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スティーブ・ヴァイ Part 2「君の創造的意図の価値を損なうのは唯一、君の思い込みだ」

スティーブ・ヴァイが昨年末に登場した次世代ギタリストたちの運営するポッドキャスト The Guitar Hour Podcast からの一部概要和訳の続きです。

theguitarhour.libsyn.com

今週も有難いヴァイ説法が目白押しです。ヴァイ先生は年末に腕の手術をしたようなのですが、順調に回復されることを祈ります。

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あなたには常に創造的アイデアが湧いてくるのでしょうか?何か戦略的に自分をインスパイアする必要があったことはありますか?

私は誰もが潜在的に天賦の才を持っていると考えている。その才というのは、シンプルで満足感を伴い、オーガニックで人を惹きつけ、そこに恐れはなく、失敗や未来への恐怖もない。個性的な創造性の発揮だ。それは些細なことにも発揮される。料理や教育、政治や数学、音楽かも知れない。何でもいいのだよ。それをすると気分が良く、創造力を感じられるもの。多くの場合は他者を伴う活動だ。

自らの非凡な才能に自在にアクセスできる天才というのは、例えば私が見てきたのは、フランク・ザッパ、デヴィン・タウンゼント、ジェイコブ・コリアー、トミー・マーズなどだ。彼らは常に創造的な状態にいられる。私には彼らのような才能はない。彼らのようだったら良かったと思うよ。

私が何かを閃くには妖精が舞い降りて創造的衝動が生まれる必要があるんだ。それがあったら、何とかそれを記録に残す。重要だから言うのだが、君の創造的意図には価値があり、それを価値のないものにするのは唯一、そこに価値はないという君の思い込みだ。わかるかな?君がしていることで、たとえ僅かでも興奮を覚えられることがあれば、私のアドバイスはそれを記録することだ。私はそうしている。

私に閃きが起こるのは4~5%の割合だ。でも私はこれを増幅できる、閃きを記録しているからだ。例えば、"For The Love of God" も "Candle Power" も、あの短いフレーズのアイデアがあっただけだ。私は13歳からずっと浮かんだアイデアを記録して「永遠の戸棚」に保存しているんだ。こうすることで自分のインスピレーションを再現して天才を真似ることができるんだ。"Candle Power" でもあのリフのアイデアを取り出してその上でプレイすることで、元のインスピレーションが自分の創造性に火を点けることになる。少なくとも私にはこの方法が上手くいっている。

多くのアーティストが常にはインスピレーションを得られないことで悩んでいると思いますので、今の話はとても参考になります。

私たちの敵の1つとして心理的時間がある。実際、それを信じ込まない限りは何の力も持っていないのだが、それ故に君が継続して活動する障害となるのだ。例えば何か達成できなかったから落ち込んだとして、それは自分がある時間枠の中で達成することを望んだのではないか。

天がこう告げているのかも知れないだろう、「その時間概念は正しくはない」とね。君が興奮するアイデアに熱中して創造しているとして、期限といったものはそれを変えてしまう。君が自己の至福を追求する限り、君は期限よりも早く良い品質の成果物を仕上げるかも知れないし、期限よりも後になってより良い成果物を仕上げるかも知れない。

しかし、君が心理的時間に縛られ始めると、つまり「今仕上げなくては」といった心理で時計の示す時間とは違うものだ。例えば、「27歳までに有名にならなければ、俺の人生に価値はない、落伍者だ」というようなものだ。これが心理的時間だよ、幻想だ。君が仲間と楽しんで創造的時間をすごしているところに現れる恐れ。成功しないかもという恐れだ。恐れも心理的時間も実際には実在しないもので、君の創造性を妨げるのだ。

あなたの創造的な時間の掛け方について知りたいのですが、あなたはこの20年間ではスタジオアルバムの発表が少ないです。これは心理的時間とは違って、作品に掛かるべき時間が自ずとあるということでしょうか?

わかるよ。これは私にはやりたいことが他に沢山あるからなんだ。私が起床している時間の8割は音楽にかけているのだが、それは全てがスタジオアルバムに対してではないのだ。それに以前に比べて意識的に仕事をスローダウンしているんだ。

今はボーカル入りのアコースティックのアルバムを制作している。これが思ったよりも難しくてね。随分と時間をかけたよ、正しくやるために。別に技術の高い演奏ではないのだが、メロディックなDNAを楽しんでいるよ。私の「永遠の戸棚」にはそのDNAを持った素材が沢山あるんだ。それに私の声は音域が限られているし、時間がかかるんだ。もうこれにかかる時間を気にするのはやめた。これが他者へのインスピレーションになることを祈っているよ。

自分が置かれている状況がどこであれ、感謝の気持ちと楽しむ気持ちを持つことだ。「今どこにあるか」というのは何をどう演奏するか、演奏技術の習熟度に関わらず、経済状況や家族/恋愛状況、事業環境に関わらず、所有機材の量に関わらず、君が持つもの、持たないものに関わらず、それら全ての状況と手を携える方法は見つかるのだ。それが全てを変える。そこからどこを目指すのかを考えるのは簡単だろう。健全で、ストレスのない精神的な安定の状態にあれば、自らに備わった創造的本能がより一層増幅するのだから。

エゴが邪魔をしているのかどうか見分ける方法はありますか?

もし君のしていることに何か抵抗感や緊張感があるときや、心の中で不満を述べていたり、イライラが募っていたり、我慢していたり怒っていたりするとき、それはエゴが君の創造的な至福の邪魔をしているのだ。逆に、何かをしていて、明瞭感があり、時間経過を感じなかったり、意欲があり、見事に進められたり、問題点がチャンスに感じられたり、それは君が天賦の創造本能に従っているということだ。それが君本来の姿だ。

なるほど。一方であなたの過去作品では弾き手に高い演奏技術が求められます。あなたは今でも至福を追求するとこのような曲を創りますか?

私は今も発展途上なのだよ。今取り組んでいるアコースティック作品がある。アコースティックでは私の従来の演奏の様にディレイやディストーションをかけないからね、アームも使えないんだ。(笑)でも楽しいのだよ。今取り組んでいる奇妙なコードがあって、ネックのハイポジションで弾くのだが、親指はこんな風なんだ。これを弾くのに瞑想しているよ、完璧なサウンドが得られるまで。

私のプロセスというのは、完璧なサウンドを得られ、ミスがなくなるまでひたすら取り組むというものだ。トーンの質に全神経を集中する。そうして、弾くということを考えなくてもいいレベルまで到達したら、そこで初めて音楽制作のスタート地点に立ったと言える。

弾くことを考えなくてもいいレベルに達すると新たな境地が開いて指の動作の記憶ではなく自分のプレイに別のものが注がれるのだ。

私は長いことこういう(訳者注:音声では不明ですが、画面上で手を見せていると思われます)弾き方をしていたので、来週腕の手術をしなくてはならないんだ。とにかく、思うように弾くための葛藤はある。しかし問題などない。

なぜなら私はフランク・ザッパとの仕事の経験から学んだからだ。「挑戦を止めなければ、失敗することなどない」のだよ。フランクから渡された難解な譜面を見て、不可能ではないと思ったのだ。諦めなければ自分にできない訳はないだろうと。"Candle Power" のジョイント・シフティングもそうだった。私にはとても難しかったが、(諦めなければ)私にはできるとわかっていた。挑戦は至福を追求する過程なのだ。

(Part 2 終り)

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ヴァイ先生が腕の手術をしているのにはとても驚きましたが、インタビュー中にも皆に大事ではないので心配するなと言っていますし、手術後にCameoをやっている映像ではお元気そうで、既にギブスも取れて右手も動いていますので安心しました。

ところで、心理的時間の話のところで、「もうこれにかかる時間を気にするのはやめた」と仰っています。これは歌モノのアコースティックアルバムにまだ時間がかかるということ。(悲鳴)いつになったらエレクトリックのニュースタジオアルバムができるのでしょうか…

それに、 Generation Axe の2枚目のライブアルバムに数年前の Jamathon ライブ音源もありますね。いつできるのだろう…(遠い目)