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レブ・ビーチ Part 2 「アンガス・ヤングみたいなサウンドにしてくれって頼んだ」

レブ・ビーチが元Winger のバンドメイトであったセンク・イグロウのインタビューに応えた動画の続きです。

 

『Pull』レコーディングのテクニカルな話、Winger ニューアルバムの話も興味深いです。概要を和訳しました。

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君にとってのギターヒーローは誰だい?

70年代の偉大なギタープレーヤーは全部聴いてきた。子供の頃、部屋のツインベッドのマットレスを外してロックスターになったつもりで遊んでたよ。ライブアルバムを掛けてさ、偉大なギタリストとジャムしてたんだ。

ピーター・フランプトン、ロニー・モントローズジョー・ペリー、実のところ後からあれはむしろブラッド・ウィットフォードの方だとわかったんだけど。

その後バークリーに行って次のフェーズに進んだ。ラリー・カールトンやスティーブ・モーズ、それに俺はバイオリニストのジャン・リュック・ポンティが大好きなんだ。

アラン・ホールズワースは彼とアルバムを創ったけど、そこでお気に入りのソロが聴ける。彼のアルバムは擦り切れるほど聴いたよ。ジャズ・ロックだけど、とてもインサイド・ミュージックだ。『A View From The Inside』はとても影響を受けている。

よくわかるよ。ギタリストというのは様々なプレイヤーをコピーして学び自分の表現を身に付けるものだ。違うプレイを合わせたりして新たな物をつくる。

俺は今ギターレッスンをやっているから、世界中のギタリストを教えているんだけど、彼らの1つ大きな問題はヴィブラートだ。

(訳者注:ギタリストの多くがヴィブラートに問題ありというのは、どこがどうなのか、非常に興味ありましたが、次の話題に移ってしまい内容には触れられませんでした。残念)

僕は Night Ranger も大好きなんだけど、君は以前ブラッド・ギルスとジェフ・ワトソンのプレイを頭の中で融合したと言っていたよね。タッピング(ジェフの代名詞)とアーム奏法(ブラッドの代名詞)ということさ。

そうだっけ?俺はエイトフィンガー(ジェフの代名詞)はやらないけど、俺の後で Night Ranger に入って、今は Whitesnake で一緒のジョエル・ホークストラはエイトフィンガーを完璧にやってる。俺は俺のやり方であの多くの(指板上の)動きを再現する方法を考えなくちゃならなかった。

僕はもちろん Winger の大ファンだけど、『Pull』は傑作だね。ギタープレイヤーとしての君の作品群の中でもマイルストーンになる、君の進化を感じる。あれにはどう取り組んだんだい?

"Who's The One" あれは俺が弾いてたら、キップが他の部屋から走って来て、「それは何だ!?」(興奮した声で)と言ったのさ、俺は「知らねー」だったけど。そこでもうキップには曲全体のイメージが浮かんで、全部歌いだしたんだ。自然に生まれた曲だよ。

『Pull』はレコーディングがそれは大変なアルバムだった。プロデューサーのマイク・シェプリーは全くの完璧主義者で、製作予算は30万ドルだった。32トラックの Otari(日本のメーカー)デジタル・テープ・レコーダーを3台使って。デカイ機械を同時に動かしていたんだ。合計で96トラックだ。

全パートでギタートラックは8本あった。つまり、4本のギターで同じ演奏をするんだが、完璧でなくちゃならない。タイムが違うって何度もやり直した。次にワーミー・ペダル(ピッチシフトペダル)を使ってオクターブ下げにして、アルバム全曲を単音プレイするんだ。それから12弦ギターの高音弦だけ(副弦のこと、3弦~6弦は1オクターブ上になる)を使い弦を貼る。

ナッシュビル・チューニングだね。

そう、それ。アコースティック・ギターでしか聞いたことないと思うけど、俺のアイデアでエレキでやってみることにした。"Madalaine" にはアコースティックのパートがあるだろ?ボー・ヒル(プロデューサー)が12弦で高音弦だけ使ってやってみろと言ったのさ。それでこれをエレキでやったらどうなるだろうと思った。

それでエレキの12弦ギターを買って、自分のフロイドローズ搭載のギターでやってみた。面白いことにアームが同じ場所に留まるんだ。(弦の)テンションが全く同じなんだ、すっげーペラペラに細い弦なんだよ。『Pull』以降の俺たちのアルバムでは殆どこれをやってる。すっげー面倒くさいけどな。

(訳者注:これも興味深い。副弦を張って6~1弦のテンションが同じになるとそういうことが!弦が全部細い訳だ。しかしギタートラックのレコーディングは凄く手が込んでいる!)

覚えてるよ、君と『IV』をレコーディングしていたとき、ナッシュビル・チューニングでやってたよね。あのハーモニーを得るためだ、同じ周波数帯を邪魔しないから。

こういう(ハードロックの)リフを弾くだろ、ミックスでナッシュビルでやったの(トラック)を入れると、ボーカルの前に出るんだ。急にリフが前面に出る。何でかは知らないけどな。

(訳者注:エンジニア的に解説しようとするセンクと、ド直感に語るレブが対照的でオモロイ!)

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『Pull』で使った機材は覚えているかい?

驚くだろうけど、あれは Mesa/Boogie だ。あそこには沢山のアンプヘッドがあったんだけど、使いまくったのは Mesa/Boogie だ。ウォームでサウンド的に紛れもなく最高だったんだ。

Mesa/Boogie とは思えないよ。僕には Mesa/Boogie はコールドなサウンドのアンプという感覚だ。何と言うか、Marshall にステロイドを打ったような。

ハハ、プロデューサーのマイク・シェプリーは(AC/DCの)『Back In Black』やヒットした Def Leppard アルバムのエンジニアで、それらのアルバムのギターサウンドを創ってきた人だ、(アンプへの)マイキングとかさ。

今使っているギアは何だい?今も Suhr ギターなんだよね?

ああ、ギターは俺のモデルとアンプはジョン・サーが手を入れた Marshall を2台持ってる。実はそっちの方が Custom Audio Amplifiers OD-100 よりも好きなんだ。キップも OD-100 を持ってて、それで俺たちは Winger のアルバムを録ってるんだけど、それはジョン・サーが俺たちに組んでくれたやつなんだ。

彼がどんなのにして欲しいか?って訊くから俺は AC/DC のアンガス・ヤングみたいなサウンドにしてくれって頼んだんだ。彼はいいよと言って組んでくれた。素晴らしいサウンドで、今までの Suhr ヘッドの中でも最高なんだよ。それがキップの家にある。

それで俺はジョンにあれを新しいレブ・ビーチ モデルのアンプとして創れないかと訊いたんだ。彼は「いいよ、あのアンプを送ってくれ(そうしたら同じのを創る)」と返事をくれた。そしたらキップが「俺が生きている限り、絶対に渡さない」って言うんだぜ。(笑)

ハハハ、彼は良いものを知っているから、決して手放さないんだよ。(笑)
僕は幸運にも Winger の新曲を2~3聴かせてもらっているけれど、すっかり気に入っている。君はニューアルバムをどう思っている?僕には『Winger IV』はプログレッシブで『Karma』はファンとして大好きなアルバムだ。

俺にとってもだ。『Karma』はヘヴィだろ。『Winger IV』はキップのアルバムだ。アルバムは兵士たちに捧げられていて、彼にはヴィジョンがあり、アルバム全体が頭の中にあるからその通りやってくれって言ったんだ。だからあれはキップの子供さ。

だが『Karma』ではキップはずっとクラシックをやっていたから何も無いと言うんだ。俺に何をしたいか訊くから、ヘドバンして、シングアロングして、キャッチーなサビがあって、ヘヴィなギターリフのあるやつがやりたい!って答えた。すると「いいな、そうしよう」(キップのモノマネで)だった。

キップにそっくりだよ!(笑)実は数年前にキップがこっちでギグをやったんだ。君は Whitesnake か何かで来れなかった。キップから連絡がきて、一緒に Winger 曲をやろうと言われたんだ。僕は君たちとはスタジオ・レコーディングしかやったことなくて、ライブで一緒に演奏するのは初めてだったんだ。でもギグまでには10日しかなかった。

フルセットで?

そうなんだ。しかも僕は生活の為の顧客の仕事、レコーディングとアレンジの仕事もあったから、曲を覚えるのに割ける時間は1日に1~2時間しかなかった。夜、一人でベッドの中で思ったよ。この挑戦をやるのか?もしステージで曲を思い出せずに失敗したら?しかも君のギターパートを覚えるのは至難の業だ。でもこれをやらなかったら、一生後悔するだろうと自分に言い聞かせた。それで何とか全て覚えたのだけれど、問題は僕の脳には収まりきらなくて、溢れてしまったということさ。

それで当日、プレイしていてある曲のあのパートが近づいてきた。思い出せるか自信が無い。そのパートがきて、覚えていたけれど次のパートが更にやってくる。とにかく何とか全てプレイできた、神の助けがあったのかも。何よりも嬉しかったのは息子のエッフェと共にプレイできたことだ。このときのビデオをアップロードしてあるから、君にリンクを送るよ。

エッフェはそれこそ1日19時間くらい君のソロパートを真剣に練習していたよ。僕には君のようなプレイはできないから、ソロは息子に任せて、僕はジャムパートをプレイしたんだ。素晴らしい家族の思い出になった。

 

僕が思うに Winger はキップとレブの音楽がロッドのリズムの上に載って完璧なんだ、誰が手をつけることもできない。

ありがとう、嬉しいよ。どのバンドにもそのサウンドってのがある。何人かが集まって独自のサウンドが生まれるんだ。メンバーが交代するとオリジナル・メンバー程良いサウンドにならないってことはある。でも確か、キップがニューアルバムで君に何か弾いてもらうって言ってたよ。

ニューアルバムは君らの作品群の中でどう位置付けるんだい?

『Karma』と『Better Days Comin'』の間のどこかだ。ヘヴィなリフの入った曲もあるし、キャッチーなサビの曲もある。間違いなく Winger アルバムで、ビッグなギターソロのエンディングがあるバラード曲もある。"Down Incognito" みたいなポップ曲も数曲あるし、もちろんヘヴィな曲も。多彩な曲の入ったアルバムになるだろう。キップは真剣に歌詞に取り組んでいるよ、最高作にしようとしているんだ。今のところ素晴らしいものになってる。

最後の質問だ。若いミュージシャン、僕の息子のような者たちへのアドバイスは何だい?

パンデミックで難しくなっているけど、プロモーションをすることかな。YouTube に投稿してフォロワーを作ること。今やネットワークが大事だからな、できるだけ多くの人にプレイを見せること。今の音楽界は本当に厳しくなってる、今からやるならオンラインに集中すべきだ。俺の頃はクラブで演奏してファンを作って…って感じだったけど、今はもうそうじゃない。

僕は君の『A View From The Inside』が大好きだよ、聴いていない人は直ぐに聴いて欲しい。"Aurora Borealis" "Attack of the Massive" "Whiplash" "Hawkdance" いくつものメロディが組み合わさってフュージョンサウンドが繰り広がる。ところで "Attack of the Massive" の君のタイム感は素晴らしいね。それでいて、実に音楽的、つまり複雑なのに容易に咀嚼できる音楽なんだ。素晴らしいよ!

俺が通しで酔っぱらってるみたいに聴こえるよな、実際にはレイドバックしていたんだ。あのサウンドが好きでさ、ちょっと違うノリになるだろ、ビートにレイドバックしてると。ソロでは俺がタイムを外しているように聴こえそうだけど、あれは意図的にやってるんだ。

レコーディングのバンドは君の地域に住んでいるメンバーかい?

ああ、たまに集まってロックのヒット曲をプレイしてる仲間だ。

そうか、いつか君たちがスタジオでライブレコーディングしたものが聴きたいよ。なぜなら君らが一緒にプレイしたら何かが生まれそうな感じがするんだ。

ああ、ルカサーのアルバム『I Found The Sun Again』(訳者注:ルークのこのアルバムはスタジオにミュージシャンが集まり、ライブレコーディングされている)みたいにだろ?ああ、彼みたいにやるべきだったよ。でも俺のアルバムは15年以上の積み重ね作業で出来ていて、ああいうジャムのライブな感覚は無いんだ。あったら良かったと思う。次はその方法でやろう。

ぜひどんどんレコーディングしてくれ。君から学ぶことは多いんだ。今日はありがとう。まだ質問は沢山あるから、次回 Part 2 をやろう。

ああ、やろう。君は凄く才能あって謙虚で本当にいい奴だよ。

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「キップは真剣に歌詞に取り組んでいる」のところで思い出したのが、18年に私がキップにインタビューしたときのこと。近年の作品で歌詞を他のミュージシャンに依頼している件について訊いたところ、本当は全部自分で書きたいけれど、大変な仕事なのだと言っていました。ニューアルバムでは一念発起して全曲の歌詞を書いているのかも?

「歌詞を書くというのはとてもやっかいな仕事だ。俺はくだらない歌詞は書きたくない」 ー キップ・ウィンガー

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