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レブ・ビーチ Part 1「ケニー・G のロック・アルバムみたいなものにしたかった」

レブ・ビーチが元Winger のバンドメイトであったセンク・イグロウのインタビューに応えました。旧知の仲であり、ギタリストで作曲家同士でもある2人の会話はなかなか興味深く、通常のインタビューとは違うものがありました。

センクがレブの音楽を分析して問いかけるのですが、レブのナチュラルな回答が質問と対照的で 面白いです。長いので概要を2回に分けて掲載します。

 

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まずはソロアルバム『A View From The Inside』リリースおめでとう。好きな曲が沢山あるよ。それにこれは正式なソロアルバムとしては『Masquerade』以来19年ぶりとなる。こんなに時間がかかたのはなぜ?

俺はいつもツアーしてる。作曲してプロデュースして楽器全てを弾くのは大変なことさ、スタジオに入ってレコーディングして。『Masquerade』には随分と時間がかかったし、最も大変だったよ。でもとても誇らしく思っているアルバムさ、人気のあるアルバムなんだよ。今は『Masquerade 2』を制作してる。とにかく時間がかかるのさ、俺はいつもツアーしてるし、ギャラのある仕事をしてるから。Whitesnake や Winger のニューアルバムとか Black Swan とかさ。

ああ、よくわかるよ。僕の最後のアルバムは2005年で、いつも妻にはこう言っているんだ。「僕は自分の作品に取り組めるほどリッチじゃないんだ」ってね。

その通りだ。

それと僕は、『Masquerade』はマイルストーンだと思っている。君はあれでシンガーでもあった。"Fanatic" は君が書いた曲の中でも僕のお気に入りの1つだ。

ありがとう。俺にとってもそうだ。ベースラインがほぼ曲全体で繰り返されるところ。

ああ、君は実に興味深いギタープレイヤーだ、独自のスタイルを持っているからね。君はどんなバンドに参加しても、原曲をリスペクトしつつも、同時に君のプレイの特徴はそのままなんだ。そして曲に火を点ける。楽曲のDNAは壊さないけれど、そこに何かを加えている。これには感動するよ。ギタープレイヤーとしては君は僕のDNAの中にいるんだ。息子の中にもいるし、僕の中にも。君の大ファンだからね。

わお、ありがとう。そんな風に言われてとても嬉しいよ。
俺には独自のスタイルがあるし、どうしても俺のサウンドになるんだ。それが何をやっても注がれるのだと思う。リズムプレイではファットでヘヴィだが、メロディックなソロも弾くし、そこではできるだけ全部弾きまくるってことのないようにしてる。ソロで何かを伝えたいんだ、記憶に残るように。

それに僕が分析するに、コアのところ、ハーモニーやらレイヤーの全てがある中で君は自分のコントロールの仕方がわかっているんだ。ジャムセッションのパートがあっても君は考え過ぎて壊すことがない。計算され尽くしたものにはしないんだよ。君がソロを書くと、メロディックなセクションがあって、それは曲のシグナチャーなんだ。そして君はそれらのセクションの間に高度なテクニックを使ったジャムパートを持ってくる。だからオーディエンスは君のプレイやリフを楽しむのにミュージシャンである必要がないんだ。そこが君のユニークなところだと思うよ。

センク、こんなに褒めてもらって嬉しいよ。

僕は君の音楽をずっと聴いているからね。それに君はエリート・ギタープレイヤーとしてではなく、リズム・プレイヤーとしても優れている。技もタイミングも。それに君はリフ・バンクのように大量のリフが書ける。リフを思い付くといつでも録音しておくのかい?

できるだけそうしようとしている。俺は全然覚えていられないから。30秒で忘れちまうんだよ。だから録音している。俺が書いた大方のリフはキップがトイレに行ってる間に書いたんだ。だって、向かい合って座ってキップにじっと見られてると、なかなか思いつかないときがあるだろ、それでキップが席を立ったときに弾いたのが、「それ何だ?」(キップ)ってなるのさ。大丈夫だ、録音してあるって。(笑)

『A View From The Inside』の "Aurora Borealis" は興味深いアレンジだね。プログレッシブな要素がいくつも内包されているのに、君があのメロディックなセクションを入れても、なぜかこの薬には吐き気の副作用がないんだ。一般のリスナーについて言っているんだ、君は多くの情報を入れたのにこの曲は消化し易いんだ。あのメロディックなパートとアレンジがパーフェクトに作用して、結果としてとても聴きやすいんだ。どうやったんだい?

俺は誰もが聴けるものを書きたかったんだ。アラン・ホールズワースのような、又は少しでも彼に近いようなアルバムは俺にはできっこない。俺の音楽とか音楽理論の知識ってのは限定的なんだよ。俺は独学で学んだプレイヤーだから。だから俺は沢山の変わったキー変更とかのない方が気持ちよく弾ける。だから、何と言うか、こう言うのは嫌だけど、ケニー・G のロック・アルバムみたいなものにしたかった。

わお、それだったのか!

ケニー・G は何百万枚もアルバムを売ったけど、ジャズ・ミュージシャンには嫌われていたんだ。彼がその方向に作風を変える前はとても尊敬されるプレイヤーだった、技術もあってさ。でも彼はインサイド・ミュージックをやることにして、それで大成功を収めた。だから俺は誰でも理解できてメロディーを口ずさめるようなギター音楽をやりたかった。それが俺の目標で、結果には満足している。

君が "Aurora Borealis" を気に入って良かった。あのリフを思い付いて、バグパイプみたいなサウンドで、そしてピアノで伴奏した。いいサウンドだろ。

ああ、あと僕のお気に入りは、君が書いた Whitesnake の最高作 "Sands of Time" だね。

俺のお気に入りでもある。あれは大変な仕事だったよ、デヴィッドが気に入って参加してくれるまで。あの曲には多分8つのバージョンがある。最初はリフが "Kashmir" みたいでデヴィッドに突き返されてた。あの曲のソロが好きなんだ。

それを言おうとしてたんだ。音楽ファンとして言うと、あのソロはメロディックで流れるようでいて、同時に Def Leppard のスティーブ・クラーク的アティテュードが少しばかりあるんだ。スティーブ・クラークは僕にとってあのバンドのお気に入りの要素なんだよ。

彼らのライブを観て彼に嫉妬したんだ。俺は彼と同じ齢で、それは俺にだってできる!って。彼は (Gibson) Explorer を弾いてたから、急いで同じのを買いに走ったよ。

プレイヤーとして速弾きとかテクニックということよりも、ソロを作曲のように書くということだと思うんだ。例えば "Rainbow In The Rose" での変調そして直後に君がやったこと。"Headed For A Heartbreake" のエンディングも。一流の仕事だ。君は普通の速弾きプレイヤーと違う、常に記憶に残るフレーズを弾いて、技術をひけらかして曲に干渉しないんだ。時に君はまるきり弾かないこともある。いつもこれに気付いているよ。

ところで君は Whitesnake で最長在籍期間のメンバーだね。

ああ、19年になる。デヴィッド本人を除いて俺が最長の在籍メンバーだ。そんなに長くいるなんて信じられないくらいだ。キップがこのギグの機会を与えてくれて感謝してるよ。

キップは大切な友達であり、同時に僕の重要なメンターでもある。Winger についてはいつもキップにこう言っているんだ。僕がバンドに参加したのは 『Winger IV』 で、あれは素晴らしいアルバムだけど、僕の好きな Winger アルバムじゃないんだ。なぜなら、アルバムを聴くと僕の小さなかけらが聴こえてきて、僕が Winger の音楽を内側で汚染してしまったような気がするんだよ。だって僕は大ファンだからね。

そんなことはない。君のやったことは全部気に入ってる。キップは君の大ファンだぜ。キップが君のこと何て言ってるか聞くといい。キップは今日君が俺のことを話したように、君のこと話している。音楽的天才って言ってるよ。君の息子はそれを受け継いでる。

この前ギターコンテストやっただろ、彼には衝撃を受けたよ、次世代のヴァン・ヘイレンの登場かと思って興奮したのさ。ホットでクールなキッズがギターで世界を席巻したんだ。他の誰もやってないことをやってのけた。次世代のギターヒーローの登場だと感じて興奮したよ。

(訳者注:キップが司会、レブが審査員で参加したギターコンテストにセンクの息子が参加して優勝しました。下のビデオ参照)

 

とても光栄で嬉しいよ。ところで、この時代においても僕たちにとっては新たな音楽に触れることはとても重要だ。産業構造が変わって、予算もなく、誰もミュージシャンに対価を払わず、更にパンデミックで悪化した。それでも君は新たな音楽『A View From The Inside』をリリースした。とても有難いと思う。

ありがとう。ずっと俺のハードドライブにあったもので、いつも俺のケツを叩いてくれるのがキップなんだけど、「永遠にやってたインストの楽曲はどうした?」って訊くから、出来上がってハードドライブにあるって答えると、「リリースしろよ!(怒)」って。俺はああ、そうだなって。(笑)

君は Dokken でも活躍した。『Erase The Slate』は大好きなアルバムだし、リンチ脱退後のラインナップでは君のいたときが一番のラインナップだと思う。

ありがとう。あのアルバムは俺とジェフ・ピルソンが一緒に書いたアルバムで、だからこそ Black Swan を彼とやれるのが嬉しいんだ。ジェフとの仕事は最高だ、いいものができる。彼はアレンジャーであり、プロデューサーで、俺はリフを書くだけ、彼はキップがやるみたいに素早くパズルを組み立てるんだ。

『Erase The Slate』のライティングに加わったときは、彼らにソングアイデアはあったんだけど、コード弾きのスローな曲調(歌ってみせる)だったんだ。カントリーかよって。Dokken なんだから、こういう(歌う)リフが要るだろ?」それで俺は曲を持ち帰って、1晩であのリフを書いたんだ。皆が気に入った。昔ながらの Dokken サウンドに戻ろうってことにしたんだ。

"Maddest Hatter" のエンディングは?

あれか。どんどんスピードを上げるのは誰のアイデアだったか忘れた。

ライブDVDではどうやったんだい?

あれは全部ハンマリングだよ。全部そうだから簡単さ、ピッキングはしてない。

ライブをDVD用に録るとき、どんな気持ちで臨むの?

あれは彼らともういくつものライブをやった後だったから、しっくりきてた。初日にはブーイングされて、スニーカー投げられて額に当たったけどな。こりゃ荒れるなと思ったけど、ショウの終わりにはわかってきたんだ。ジョージ・リンチがアルバムと同じソロを弾かなくなった理由を。彼は全部のソロを即興してて、アルバム通りには弾いてない。

俺は Lynyrd Skynyrd のライブを観てたけど、彼らはほぼ全てのソロをアルバム通りに弾いてた。ソロが始まると観客が湧きたったもんさ。ライブだってことに感動してね。それで俺は出来る限りリンチのソロを再現することにした。俺のサウンドはリンチの音じゃないし、俺の音になるけどな。

それが僕の好きなところだよ。僕は大のKISSファンで、エース・フレイリーが好きだ。ブルース・キューリックも好きだ、そこには彼の個性がある。ヴィニー・ヴィンセントでもね、彼はせわしないプレイヤーだったけど、そこには彼の個性があった。でも今のラインナップは好きじゃないんだ。だってまるでAIがエース・フレイリーのように弾こうとしているみたいだ。感情がなくて、『Alive 2』の "Shock Me" と同じソロを弾いている。

そこで君に訊きたいのは、Dokken でも Night Ranger でも、君はオリジナルに敬意を払いながら、自分の個性を貫いている。これは難しいことだと思うんだ。

正直に答えると、俺はただ曲を弾いてるだけで、俺の音がしてるってだけなんだ。(笑)原曲には忠実にしてとか、考えてない。

(訳者ひとりごと:レブは本物の天然です。センクが質問した難しさとか多分考えたこともないけど結果的にできちゃう人(笑))

でも君は5分前にオリジナルのソロを覚えたと言っただろう?それがリスペクトさ、そのことを言っているんだよ。

ああ、そうかわかったよ。ファンは成長期に聴いてきたメロディが聴きたいのさ。

(Part 2 へ続く)

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