ジョー・サトリアーニがギタートーンについて語った Guitar Player 誌記事の続き、後半です。
リグについて、レコーディングについて、シールドについて、とギア関連のお話がいろいろ読めます。ギタリストにとっては興味深い内容かも。
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当時でも、あなたはボブ・ブラッドショウ(スティーヴ・ルカサーも使用した著名なリグビルダー)の大きなリグを使わなかったですよね?
使ったことはない。私が気に入らないことが、あれには2~3あるんだ。例えば、シグナルの扱われ方が好きじゃない。私には自然に聞こえないんだ。いつも何か奇妙なフェーズが起こっているのを感じてしまう。
私がステージでステレオで鳴らそうとするといつもTV放送や会場でのフェーズ問題(特定周波数帯が干渉されること)にぶつかるんだ。どう処理されるのかわからないんだ。
一方で私の好きなクレイジーなギターのライブ録音は全てモノラル録音だ。シンプルで生々しく、全てがそこにある。音波の干渉なんてないんだよ。
それに気付いたのだけど、いくつかのペダルをラウドなアンプのクリーンチャンネルに繋ぐだけのリグでは、芸術的に洗練されたシステムを使う私の同輩よりも問題が少ないんだ。
ああいうシステムは毎晩故障して、作り上げるにも維持するのにも大金がかかる。ミュージシャンはシステムを世界中に配送するけど、それにも大金がかかる。それに1つが壊れたときのためのバックアップも要るんだ。問題が多いし、やっかいだと感じるよ。
今では多くの人がコンピューターで十分に洗練された録音が可能です。宅録で良いギタートーンを得るコツはありますか?
デジタル・レコーディングは評判が悪いけど、実際はデジタルよりもアナログ録音の方が酷いものが多い。単に年代のせいだけどね。いや、でも数十年したらもっと多くの酷いデジタル録音が増えるかも。(笑)
でもデジタル録音について言うと、1つ重要なことはクリーンでダイレクトなサウンドを録音することを心掛けること。自分のギタープレイから良好な、圧縮されていない、EQ処理されていない、ダイレクトシグナルを得ることができれば、プラグインやリアンプを使って他のアンプを通しサウンドを再構成することができる。
リアンプは私がいつもやることの1つで、ジョン・カニベルチ(サッチの長年のレコーディングエンジニア)が Reamp box を発明してからやるようになった。君がクリップや色付けのない純粋で正統なサウンドを求めるなら、それにより多くの柔軟性が生まれるんだ。
(訳者注:ジョン・カニベルチ作の Reamp box はヴァイ先生も愛用しており、Patreon で公開中の Alien Guitar Secrets: EP11 "Micing Guitar Cabinets" でその使用を実演しています。とても興味深くてギタリストにオススメです)
でも忘れてならないことは、コンテクストが全てということ。"Rumble" で言ったように(先週の Part 1 参照)、ダンスホールに行ったと思っていたらバンドがプレイしていたというような。
もちろんそれは、君が今、現代プログレッシブ音楽をレコーディングしようとしているならイメージが違うだろう。あらゆる状況において、意図がコンテクストを決めるんだ。
ギタートーン談義においてシールドについて余り語られませんが、とても重要な要素の1つですよね?
実際にそうなのに、十分な関心が全く払われていないね。私は常にサウンドに影響を与えないシールドを求めてきた。シールドを比較してよりラウドでフィデリティな(原音に忠実)ローもハイもしっかり出るものを見つけられるだろう。
悪いシールドというのは、キャパシタンスについての話になるけど、ギターシグナルがギターから出てシールドに入ったとき、どんな周波数帯でも切り取られたり減退していたりして欲しくないものだ。
数少ない例外を除いて、短いシールドを使うと上手くいく。なぜならシグナルが移動する距離が短くて済むから、長いものに比べて周波数の損失が少ない。これは簡単に実験できるよ。
Telecaster と Vibrolux (Fender amp) を手に取ってみて。2フィートのシールドと3フィートのシールドと40フィートのシールドを準備する。すぐにどのシールドが良いかわかるだろう。
『Surfing with the Alien』をレコーディングしていたとき、短いシールドを使うというアイデアに熱中した。熱中しすぎて自作の Mogami (著名な日本ブランド)シールドを作る程だった。
ジョン・カニベルチは特定のパートをレコーディングするために、私がプレイする立ち位置の限定される長さのシールドを見つけてくる程だった。それはもう、固定の位置から動くこともできないシロモノだった。4フィートのときもあって、コントロール・ルームの入口に立っていたり。少々クレイジーだったけれど、上手くいったんだ。
最近はスタジオでもツアーでも D'Addario のシールドを使っている。全てのギグでだ。普段よりも大きかったり小さかったりする会場の場合は、私のギターテクのマイクがやってきて「この長さのシールドに換えておいたよ、10フィートは節約できるからな」と言う。私たちは皆、それがどれ程ギターサウンドに違いを生むか、わかっているんだ。
ある種、可笑しいのは、金の無かった若い頃、経済的なことが非常に重要で優先させなくてはならなくて、私は常に安物を使っていた。予算を顧みては、「どうしてもあのペダルが欲しいから、安いシールドを買えば数ドルは節約できる」となっていた。
でもギターシールドを買うというような場合には安いということが常に最良ではない。私がさっき言ったことに戻るんだ。人はギアに刺激されたいものだ。君がプレイして創造したいと思うサウンドをもたらすものでなくてはならない。
だから、もう少しシールドに投資したいと思うのならすればいい。そしてもし「8フィートのシールドではオーディエンスに飛び込めないから40フィートのが欲しい」と思うのなら、長いシールドほどサウンドに影響が出ることを思い出すといい。必ずしも大きい方が常に良いとは限らない、長いことも同様だ。
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サッチの言葉を読んで、やはり良い機材がいいよな、とお買い物に走るギタリストが増えたりして…(笑)
ところで、サッチの話に出てきた「芸術的に洗練されたシステム」をツアーに持参してよく故障して困っているギタリストは誰のことなんでしょうね?G3の参加者かなあ?