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ジョー・サトリアーニ 「スマホの前でプレイするのと大勢の観客の前でプレイすることの違い」

ジョー・サトリアーニが That Metal Show でもお馴染みのメタル系コメディアン、ドン・ジェイミソンのインタビューに応えました。

ヘドバン系のメタル・ガイであるドンさんのインタビューでサッチがどんな話をするのかと思っていたのですが、意外にも深い話になりました。サッチがジョエル・ホークストラについて語るシーンも初です。(笑)そんな興味深いトークの一部をまとめてみました。

 

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ニューアルバム『Elephants of Mars』の完成おめでとう!シングルの "Sahara" について教えてくれるかい? 

アルバムに参加した鍵盤奏者のレイ・ディストレスウェイトは優れたシンガーでもあるんだ。(歌入りの曲を創ろうと)私は歌詞を書いて、デモを作り、全ての楽器を演奏してバンドに送った。でもちょっとばかり気まずい感じだったのさ。

それで1ヶ月ほどしてプロデューサーのエリックから「曲は素晴らしいけど、もしインストでやったらどんなだろう?」と言われたんだ。それで曲に向き合い、歌詞のメロディ部を削除したんだ、歌入りとインストは全く異なるものだからね。強力な歌詞があれば強いメロディは必要ない。でも歌がない場合は強力なメロディが必要なんだ。

それでメロディを再構成し、アレンジを少々加えた。けれどベースとなるコードもグルーヴもラインもソロもそのままだ。そうして "Sahara" は紆余曲折して完成した。これは精神的な砂漠に迷い込んだ男が出口を求める曲なんだ。

インストで知られる君がなぜ歌モノの曲を書こうと思ったんだい?

それは前作のアルバム『Shapeshifting』に話が遡るのだけど、ツアーを組んで、アルバムを2020年4月にリリースしたらロックダウンが始まった。3ヶ月のことと思っていたら、6ヶ月を過ぎて気が狂いそうになったよ。

それでアルバムを2枚創ろうとしたんだ。1枚は歌モノで1枚はインストだ。でもロックダウンはどんんどん長引いていったので、構想を変えることにしたんだ。インスト・アルバムにしようと。達成する水準を決めてスケジュールに縛られることなく作曲に取り組んだよ。

君のアルバムはそれぞれ異なるヴァイブがあるけれど、どれも全てジョーのサウンドだ。それはどうやっているの?

毎回何がしたいかをハッキリ計画して臨むよ。チャドやケニーみたいな高給のミュージシャンを雇い、スカイウォーカーみたいな高いスタジオを使うのだから、そうしておかないと大変なコストになる。そしてスタジオでは彼らは私にどんなヴァイブにしたいのかを尋ねる。だからしっかり準備していなくてはならない。

何の計画もせずにスタジオに入ったのは Chickenfoot のときだけだよ。それはそれでクールなパフォーマンスが得られることもあるんだけど。それはカオスの中にバンドの強みがある場合だね。

ところで今の若い世代のプレイヤーはYoutubeでプレイを学んで、テクノロジーを味方にプレイしていて、昔の君たちとは違う道を進んでいるけれど、彼らがオリジナルのスタイルを身に付け、世に出るためにはどうすべきなんだろう?

即答できるのは、私が Instagramで観た才能は並外れたものだったということ。彼らの複雑で技術的な演奏の腕前、それにスピードはかつて見たことのない程のレベルだ。エレキギターの歴史の中で今ほど技術的に卓越した才能ある若者グループはいなかっただろう。残念なことは、ポップス界はこの種のスタイルのギタリストに関心がないということさ。

でも、私のような長いギタリスト人生をおくってきた者にとって、現在は実に特筆すべき時代だ。今の若い世代は私たち昔の世代の者にはなかった物が手に入る。

私たちは彼らをサポートしなくてはならない、世界に向けて彼らのような才能がいることを知らせなくてはならない。「超テクニカル」と分類されているプレイヤーたちにオーディエンスの前でいかにしてプレイし、繋がるかを学ぶ機会をあげたいんだ。

それには地方のクラブでの公演を設定してもらわなければ。君が言ったように、私たちの世代はバーの観客の前で弾くことでギタープレイを覚えていったんだ。私はありとあらゆるところでプレイしたし、ステージでプレイすることで学んできた。裏庭、高校のダンスパーティ、バーでは年齢制限以下だったのに。でも学びのスピードは速い。

人間の潜在能力というのは実に目を見張るものがある。今の若い才能はとても優れているから、世界が彼らにチャンスを与えることで、彼らはメロディを作り始め、パフォーマーになり始めるだろう。今の彼らはスマホの中で演奏するのに優れているけど、私にはあれはできないよ。だって私はスマホを見ながら話すのも苦手なんだ。

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ああ、ライブパフォーマンスの能力がなければ自分を際立たせるのは難しい。良い例があるんだ。少し前に Monsters of Rock Cruise をやったのだけど、そこでギターコンテストがあるんだ。乗客がステージでギターを弾いて、それを審判が点数評価するコンテストで、俺なんかはコメディアンとして面白いことを言うのが役割なんだけど。今年は審判としてニタ・ストラウス、ガス G.、ジョエル・ホークストラみたいな凄腕が参加していたよ。

それは凄いな。ちょっと言わせてもらうと、ジョエル・ホークストラは背が高すぎるよ。彼には1度クラシック・ロック・アワーズで会ったんだ。私は(背が低いから)彼を見上げて首が痛くなったよ。(笑)しかも彼は素晴らしい腕の持ち主だ。どうしてこうなんだと思ったよ、私は176cmでもがいているっていうのにさ!(笑)

(訳者注:サッチの身長は170cm前後ではないでしょうか…並んだ時の推測)

彼がTSOで私のクロームギター(JS1CR)を弾いている写真を見たよ。そしたら、ギターはこんなに小さく見えたんだ、絶対に!(笑)

で、ギターコンテストに今年はある人が参加したんだ。Instagram では有名な若者で名前は伏せるけど、(訳者注: Master of Shredのこと。彼のInstagramこちら) 彼は Instagram でシュレッドを披露している。

その彼がコンテストに出たのだけど、いつもと調子が違っていた。それがスマホの前でプレイするのと審判や大勢の観客の前でプレイすることの違いなのだと思う。SNSとライブは違うんだ、そこが難しい。

ああ、そうだね。彼に1~2週の経験する時間をあげたらいいと思う。彼がそのクルーズで得た経験というのは正に彼に必要だったのさ。ステージに上がったら思い通りにいかないということ。

君はギター界のマエストロ、グルなどと言われているけれど、ギタープレイヤーとしての自分の弱点は何かある?

私はボーっとしているから、プレイする前に物事を始めてしまうんだ。特に音楽が絡むと危険を避ける性質なのに、事前に検討してから始めた方が良かったことをやる羽目になるんだ。そんなだから、G3を始めて、ジョン・ペトルーシの隣で弾く羽目になったりするのさ。(笑)

スタジオでは全てコントロールできてしまうから、ロックンロールの精神としてライブでのスリルを求めているんじゃないかい?

そうだね。自分本来の性質とは真逆の対応をするのかも。(笑)ステージでは物事は常に計画とは違って悪い方向へ行くものさ、計画を立て過ぎてあると、とても動揺する。だからそうせずに、物事が違う方向へ進んだら、「ああそうか、ではこうしよう」と対応することさ。

エフェクターペダルは動作しない、誰かが物を投げる、ベースアンプが壊れる。そうしたら、それに対応するだけさ。それが重要な事だと思う。

家でレコーディングする時には自由に、自分のしていることを批判せずにやってみることだ。そうでなければ自分を妨害することになる。

創造の時間に没頭するということだね。ツアーの予定は?

秋の北米ツアーをまとめているところ。アルバム・バンドのケニー、ブライアン、レイは全員参加だ。春に予定していた欧州ツアーが実行できるのか、また延期しなくてはならないのかを今詰めているところだよ。

(訳者注:サッチの2022年春の欧州ツアーは1年後に延期されました)

君のツアーの必需品は?

良い質問だね。(笑)コーヒーだよ。朝は美味しいエスプレッソが必要なんだ。まともな人間になり、目覚めるためにはコーヒーが必要だ。(笑)

好きなブランドはあるの?

Peet's Coffee の Italian Roast はとても美味しいね。これがなければスタバのエスプレッソも良いね。濃いのが必要だ。

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サッチがジョエルについてコメントしているところを初めてキャッチしたので、本件をジョエルに訊いてみました。するとこんな返事がきましたよ。(笑)

「ジョーは間違えてる。彼には15か16歳のとき以来会っていないんだ。彼のライブを観に行って、サウンドチェックの後に会場の外で少し話した。僕はまだほんの子供だったよ」

 

私も「クラシック・ロック・アワーズでサッチに会った」という話は聞いていなかったので、サッチのトークを聞いて驚いたのでしたが、どうやらサッチの勘違いだったようです。でもTSOのジョエルをチェックしていたり、サッチに認められていたことはジョエルにとっても嬉しい話だったのではないかと想像します。

ジョエルが高校生の頃にサッチのライブを観に行った話は以前のインタビューで顛末を話していたのを覚えています。Surfing のツアーだったのではないかと思います。会場の隣のバーにいたサッチをキャッチしたそうで、当時の少年たちの興奮が想像できる話でした。