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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ BEAT を語る Part 2「優れたドラマーというのはグルーヴを取り出して動かせるものなんだ」

この秋に予定されている BEAT ツアー、King Crimson の音楽について、ヴァイ先生インタビューでの語り続きです。

先生がドラマーについて深く語っているのは珍しいし、お話も興味深かったです。

それにしても先生の口から名前の挙がるドラマーの強烈なこと!

 

 

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エイドリアン・ブリューの才能

歌いながら楽器を弾くというのは特定の脳の領域を使う。エイドリアンのその才能は驚くべきものがあるよ。この音楽では多くのことが進行している、通常の拍とリピートされるラインがあって、それで十分に難しいというのに、ポリメトリックなんだ。

これは厳正な演奏でなければ上手くいかない。エイドリアンは更にその上で歌うんだ、まるで語るようにね。全く異なる役割をこなしているんだ。複雑な音楽を正確に演奏することと歌うこと、これをやるというのは離れ業だよ。

更に彼のこの音楽に対する歌詞とメロディでの貢献は実に美しい。彼は音楽の複雑さと聴き手にとっての容易さのバランスをとることができる。素晴らしいよ、希少なことだ。

その通りですね。彼は自身のソロ音楽とは異なる King Crimson の音楽を書くことができ、それは実にバラエティに富んでいます。

彼のギタープレイのスキルは、彼がザッパのミュージシャンであるから私のレーダーにかかったのだが、彼が King Crimson でやったことは彼がフランクのところでやったこととは違う。

彼のギタープレイで発見したことは、ノイズをコントロールして音楽的サウンドにすることだ。彼が何かすると常に上手くいくんだ。音程もタイムも合っていてクリエイティブだ。

"Dig Me" (『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』)を聴いてごらん、「これは何だ!」こんなことを誰ができるのか?と感心する。彼が過小評価されているという言葉は、彼は十分に尊敬されているから当てはまらないけれど、(彼の才能を深く知って)私にとっては大きな発見だったよ。

 

ドラマーの能力

あなたがジェレミー・コルソンをオーディションしていた頃に、私はあなたの為に仕事をしていて幸運でした。ドラマーに求めることについてあなたと議論しました。今回のリズムセクションについて、あなたの考えを聞かせてください。

私はフランクの仕事でヴィニー・カリウタの採譜をしたことでドラマーの役割について深く理解することができた。腕の立つドラマーは様々な能力を持ち合わせている。

フランクとの仕事をするまで、私には「ドラマーにロックする」という言葉の意味がわからなかった。私は複雑な音楽をプレイをすることはできたが、「ドラマーにロックし、グルーヴする」ということになると、さっぱりわからなかった。ただプレイするだけで、本当のところで繋がっていなかったのだ。

私が『Flex-able』を創り始める頃にフランクがドラムマシーンをくれたんだ。あのレコードを聴くとリズムがガチガチなのがわかるだろう。「これがタイミングだ、ロックするというのはこういうことだ」と思っていた。

だが、プロのドラマーと仕事をするようになってわかったんだ。ドラマーというのはギタープレイヤーのようなもので、各自にトーンがあり、フィールがある。スネアドラムを叩くとそこにはトーンがあり、人によってヒットが違うんだ。そしてグルーヴの解釈については、各自が異なるアプローチをしている。

年月を経て、私は自分がドラマーに何を求めるのか、様々なドラマーの機能を理解した。

King Crimson を聴くようになって、腕の立つドラマーがいかにフィールを作り出し、コントロールするのかがわかった。グルーヴの中できっちりとプレイするドラマーがいる、彼らはクリックを埋める(訳者注:恐らくドラマーが聴くクリック音にビートを完全に合わせるという意味合い)ことができるのだ。

つまり、彼らは非常にタイトなプレイをするので、クリックが聞こえないのだよ。私も若い頃は真剣にこれを練習した。クリックを埋めたかったから。そうしていると、自分のプレイでクリックが聴こえなかった。こういうのはある種の硬さを生むものだ。

私はやがて気づいたのだが、優れたドラマーというのはグルーヴを取り出して動かせるものなんだ。グルーヴに乗っかって、そうするとリラックスしたフィールでありながら動きが出る、これはラップによくみられるものだ。その一方で、グルーヴを押して前でプレイできるドラマーがいる。これらは優れたドラマーに出来ることで、学習中のアマチュア向きではない。

ビル・ブルーフォードが King Crimson でプレイした頃について言うと、彼のプレイはいかした温かみのあるルーズなエッジがあった。彼はそれ程きっちりはしていない。

例えばマイク・マンジーニは実に一分の狂いもない正確なプレイができる。ジェレミー・コルソンもそれができる。彼はそれほど正確な位置へクオンタイズ(量子化)しているのではなく、少しばかり曖昧さがある。温かいんだ、ぎこちない感じではない。ビルのグルーヴのルーズさは言うなればジェレミーより幅広いんだ。

例えば、ヴィニー・カリウタについて言うと、彼は何でもできる。彼はビートに正確に乗ることもできるし、その周囲を動くこともできる。

ダニー・ケアリーのプレイを観察してみると、彼は包括的だとわかる。

テリー・ボジオを例に挙げると、彼は音楽的な耳を持ち、作曲家なんだ。テリーは優れたドラムパーツの構築家でドラム・オーケストレーションをする。

ダニーもそのタイプだと感じるんだ。ダニーの味はエレクトロニクス音楽にも彼のすることに注がれている。パーカッションで織られるタペストリーにも反復モチーフにも注がれ、彼の音楽的才能は奥深いのだとわかったよ。

彼とまだプレイしたことはないが、このバンドがもたらす大波を考えると興奮するよ。

(Part 3 へつづく)