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キップ・ウィンガー Part 1 「"Headed For A Heartbreak" は完成版よりもデモの方が優れている」

キップ・ウィンガーがメディアのインタビューに応えました。昨年11月に公開されたPodcastですので、話の内容から恐らく昨年秋頃の収録だと思われます。

Chris DeMakes A Podcast: Ep. 76: Kip Winger discusses Winger's "Headed For A Heartbreak" on Apple Podcasts

このインタビューが興味深いのは、Winger の代表曲 "Headed For A Heartbreak" を深堀りしていることです。キップによる作曲過程の解説もありますので、とても興味深いです。今週はこのインタビュー概要の和訳 Part 1です。

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1988年に時計を巻き戻して、あなたが "Headed For A Heartbreak" を書いたときについて伺います。覚えていますか?

ああ、俺とレブはNYのアッパーイーストサイドのスタジオでファーストアルバム用のデモ制作をしていたんだ。俺がキーボードを弾いているうちに、あのリディア旋法のリフを思い付いた。自分でもわからないうちに自然と浮かんだのさ。偉大なアーティストがよく言っているだろう、「最高のアイデアは偶然に生まれる」って。

それで、ヴァースのリフを何度も何度も弾き続けていた。そうすると大抵は次のアイデアが生まれるのさ、何時間後か、何日後か、時には何年後になることもあるけど。あの曲は1ヶ月くらいで形になった。

この段階でのデモ制作にはボー・ヒル(プロデューサー)は関わっていたのですか?それともあなたとレブだけ?

俺とレブだけだ。ボーは俺たちの作曲を勧め励ましたってだけだ。デモは全て俺がプロデュースしている。『Demo Anthology』ってのがあって、聴いたことないだろうけど、実のところ "Headed For A Heartbreak" については完成版よりもデモの方が様々な点で優れていると俺は思っている。

多くの場合、デモってのは(制作過程の)多くのマジックを捉えているんだよ。スタジオに入ってそのマジックを再現しようとしてもできないのさ。

デモではドラムマシーンなんだが、曲のマジックを捉えている。あのドラムは Linn 9000 で、当時の俺はドラムマシーンのプログラムに熱中してた。レブのオリジナルのギターソロもあのデモには入っている。俺たちはアトランティックのスタジオでデモを再現しようとしたが、俺の本心を言うと、デモと同じレベルにはならなかった。

なるほど、よくわかりますよ。

デモはもうしばらく作っていないんだ。今俺たちはニューアルバムを制作しているんだが、レブと作曲してアレンジをその場で考える。レブがリズムギタートラックを入れて俺がベースをトラッキングする。まあ、俺はドラムが入ってからベースパートは再録するんだけど。俺は出来る限りその時の俺たちの感覚を捉えようとするんだ。

『IV』ではデモを使った。『Pull』ではマイク・シェプリーとデモを仕上げてた。彼には卓越したスタジオでの腕がある。

素晴らしいアルバムです。あなたたちはアルバムを出すたびに優れた曲を書く希少なバンドで、私には好きな曲が沢山あるのですが、今日"Headed For A Heartbreak" を選んだ理由は、この曲がその他多くのバンドとの違いを際立たせるからです。

MTVの時代でヘアメタルバンドが人気でしたが、あなたたちは他と違っていた。それはロッド・モーゲンスタイン1人をとっても、彼は Dixie Dregs 出身ですし。レブはギターヒーローですし、ポールもそしてあなた自身がクラシックを学んでいる。

この曲にはプログレッシブな要素があり、あなた方を際立たせている。それで今日のお題にしたのです。

ありがとう。この曲の特異な要素としては、最後のギターソロもある。それに当時のラジオでオンエアされた。モードやフィールが特別な曲で誇りに思っている。面白いのは、当時のアトランティックではラジオ・プロモーターの半分以上がセカンド・シングルに "Without The Night" を推していたってことだ。

アトランティックにいたダニー・ブッシュはAORラジオの担当で、「いや、Headed で行くべきだ、この曲は他と差別化できる」と主張した。彼はインスト好きであの曲をプッシュしてくれたのさ。俺たちがあの曲をシングルにできたこと、当時ラジオで流せたという画期的な成果を得たのは彼のおかげなんだ。

特に曲の最後ではロッドが彼の才能を解き放っている。俺たちのバンドの持つ芸術要素の1つを開示しているんだ。

この曲を聴けば Winger が優れたミュージシャン・バンドだとわかりますし、ベースとキーボードとレブのソロという構成も好きなんです。多くのレイヤーがある曲とは違って、これこそバンドらしいサウンドです。80年代のHR/HMジャンルでは希少です。

面白いことに、あるときダフ・マッケイガンに言われたんだ。「お前のバンドみたいなのは好きじゃないんだが、"Headed For A Heartbreak" は凄い曲だな」って。彼みたいな人から言われて嬉しかったよ。

曲のタイトルはポールの友達から拝借したんだ。"Headin' For A Heartbreak" とかって題だったかな?いいタイトルだと思ってコピーした。確か彼をアルバムでクレジットしたよ。でもよく言われるんだ、「あの曲好きだよ、"Bringin' On the Heartbreak"」って。それは Def Leppard だけどな!

あなたがアリスとツアーしている間から Winger のデモを制作していたのですか?それとも辞めてから?

そのときから持ち越した曲は "Without The Night" だ。ポールがホテルでキーボードを使って "Miles Away" を書いていたんだ。俺は意図的に拝借したつもりはないけど、意図せず "Miles Away" のメロディを後に "Without The Night" で書いていたんだろうな。基本的に同じメロディだ。レブのクレジットがあったかは覚えていないけど、ポールと俺の曲だ。

他の曲は全て俺とレブがスタジオで1から書いた曲だ。最初にレブが弾いたのは "Seventeen" のリフだった。あいつが15歳で書いたリフで「これをどうしたらいいかわからない」と言ってたのさ。それで一緒に書いた。

素晴らしいリフです。

他にも "Madalaine" や "State of Emergency" など多くの曲を書いたが、"State of Emergency" は以前のデモのアイデアからきたものだけど、タイトルを変えた。

"Rainbow in the Rose" もプログレッシブな要素のある曲でとても美しい曲です。

ここで再び今日のお題に話を戻しますが、"Headed For A Heartbreak" のイントロではバンドが入り、ギターのスライド、ドラムの自然なフィルで始まります。ここではキーボードが主になっていて、曲を通してフックとなるリフを奏でます。

歌詞は何か特定の恋愛経験からきているのでしょうか?

いや。ただ俺は言葉をひねり出していただけさ。俺が書く歌詞は全てが何がしかの事実に基づいている。アインスタインみたいな天才に思える歌詞を書きたいと思っているけれど、そうはいかない。

曲のタイトルはあったから、それを曲の中でも使いたいと思った。最初のヴァースはただの設定さ。ところで、ほんの3年前までこの詩が

You were here when I came
And you'll be here when I'm gone

ダブル・ミーニングになってるって気付かなかったよ。(笑)俺はただ、「俺がここに来たときに君はいない」ってことだけを書いてたのにさ、別の意味は考えてなかったよ。(笑)

訳者注:自分には、キップの言う別の意味がわかりません。多分、性的な別の意味に解釈できるということかと思われますが、誰かそっと教えてください。(汗)

このヴァースではキーボードとベースとドラムとボーカルで好きなのですが、キーボードのパートですが、ここは右から出してますよね、ギターのmidiアルペジオも出してますか?

いや違う。俺は Roland のキーボード・モジュールのでかいスタックを持っているんだ。モデル名は忘れたけど、ラック機材の Yamaha モジュールもある。Roland の Juno-106 と D-50 に他のもあって、デカイmidiスタックなんだ。

キーボードみたいだけど、ギターかなとも思っていました。そしてプリコーラスでギターが入ってきます。ここが好きなんですよ、ヘヴィですが、うるさくない。面白いです。ミックスで全面には出されていないのですが、ヘヴィなんです。

レブには非凡な能力があって、どこからともなくリック上に(ギターで)降り立ち、上手くやってのけるんだ。この上ない音楽的才能がある。

あれはあいつの頭に即興で浮かんだんだ。(エレキピアノを弾きながら)曲は全て俺が書いたんだが、俺があのリフをキーボードを弾いていると、レブが一緒に弾いたんだ。

あれは魔法の瞬間で、あのとき曲に命が吹き込まれたんだ。しかもあれは全て黒鍵の奇妙なキーなんだよ。G♭、A♭。レコーディングはE♭だったが、今は(半音下げ)Dでプレイする。そしてヴァースでは奇妙な変化をする。Bまで上昇して平行調マイナーへ、リディア旋法だ。俺が興味深いコード変更を思い付いたんだ。定番のクリシェ(コード進行)にはせずに。

(Part 2 へ続く)

 

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キップはデモの方が良かったと言っていますが、レブのギタートーンは断然完成版の方が好きだけどなぁ…