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キップ・ウィンガー Part 1 「買う価値があり、聴く価値のある作品にしたい」

Follow-Up 4月号に掲載されたキップ・ウィンガーのインタビューは読んでいただけましたでしょうか?私の初めてのインタビューと原稿書きがまさかキップで実現するとは、いまだに驚きと興奮、そして感謝の気持ちでいっぱいです。Follow-Up 編集部さま、ありがとうございました。 Follow-Up を入手していない方はデジタル版がこちらにアップされています。お近くの配布設置場所でまだ手に入れば紙ベースでもぜひ入手してください。

インタビューでのキップは音楽やバンドについて熱く語りつつ、時には笑いを誘ったり、賛同ポイントでは何度もハイタッチしてくれました。気さくで真摯な人柄を感じることができ、感激でした。

当ブログでは誌面に掲載されなかった部分を含めたインタビューを完全版でお届けします。長文になりますので、2週に分けて掲載します。

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昨年のLOUD PARK 17でベテランバンドらしいステージを観せてくれたWingerのフロントマン、キップ・ウィンガーがソロ・アコースティックでの来日ツアーを行いました。(3月10日名古屋、11日大阪、13日東京) ソールドアウトとなった東京公演の直前に、今やバンド活動のみならず、クラシック音楽の作曲で昨年グラミー賞にもノミネートされたキップに、今回の日本でのソロライブについて、Wingerの活動状況についても色々と訊いてみました。

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ポテトチップスの袋を持ってモグモグしながら取材現場に登場したキップ。「チップス食べるのを止められない」と海外のインタビューで話していたとおりのチップス好きを肉眼で確認。さらにはポケットからキットカットを取り出して食べ始めるキップ…。太りますよ…と注意したい気持ちをぐっとこらえてインタビュースタート。


今日はありがとうございます。さて、名古屋と大阪のライブが終わりましたが、いかがでしたか?

素晴らしいよ。日本のオーディエンスは最高だし、皆が気に入ってくれたらいいと思ってる。

早速ライブの感想が沢山ツイートされていましたが、皆あなたのミュージシャンシップに感銘を受けていましたし、肯定的意見ばかりでしたよ。

それはよかった。それに今夜はソールドアウトだしね。俺はずっとソロでも来日したいと思っていたんだ。それで、LOUD PARK 17に呼ばれた時に、ソロでも呼んでほしいと交渉していて、今回それが実現したんだよ。本当はもっと早く来たかったんだけど。できれば毎年でもソロで来たいと思っているよ。

アメリカのソロライブはパーカッションのベン・ハインズとやっていますよね。

ああ、でも日本のツアーは特別なものにしたくて、ロビー・ロスチャイルドを連れてきたんだ。彼はサンタフェに住んでいて、俺のソロアルバムの全てでプレイしてもらっている。彼にプレイしてもらえたらスペシャルだと思ったんだ。

'97年の来日時に、あなたは日本でソロライブをやるとしたら、どんなバンドメンバーを揃えたいかと聞かれて、ドラムはロッド・モーゲンステイン、ギターはアンディ・ティモンズ、パーカッションはロビー・ロスチャイルド、キーボードはジョーダン・ルーデスと答えていました。その内の1人は実現しましたね。

ああ。フルバンドを揃えるのはとても費用がかかるし、ジョーダンは今やDream Theaterで大スターだから無理だけど。

あなたのソロアルバム全てて弾いているアンディ・ティモンズと言えば、アンディがあなたについて語ったコメントがあります。2年前のインタビューの一節です。

「あなたは多くのセッションにも参加しています。特に誇りに思っているセッションはありますか?

Andy:直ぐに思いつくのは、キップ・ウィンガーとのセッションだよ。特に This Conversation Seems Like A Dream のアルバムだ。僕のベストなプレイの1つだと思う。キップのセッションは常にオーガニックで刺激されるものなんだ。彼は僕が一緒に仕事をした中でも最も優れた才能の持ち主だよ。キップとはこれからもコラボレーションするつもりだ。」

(アンディのコメントを読んで) わぉ、鳥肌が立ったよ!嬉しいな。

アンディとのコラボレーションを待っているのですが、予定はありませんか?

アンディとは何とか一緒にやる方法を考えているんだよ。でも俺はクラシック作曲の方でもの凄く忙しくなってしまい、アンディもツアーで忙しかったしね。俺が考えていたのはオーケストラとのギター協奏曲だ。お互いに忙しいけれど、いつかアンディとはコラボするから。

今回の日本公演では特別過ぎるセットリストにとても驚きました。アメリカのファンにこれを見せたら殺されそうです(笑)。

ビビるだろうなぁ…(ニヤニヤするキップ) “Pages And Pages” “Where Will You Go” “Ever Wonder” なんかは今回初めてプレイした。これまでに多くのリクエストを受けていた曲で、それらを練習してきたんだ。まだちょっとミスもあるけれど、プレイしてて楽しいよ。

ずっとソロライブにピアノを加えたかったんだ、そうすることでセットにもっと多様性が出せるからね。皆が気に入ってくれて嬉しいよ。これらの曲はこれからアメリカに戻ってからもプレイするだろうけど、日本のライブを特別なものにしたくてやったんだ。

ソロアルバムのボックスセットをリリースしますよね、なぜ今なのでしょう?

Frontiers Records から提案があったからなんだ。セラフィーノとマリオ(レーベルの設立者)はいい友人でこれまでも俺のロック・キャリアをサポートしてくれた。セラフィーノが俺のソロアルバムをボックスセットにしてリリースするアイデアを思い付いたんだ。

ボックスセットには アルバム『Songs From The Ocean Floor』のときに書いていて結果的にアルバムには収録されなかった曲 “Hands Of Love” も入れた。これは俺が書いた曲の中で最高という程ではなくて、それゆえアルバム収録されなかったのだけど、この曲の雰囲気が好きなんだ。

今回の話が決まって過去のテープを全部聞いているうちに、この曲を見つけたんだ。それでミックスして収録した。いい感じのフィールがある曲だと思うからボックスセットに入れれて良かったよ。これ以外には未完の曲はなかったんだ。俺のアーカイブにあるのはどれも曲の一部ばかりなんだよ。ほぼ完成していたのはこの曲だけだった。

このボーナスCDに収録されている “Rainbow In The Rose” “Blind Revolution Mad” “Headed For A Heartbreak” ですが、最近の収録ですか?

ボーナスCDは基本的には日本盤に収録されていたボーナストラックが入っている。この “Rainbow In The Rose” “Blind Revolution Mad” は多分97年にパリでプレイしたものでロビーもプレイしている。

“Headed For A Heartbreak” は(収録時期と場所を)覚えていないんだけど、Winger でプレイしたバージョンだ。アルバムは全てを今回リマスターしたんだ、それで音がずっと良くなっている。だから今回のボックスセットに俺は同意したんだよ。過去のミックステープを全部探して、リマスターした。

ボックスセットにはブックレットも付いているのですか?

ああ。新しい写真も入っていると思う。どんなのだったかは思い出せないけど。あの頃はもの凄く忙しかったんだよ。

ソロアルバムの新作はいつ頃制作予定ですか?

素材は沢山あるんだ。ただ時間がないんだよ。ミュージカルのGet Jackの方もあるし。(現在新作のミュージカル用に楽曲を制作中) ナッシュビル交響楽団のために交響曲第一番も作曲しているんだ。どれも刺激的だけど、とても忙しいんだよ。

ソロアルバムの作曲はかなり出来ているんだけど、歌詞がまだなんだ。歌詞はとても大切なんだ。56歳の俺にとって歌詞を書くというのはとてもやっかいな仕事だ。俺はくだらない歌詞は書きたくない。ソロアルバムには常に何か意味のある曲を入れたいんだ。俺にとっても、他の人にとっても。皆に深い体験をしてほしいんだよ。

Wingerはロックのブランドだから、“Deal With The Devil”とか“Midnight Driver Of A Love Machine”とか…わかるだろ?ソロアルバムはもっと精神的な心の内面を覗くようなものにしたい。辛抱強く手を入れる必要があるのさ。買う価値があり、聴く価値のある作品にしたいから。

だって、今じゃ音楽ってのは簡単に浪費されるものになってしまった。俺が書きたいのは、今から10年経って聴き返しても、何かを感じ、感情的な共感を得られるものなんだ。そういう高いレベルの曲を書きたい。毎回そのレベルの曲が書けている訳ではないけれど、そう努力している。

最近の Winger アルバムでは歌詞をあなたの友人が書いていたりしますよね。”Deal With The Devil” とか。

ああ、あれは 元KIX のドニー・パーネルに書いてもらった。俺が歌詞に詰まるとドニーに頼むんだ、彼は優れたロックンロールの作詞家なんだよ。でも “Better Days Comin’” “Ever Wonder” とか多くは俺が書いている。それに俺の妻も素晴らしい作詞家で、前のアルバムでは彼女も歌詞を書いている。

Karma でも “Stone Cold Killer” “Always Within Me” なんかは俺が書いた。全ての Winger アルバムのうち、だいたい75%は俺が歌詞を書いている。ソロでは全部自分だ。 “Stone Cold Killer” はロックンロールな歌詞だけど、”Ever Wonder” はもっとスピリチュアルな内容だ、そこは曲によるな。ソロアルバムではもっと深い内容になる。

Winger のニューアルバムについて伺います。多くのファンが新作を待ち望んでいるのですが、仰るとおりあなたはとても忙しそうですね…

レブもWhitesnakeで忙しいんだよ。でもレブとは話していて、近いうちに集まって書き始めようかとは言っているんだ。4~5ヶ月後には始められたらなと思っている。待たせて悪いけど、Wingerのアルバムについては、俺の中でどんなサウンドにしたいのかはっきりとしたヴィジョンが見えるまでは始めないんだ。

現在のところはまだそのヴィジョンが見えないということですか?

見え始めてきたところだ。どんなことをしたいかはわかっているんだ。何をすべきかわかっている方がずっとスムーズに進められる。『IV』の時は、「よし見えたぞ。全員集まれ!」って感じで作ったんだ。そして興味深いことに『IV』は実に難解なアルバムになった。難解過ぎて一部のファンには理解されなかった。一部のファンにはベストアルバムだって言われたけどね。

Wingerのアルバムで重要なことは、メンバーそれぞれがなぜ優れたミュージシャンなのかというポイントを盛り込むことなんだ。それは俺にとって大事なことだ。なぜロッド・モーゲンスタインが凄いドラマーなのか、それは “Tin Soldier”を聴けばわかる。レブ・ビーチがどうして凄いギタリストなのか、それは“Witness”を聴けば分かる。ジョン・ロスは 『Better Days Comin’』で沢山いい仕事をしている。

それに、次のアルバムにはポール・テイラーも加えようかと考えているんだ。彼はこのところバンドと合流してよく一緒にプレイしているから。ポールと一緒に新しい“Miles Away”みたいな曲ができたらいい。

Part 2 に続く