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ジョー・サトリアーニ & ガス G. 「90年代はアンチ・ギターの時代と思われているけれど、実はギター復活の始まり」

ニューアルバム『The Elephants of Mars』のプロモーションで多数のインタビューに応じているジョー・サトリアーニが、何とガス G. のYouTube チャンネルに登場しました。

ガスは自身初のインストギター・アルバム『Quantum Leap』を昨年リリースして好評を得ています。アルバムにはサッチの影響を感じるメロディックな良曲もあり、この対談は興味深い顔合わせです。

対談は Part 1 と Part 2 に分かれていますが、Part 1 ではギタリスト同士でギア関連の話(バンドでプレイするときとインストバンドでプレイするときのギアの違いなど)に花が咲いていました。

Part 2 ではサッチのキャリアがギター界にもたらした影響などについて語られており、改めてサッチが切り開いた道が後のギターヒーロー達へ繋がっているのだと感じました。今週はその一部を和訳しました。

 

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Gus G: 次はファン質問みたいなんだけど、ずっと知りたかったことを。『Surfing With The Alien』のことで、確かあなたの自伝で読んだと思うけど、曲を冬季オリンピックにライセンスしてそこから人気に火がついたの?

(訳者注:サッチの自伝『Strange Beautiful Music』では当時のレーベル担当であったクリフ・カルトレリ氏の回想で冬季オリンピック放送時の Surfing アルバム大量使用の影響でラジオ局が追随してきたという話があります。ガスは本を読んでいる模様)

Joe Satriani: いや、実際には米国内の何人かのDJがクレイジーなほどアルバムをオンエアしてくれたからなんだ。ニューヨーク、テキサス、シカゴ、ロスで、彼らはただアルバムを気に入ってくれた。

88年にあのツアーを始めたときには、400席くらいの小さなクラブで1晩に2セットをプレイしてた。厳しかったよ。最初の2週間は余り上手く行かなかった。

でもミック・ジャガーリードギターのギグが入ると、急にローリング・ストーン誌なんかにミックのリードギタリストとして記事が載って、このギタリストは最近アルバムを出しているって紹介されたんだ。これも Surfing アルバムの大きな後押しになったね。

GG: ミックのツアーはいつ?

JS: 88年だ。2~3月と9月末から11月始めまで。ツアーの間に、私がソロでプレイする会場がクラブから小劇場に変わったんだよ。ともかくミックの件はビッグで、彼も可能な限り私を宣伝してくれた。とても寛大な人だよ。

米国でのラジオによるサポートとその後英国への波及は大きい要因だった。まだヒップホップが台頭してくる前だったしね。

GG: 当時はまだ(ギター)ソロがクールな時代だったでしょう?

JS: ああ、そうだね。(笑)成功へ至る道というものは決して同じ繰り返しはないんだ、だからそれを受け入れて、起こったことを楽しむ他ない。

GG: 『Surfing With The Alien』によって、ギタープレイヤーそしてギター音楽にとって全く新たな道が開けた。ギターがクールだった時代から、90年代になって、もうギターソロは弾けなくなった時代があったけれど、今はギター・ミュージックにとって再びとてもエキサイティングな時代だと思うんだ。

JS: ああ、その通りだね。大切だと思うのは、90年代の半ばに私はG3を始めたのだけど、私はオーディエンスは実はギターソロを聴きたいのだと確信していたんだ。ただ異なる形式で体験したかったのだよ。
私が思ったのは、ギタープレイヤーがガンマンの役まわりを辞めて、共に毎晩集まり、技をシェアして、オーディエンスとギターを祝福するんだ。どぎついショウを押し付けるのではなく、共に祝うのさ。

皆を説得するのに時間はかかったけれど、始めてみればオーディエンスは大歓迎してくれた。だから、90年代はアンチ・ギターの時代と思われているけれど、実はギター復活の始まりで、G3のようなものが生まれたのさ。

GG: わかるよ。初めてG3を見たときは衝撃だった。そしてこれもまた、あなたの達成事項というかトレードマークというか、今では多くの人がその形式を真似て、独自のG3のようなものをやっている。今の流行りのようになっていて、3人くらいが集まればギターの祭典をやろうって。

今のギターそしてギター・ミュージックについてどう思います?デジタルの時代になって、ビジネスは変わりました。フォーマットが変わり、新たなプラットフォームが台頭しています。

JS: 長らく私たちはヒップホップとポップスが主流を占める音楽界にいる。それはいいんだ、流行りの音楽は変化し続け社会も変化し続ける。

そんな中で、多くのギタリストが活動して、ギターの歴史上成し得られなかったことを達成しているんだ。6弦から7・8・10弦のギターまでが驚くほど強烈にプレイされている。

衝撃を受けるよ。かつての世代のギターヒーローたちは現在のシーンにとても対抗できないだろうね。全く新たな世界だ。彼らは小さなギタープレイヤーのグループで、Animals As Leaders を表紙にするような、2、3のギター雑誌の助力しか受けずにやっている。

80年代後半とは違う状況だ。パワートリオが活躍した60年代後半とも違う。ヘンドリックス、ペイジ、クラプトン、ベックの時代とは違う世界なんだ。

巧妙さ、スピード、複雑さ、それに作曲も複雑になっている。実に魅力的だし、目を見張るものがあり、刺激を受けるよ。私ではあのレベルのテクニックにはたどり着けないけれど、とてもインスパイアされるよ。立ち戻ってもっと真剣に練習したくなる。

GG: 俺もインスタやYouTubeで若者のプレイを見て、もっと練習しなくちゃと思う。どうプレイしてるのかわからないけど、少なくとも刺激は受けるよ。

JS: ああ、だから彼らをサポートするんだ。彼らはスマホの前に座って孤立しているんだ、彼らを全国TV放送で観ることはないし、彼らがドレイク(カナダ出身のラッパー)みたいな再生回数を得ることもない。彼らはどこか遠いところにいるんだ。だから「ヘイ、ガス G. だ。凄いプレイだな」と言えば彼らはとても嬉しいだろう。これだけでも支えになるよ。

GG: そうだね。それに今はそれぞれのプラットフォームがあって、何でもできる。ハード・ロックの世界ではレコードレーベルなんていうものはもはや存在しないんだから。雑誌だって世界に2、3誌が残ってるだけだ。

今ではインストゥルメンタル音楽を創ることはヒップとは言わないまでも、90年代後半よりは簡単になった。俺がデモテープをレーベルに送っていた頃には、歌入りの曲にしろって言われたものだった。

インストゥルメンタル音楽のマーケットなんて無い。ジョー・サトリアーニスティーブ・ヴァイだけができるんだ」って言われたよ。でも今ではそれはもうタブーではなくなった。

JS: それはインターネットによる民主化の素晴らしい結果だと思う。世界のどこにいようとも、変わったアーティストとそのオーディエンスが繋がることが可能となった。その結果、奇妙な音楽を公開しても、生涯を通じてファンになる百万人のオーディエンスを見つけられるかもしれない。

だからそのことに落胆しないことが重要だ。なぜなら、BTSやビリー・アイリッシュと競うことなんてできないのだから。それに彼らは彼ら同士での競争で忙しいからね。(笑)

でもそれだからと言って、素晴らしいキャリアが持てないという訳ではない。君が活動しているインターネットをメディアがカバーしなくても、究極のところ、自分の愛する音楽を自分の愛するファンへプレイすることで幸せな人生がおくれる。これは素晴らしいよ、ポップスターの重圧は壮絶だからね。

GG: その通り、自分の好きな音楽をプレイすること、それが幸せだ。今日は俺のYouTubeチャンネルに出てくれてありがとうございます。あなたと繋がれて光栄です。

JS: いつかG3ツアーで一緒に弾こうじゃないか!きっと最高になる。

GG: そんなことがもし現実に起こったら、俺にとっては その1)人生最大の夢の1つが実現する、その2)それは俺の人生で最も恐ろしいツアーになる、(笑)

JS: ハハ、皆そうさ!もちろんジョン・ペトルーシと並んでソロ回しをするのは恐ろしいよ、でも最高に楽しいのさ。そして皆が知らない事だけど、G3のショウを終えてステージを降りると私たちが最初にすることは「あれはどうやったのさ?凄くクールだった!」と言い合うのさ。そんなところがあのツアーの楽しいところなんだよ。ワクワクするんだ。

GG: ワオ!もし次のG3に呼ばれたら喜んで参加して、毎晩あなたにシバかれたいです。呼んでください。

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特に終盤のG3に話が及んだところでは、めちゃ嬉しそうなガスが見れて微笑ましいです。G3のスペシャルゲストでガスがステージに立つ日が来るのも遠くないかも?