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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ 「トーンは頭の中にある」

ヴァイ先生が今年の Sweetwater Gear Fest にオンラインで登場しました。自身のギタースタイルの進化について語っており、興味深い内容となっています。

トークのうち、お題について語った部分をまとめて和訳してみました。(先生のお話が途中で前後して進むので、和訳ではテーマに沿った流れに再編集してあります)

 

 

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もう40年も前になるのか。フランクとのショウをやった後、最初の朝だ。私は20歳になったばかりだった。フランクに昨夜の私はどうだったかのかと訊いたんだ。

するとフランクは、「スポート(ヴァイ先生のこと)お前は素晴らしいギタープレイヤーだ。しかしお前のトーンはエレキ・ハム・ハンドイッチだな」と言った。思わず「どうして?ギアは揃ってる。ストラトもアンプもあるのに!」と訊くと、フランクに「トーンは頭の中にある」と言われた。

私にはその意味がわからなかった。でもフランクは正しかった。私がそれに気付くにはしばらく時間がかかったのだけれど。

当時の私はロック・リフや様々なモードを弾いていて、まあ及第点ではあったけれど、素晴らしいサウンドではなかった。これというロック・トーンではなく、個性的なサウンドでもなかった。

若い頃、私が大好きでよく聴いていたフランクのソロは "Inca Roads" だ。彼は弦をピックでタッピングしていたんだ。私はそんなのを聴いたことがなかった。自分でもやってみたがいまいちだったよ。

そして私がバークリーにいた頃、Van Halen が登場したんだ。そして全てを変えたのさ。あのトーン、あのタッピング使い、これぞレベルの違う世界だった。私は自分のトーンを何とか見つけなければと思ったよ。

 

トーンの探求

フランクの「トーンは頭の中にある」という言葉の意味とは、トーンは君の頭の中に聴こえる音の反響だ、ということ。多くの人はそれを聴いていない。私はトーンという言葉を使うとき、トーンの2つの面について常に表現しようとしている。

トーンの第一側面は、物的装置にある。アンプやPU、使用ギター、全てのギアだ。そこに神経質になったなら、トーンを改善するためにケーブルやバッテリーを変えるようになるだろう。神経質という言葉は強すぎるかも知れないな、その道を深堀したい者たちのことだ。私は違う。まあ、それでも私は良いケーブルとバッテリーを使っているけどね。(笑)当初、私にはこれらのことは不可能だと思えたんだ、高額だからね。

だが、元々のトーンが持つ側面とは、君の頭にどう聴こえるのかにある。自分のプレイの音をどう目で耳で聴いているのか。それを想い描くことができれば、楽器へのアプローチの仕方、触り方へとイメージが動作に解釈されていくはずだ。

皆が知っているように、トーンとはどう弦を触るかによって違う。音は様々な要素によって異なるのだ。ピックの持ち方や、その強さ、ピックと弦の交差の仕方(実際にやってみせる、29:30頃)、ピックを強く持つか優しく持つか、ピックする弦の位置でもトーンは違う。君の弾いた音の全てが自分のトーンを創るのだ。

頭の中そして指に良いトーンが聴こえていれば、君が手にする楽器が何であれ、アンプだろうが何にプラグインしていても、君は工夫してできる限り良いサウンドにするだろう。

さて、私が Alcatrazz に参加したとき、イングヴェイの後任だったのだが、彼がシーンに登場したときは、またギタープレイヤーにとって驚きとなった。なぜなら彼は単にストラトを Marshall に繋いであの素晴らしいトーンを出していたから。もちろん彼のプレイには度肝を抜かれたよ。

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それで多分83年頃、私が『Flex-able』を作った後で、私のスタイルには完全な変化が起こった。頭の中に聴こえる音が違うものになれば、楽器を弾く自分の手がそれに従って動きを調節するからだ。それはやがては自分のギアにも反映されるのだ。自分に聴こえている特定の音を探そうとしているのだからね。

そうして私にはアンプの音の違いがわかるようになったんだ。もちろん、アンプのサウンドの違いは知っていたけれど、それまでの私は何でも手に入ったものにプラグインしていたんだ。

私は自分のプレイスタイルを完全に変えた。(ピッキングの位置を示して 31:30)(ブリッジに近い位置を示し)ここを弾くことでよりコントロールできる、するとトーンが変わったんだ。

もう1つ、トーンの研究で興味深かったのは、ゆっくり弾くようになり、注意深く音に耳を傾けるようになったことだ。弾き方を変えると、各音が異なる響きになった。しっかり聴くということは非常に重要だ。たとえ1音であっても、その音に磨きをかけて弾くこと。

幸運なことに、私の場合は上手くいった。トーンが変わり、意識的に努力した。トーンというのは常に進化し続けるものなんだ。

 

アーム奏法

フランクとの仕事を終えて、シルモアで家を買いスタジオを造った頃、最初のソロアルバム『Flex-able』を制作したのだが、これを聴くと私の当時のスタイルがわかるだろう。妙で雑なピッキングをしている。それに私が心理的レベルでギターに惹かれているもの、アームに気付くだろう。直感的にアームでできることがわかっていたんだ。

当時、アーム使いで最高だったのが恐らくジミ・ヘンドリックスだろう。ブライアン・メイの使い方も好きだった。しかし使い方としては Dive bomb とエフェクトとクールなノイズを出すというものだ。私には直感的にもっと大きな、異なった使用法もあるとわかっていたんだ。もちろん Dive bomb は大好きだけどね。

そして指とアームの棒で何ができるかを考えたんだ。それが時を経て進化したものを私のジャムで見ることができる。それは常に進化を続け、毎日だよ。それはつまり、少年がアイデアを想像し、何かを探求するのに大きな喜びを見つけるのと同じさ、私が今日になってもしていること。

私のキャリアが何らかの成功を収めているように見えるのであれば、それはその熱意の結果だ。なぜなら、それが今でも私に最高のスリルを味わわせてくれるものであり、自分の潜在力を活用していると感じさせてくれるもの、私のこの世界での役割だ。常に最高の気分にしてくれる。創造的になり、新しいモノ、違ったモノを発見することが全てなんだ。それに私はそういったことをシェアするのも好きだ。

ギター・コミュニティに最初に私の存在を知らしめた曲が "Attitude Song" だと思うが、これには「アームで何ができるか」という私の内面的ヴィジョンが反映されている。私はアーム・アップをしたかったのだが、当時のギターではできるものがなかった。だが、フロイドローズやファイン・チューナーといった発明により、様々な種類のテイル・ピースが出てきた。

しかし、そうなる以前、私にはなぜギターのアーム・アップができないのか理解できなかった。ブリッジの後ろ側の木材が邪魔をしているのに気付いて、ハンマーとドライバーで木材を削り出した。するとアーム・アップができるようになったのさ。最高の気分だったね。

それで "Attitude Song" を書いたのさ。アームでハーモニクス音を出してメロディを弾くというアイデアがあった。アームを使った新たなテクニック、そして面白いモノを探していたんだよ。この探求は終わることがないのさ。

そうして私のスタイルが進化を始めると、快適な状態に達した。24~25歳の頃だ。映画『Crossroads』をやっていた頃で、DLRにいた頃の私のトーンは本物のロック・ギタープレイヤーのものになっていたと思う。それ以来、今日に至るまで、私はただこの楽器を探求しているのだよ。大好きなことだから。より一層、興味深くて甘美なプレイを見つけるためにできることを何でもしている。

まあ、これがスティーブ・ヴァイのギター・スタイルの進化についての話だ。ディレイに関する教材ビデオを作っていたときにプレイしたビデオを最後に楽しんでくれ。来年は対面でこのイベントに出席したいと思っている。ありがとう。