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ジョー・サトリアーニ VHトリビュート「もしこれが実現するなら、私には光栄なことだし、恐ろしい挑戦でもある」

今月15日にジェイソン・ニューステッドがメディアに語った Van Halen 関連のツアー構想の話がロック界で話題になりました。アレックス・ヴァン・ヘイレンジョー・サトリアーニの名前に驚き!そして渦中のサッチ本人が別メディアのインタビューでこの話が事実であることを認めました。

今週はそのインタビューの一部と別のインタビューから、サッチが語る Van Halen 曲のプレイの難しさについてのトーク部分をまとめて和訳してみました。

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ニューアルバムの話に入る前に聞かせて欲しい。ジェイソン・ニューステッドが新聞に語っていたけれど、ヴァン・ヘイレンのトリビュートをやるためにアレックスが彼に声を掛けていて、君も関わっていたというのは本当かい?

アレックスとデイヴとは1年程話をしていたんだ。エディとバンドとしての Van Halen のレガシーを真に称えるトリビュートなのかツアーなのか、何かをやりたいという話だ。

私にとっては怖気づくような話だけど、愛情を込めた仕事でもある。そんな挑戦の機会を受けることはとても光栄だよ。

とても複雑な話だから、私に今言えることは、もし実現したら、ファンにとっては最高のものになるだろうし、偉大なるエディだけではなく、あのバンドの偉大な遺産について皆と共に祝うということ。だって、彼らは数々の素晴らしい楽曲を生み出し、優れたスピリットとヴァイブを届けた。

でもこういう話は常に音楽ビジネスでは起こっていて、水面下で進むんだよ。上手くいかないこともあるから。例えば10個のクレイジーなアイデアがあって、それが色々と考えられていても、ミュージシャンは口外したりしない。上手くいかなかったときに傷つけてしまう人が出たり、他のビジネスプランが被害を受けないようにね。

だから、私たちはジェイソンがこれを公にしたことにとてもショックを受けているよ、だって私たちは皆、沈黙を誓っていたんだから。

アレックスは殆ど取材も受けないし、彼はどうしているの?デイヴは?

私に言えることは、アレックスと知り合って話をするうちに彼がとても素晴らしい人だとわかった。あのような形で早くに弟を失うなんて、私には想像できない。彼らは親しい兄弟でユニークな関係を持っていた。

デイヴのことはまだ余り知らないんだ。多分、彼には1度しか会ったことがなくて、スティーブがDLRバンドのライブに招待してくれたときだ。当時の私はミック・ジャガーのツアーでオーストラリアにいて、皆で観に行った。デイヴとはこの25年間で何度か電話で話したけどね。

とにかく彼はデイヴ・リー・ロスで、彼らは Van Halen なんだから、これはビッグな事だ。さっきも言ったように、もしこれが実現するなら、私には光栄なことだし、恐ろしい挑戦でもある。エディがしたことは再現できないんだから。

1音ずつ全て覚えて、フィンガリングやギアの全てを揃えたとしても無理だ。エディは1人しかいないし、彼は独創的天才の典型さ。だから、もし実現するとしたら、アレックスは正しい方法でしかやらないだろう。

あなたはサミーともやってきたから、ファンからすれば、どうして彼らは?と思うのでは。

そうだね。私がこうして当事者でいるのは普通じゃない。ただ私は音楽的視点で見ているんだ。私は人生の殆どを自分の楽曲を覚えることに費やしてきた。ライブの為に覚える音数は相当のもので、ライブでは集中していなくてはいけない。

だから何か新しいことをする時は、Chickenfoot のときもそうだったけど、頭にスペースを作って新たな演奏法にトライする。素晴らしいのは、Chickenfoot では各人の個性がとても大きくて、様々な才能をもたらしてくれるから、自分はそれ程大きくなくてもいいんだ。ただその一部になればいい。

でも Van Halen の全時代を表現するとなるとひるんでしまうよ。多彩過ぎる。ギタープレイヤーとしての視点だけをとってみても、エディはプレイヤーとして、また発明家として目を見張る程の進化を遂げている。その2つの要素はデビューアルバムから最後のアルバムまで続いていて、アルバムを聴いて曲を覚え、弾いてみるとワォ!となるんだ。

私に才能が必要というだけでなく、特定の機材が必要だ。あるアンプでああする、こうするというのができなければ、できないことがある。そういうことに対処しなくてはならない。

エディが私たちの時代の最も重要なギタリストだと思うかい?

そうだね、そう思うよ。個人的にも熱心なファンの1人としても。彼らの音楽や記事、写真や動画、そして彼らのライブを観た記憶があれば、彼が音楽そしてギターにもたらした全体像が理解できるだろう。とてもシンプルな例だ。他にも優れた作曲家やテクニカルな演奏者、見事なエンターテイナーは沢山いたけれど、エディは実に様々な領域で限界に挑んだのさ、音楽家として、ロックンロールのエンターテイナーとして。

彼は恐らく最も身体的で可笑しさがあり、それでいて音楽に関してはとんでもなく真面目だ。彼とアレックスが取り組んだものを聴いてみれば、完全に個性的でそれが自然なところまで彼らが磨いたことがわかるし、だから聴き手が直ぐに本物だとわかり、反応したのさ。

彼は音楽の発明家で、それがギタープレイヤーにとって標準のものになったんだ。私たちギタリストは色々とクレイジーなアイデアを試すけれど、それが全てギターの最終的デザインになることはない。そう考えるととても感銘を受けるだろう。

だから私に聴こえるのは彼らのビッグなサウンドで、それを置き換えるなんてできない。ヘンドリックスの替えが効かないのと同じさ。ヘンドリックスがストラトにもたらした変革は驚異的だ。そしてエディも同様のことをした、世界を変えたのさ。これができる人はほとんどいない。

エディの曲で君が弾くとき一番好きな曲は?

良い質問だ。この前同じことを考えていて、自分の選択は相当変わっていると思った。"Hear About It Later" だよ。曲が好きだし、プレイするのも好きだ。あの曲をかけてギターをプレイすると楽しい、何かあるんだろうね。あの曲を彼らがライブで演奏するのを観たし。
でも曲が何の事を言ってるのか、はっきりわからないよ。デイヴがいかに頭が良いかということさ。彼はそれが何のことなのかリスナーに考えさせる。敬服するね。

あの曲にはエディが色濃く反映されている、個人的な曲だと私は感じるね、間違いかもしれないけれど。彼とは同世代だから、感じるのかも。作曲の素晴らしさ、巧みなギター遣い、エフェクターペダル、調の変化、全てが心地良いのさ。それにこの曲は私にも弾けるからね。他の曲では「何?」ってところがあるから。(笑)

ギターマスターのサッチがそう言うなら私たちは「降参!」ですよ。

ギタープレイヤーには誰でも自分が長けている部分はあるんだ。私はずいぶん若い頃からギターを教えていたから、自分にはプレイを推進させるある限られた才能しかないことに気付いた。他の才能もあるけれど、それらは突出はしていなかった。

少年だったスティーブ・ヴァイを教えていたとき、彼はいくつかの才能において必ず私を追い越すと確信していたよ。彼の成長スピードを押さえてはいけないと思った。

同様にエディもいくつかのとても変わったことをしたけど、それらは彼の特別な才能なんだ。別のプレイヤーがエディを上回ることができる部分もあるだろうけれど、いくつかのプレイでは全てのギタリストが白旗を揚げて「これはできない!でも似たようなことはできる」というのがあるんだ。

エディの曲でこれはできない!と尻込みする曲はどんな曲?

"I'm The One" だ。エディは高速でスウィングしたプレイができるんだ。超正確に右手のプレイができる。あのシャッフルビートだよ、恐ろしい程さ。聴くと、「ああそれか、できるよ」と思っても15秒後には「う?」となるのに、彼はあれを5分間もノンストップでできる。

彼とアレックスのプレイにはただ感嘆するばかりさ。彼ら2人のリズムプレイは無敵なんだ。簡単だと人々は思うだろうけど、彼がアレックスと創った曲のパート全ては、ギタープレイヤーにとって、とてもユニークで特別なものだ。この曲の最初にあるフィードバックやタッピングは素晴らしくて個性的だけど、そこじゃない。

それに彼は常にビッグに考えていたと思う。私が彼らの曲を学んだときに感じた印象なんだが、彼らの曲はスタジアムやアリーナで演奏するよう書かれている。

何万人ものオーディエンスの前でのプレイと考えれば全てのパートは納得がいく。200人程度のクラブでの演奏ならそれ程でもない。それにデイヴは百万人を楽しませるよう生まれついている。フレディ・マーキュリーLive Aid で本領を発揮するのと同じさ。

とても些細な部分だけど、Van Halen の曲を30~40ほど学べばそういうことがわかるよ。「ワオ!彼はこれを意図的にやったんだ!」って。とても独創的だ。


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このニュースを知ったとき、最初は冷静かつ慎重なサッチがこのような紆余曲折ありそうな計画に合意したとはとても思えず、信じられませんでした。

それにアレックスとサッチの繋がりは聞いたことが無く、更にマイクでなくジェイソンが誘われたことも大変意外でした。(マイクとVH陣営の関係が修復されていないのでしょうけど、それならかつてVHにリクルートされたビリー・シーンの方がVHに相応しいのでは?)

VH本家としてトリビュートをやるなら、マイクを入れるのが筋だと思うし、デイヴだけでなく、サミーも呼んで欲しいところ。マイクとサミーが参加するなら、サッチの参加は正にベスト人選だと思うのです。(サッチとサミー&マイクの友情が本件で影響を受けないことを祈る)

恐らくこの企画の中心人物はアレックスだと思いますが、なぜサッチを?去年のデイヴ発言から(詳細は下の過去記事参照)アレックスとデイヴは今後何かするか等について話し合っていたことが伺えます。その過程でギターは誰が?となってデイヴがヴァイ先生に照会し、サッチが推薦された、という経緯かなと思ったのですが、実際はどうなのでしょう?

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デイヴとしてはヴァイ先生なら気心が知れているでしょうが、デイヴとヴァイ先生が並べば、観客は 『Eat'em and Smile』 を連想するでしょうから、VH本家の印象が薄れてしまうので、同レベルのギタリストとなったときにサッチだったのでは。アレックスが Chickenfoot をチェックしていたのかも知れませんが。(妄想中)

エディ没後にアレックスとデイヴがVH活動のアイデアを練っていたとしたら、去年10月にあったデイヴの引退宣言と最後のライブ予定だった年末のベガスライブはどういう位置づけ?本当は最後のライブでVH本家トリビュートをやろうとしていたけれど、まとまらずにデイヴがソロで発進した?(年末のベガスライブは最終的にはキャンセルとなった)

今回のインタビューでサッチはVH企画が完全になくなったとは言っていないけれど、実際のところ、ほぼ立ち消えでは?サッチは今年前半はニューアルバムのツアーが入っていたけれど、それが翌年に延期になったので、今年の夏は予定が空いたものの、VH本家トリビュートみたいな大物企画が動き出すには時間がかかるので、運が良くても来年以降になるのでは。サッチはツアーで多忙なのではないかなぁ…

サッチ自身が「VHのサウンドはエディとアレックスでなければ再現できない」と語っていましたが、もしこの企画が実現したら、サッチはどんなVHを聴かせてくれたのでしょう?

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VHトリビュートの件に関して、4月18日にデイヴが短いコメントをVHサイトへ寄せました。

www.vhnd.com

「俺が思うに、"Van Halen 4K" ではコロナ禍が続いているから、全てのポジションに2人の割り当てが要るだろう。(ギターに)サトリアーニとルカサー、(ベースに)アンソニーとニューステッド、(ドラムに)アレックスかトミー・リー、恐らく今俺の仕事ができる唯一の人物はPINKだろうな」

デイヴが年末のベガスライブを断念したのはバンドメンバーのコロナ感染が原因だったので、この発言はそれに掛けたジョークなのか、さっぱりわかりませんが、ギターにルカサーの名前が出るところはナイス。