スティーブ・ヴァイが人気のギタリスト向け番組 Guitar Villains に登場しました。この番組には昨年ジョー・サトリアーニも登場して深い会話をしていました。
インタビュアーがかなりのヴァイファンでギタヲタのため、楽曲についての深い質問もあり、なかなか興味深い話が聞けました。長いインタビューのため、一部概要を和訳してみました。今週は Part 1です。
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あなたの "Candle Power" でみせたジョイント・シフティングのテクニックと同様に難しくて、かつ全く異なるテクニックということでは…
"Gravity Storm" かな?
あれも驚きのテクニックでしたが、僕が思ったのは "We Are One" のソロです。全ての音符があなたのアーム使いのコントロールによって操られていました。僕はあれがあなたのソロ最高傑作だと思います。全ての音符が完璧にアーム演奏されていました。とてつもなく難しいテクニックです。音符のベンドがミクロの単位で操られていて、かつ曲としての美しい流れがあります。
嬉しいよ、実は私にとってもあれは自分の最高のソロの1つだ。私の能力のイノベーションを含んだ演奏だよ。私の能力には限界があるからね。自分の頭に聴こえる音楽、それを実際に演奏しようとしてみて、これは思ったよりもずっと難しいと思ったのだ。だから真剣に練習しなければならなかった。
あれを創り出す感覚は最高だったよ、2ndソロは全てをアームで弾いている。アーム操作によって全くのエイリアンのようなサウンドに仕上げた。とても難しかったよ、イントネーションは最高とは言えないが、及第点だろう。サウンドが波のように上下する、ここは全部ダブルストップなんだ。音符が着地して解決する、そこから更に次の音符へ、左手で演奏しながら、アームを引くんだ。アームを引き上げながら音符を操作する。聴いて面白いサウンドを創造できると確信していたんだ。
これこそ私がギターを弾き続けてきた原動力なんだ。自分の創造的可能性を実行するということだ。それを楽しむこと、それこそが真の成功なんだ。だからあの曲は私にとって最高の成功だよ。世界的な成功というものはいいものだろう、しかし愛情をもって行ったことの結果は、君の情熱がどのような分野のことであっても素晴らしいのだよ。
映画『クロスロード』のジャック・バトラーでは悪役(Villain)を演じたあなたですが、あの役はあなたとキース・リチャーズとフランク・ザッパとスティーヴィー・レイ・ヴォーンが候補に挙がっていて、あなたに決定したそうですね。
そのことは知らなかったよ。スティーヴィー・レイ・ヴォーンがインタビューで話していたので、彼が候補だったことは知っているけれど。
あなたの使用しているピックのゲージ、ギター弦のゲージは?また、今一番気に入っているギターとアンプとエフェクターペダルは?
ピックはわからない。弦は9-42、ギターは最新のPIA Onyx Black、アンプは Synergy の私のモジュールだ。エフェクターペダルはもう余り使わないのだよ。そうだな、こう言っておこう。35年前に日本の職人がカスタムで作ってくれた「Sobbat」で(訳者注:京都のハンドメイドエフェクターメーカーと判明しました。Bella Voce Gibson さん、情報ありがとうございます!)フェイザーとフランジャーの中間みたいなものだ。でも音符をゴリ押ししない、音のクオリティや深みの面でずっと私のお気に入りなんだ。
次は曲名当てクイズです、(曲を流す)
これは簡単だ "Bad Horsie"。
そうです。ここでお訊きしたいのですが、あなたのプレイで同じフレーズのときに、最初はピッキングハーモニクスを使い、次はまた違うプレイをしています。これは意図的なのだと思いますし、多くのギタリストはどうしたらあの音が出せるのかと思っています。でもあなたは機材が変わってもあなたのサウンドがしますし、結局は手がどう弦を弾くのかにかかっているのだと思うのです。
そうだね、こういうのは内面の働きだ。自分の人格や感情の大小が、肉体を通じてギターで表現されているのだ。身体が音を弾いているのだが、その原因である意図は頭にある。パフォーマンスにおける意図とはどこにフォーカスするかだ。プレイと自分が一体となっているか、自分が音符の一部となっているか。または雑念にのまれ、恐れを抱いているか。自分と楽器との繋がりが生まれた状態では、そのようなサウンドのニュアンスは自然と生まれるものだ。これは私の場合のことで、人によってその発生の仕方は違うのだろう。
次はこの曲です。(曲を流す)
"Windows To The Soul" だな。
僕はあなたの音楽が好きで沢山聴いていますが、この曲は最もテクニックを要求する曲だと思います。
ああそうだ、この曲は最も演奏が難しい曲の1つだ。こういう曲をレコーディングするとき、私は単に録音ボタンを押して弾く訳ではない。 "We Are One" もそうだが、イメージするのに多くの時間をかける。頭の中でパッセージを聴きながら何度も辿るんだ。少しずつ手を加えて、完全に自分の言葉となるまで、考える必要のなくなるまで準備する。ソロをワンテイクで録るような曲ではない。少しずつ録音してキープしたり、手を加えたり、やり直したり。それらが音楽として聴こえるまで、全ての細かなニュアンスが美しく表れるように。
私はギターに夢中な人間なんだ。スティーブ・ヴァイのファンのように語るけれど、ギタープレイを解剖して見ていくと、あの曲には本当に心を動かされるのだ。自分の曲に感動する、それで構わないのさ。
変拍子を自然に演奏することに凝っていた時期があってね、"Windows To The Soul" は 11/8拍子か11/16拍子だ。それは捉え方による。このような変拍子の上で演奏して自然に流れるようにするには、フレージングにしても定番の4/4拍子とは全くの別物になる。だからこの曲の私のソロは気に入っているんだ。
次はこの曲です。(曲を流す)
"Tender Surrender" だな。この曲と "Windows To The Soul" には大きな違いがある。この曲はシンプルな4/4拍子で、私が音楽に求める深さは余り無い。
この2曲には類似点はありますが、僕は "Windows To The Soul" は最もメロディックな曲だと思います。その一方で最もテクニカルな曲でもあります。通常はこの2つの要素は共存しません。また、"Tender Surrender" は "For The Love Of God" と並んで、最もアイコニックなスティーブ・ヴァイ曲です。作曲時にはどれくらい音楽理論に基づき、一方では自分の頭に聴こえる音楽に従うのでしょうか?
それは答えるのが難しい質問だな。なぜならその2つは共に作用するからだ。私は音楽理論を学んでいたから、耳に聴こえるものをどうすればいいのかはわかる。そして理論に基づいたコンセプトで何をどう作成すべきかもわかる。
しかし、"Tender Surrender" のような曲では意図的な音楽理論に基づいた思考は入れていない。理論に従うのではなく、頭にある音楽を聴けと促されるんだ。それがあれば十分だ。もし作曲家になりたくて、音楽の言語を操りたいということはもちろん良いことだ。ジャズの演奏やいろいろな場面でとても役に立つ。その一方で、それが邪魔になる人もいる。究極のところ、自分の内面から聴こえる音楽が創造的創作の源泉だ。
(Part 2 へ続く)