以前のインタビューでヴァイ先生がこの秋に「あるバンド」に参加するという話をしていましたが、そのバンドが80年代の King Crimson を演奏する BEAT であること、そしてこの秋のツアーが発表されました。
先生が話していた前振りのインタビューはこちら
9月から始まる北米ツアーの詳細はバンドのウェブサイトでチェックできます。
ツアー発表に合わせて、音楽プロデューサーの著名YouTuber、リック・ビアトさんの番組にメンバー全員が集まってのインタビューが公開されました。
音楽的に高尚そうなバンドのお披露目に音楽IQの高そうなリックさんの番組を選ぶとは、さすがのプロモーション。
エイドリアン・ブリュー、トニー・レヴィン、ダニー・ケアリーとヴァイ先生が並んで座り、リックさんの質問に答えつつ、バンドの音楽が深堀されていきます。
今週はこの動画のうち、主にヴァイ先生の発言前半を中心に一部をまとめてみました。(King Crimson を聴いてこなかった私は色々調べつつ… なお、先生の動画後半でのコメントはこちらでチェックできます。)
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リック:このプロジェクトはどう始まったのかい?
エイドリアン:デヴィッド・ボウイのメモリアルツアーのプロデューサー、スクロート(Angelo Scrote)と話していて、私が参加していた80年代の King Crimson の音楽は何とかして再び演奏されるべきだと思った。
それでロバート・フリップに電話して、2年後には私たちが共にやった最初のアルバム『ディシプリン』が40周年を迎えるから、何かやらないかと言ったんだ。話し合ったけれど、最終的に彼は断った。でも彼は「君がやりたいなら、やったらいい」と言って手伝ってくれた。
そこで私は最初にロバートの代役を決めなくてはならないと思った。誰かいないかという話になって、私に思いつく唯一の人物はスティーブ・ヴァイだった。それで、スティーブに電話したら、このアイデアに興奮してくれてね、この音楽が好きだと言ってくれたんだ。
それで、私とスクロートとで構想を始めて、スティーブがある人を推薦してくれたけど、結果的にその人物は都合がつかなかった。
ベースプレイヤーを探すところまで行く前にパンデミックが始まってしまったんだ。それから2年してスティーブに電話したら、「ああ、でも18ヵ月のツアーが決まっている」という。
とにかくやっと最終的にこれが可能になったんだ。そして運の良いことに、その時にはピーター・ガブリエルのツアーが終わってトニーが参加可能になった。
それから、TOOL を観に行ったんだ。古い友人のダニー・ケアリーほど、ビル・ブルーフォードを見事にプレイできる人は考えられなかった。彼は『ディシプリン』が彼自身の音楽人生のターニングポイントだと言ってくれた人だからね。こうして我々が集まったのさ。
スティーブ:若い頃にロバート・フリップを知った。彼の音楽では何か他とは違うことが起こっていると思った。ロバートの音楽脳と創造性に魅了されたよ。まだ当時はまともにギターが弾けなかったけど、彼の音楽はチェックしていた。
もちろん King Crimson は好きだったよ。80年代に発表された3枚のアルバム(『ディシプリン』『ビート』『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』)は実にモノリス級だ。これらの音楽は複雑さという意味で私の持っていた特定の趣向に触れるものだった。それ以外のものでは触れられないものさ。それでありながらあの音楽には親しみやすさがあった。
エイドリアンとトニーがいて、あのバンドには親しみやすさの美しいバランスがあった。彼らのパートの音楽への貢献は実に素晴らしい。その音楽をじっと聴いていると、そこで音楽的に何が起こっているのかわかる。私はそのテのことに興味を惹かれるからね。フランクとの仕事も経験したから。
リック:エイドリアンと君たち2人共だね。
スティーブ:ああ、(エイドリアンが参加したフランクのハロウィーン・コンサートのビデオ)『ベイビー・スネイクス』を何度も何度も観たからね。
エイドリアン:あれは3時間もあるよ!
スティーブ:ああ、何度も観たさ。(笑)その後の皆の活動もフォローしていたんだ。あれらの作品(King Crimson の80年代3作品)は至宝だよ。それを自分が演奏するだなんて思いもしなかった。
最初にエイドリアンが連絡をくれた瞬間には、彼が King Crimson のことを言っているのだとわからなかった。ただ、エイドリアンと自分でできることを考えて興奮したんだ。私たちは異なっているけれど、奇妙なものが好きだから。
でもそれが King Crimson のことだと理解したら、身体をショックが襲ったよ。最初に思ったのはロバートがどう思うかということだった。彼はまるで科学者のようだ。それは彼のピッキングのテクニックについてだけではない。彼の音楽脳さ、複数の拍子を持つ音楽リズムパターンへのアプローチの仕方だ。このバンドでは常に行われていて、私にはとても魅力的だ。
でもロバートのピッキングテクニックは彼の個性であり、彼はそれを完成させた。そうして私は彼らの音楽を聴いていて、あるとき非常に詳細な譜面の本を見つけたんだ。ファンがバンドのプレイを詳細までこだわって書籍にした、壮大な聖書のような本さ。
これまでも何度かこのようなシチュエーションでやってきたように、私はこの音楽とそのファンに敬意を込めて、私のプレイをしようと思う。
今回は加えて、この音楽をプレイするためには本腰を入れて部屋に籠って練習する必要があることに興奮している。ロバートのプレイのテクニックのいくつかを学ばなくては。
一方で一部は私らしいプレイになるだろうね。最初のショックが治まってから彼らの音楽を聴くと、何と美しく壮大であるのかと感動したよ。
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4月4日にヴァイ先生がフリップ氏との2ショット写真を公開しました。3月3日にサンタモニカでフリップ氏のトークショウが行われたので、先生が訪問したようです。
以下に先生のコメントをまとめました。
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幸運にもファーザー・ロバートが街に来ており、私との面会を了承してくれた。私は彼をとてつもなく尊敬し、賞賛している。1969年から、彼の天才的音楽脳は2度も音楽ジャンルを書き換えた。彼の強烈に統制された個性的ギターテクニックは彼だけのものであり、驚異的だ。
私たちは BEAT について楽しい話ができた。そこで彼がこれを祝福してくれていることに安心すると同時に興奮したよ。彼はバンド名まで提案してくれた。
私がバンドに参加すると知った時に彼がどう思ったかを訊ねると、「私のギターパートを弾けるのは君だけだ」との答えだった。滅多にないことだが、私は言葉を失うほど驚いたよ。なぜなら、ロバートのギターパートを彼のように弾ける者など誰もいないのだから。
現在は北米ツアーのみが発表されていますが、動画の中でのエイドリアンさんの発言に日本への思いも感じ取れますので、BEAT での来日ツアーも期待できるような気がします。楽しみがまた1つ増えました。