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ジョー・サトリアーニ 「インターネットは素晴らしい道具だが、同時に皆を均質化してしまう恐れがある」

4月10日にニューアルバム『Shapeshifting』をリリースしたばかりのジョー・サトリアーニのインタビューが Guitar World にアップされていました。

www.guitarworld.com

ニューアルバムの解説の他、若手ギタリストへのコメントも興味深かったので、和訳してみました。

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今年の始め頃、ジョー・サトリアーニが the Metal Hall Of Fame に殿堂入りしたセレモニーでブライアン・メイによるビデオ紹介を受けました。(1月にスティーブ・ヴァイと同時に殿堂入り)

「君は私の素晴らしい友人だ。君を友と呼べて誇らしい。君は友であり、多くの人にとってのインスピレーションだ。君はギタープレイに多大な貢献をして、新境地を切り開いて高めた。世界中で私のような者がいまだに君がやっていることに感嘆しているんだ」ー ブライアン・メイ

 

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ニューアルバムのタイトルトラックには実に興味深いベンドがありますよね、高音EのベンドからB音へ降りるところ。どこで覚えたのでしょう?

そういうアイデアはボーカルかハーモニカのラインだった。多分、ヒューバート・サムリンかバディ・ガイが50年代か60年代のハープ奏者の演奏から取っていたものだと思う。面白いことに、私が幼かった頃は演奏全てが謎に包まれていた。パワーコードが何かさえ私は知らなかったんだ。でも私はラジオで、ヘンドリックス、ペイジ、クラプトン、ベック、ウィンター、ベリー、タウンゼントらを聴いていたんだ。

彼らは皆こうした慣用的ブルース表現をしていて、私のような初心者には理解できなかった。時にはコンサートで観るまで誤解して覚えていたこともあった。間違った弾き方でリフをずっと弾いていて、ある時ヘンドリックスのビデオを観ると彼は1、2弦で弾いていたんだ。新発見という瞬間さ。そして自分の誤解もまた、個性的で価値があることに気付いた。

ソロにはヘヴィなブルースとフルーティでフリジアンな味わいが同居しています。

それ気に入ったよ、フルーティ!気付いてくれて嬉しいよ。そこは作曲面における巧妙さで、この曲固有のものだ。曲の中間でそのような演奏をするのは私が自分の本質を表しているんだ。異なる何種類ものバージョンの自分に移り変わる必要、そしてその体験を終盤の Sustainiac ピックアップを使ったフィードバックノイズで表現している。

自分の中で作曲を司る思考回路が全面的にフリジアンに行くのは止せと告げたんだ。その表現は最高だけど、ロックを演奏しているというのに、あそこでもここでも甘くなってる!スウィープもできたけれど、練習したという事実を見せることでしかない…私がここで真に感じていることを伝える感情表現を探しているんだ。

80年代の腕利きギタリストの中にあって、あなたは常に抑制のきいた音を目標としてきました。自然の成り行きですか?

若い頃にセッションに参加すると、別の見方から第4のアイデアを投じ、上手くやれる機会はあったけれど、プロデューサーには不評でね、「何だ、やめろ!」と。彼らは期待通りの音が欲しいだけだったのさ。でもそれは私にとっては退屈だった。

やがて Surfing アルバムがヒットすると、同じ人たちが電話してきて、正にそれをやってくれと言うんだ!「前は不評だったのに、今は欲しいって?」と思ったよ。

その頃には私はセッション・プレイヤーになることは諦めたんだ。特定の音をこれくらいホールドすればいつも上手くいくと言えば嘘をつくことになる。どのように芸術に応用するのかが大事だ。それこそがプレイヤーを形作るもしくは破壊するものだ。その時その瞬間に理にかなっていなければならない。

♭9thがいつも悪いとは言えない、フリジアンやフリジアン・ドミナントでは♭9thは完璧に美しいサウンドだ。でも他の皆が CmajのときにC#を弾いたら浮くだろう、それが状況ってことさ!

"Perfect Dust" と "Falling Stars" はあなたがジャンルを自在に操る好例です。これらの曲では何を使っていますか?

この2曲と "Here The Blue River" ではオーバーダブがとても上手くいった。メインのギターはJS1CRで古い Fender Bassman から 4x12 キャビへ、スーパークリーンのチャンネルでリズムギターFender FM コンボへ、凄くクリアーだ。

古いアンプを売って、新しい Fender を手に入れたんだ。どれも個性的で実用的でどんなギターへの反応も良い。(このアルバムでベースを弾いている)クリス・チェイニー(Jane's Addiction)はあるとき、ベースパートを私の Gibson 335 でダブルにして、Marshall 50w に繋いでいたよ。他は Fender Princeton や Bassman、私のシグネチャーの Marshall JVM ヘッドに繋いで大きなサウンドの広がりを創った。

柔和なソロには柔和なアンプが要るし、大胆なソロには大胆なアンプが要る。もしそれが連続していたら、上手く繋がなくてはならない。

最近感心した新しいエフェクターペダルはありますか?

"Falling Stars" の最後のソロでは TC Electronic の Sub 'N' Up Octaver を使った。ペダルのリストは短いよ。Sub 'N' Up Octaver、私のシグネチャー Big Bad Vox wah、Vox Time Machine delay、MXR Dyna Comp、EP103、Flangerだ。1曲で Vemuram Jan Ray overdrive を使った。EVH フェイザーも使ったよ、思い出を辿って80年代初頭に返ったようだった。当時の私のバンド The Squares でやらなかったことを考えていたんだ。私たちのルールの1つは他のギタリストたちがやっていることをやらないということだった。

ではそれが、初期の頃のあなたがフェイザーを使わなかった理由ですか?

あの頃、その思い込みは愚かだったよ。やりたいことを何でもやるべきだったんだ。それでその返答として "Nineteen Eighty" を書いたんだ。もし私が当時 The Squares のバンドルールに従わなかったとしたら恐らく私がやったことだと思う。

エディ(ヴァン・ヘイレン)のように MXR Phase 90 を使うべきだったと思ったんだ。あのペダルエフェクターを見て、あれを使ってソロを弾こう、と。皆にあれをプレイしたら、彼らが最初に言ったのは「それ、 Phase 90?」だったよ。かなりレトロなサウンドだからね、でも私はあの時代を称えたいと思ったのさ。

他にはどうやって自分に課題を課し、上達を確認するのでしょう?

作曲が私にとっては1番重要なことだ。自分にとって意味のあることでなくてはならない。自分にとってやったことのないアプローチが必要になることかも知れない。私にとっては "Spirits, Ghosts And Outlaws" が今までと異なるアプローチだったと思う。

プロダクションの見地から異なるアプローチが生まれることもある。"Teardrops" は曲の主題に誠実であり続ける集中力が必要で、自分にとって異なるスタイルに挑むことになった。あれはファーストテイクを残すことにしたんだ。

次世代のギタリストについて思うことはありますか?今気になっているのは誰でしょうか?

今年のNAMMで多くの優れたギタリストを見て、ギター界は何と活力に満ち良好なんだと思ったよ。ガスリー・ゴーヴァンを見たらいい、彼はとにかく上手い。感心せずにはいられないよ、彼のプレイはとても上手くて、それは純粋な音楽愛からきているんだ。

スティーブ・ヴァイNAMMイベントに登場した Polyphia の2人は目覚ましかった、彼らの普段のプレイから一歩出たところを見るのも興味深かったね。私やスティーブやポール・ギルバートをステージに集めれば、いつも私たちがやるようにフリーの即興プレイをする。でもPolyphia の2人は全く異なった統制の効いたプレイの世界からきていて、しかも彼らは驚異的なギタリストだ。彼らが勇敢にも私たちのような年寄りの隣に立って即興プレイをしたのには感心したよ。

彼らも同じように思っていると思います。自分が思いつかないことを他のプレイヤーがしているのを聴くのは素晴らしいでしょうね。

知らなかったプレイヤーが現れては自分が可能と思っていたことを別の新しい切口から挑戦するんだ。フィリップ・セイスを聴いていたのだけど、これほどまでにその方面(ブルース)でクレイジーなプレイをする人物を長い間聴いていなかった。イヴェット・ヤングもそうだ。彼女のプレイは全く違う世界のものだけれど、彼女のプレイに感嘆せずにはいられないんだ。

(ギター界には)誰にだって居場所はある。そこに座って何か美しいものを弾きたい者には。ザック・ワイルドにも居場所はある。彼はいつだって必要さ!新しいプレイヤーに出会い、自分の道具箱にはない、ある分野で特別の才能があることに気付くんだ。

「わお!この人はこれをする為に生まれたんだ!」と私が感心するのは、美しく個性的な表現方法を持ったプレイを耳にしたときだ。彼らは私が見過ごした何かに美を見つけ、それを磨いてきたんだ。ラリ・バシリオもそう。彼女はメロディとリズムが一体となった感嘆のパッケージだ。

あなたのブルース・ベンドは最も強力な武器の1つだと思いますが、ペンタ/ブルーススケールから更に多くを得るのにアドバイスいただけますか?

自分に正直でなければならない。NAMMで私は何人もの才能あるプレイヤーが世間にいることがわかったし、彼らの多くは誰のプレイでもコピーできる腕前だ。インターネットは素晴らしい道具だが、同時に皆を均質化してしまう恐れがある。なぜなら、他人が何をどうやっているのか即座に学ぶことが可能だからだ。

「これが本当の自分だ!」と言うのは勇気が要る。けれどそれは私たち皆が持つ選択肢なんだが、めったに活用しない人もいる。そのような機会がなかったか、とてもシャイなんだろう。十分な時間を自分自身として過ごしてこなかったのかも知れない。セラピーみたいなおかしな話に思うだろうけれど、実際そうなんだ!周りの人間に何を言われようと自分が何者か、どんな人間かを理解しなくてはいけない。

若い頃に読んだ本には、クラプトンがいかに自分自身を封印し、アメリカのブルースしか聴かないことで自分独自のサウンドを育てようとしたかが書いてあった。それが本当なのか知らないけれど、恐らくそれは正確でない記述だろうと思っていた。ジャーナリスト的セオリーでは論理的で教訓的に感じたのだろう。でも気付いたんだ。重要なことは、クラプトンが熱中していたものを最も洗浄作用の高い方法で発見しているだけで、彼が好みでない自分のプレイを排除していたんだ。

彼は自分の受けた様々な影響を自分自身の発見に使ったんだ。全く納得だね。自分の愛するものに取り組んでいれば、ステージに出るときに振りをする必要がない。本当の自分でいられる、そのことが最良の自分のプレイを引き出す源として働くんだ。

あなたの代表作はリディアン音階が使われています。なぜこの特定のスケールがあなたにとって有用なのでしょう?

要は使い方だ。もし誰かに子供の頃から慣れ親しんだスケールを聞かせたら、日常のものとしてすんなり耳に入るだろう。でも全くそれを聴いたことのない人にプレイしたら、異国的なものと感じるかも知れない。西洋音楽では12音階を繰り返しプレイするのに魅了されているんだ。

歴史を振り返れば、それがバカバカしいと思われていた時期があった。古代中国では同じ12音階を繰り返すよりも鈴でハーモニーを創り出すことに関心が持たれていた。彼らが初めてクラッシックに触れると、なぜ同じ音階を繰り返しているのか疑問に思ったんだ。

インド古典音楽では、スケールの利用法が我々とは全く違っている。上昇しては異なるスケールで下降する。演奏の時刻や瞬間によってプレイするスケールが異なったり。ロックギタリストの思考回路とは全く違うんだ。曲は1つの曲であって、キーは決して変わらず、演奏の時刻や会場がどうであろうと変わらないというロックの認識のことだ。これはF#リディアンなんだ、決まってるんだ!って。つまり私たちの成長環境が音への反応に影響するということだ。

"All For Love" のヘヴィなパートでは意外な音が使われています。ハーモニック・マイナーをいつ使うかについては、どう考えていますか?

使い方が全てだ。座ってあらゆるスケールを弾くこともできるけれど、それらは曲にするまでは何の意味も持たない。ブギーをかけてハーモニック・マイナーでプレイしても合わないだろう。どちらかが悪い訳ではなく、説得力のあるアイデアとして成り立たせるにはある程度の努力が必要だ。

"All For Love" はファイブ・コードに取り組むのに究極の素地だと思ったよ、思い切り弾くことができる。でもやり過ぎることはなかった、なぜならハーモニーが既に生きていたんだ。ナチュラルテンションがあると、マイナーキーに入ったとき、カデンツが近いと感じられる。そこではクレイジーな音をプレイできるのさ。

家のスタジオでそのソロを初めて弾いたときに、偶然にもそうなったんだ。風変りなテクニックを試してみた。1弦を2本の指でベンドしてテンションを降ろすときに1本の指を外してベンドした音が元の音に下降するままにする。強烈だと感じたよ。

意識的にやったのか分からない。でも空に新しい穴を開けたような気分だった。何かが開けたんだ。とても感動的な瞬間さ、スケールだけを弾いているよりも、時にはずっと楽しめる。

 

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サッチのインタビューはとても示唆に富んだ深いお話でした。さすがロック・ギター界の重鎮にして、マスター・ジェダイ

若手ギタリストへのコメントも興味深かったです。サッチの口からブルース・ギタリストのフィリップ・セイスの名前を聞くとは思いませんでした!私も好きなギタリストで、4月24日にニューアルバム『Spirit Rising』発売です。本人もサッチのコメントに感動してインスタで感謝を述べています。このインタビューでは名前が出ませんでしたが、NAMMイベントで見たニタ・ストラウスのことも褒めていましたね。ニタもインスタで感激のコメントをしています。微笑ましいですね。