7月12日にニタ・ストラウスがアリス・クーパーの今年秋のツアーには参加しないというSNSへの投稿をしてから4日後には、8月から始まるアイドル・ポップシンガー、デミ・ロヴァートのツアーに参加することを発表。メタル界を代表する女性ギタリストのニタによる驚きの転身にメタルファンに衝撃が走りました。
否定的な反応が多くのファンからあったようですが、ニタは大人のコメントでした。
「予想したよりも随分怒りの反応があったけど、感心のない人のことは何も言わないでしょう?だから反応があることは私のキャリアを気にしてくれるということ。でも私の才能を無駄使いするのかどうかは私が決めることよ」
デミのバックバンドは全員女性のガールズ・バンド。ニタはアリス前は女性バンド Iron Maidens にいたので、アリスバンドを経て再びガールズバンドに戻ることになります。
デミのツアーならビッグなショウでしょうし、プロダクションもしっかりした、ギャラの良い仕事なのだろうということは想像できます。ニタはソロ活動も続けているので、自分の音楽活動資金はポップ・アイドルのギグでしっかり稼ぐというスタイルもアリなのかも。ニタ2枚目のソロアルバムから下のシングルも公開されています。
ロック・ギタリストのポップ歌手サポートと言えば、古くはジェニファー・バッテンやグレッグ・ハウのマイケル・ジャクソン、ヌーノ・ベッテンコートのリアーナ、グレッグ・ハウは`NSYNCも、ジョエル・ホークストラはシェールのギグをやっています。マテウス・アサトはブルーノ・マーズでプレイしていました。こういう動きはもっと増えるのかも知れません。
ニタがロック界で尊敬されるアリス・クーパーのキャンプから飛び出すのは勇気のいったことだろうと思いますが、アリスの下で8年学んできたのですから、新たなチャレンジの時だったのでしょう。
最近の Guitar World 誌の記事によると、ニタは今年5月にデミ側から電話でオファーを受けました。「デミがポップからロック方面に進みたいので、ガールズバンドを組んでいるが、興味はあるか?」と。メインストリームの音楽にロックを持込めるチャンス、それにニタは興奮したそう。
この電話を受けてすぐにニタはアリスの部屋へ。「こういう話がきていて、今のツアーはできるけど、受けたら秋のツアーができない。それでもいい?」と相談したところ、アリスはニタをハグして「もちろんだ。そこで輝きなさい。君が学んだことを世界に示すんだ。君を誇りに思う」と言ったそう。しかも将来、ニタがアリスのバンドに戻る可能性も残されているのだとか。さすが、業界一の善人と言われるアリスの懐の深さ。
ちなみにアリスのバンドにはかつてのバンドメンバーだったケイン・ロバーツが戻ってくるそうです。オリアンティからニタと才能ある女性ギタリストのポジションになっていた感があったので、意外に思っていましたが、もしやニタが戻る可能性を残した助っ人の人選?
最近公開されたこちらのインタビューでニタが質問に回答した内容を一部まとめてみました。ニタは大のスティーブ・ヴァイ・ファンで有名ですが、そんな話が沢山出てきます。
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ギタリストが学ぶべき重要な3項目
1.他者との演奏方法
ギタリストは独りよがりになりがち。ギグを得るには様々なアーティストとプレイすること。様々な個性を持ったバンドやクルーと仕事をする術を身に付けること。
2.タイムマネージメント
時間を守ること。準備をしてくること。共に働く人に敬意を持つこと。
3.柔軟性を身に付ける
プロとしてその場での変更に機敏に対応できるようにする。
最高のトーンを持つギタリスト
ジョー・サトリアーニ。私はサトリアーニ・モデルのアンプ2種類を持っている。Peavey JSX と Marshall JVM410HJS 。彼のトーンが大好き。
音楽でこんなことが可能だと気付かされた体験
スティーブ・ヴァイ。過去にも今でも彼の様にギターに語らせた人はいない。"Tender Surrender" はとてもセクシーなギターソング。"Yankee Rose" ではデイヴが英語で話して、スティーブがギターで話して会話していた。ギターで語れるのだと思った。私は言葉で語ることは苦手だけど、ギターでは語ることができる。
女性ギタリストの台頭
興奮している。記事によると、最も売れているシグネチャー・ギターは女性ギタリストのものだそう。私と、リジ―・ヘイルやセント・ヴィンセントの。
Ibanez は女性アーティストのシグネチャー・ギターを増やして今では3モデルある。私とラリ・バシリオ、イヴェット・ヤング。
ニーリー・ブロッシュが Death Clock と強烈なライブをやっているのも最近観た。Iron Maidens のコートニーや、グレッチェン・メン、優れた女性ギタリストのリストはまだまだ続く。
ギター・デュエル
ヴァイやサトリアーニ、ポール・ギルバートとプレイしたことがあるけれど、ああいう私よりずっと優れたプレイヤーは決してプレイする相手と対決したりしない。彼らはそれができるけど、寛大で決してしない。
チャリティのイベントでスティーブの "Animal" を一緒に弾いたことがある。(訳者注:Jamathon 時と思われる)彼のバンドで彼の曲を弾くのだから、彼は簡単に私を打ち負かすことができるけれど、決してしない。彼は私のプレイを良く聴いて、更に美しく変化をつけてくれる。2人でダンスをしているような感じ。今後、偉大なプレイヤーと共演する機会があったらこの学びを活かしたい。
音楽の神殿に4人を祀るとしたら誰か?
アリス・クーパー、スティーブ・ヴァイ、ジョー・サトリアーニ、ジェニファー・バッテン
ジェニファーは私たち皆が必要としていたギターヒロイン。スティーブとジョーは先駆者。
スターに会えてド緊張したこと
Generation Axe をボーイフレンドと Ibanez の人たちと観に行って、楽屋訪問のためにバックステージ・ドアで待っていた。扉を開けて招き入れてくれたのはスティーブ・ヴァイ本人だった。
そこでスティーブが一人ずつと挨拶をしていて、もしかしたら私の Ibanez シグネチャーが出た後だから、彼は私のこと知ってるかも?と期待しつつ、「ニタです、会えてうれしいです」と言ったけど、彼から特に反応がなくて、次の人に行ってしまい、私は恥ずかしくて落ち込んでいた。
でも歩き出す段になって、スティーブが振り返って「君はニタ・ストラウス?」って。「はい」と答えると、彼が両手で私の手を取って「君はインタビューでいつも私の良いこと言ってくれるね」と。もう床に崩れ落ちて死んでしまいそうだった!(発狂)
人生を変えた曲
"For The Love Of God" Steve Vai
ギターが歌って、語りかけるのを初めて聴いた曲。
写真は2019年の She Rocks Award にて:ヴァイ先生、ニタ、Nick Bowcott氏
She Rocks Award でニタが受賞したとき、プレゼンターのスピーチをしたのはヴァイ先生。受賞者パフォーマンスのため待機していたニタはそのスピーチに涙しそうになる。
ヴァイ先生は去り際に「セルフィ撮ろう!」と言ってこの写真を撮影。ニタは一生懸命に歓びの涙をこらえていた。(ニタのFBより)