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スティーブ・ヴァイのギターレッスン「どのように真の意味で聴くか」

スティーブ・ヴァイRage Against the Machine のギタリストで社会/政治活動家でもあるトム・モレロのPodcastに登場しました。

 

Part 1 と 2 に渡る2人の会話は、Part 1 がヴァイ先生の音楽キャリアを語る内容で、Part 2 は2人の共演経験など、ディープな話に入っていきます。

Part 1 の内容は当ブログでも何度か取り上げているので、レアな内容が聞けたPart 2 から興味深かった内容を一部和訳してみました。

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Tom Morello (TM): 俺らが初めて共演したときの話をしよう。スティーブ・ヴァイは愛すべき人物でありながら、粘り強い人でもある。Musicians Institute であるイベントを開こうとしていたんだ。あなたから電話をもらって「こういうことをしようとしている」と聞いた。こりゃ映画『クロスロード』になるって思った。あなたのことは大好きだけど、それはやりたくないと思ったのさ。

それでもあなたは諦めずにまたメールしてきた。それで、「じゃあ、ずっとトークするってのはどう?」って返してみた。俺はロックとギタープレイに関しちゃ過多のインテリだからさ。そしたら「いいよ!」って言われて驚いたよ。しかもメンバーはトレヴァー・ラビンスティーヴ・ルカサー、スタンリー・ジョーダンだった。あれができて良かったよ。

(訳者注:2000年9月21日、 The Los Angeles Chapter of the Recording Academy と Musicians Institute の主催により、Guitars in the Round と題してマスタークラス、ジャムセッションが行われた。ジョー・サトリアーニも参加している)

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イベントの前日に連絡があってさ、「リズムセクションが要るね、スティーブみたいにアンプを持って来て」ってことで、こりゃあ彼は演奏なしの話を反故にしたってことか?と。「デモンストレーションが必要になるかも知れないから、念のために」ってことで。もう逃げようがなかった。実際に映画『クロスロード』になったよ。全員の分のアンプがあってさ。

俺に言わせるとスティーヴ・ルカサーは同業者でも最も優れた音楽理論家で、他の誰よりもセッションをこなしてきた達人だ。スタンリー・ジョーダンは多分、史上最もテクニカルな技術の高いプレイヤーだ。指を10本使ってショパン風の(タッピングを)するよね。そしてスティーブ・ヴァイだろ、それで俺だよ。R2-D2 やらアヒルが鳴いてるような音を出すのが俺。

それでサウンドチェック、俺のはGコードを一発弾いて「OK!」だった。スタンリー・ジョーダンなんて譜面全部を弾いてた!

Steve Vai (SV): ああ、そうだった!思い出したよ。

TM: しかも彼はあちこちで止まって(PAと)調整してたんだ。スティーブ・ヴァイに騙された!と思ったよ。でも結果、俺たちはとても素晴らしいときをすごした。

SV: 皆いいかい、我らのトムはあの状況で、私の微かな記憶によると、君のプレイは素晴らしかったよ、正にあそこで必要なプレイだった。君の素晴らしいところはそこさ、必ず見事にやり遂げること。

TM: ハハ、まるで映画『クロスロード』になった。トレヴァーの反応は温かかったのを覚えている、もちろんあなたも。ルカサーはびっくりしていたね。スタンリーは「それが音楽かよ?」って顔してた。(笑)

SV: ショウの後で彼がやってきて、「観客に警告しておくべきだったのでは」と言っていたよ。(笑)

TM: Gコードがうるさいからって!(笑)

ところで俺たちには共通の知人がいるよね、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のクリエイターのダニエル・ブレット・ワイスだ。彼にギターレッスンをしてあげたそうだね。

彼から電話があって、スティーブ・ヴァイからレッスンを受けるからどうしたらいいかと訊かれた。それで「彼を感心させようなんてするな。ただ行ってプレイしたら、為になるアドバイスをくれる」と言っておいた。でも彼はあなたからソロを習いたいとか言ってた。

それで彼はあなたのところに行って、何か弾いてみて、と言われて弾いたら、「いや、チューニングし直し」と言われた。それでチューニングしてからまた弾くと、「そのコードはチューニングが合っていない。コードのイントネーションを注意深く聴いて」と言われた。そこから何度も、更にベンディングしてもずっとチューニングを言われたそうだ。まるでマントラ真言)のようにね。

彼は最初はフリジアン・スケールやらをどう使いこなしてソロを弾くか、みたいなことを学ぼうと思って行ったのだけど、その代わりに「どのように真の意味で聴くか」という瞑想の授業になったそうだ。チューニングが北極星のような道しるべになる体験だったと。

世界には様々な種類のギタープレイヤーがいて、そこで競うには様々な方法があるけれど、俺はこの30年間チューニングを保って弾いたことが無い。(笑)俺はチューナーを持っていないんだ!だからチューニングが合ってない!

SV: 私はいつも真に弾きたいと思っているギタープレイヤーに応えるんだ。楽器を愛している者にね。彼らがどれ位熟達しているかは関係ない。

ダンにはヌーノのライブで会った。少しジャムしたんだよ、彼は実に熱心だった。私はドラマのことを何も知らなくてね、ヌーノに『ゲーム・オブ・スローンズ』の監督で脚本家であるダンに会って欲しいと頼まれた。

私はダンに「それってビデオゲームなのかね?」と訊いてしまったよ。(笑)(全米大人気のドラマなのに)私はテレビを観ないから知らなかったんだ、そしたらダンが最初のシーズンを送ってくれてね、その結果私はあのドラマ全シーズンをまる2回観たんだよ!

ダンは全くのギター青年でね、彼にレッスンをしてあげたくなったんだ。彼はギタープレイができる、しかし多くのプレイヤーが長きにわたって妥協してしまっていることを教えたくてね。チューニングが合っていないとプレイは難しい。ギタープレイヤーなら指で解決するものだ。楽しい時間をすごしたよ。

TM: 彼はあのレッスンを肝に銘じているようだ。あなたのプレイを注意深く観察したと。プレイに注意を払い、「今にある」ということにね。

SV: ああ、彼はいいプレイヤーだったよ。

TM: 俺が最後に観たあなたのコンサートは Generation Axe だった。ギタープレイヤーの夢のライブだ。とても個性の強いプレイヤーの集まりだよね。何と言ってもザックがワイヤレスになった公演だ!ロビーやら階段やらいつもどこかにいる。(笑)イングヴェイがいる側のステージは何だか中世のヴァイブがあるね、彼用のスモークマシンと照明がある。

SV: それらは彼がリクエストしたものだ。私はメンバーの誰もが自分のショウを観せて欲しかったんだ。もしオーディエンスの中に入っていきたいなら、好きなだけやって欲しかった。ヌーノが話したいなら好きなだけ話せばいい。

イングヴェイはとても個人主義の人物だが、彼は素晴らしいんだ。面白いし、頭が切れる。音楽脳があって、プロに徹している。彼は客を喜ばせる術を知っていて常にやり遂げる。君もいつか参加してみないか?

君はいつも素晴らしい活動をしている、音楽への貢献をありがとう。

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緊張してヴァイ先生のギターレッスンを受けに行って、冒頭からずっとチューニングを指摘され続けたら心が折れてしまいそうですが、ダンさんはその指摘の裏にある深い教えを学んだようですね。

ダンさんは Fender社が特別制作した Game of Thrones の限定ギターでドラマのテーマ曲を弾くセッションにも登場しています。左端の帽子を被っていない白いテレキャスを弾く人物が彼。ヌーノやトムも参加。(下の動画参照)

 

この限定ギターの「ラニスター家」デザインのギター(ヌーノが弾いているもの)をヴァイ先生は購入しており、「Fender がこのような限定シリーズから1本だけを分けてくれることはレアなんだよ」と以前お話されていました。当初は先生の Fender コネクションかヌーノの力添えかと思っていましたが、ダンさんの力添えかも知れませんね。

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