満ちていて、後年になって我々の耳に受け入れられたものでできている。自分の音楽的軌跡がどうあろうと、集中すべき最も大切なものは音楽であり、理論はその次だ」― アレックス・スコルニック

ジョー・ボナマッサ

1)テクニック関連でやっておけば良かったこと

レガートだ。全くレガートを使ったプレイができない。エリック・ジョンソンはレガートとピッキングの完璧なブレンドで弾きこなしてると思う。俺はアル・ディメオラをお手本に学んだプレイヤーだ、特に早いピッキングに関しては。実際、俺は全音符をピッキングするんだ、ステージでロックスターの振りをしているとき以外は。

少しレガートに取り組んだことはあるんだが、俺のギターテクはレガートが凄く上手くてアラン・ホールズワースのファンなんだが、「ボナマッサ、恥さらしだぞ」って目で見るんで、レガートの道を探求するのは俺向きではないと決めたんだ。

2)理論関連でやっておけば良かったこと

俺の強みであり弱点でもあるのが理論に強くないということだ。強みは、ミュージシャンとしてそれによって更に怖れ知らずになれること。やっていることが教科書に何て書いてあっても構わない。俺にとっていい音ってだけだ。

プレイと人生全ての面で内面のバロメーターを使うんだ。数字やルールブックが頭の中で周ってるなんて嫌だね。弱点は、時に人から曲の譜面が要るかって訊かれること。俺は笑って言うんだ「デモを聴かせてくれ、紙資源は節約でいい」

3)もっと早くやっておけば良かったこと

俺が著名人の楽器を収集しない理由の1つは、それがあってもあんな代表的な曲は書けないということだ。今、俺はアビーロード・スタジオでニューアルバムを制作している。「ヘイ、ジュード」を書いたあのピアノが目の前にあるんだ。俺がそれを弾いてもあんなレベルの曲は書けない。ただ単に Key=G でピアノを弾いてるってだけだろう。結果論だけど、できるなら俺のプレイ能力の一部を躊躇なくあの作曲能力と交換するよ。

 

マイク・スターン

1)テクニック関連でやっておけば良かったこと

ギターが一番だけれど、他の楽器も習っておけば良かったと思う。他の楽器を習うことで、ギタープレイに役立つことがある。子供の頃ピアノのレッスンをやったけれど、ギターを始めて辞めてしまった。後悔はないよ、ギターには学ぶことが沢山あって終わりがない。常に挑戦が必要で大変なんだ!

2)理論関連でやっておけば良かったこと

若い頃にもう少しクラシック音楽を学んでおけば良かった。今やっているんだ。譜面を読んでバッハの曲を学ぼうとしているんだが、ギターピックを持ってやっている。ギターを始めた頃に指引きのクラシックギターのテクニックを学んでおけば良かったよ。

3)もっと早くやっておけば良かったこと

若い頃にドラッグとアルコールに溺れてしまった。今では禁酒して30年になるけど。ギターで飲酒とドラッグを始めてしまったけれど、私の人生を救ったのもギターだ。音楽はとても前向きな力だよ。

 

トミー・エマニュエル

1)テクニック関連でやっておけば良かったこと

譜面を読めたら良かったと思う。今よりもずっと多くを学べたと思うし、よりフレットボードの理解ができたと思う。私はギタープレイとギター教師で生活費を稼いで家族を養うのに忙しかった。一度やってはみたのだが、無理だった。それで今日やっているようにプレイし続け、自分の直感に従ったんだ。

2)理論関連でやっておけば良かったこと

私はギターソロでは人生の後の方になってやっと、より冒険的に恐れ知らずにプレイするようになった。若く未熟な頃には安全なプレイをしてメロディから外れないようになりがちだ。でもミュージシャンとして成長し、自分の快適な範囲から一歩踏み出す自由を感じて、どんな大胆な主張ができるか試してみるんだ。そして音楽を楽しむんだよ。

3)もっと早くやっておけば良かったこと

若い頃、もっとタイム感を養っておけば良かった。私は十分人々を感心させるのに忙しくて、たっぷりやることがあった。今思うことだが、毎日メトロノームを使って練習していたら、私はずっと優れたミュージシャンになっていただろう!

タイム、フィール、グルーヴ。これらの要素が客を惹きつけ、コンサート・チケットを買わせるものだ。だから私の提案はタイムとグルーヴを理解するため真摯に練習することだ。十分な時間をかけてメトロノームで練習したら、自由なプレイができるんだ!