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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

ジョエル・ホークストラ 「誰もが常に置き換え可能なんだと忘れてはいけない」

TSOツアー中のジョエル・ホークストラが久しぶりにインタビューに応えました。

あまりインタビュアーが下調べをしていないため、基本的にはジョエルが Night Ranger 加入前の下積み時代の話がメインになっており、大きなメンバーチェンジのあった Whitesnake や現在のTSOツアーについてなど旬な話題には未タッチになっています。

その中から一部興味深かった話を以下にまとめてみました。やっぱりジョエルはどこまでもプロフェッショナルで謙虚!

 

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Night Ranger, Foreigner, Whitesnake などビッグなバンドのステージで失敗したり、間違えたときにはどうするんだい?後で謝るのかい、それとも皆が気付かないよう祈るとか?ミスタッチとか音を間違えたり、ってことはあるだろう?

状況により対応する、というのが僕の答えかな。場の空気を読むんだ。(笑)ミスが話題にあがったら言い訳するのさ。時には最高の返答は「下手くそでごめん」ってことかも。(笑)

君がそんなことってあるのかい?

自分には厳しいんだ。僕は「もっといいプレイができたのに」ってよく反省している。多くのミュージシャンは自分を厳しく批評していると思うよ。それが上手くなり、上達するための方法だからさ。皆が自分の音楽やビデオを観てはプレイをチェックしていると思う。

ステージに立ったときにはプレイ以外で多くの事に気を取られる。観客を楽しませたり、ステージを行き来したり、インイヤーに入ってくるミックスが時に思っていたものと違ったり。

完璧に弾くという意味では、当然座ってプレイした方が間違いがない。でもこう言われたことがある。誰かと会話しながらプレイしても間違いなくプレイできるところまで楽曲を覚え込むことが必要だと。例えば、誰かに耳元で怒鳴られても間違いなく弾けるレベルまで。

Night Ranger ではジェフ・ワトソンの優れたシュレッド・ギターパートがあったし、Whitesnake でもTSOでも同じような強力なギターパートがあり、正確性が求められる。しかもTSOでは20フィートのリフトに乗ってスモークやレーザーの中を動かされる。

エンターテイメントの状況ではどうしても正確性というところでは若干の妥協が必要になる。誰も10人の演奏者が座って楽器を見ながら弾いているところなんて観たくないだろう?

(訳者ひとりごと:ジョエルのステージは何度も見たけど、彼のミスプレイというのは殆ど聴いたことがないなぁ…)

君のオフィシャル・ページを見ると、様々な人たちとプレイしているね。サミー・ヘイガーとか、セバスチャン・バックとか。

サミーは今年のヴィンス・ニールのショウでジャムしたときにフィナーレに彼が登場しただけ。でもサミーとステージに立ったんだから僕にとっては記念でサイトに書く程のことなのさ。

セバスチャン・バックとは映画『ロック・オブ・エイジズ』にカメオ出演したんだ。セバスチャンとヌーノ・ベッテンコートとケヴィン・クローニン(REO Speedwagon)とでトレーラーを共有したんだ。デビー・ギブソンは1人でトレーラーを使えたけど、僕らは1つのトレーラーで何日かマイアミの撮影地で過ごした。それで僕らがやったのが、即興のアコースティック・コンサートなんだ。俳優やケーターリングのスタッフに向けて。

(訳者ひとりごと:うわー、それ観たかった!)

ヒュー・ジャックマンの名前も。彼のミュージカルかな?

あれは『The Boy From Ozヒュー・ジャックマン主演のブロードウェイ・ミュージカル、2003~04年上演)で僕はオケピの代役だったんだ。第2幕の始まりで5ピースのバンドが彼と登場するシーンがある。そこで彼はショウを止めて、即興で観客と何か始めるんだ。

彼について言うと、とても素晴らしい人だよ。僕の初日に、彼は僕のところにやってきて、僕の名前を言うんだ。「ようこそジョエル、君を迎えられて嬉しいよ」と。彼は真のプロフェッショナルでスタッフ全員の名前を知っているんだ。僕なんてただの代役だから、彼が僕の名前を覚える必要なんてないのに、彼は覚えているんだ。

それで即興のシーンで、ヒューは観客に何かを歌わせようとしたんだ。「何を歌いたい?」と訊かれた観客が「Bon Jovi」と答えたので、彼が振り返って僕を見たから、僕は "Wanted Dead Or Alive" を弾いたんだ。僕の初日だったよ。観客はそこで歌った。

後でヒューが僕の名前を観客に紹介して「今日は彼の初日で、彼が "Wanted Dead Or Alive" を思い付いてくれた。彼に盛大な拍手を!」とやってくれたんだ。何てプロフェッショナルでスターなんだろうと思った。本当にクールな体験だったよ。

ミュージカル『Rock Of Ages』では素晴らしい体験が沢山できた。ミュージシャンの多くがちょっとしたPRツアーとしてブロードウェイに来たからね。何人ものビッグネームが来てた。

トニー賞への出演は僕の信じられないような体験の1つだよ。会場はラジオシティ・ミュージックホールで、僕は一人ステージ最前でソロを弾かなくてはならなかった。キャスト達は僕の後ろで下からせり上がるステージで登場するんだ。

で、僕はステージ袖に一人でギターを手に立っていた。僕の両側にはウィル・フェレルドリー・パートンが立っていて、会話していたんだ。2人の間で僕はギターのウォーミングアップをしていたんだけど、これって世界一クールなんじゃないか?って思ってたよ。シカゴ郊外出身のギター小僧がこんな夢みたいな場所にいられるなんて、って感じさ。

 

素晴らしい。そうやって君は階段を登ってきたんだ。評判を得て、ネットワークを作って。

ネットワークについてはやりすぎないことも大事だと思う。(業界の)人付き合いを増やしていくのは大切だけど、やり過ぎてうるさい奴にならないことも肝要だ。ちょうど良いバランスを見つける事。

それから自分のいる状況を尊重し感謝すること。僕の場合はTSOや Whitesnake にいることがどれ程嬉しい事かを忘れないこと。そして僕は時折デヴィッドに言葉で感謝を伝えている。そういうことは大切だと思うんだ。調子に乗って天狗にならないこと。だって世界には沢山の優れたギタリストがいるんだ。誰もが常に置き換え可能なんだと忘れてはいけない。

マイケル・スウィートとのプロジェクトがあるんだよね?

ああ、マイケル・スウィートとネイサン・ジェームズ、僕のバンドメイトでもあるトミー・アルドリッジとマルコ・メンドーサだ。プロジェクト名も曲名も何も公表されていなくて、全てはレーベルの Frontiers から公表される。楽しみにしているよ、ミックスもマスターも終わっていて、僕はリリース日も知らないけど。発売に向けて何かプロモをすると思う。

今後の予定は?

TSOのツアー。来年は Whitesnake のフェアウェル・ツアーを楽しみにしているよ。デヴィッドの有終の美を飾るツアーで演奏できることを光栄に思う、こんな機会をギタリストとして得られるなんて感激だ。

マイケル・スウィートとのプロジェクトのリリースも楽しみだ。後は Joel Hoekstra's 13 の曲を書き始めて、日々忙しく、何かしら取り組んでいると思う。

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ヒュー・ジャックマンの素晴らしい人柄が垣間見えるエピソードが印象的でした。

実は私、当時そのミュージカルを数回現地で観ておりまして、ジョエルが話している第2幕でヒューがお客さんと即興で交流するシーンが懐かしく思い出されます。ジョエルが代役していたショウを観ていたら嬉しいなぁ。