Stay Together

Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ BEAT を語る Part 1 「複雑な音楽でありながら聴きやすく、複雑であるがための音楽ではない」

この秋に予定されているBEATツアー、King Crimson の音楽について、ヴァイ先生がインタビューに応えました。

インタビュアーの方はファンによって制作された『King Crimson The Discipline Era Transcription』採譜原稿のプルーフリーディングを担当した方のようで、King Crimson の音楽に精通しており、ヴァイ先生と深い会話が展開されます。

最近公開された Part 2 の動画の1ヵ月前に Part 1 が公開されているのですが、そこではツアー用にPIAを3本製作中であること、RolandGM-800 Guitar Synthesizer でパッチを制作していることを話していました。

 

今週はこれら動画の一部をまとめてみました。

===========

短いQ&Aの質問です。ロバートのニュー・スタンダード・チューニング(C G D A E G 低音弦から高音弦)を使いますか?

いいや

座って弾きますか?

立つだろうね、でも幾つかのコードではギターを持ち上げて押さえなくてはできないかも(笑)

ロバートのピッキング・スタイルを採用しますか?

私と彼のスタイルのハイブリッドを練習しようと思う。

昔の私はネック上部でピッキングしていたのだが、トーンが悪くて、自分のスタイルを変えたんだ。しかしその後、手首と肩の問題で新たなスタイルが必要になった。ロバートはとても協力的で助言をくれるよ。

一番難しいと思う曲は何ですか?

"Frame by Frame" も難しいピッキングテクニックがあるね。"Elephant Talk"も。でもこれはカバーバンドじゃないから、私のバージョンのプレイになる。でもロバートのプレイに敬意を払うよ。

King Crimson の音楽について

 

 

King Crimson の音楽というのは効果的なポリミーター(異なる拍子が複数進行すること)使用のお手本だ。彼らはフレージングや別のパートのために採用していた。音楽理論を効果的なサウンドのために活用していたんだ。

彼らのレコードを聴いて、ポリメトリックな何かが進行しているのは聴いて分かったが、当時詳しく覗いてみることはなかった。けれどとても気に入ったよ、複雑な音楽でありながら聴きやすく、複雑であるがための音楽ではなかったからだ。むしろとても音楽的だ。

そしてこの音楽の譜面を手に入れて読んでみると、彼らが実際に何をしていたのか、どれほど効果的で天才的なのかに気付いたよ。エイドリアンに聞いたのだが、彼とロバートはアンプも無しで2人が座り、何時間も作曲に取り組んだそうだ。そして遂に秘密の公式を見つけたそうだ。

それに比べたら私のここでの仕事は容易いものだ、この音楽本もあるしね。でもロバートのパートを弾き始めてみたら、フィンガリングを通してみると、何と彼らが優れているのか、楽曲が美しく構築されているのかがわかる。とてもユニークで効果的でただただ美しいんだ。

エイドリアンのパートも決してシンプルではない。変拍子の、異なる複数の拍子を駆使していたが、ロバートはさらにその上に拍子を変化させ、それらを統合するパートを弾き、美しいハーモニーのタペストリーを紡ぎだすんだ。それは繰り返すことなく、リズムはタイトでただただ美しいのだ。

ロバートは異なる創造性を投下する。ときにはメロディック、ときにはリズミック、ときには複雑なハーモニーを。けれど彼は常に美に昇華させ、彼独特のパフォーマンスたらしめる完璧な技術をもって演奏する。

私はリサーチの過程で多くのビデオを見たのだが、ロバートのように演奏する人はいない、彼の足元にも及ばないんだ。

(Part 2 につづく)

 

Satch/Vai 対談 「身体的困難があっても可能な範囲内で無限の探求は可能だ」

大好評のうちに Satch/Vaiツアーが今週終わりました。この夏はサッチがサミーと共にツアーに出て、サミーの代表曲や Van Halen の楽曲を演奏します。この秋にはヴァイ先生が BEAT ツアーで King Crimson の楽曲を演奏します。

けれど、Satch/Vaiツアーはその後に再開される予定があるようで、ヴァイ先生がインスタで「まだショウは続くだろう」とコメントしていました。楽しみです。

さて、Guitar World 誌6月号ではサッチ/ヴァイが表紙となり、2人の対談が実現しました。今週はこの対談から興味深かった一部をまとめてみました。

www.guitarworld.com

=========

2人で曲をリリースするのは初めてですが、レコーディングしたのは違いますね?ティーンの頃に2トラックのテープに録ったデモがあるとか。"Reflections on a Year and a Half" と呼んでいるそうですが。

SV:ジョーのレッスンで彼の部屋に通っていたんだ。あれはロングアイランド中のティーンの部屋で最もクールな部屋だった。大きなロックンロールのポスターが貼りめぐらされ、LPレコードで一杯の棚があった。大抵はヘンドリックスの "The Cry of Love" が前面にあった。そしてジョーの Kustom アンプ、全体が覆われているような外見のやつだ。カールしたケーブルを繋いでいたよ、いつもカッコ良く見えた。

ジョーは2トラックのリール式レコーダーを持っていたんだ。それが私がこの世で体験した初の音楽録音や編集なんだ。ジョーが教えてくれたのは「1つのトラックに何か録音して、別のトラックにオーバーダブできる」ってことだ。

最高だった。あるレッスンで彼がこのレコーダーを取り出したんだ。彼が弾いていたリフがあって、私はそのころには1年半のレッスンを受けていた。2人の子供が部屋で録音したものさ。それはとてもクールで興味深い、ハードなリフだ。

JS:ソニーの2トラックだったかな?

SV:ああ。そして15年程してから「こんなものを見つけた」と言ってジョーがそのテープを送ってきたんだ。私はそれをデジタル変換して、長い長い年月の間私の戸棚にしまった。

それが日の目を見たんだ。ジョーと曲を書くというアイデアが出てきたとき、ジョーが私に送ってきた音楽には子供の頃私たちが延々とジャムするのに使っていたコード進行を使ったパートがあった。

私たちはジョーの家の裏庭で背中合わせに座り、4~6時間もただプレイしたものさ。あれは記憶の中で最も素晴らしく、引き込まれる音楽体験の1つだった。そこで私たちがよく使ったコード変更はジョーが新曲のうちの1つに組み込んだ。

そこでジョーに言ったのさ「あの古いテープを持っているんだ。もし私がこれから何か曲を書いたらどうなるだろう?」とね。そのオリジナルの録音は私の書いている曲の一部に採用される。

JS:驚いたよ。そのリフを聴いたとたんにスティーブにこう言ったんだ。「あ、これは覚えてる!」って。インターバルに魅了されて、そんなものをどう弾こうかと考えていたよ。そして録音を聴いてギターを手に取り「ん?何て変わったリフだ!」と案の定思ったのさ。

SV:判りにくいんだ。オリジナルのテープを聴いたとき、誰がどこを弾いているのかわからなかった。でも恐らく、ジョーがリフを弾いているのだと思う。何しろ、あの頃の私にそんな物を弾く腕はなかっただろうからね。(笑)

あなた方は今でも新たなことに挑戦しています。楽器演奏や音楽への探求心はどこから生まれているのでしょう?

SV:元々私たちに備わっているものだ。何かを達成する、探求する、拡大する要求というのは。人間の創造的衝動というのは非常に強力で、勢いを持っている。自分にそれがあるのがわかるし、消えたことはない。

私はかつて、やりたいことのリストを作っていた。だが50歳になったときにそのリストを見返すと、150くらいあった。しかもその1つ1つが2年程かかる。それで気づいたのさ、今していることを楽しめているのなら、それで良いと。

そして、長年の間には変化もある。エリートのスポーツ選手であったり、凄腕の音楽家にしてもなにがしかの限界というものがある。この数年で私は身体的困難があった。それでも可能な範囲内で無限の探求は可能だ。例え指が1本しかなくても、それは可能なんだ。だから私はその心意気を持って状況に適応することを学び、それでいてより深い探求を目指した。それこそが常に私のゴールであったし、そうあり続ける。

ジョーはどうですか?

JS:私は早い段階で自分の身体的限界というものを理解した。高校の音楽教師だったビル・ウェスコット先生から学んで肝に銘じたことなんだ。

「いいかい、君が18、19歳になったとき、楽器演奏に対して身体的にはさほど恵まれていなかったとわかるかも知れない。けれど、君の脳は80歳になるまで発達し続けることが可能だ。(ジョーの頭を指さして)ここにいる音楽家を鍛えるべきだ。そうすれば自然と指が動くだろう」

彼に言われたことはティーンの自分には理解するのが難しかった。だってその年頃といえば、身体が第一だからね。ホルモンと血と肉さ。ところが言われるんだ「身体に注意を向けるな、頭を使え」とね。時間はかかったけれど、ビル先生が正しかったことが理解できた。

 

 

MARCIN(マーシン) ライブ @梅田クアトロ 2024.05.09  新世代の天才ギタリスト初来日公演

今年の Vai Academy にも新世代の注目ギタリストとして講師参加し、ヴァイ先生やマテウス・アサトとも共演したポーランドのアコギ王子の日本初ライブを大阪でキャッチしてきました。

キャパ650人という梅田クアトロはソールドアウト。デビューアルバムすら出していないアーティストが初来日公演3つ(追加公演含む)をソールドアウトって凄いよね。

どんなオーディエンスが詰めかけているのかと思って観察してみたところ、男女半々くらいで年齢層も幅広い。インストのアコギを聴きに来るというよりポップスやクラシックのコンサートに近いのかな。メタル系ギターインストの偏ったオーディエンスとは違うのね。日本のレーベルはソニーだし、今後の活躍が期待できそうなギタリスト。

欲を言えば、東京であった Ichika との共演を大阪でも見たかった。以下ライブレポです。

===========

バックドロップのみのシンプルなステージに登場したマーシンは、動画で見たとおりの小柄で華奢な青年ですが、ベースとドラムを加えたバンド形式でプレイして存分にその超絶技巧を披露してくれました。凄い。演奏を終えて話す様子はシャイな好青年ぽくて対照的。

英語は彼にとっても第二言語だから、ゆっくり簡単な言葉で話してくれます。そこに数回の来日で覚えたと思われる日本語の単語を沢山加えて話してくれるところからして、語学力が高そう。

「次の曲は日本に来る前はやる予定じゃなかった。とても短いし、難しいから。でも日本に来て沢山のエネルギーを感じたからやってみるよ。ガンバリマス!」

"Just The Two of Us" 好きだなぁ。

「2人だけって曲だけど、実際には僕1人だけどね」とおどける様子も可愛い。

「次は僕のニューアルバムでR&Bのアレンジに取り組んだ曲。子供の頃好きだった曲だよ。ジャスティン・ティンバーレイクの "Cry Me a River"」

私にとって "Cry Me a River" と言うとジャズのスタンダード・ナンバーしか思い浮かばない。ジャスティン・ティンバーレイクの曲は知らないなぁ。子供の頃に聞いた曲がジャスティンって世代の違いを感じるワ。

「僕は辰年生まれで今年は辰年、ドラゴンが好きなんだ。バックドロップのデザインにあるようにね。僕は音楽でドラゴンのような僕の面ともう一つのクラッシックな面、ハーモニーを表現したいと思っている。次の曲は新しいオリジナル曲 "Classical Dragon"。日本でライブ演奏するのは初めてだよ」

という新曲はモダンなクラシックという印象でした。

「僕のギターは僕にとって言わば「サムライの剣」なんだけど、これは日本の星野楽器の Ibanez、 僕のシグネチャーなんだ。実はこのギター制作を率いたシンジ・イシガミが今夜ここに来ているんだよ。ブラボー、拍手を!」

バンドが退いてバッキングトラックも無しの文字通りソロで始まった次のパートはクラシックのギターアレンジが続きました。

 

パンデミックで世界がロックダウンになったとき、できることが限られたからオンラインで演奏をしていたそうですが、パンデミックが終わると、多くのオーディエンスを得ていることに驚いたそう。

「これは本当に人間が観ているのか、ただのデジタル数字なのかと思ったけれど、こうしてライブをやってみて本物の人間が観てくれていたんだ、嬉しい」

"Alors on Danse" を終えてから彼の奏法を教えてくれたのですが、これがなかなかに興味深かった。

左手でリズムを刻み始めるのですが、アコギで左手だけでこの音が出せるのかと。そして右手でキックドラムをいれようとボディ上部をスラップし始めて、これだけではドラマーには及ばないからとボディ下部を高速で叩くリズム技をみせる。

更に、メロディが必要と、右手でネック上部をタップ。凄いわコレ。ネック上で8フィンガーのタッピングしてるようなモンだよね。アコギだよ?しかも適宜パーカッション入れながら。

 

「僕はポーランド人だから、そう言っても日本人はポーランドといえば何か浮かばなかったようだけど、ショパンと言うとすぐに通じたんだ。ポーランドと日本の国旗は同じ赤と白だから、何か通じ合っていくといいね。次は僕の愛国心を表現したショパンの曲」

静かに弦を爪弾き、美しい音色を紡ぎだす演奏は味わい深かった。彼も演奏後に感情的になっていました。

次は彼がここに来ることを可能にしてくれた、クラシックとメタルとオリジナル曲のメドレーを披露してくれました。ここで5番を聴けるとは。

「アコースティックのギターライブでは7割がチューニング時間で残りが演奏なんだよ」と言いながらチューニングをする彼。チューニングで出る音を指して、「とても実験的な僕の新曲」とジョークにするところも可愛い。

激しい演奏を終えると

「高校では体育の授業をサボっていたから、今のプレイが僕の運動練習だよ」

と笑いをとりました。

「ライブが終盤に差し掛かって寂しいよ。日本には歴史の伝承とかドラゴンとかモンスターの言い伝えがあるよね、でもポーランドではそういうのが廃れてきていて、それで僕は森に棲む年老いた魔女の曲を書いたんだ」

これまた超絶技巧ものでした。アコギでなぜこんなことができるのかと感嘆するばかり。

「最後の曲は愛がテーマのオペラからの曲。愛こそが全てだよ、皆に愛を」

締めの "Carmen" は彼の代表演奏曲と言っていい、ギターとパーカッションの見事な演奏でした。

鳴り止まない拍手に応えて再登場したマーシンは、このツアーを実現するのに尽くしてくれた関係者一人一人に感謝を述べました。

「日本に来る前はマーチを持ち込む予定はなかったんだ。だってとても遠いから輸送費が高い。でもプロモーターがファンにはマーチが必要だ!と言って日本で1週間で作ってくれたんだ。凄い効率だね」

マーチで売ってた唯一の商品、Tシャツを3人の演者が着て登場。

「最後の曲は新曲で僕の名前についての曲。トッテモムズカシイ!」

最後も見事な演奏で聴かせてくれました。ニューアルバムが楽しみです。

 

本日のセットリスト

01. Asturias
02. Just The Two of Us
03. Cry Me a River
04. Classical Dragon
05. Moonlight Sonata
06. Paganini's Caprice No.24
07. Alors on Danse
08. Chopin Nocturne
09. Beethoven's 5th Symphony + Toxicity + new song
10. Kashmir
11. Toccata
12. Baba Yaga
13. Carmen
encore
14. new song

(一部、順序や曲名は違うかも)

サッチ/ヴァイ 「今が完璧なタイミングだ」

現在2人でツアー中のサッチ/ヴァイが揃ってインタビュー動画に登場しました。くつろいで楽しそうな雰囲気の2人の会話のうち、興味深かった部分をまとめてみました。

 

 

============

―長いキャリアで多くのことを成し得た今、プレイすることでどう楽しみや閃きを得ていますか?

ジョー:その瞬間に集中して共にプレイしている相手を感じる。私たちはバンドとステージにいるのだからね。私たちはバンドとのプレイを感じながら、互いのプレイがその日に何を引き起こすのかを楽しんでいる。

―長年の関係がある中で、音楽的に何かテレパシーのように互いを感じることはありますか?

ティーブ:ああ、でも私たちのつながり方は奇妙なんだよ。私たちには確かに似た傾向がある。だがジョーとのプレイは全く予想がつかないんだ。相手のプレイを聴き、応えるという全くつかみどころのない時間なんだ。

もちろん、彼を見て聴いて、ジョーの弾いているのがコードものだと分かれば、どう応えようかが浮かぶのだけど、彼が次に何をするのかは全く予想がつかないんだ。そこはとても挑戦し甲斐があり、お楽しみでもある。

ジョー:毎回私たちの即興ジャムを終えると、互いの顔を見てワォと思うんだ。毎回、なんとかジャムをコントロールして楽しいものにしようとする。相手が次に何をプレイするのかはわからないからね。

―今夜も相手に驚かされそうですね。

ティーブ:ああ、毎晩驚かされるよ。私たちは同じ地域で育ち、同じものを食べて育った。イタリア系のロングアイランドの子供だから同じような騒ぎを起こして。ジョーは年上だったから別のグループとつるんでいたけどね。

それでも、言葉にするのは難しいのだが、私たちが(演奏中に)ある種の心理的空間に入り込むと、相手が次に何をするのかわかるかと言うと、イエスでありノーでもある。生まれ育った地域を自然と感じるんだ。私はジョー以外に同郷のプレイヤーと弾いたことがないから、そう感じるのかも知れないけれど。

―あなた方のプレイにはある程度の類似点を感じるものの、別の部分では全く異なっています。ところで、この写真で思い出すものは?(Guitar Legends Sevilla 1991 の写真)

ジョー:素晴らしいイベントだった。私たちは先にロンドンで3日間リハーサルをしてから会場に入ったんだ。ブライアン・メイ音楽監督で誰と誰がプレイするとか、途中で誰が加わるといった采配をしていた。ああゆう構成のイベントは初めてだったよ。

ティーブ:その写真は私とジョーとブライアンで "Liberty" を弾いているところだよ。3人でのハーモニーがあったからね。私は彼が大好きだから、あの曲は Queen の影響を受けている。

―こちらの写真は昔のNAMMショウのときのようですが(若いサッチ夫妻と先生&ピアさんが一緒に写っている)

ジョー:これは多分81年かな。私の髪が短いだろう?これはシンガポールで披露宴をする為に散髪したからだと思う。当時あの国では男の長髪は問題だった。(訳者注:サッチの妻、ルビーナさんのご親戚はシンガポールにいる)

―これは2人が表紙の1990年 Guitar World ですね。

ティーブ:おお、それ!最近その引用記事を見たのだけど、2人がいつ共作するかについて「今はそれぞれ忙しいけれど、いつかやるよ」と言っていた。

それで、ジョーが "The Sea of Emotion" Part 1&2 になる曲を送ってきたときに、私がそう名付けようと言ったんだ。あそこには私たちの共に過ごした青春があるからね。

―その曲は大反響ですね、 Part 2&3 の状況はどうですか?

ジョー:レコーディングは終わっているんだ。まだミックスは終えていない。恐らく、来年の共作アルバムのリリースよりも前に順次公開していくと思う。アルバムはその3曲だけじゃないよ、Part 10 とかまである訳じゃない(笑)。他の曲も制作を始めているんだ、でもどんなアルバムになるのかは想像がつかない。

あの曲は私たち2人が共通して持つ思い出の場所からスタートした。その時には考えていなかったけれど、アルバムにするというのは素晴らしいアイデアだと思う。今が完璧なタイミングだ。あの場所の思い出から始めたというのはとても大切なことだったんだ。

―今から名前を挙げる若手をどう思いますか?トシン・アバシ、ラリ・バシリオ、コリー・ウォン。

ジョー:素晴らしいプレイヤーだ。彼らの生演奏を観るべきだよ。コリー・ウォンのライブは彼のショウマンシップとミュージシャンシップが合わさっている。彼のギタープレイヤーとしての力量だけでなく、プロデューサーそしてライターとしての才能に触れるためにライブを観るべきだ。SNSで動画だけを見て彼のしていることを推量してはだめだ。

ラリについても同じだよ。彼女がしていることは美しい、目の前で彼女を観るべきだよ。以前、私たちはチャリティーのライブをやったのだけど、そこに Animals As Leaders も来てくれた。トシンがプレイしているもの、本物の感情を音楽で味わうにはライブを見るべきだ。催眠のように魅了し、張り詰め攻撃的でありながら、美しいんだ。

ティーブ:この3人はとても異なっていて多様性がある。今のギター界で起きているこの大変革を見るのはとても嬉しいよ。コリーは新鮮な空気のようだ。ジョーが言ったように、彼の才能はとても幅広い。そしてトシンとは一緒にツアーをした。彼らは特定のことにフォーカスしている。実際に観て感じるべきだ。

―自分のトーンとギアの関係をどう考えますか?

ティーブ:G3ツアーの最初で私のアンプがダウンしてしまって、急遽ジャム用の機材でプレイしなくてはならなかった。それでプレイはできるのだが、私たちギタープレイヤーには快適なゾーンというものがある。

自分の好みのものが必要なんだ。もちろん、それ以外の機材でもショウをやり遂げることはできる。自分の欲する通りのトーンでない状況でプレイする上での心理的インパクトはあるんだ。

ジョー:G3で面白いことがあったよ。最後の公演を終えて、ドキュメンタリーを撮影していたからインタビューやらを撮り終えた後で、皆が私のリグ( Marshall ハーフスタック)を使って弾いたんだ。

ティーブとエリックの音を私のリグを通して聴くのはとても興味深かった。全く私の音とは違うからね。私のリグは撮影用に私のセッティングがされていて、ノブを調整したりもしていないのに、スティーブはスティーブの音がするし、エリックは正にエリックだった。

 

 

ギターコンテスト と ジョー・サトリアーニのアート展示会 at MORC 2024

今年のMORCから2つのイベントをピックアップ。

1つ目はシュレッド・ギターのコンテスト "So You Think You Can Shred" です。乗船している主要な凄腕ギタリストが審査員となり、参加者は審査員の前でギターソロを弾きます。今年はソロの後にドラムが入り、ギタープレイを続ける形式でした。

審査員は7人。ギタリスト5人は、奥からマイケル・ウィルトン、ヌーノ・ベッテンコート、ジョー・サトリアーニコートニー・コックス、ジョエル・ホークストラ。笑わせる担当のコメディアンが両脇の2名で、ドン・ジェイミソンとコートニー・クロニン。

各人が10点満点で挑戦者のプレイを評価してコメントします。総得点で優勝者が決まりますが、全体的にはお遊びのイベントです。

司会進行はキップ・ウィンガーで、その側の観客席にはレブ・ビーチやポール・テイラーが、さらに後方にはロッド・モーゲンステインの Winger 組も揃っていました。

今年の優勝者が動画を上げていましたので、彼のプレイを評価した審査員のコメントをまとめました。

===============

 

 

ドン:凄いな、俺から言えるのはあとヴィブラート、それからゴースト・ノートにペンタトニックを鍛えることだ。(訳者注:ドンは適当に知っているワードを上げているだけ(笑))

君がジョン・ゴッティ(ニューヨークの著名なマフィアのボス)の親戚だった時に備えて、君に10点。(訳者注:挑戦者の名前の苗字は Gutii でマフィアのボスは Gotti)

マイケル:良かったよ、他の人はここに来て、できる限り速く弾こうとするけど、君は自分の血肉を見せた。赤いサングラスもいいね。(ギターを)諦めずに続けてくれ。9点だ。

ヌーノ:ワォ、素晴らしかったよ。ゲイリー・ムーアが天から微笑んでいるだろうね。

ちょっとばかりズルがあったんだけどね、(司会進行の)キップが君に長いプレイタイムを与えていたんだ。キップが感心して君に見とれちゃったんだよ。実際にキップは君をレブと挿げ替えようか考えてたみたいだ。(笑)

とにかく、言葉もないくらい素晴らしかったよ、特にクールだったのが、後ろでプレイしているリズム・ギターがいないのに、俺達には君がプレイしている全ての音がそのキー上で聴こえたことだ。とてもソウルフルで本当に美しかった。

ヴィブラートは素晴らしかったし、ゴースト・ノートってのはギターにはないものなんだから、ドンが何を言ってるのかわからないよ。(笑)

ドン:じゃあ、ハマー・オンはどうだ?(笑)

ヌーノ:とにかく君は10点だ。もし11点があったら11点だよ。

ジョー:まず最初に、これは間違いなく10点だ。良い演奏だった。ピッキングもヴィブラートもイントネーションもペーシングも全て良かった。

私が子供の頃に(ギターを教えてもらった)ドンから聞いた全てのレッスンが思い出されるよ。(訳者注:サッチがギター講師として有名なのにかけて、ここではドンが昔サッチにギターを教えたことにして笑いにしています)

ヌーノが言ったように、君はソロでプレイしながらオーディエンスにハーモニーの行き先を伝えられていた。そこが素晴らしかったよ。

コートニー:全てが揃っていたね。指にトーンが宿っていたし、ベンディング時の音程も正確、心を奪われた。

ドン:(彼を部屋に呼ぶために)スケジュールをチェックしなよ。(笑)

コートニー:もう2回確認した。(笑)

ジョエル:良かったよ、君がゴースト・ベンドを使ったのには感心した。ドン知ってる?

ドン:もちろんだ!

ジョエル:フェロピアン・スケール(冗談)を使ってるのは聞こえなかったけど、エニグマティック・スケールかな、ジョー?

ジョー:(そんな感じ)笑

ジョエル:ハンガリアン・マイナーかな。(笑)

ヌーノ:ペンタコスタルかもよ(笑)

ジョエル:とにかく、ソウルがあって、ベンディングも素晴らしかった。気に入ったよ、9点だ。

コートニー・C:左手に座っているギターゴッドたちには悪いんだけど、私はギターソロの間にトイレに行くんだ。でも君のためなら膀胱炎になってもいい。できる限りトイレを我慢する。10点。(笑)

 

 

=========

船内のアートギャラリーでは、サッチのアートコレクションが展示されていました。

キャンバスに描いた油絵とシグネチャー・ギターJSにサッチがペイントしてコーティング加工を施した作品です。価格は絵画で5千ドル程度から、ギターは1.9万ドル(約300万円)くらいでした。税金と送料が加わると幾らくらいなんだろう…(汗)

サッチ・アートの購入者には特典があり、船内で開かれるプライベートのパーティでのミーグリ参加、そしてサッチのミニコンサートでサッチとジャムできます。ファンには魅力的な特典です。

サッチらしいテーマのペイント・ギターは美しくてゴージャス!全て1点ものなので、価格も相応なのかも知れません。(G3でサッチが使用していたフレイム・ペイントのギターは1点もので、確かオークションで800万円くらいの落札価格でしたよね。G3のDVDに映っていたのもポイントだったのでしょうけど)

買えない私はスタッフの方と話して写真だけ撮らせてもらいました。

 

MORC 2024 ライブレポート

今年のMORC が終わって早くも1ヵ月が過ぎましたが、備忘録的にライブの一口感想をまとめてみました。
こういうものはすぐに書かないと忘れてしまいますね。(反省)


振り返ってみると、思いのほか時間の余裕がなくて観れなかったライブが多かったです。
船で出会った多くの方にお勧めされたのが Darkness でしたが、スケジュールの都合で見逃し。テッド・ポーリーも Crazy Lixx も観れなかったし、Y&Tは1回しか観れなかったのが無念。

=========

Richie Kotzen 3/4 シアター 16:30

益々イケシブ親父度が上がってきたリッチー。今回のバンドメンバーはいつも通りベースにディラン・ウィルソン、ドラムには2000年代以来の登場というダニエル・ポトラックという構成。

サンバーストのシグネチャーTele からのサウンドはいつものリッチーサウンドよりも硬質な感じで、自分のアンプを使っていない影響なのか会場のPAの具合によるものかと思われます。

"Bad Situation" から始まったセットはお馴染みの比較的近年の作品からが多め。そんな中で『50/50』からの "Dogs" はレアでした。「マーチでCD売ってるからまだ買ってなかったらどうぞ」とリッチーが言うので、後で買っておきました。

"Peace Sign" をやったのはダニエルさんが参加したアルバムだったからかな。

 

Extreme 3/4 プールステージ 18:00

コズメル出港の頃に始まったライブは私の好きなオープンエアのステージで。青空の下のライブっていいなぁ。

2日の出航時にやるはずだったセイル・アウェイ(出航)イベントが機材トラブルか何かでできなかったみたいで、Extreme のライブが2日遅れのセイル・アウェイとなっていました。やっぱりこのバンドはそういうイベントにぴったり!

セトリは日本でやったツアー用の組み立てをぎゅっとコンパクトにした1時間程のショウでした。80年代のヒット曲に加えて、ニューアルバムもヒットしているバンドは強い!

野外なのでサウンドは最高とは言えませんが、パフォーマンスのエネルギーは激アツで、ギター好きにはやっぱりヌーノのプレイはたまらん。

 

Winger 3/5 シアター 21:30 3/6 プールステージ 19:30 

冒頭のロッド教授ドラムソロが激アツ!

シアターでは "Black Magic"が、プールステージではメンバーが所属したバンドの代表曲メドレーがレアなパフォーマンスとなっていました。それ以外の選曲は彼らの典型的なショウという感じ。

日本公演には参加できなかったジョン・ロスが加わったベスト布陣でしたが、ジョンは他のバンドとのスケジュールの為かクルーズ途中から乗船した模様で、特別なことをする時間的余裕がなかったのかも。

今回の難点は屋内でも屋外でも音が悪かったこと。ギター3本とベースがプレイすると互いに干渉するのと、PAイカンのではないでしょうか。腕利きのサウンドマンが必要と思いました。

 

SOTO 3/4 シアター 21:45, 3/6 シアター 15:00

JSSの音楽活動40周年を記念したセトリは、SOTO・W.E.T.・Talisman・JSS・YJM からの選曲。残念だったのはSOTOでリリースした曲が1曲だけしかプレイされなかったこと。このバンドのライブなのにねぇ…

W.E.T.や Talisman を聴けるのは嬉しいけど、2019年にW.E.T.メンバー集ってのライブをここで観ているのでちょっと物足りない。(ごめんよ)JSS 曲はメドレー仕立てになっており、いつものようなゲスト参加はありませんでした。ジェイソン・ビーラーはステージ袖にいたので参加するかと思ったのだけど。

初回のライブでは機材の不調でJSSメドレーはまるっと飛ばされ、ショウの最後に時間が余ってしまうという事態が起きました。そこからはジェフが全くのアドリブでカバー曲をアカペラで歌い、バンドが入っていく展開でした。プロってこういう事態でもなんとかしていくのさすがだ。

2回目のライブでは、Talisman の "I'll Be Waiting" を H.E.A.T. のシンガー、ケニー・レクレモがゲスト参加してジェフと歌いました。ジェフと並ぶと小さい彼でしたが、歌唱は迫力。

SOTO ライブの締め定番曲といえば映画『ロック・スター』のサントラ曲 "Stand Up" ですが、今年の共演者は Paralandra というバンドのリードシンガー兼ギタリストのカサンドラ・カーソン。ジェフに「女版 ディノ・ジュルーシック」と紹介された彼女は正にディノを彷彿とさせる強烈なパワーシンガー。女性で例えるならリジー・ヘイル級の歌唱力。

ところで、SOTOドラマーのエドゥ・コミナートが今年の夏に欧州で MR.BIG のツアードラマーとしてプレイすることをジェフがステージで言っていました。彼はパット・トーピーを大変に尊敬している若手ドラマーだから、きっと良い仕事をしてくれると思います。

 

Hoekstra & Gibbs 3/4 ラウンジ 22:30

ジョエルがブランドン・ギブスとやっているアコースティックライブはコンビを組んでから早くも7年くらいでしょうか、近年は北米だけでなく欧州へのツアーもやっています。

選曲はそれぞれのオリジナル曲に加えて、Whitesnake や Poison 、それからロックの名曲などのカバー。以前に観たときよりもギターのハモリやコーラスが上手くなっているなぁと感心しました。

オーディエンスに話しかけながら、親密な空間での温かなライブは以前よりも集客力が上がっており、今後も成長していくのかも知れません。

 

Joel Hoekstra's Bloody Mary Hangover Jam 3/3 スタジオ 9:45

普通のライブは午後からスタートの中、船内で唯一朝の9時45分からスタートするライブがこちら。意外にも朝から多くの観客を集めていました。以前は野外のプールステージ開催が定番で、朝の日差しと海風を感じながら観るのが好きでしたが、屋内開催が定番となったようです。

ジョエルのアコースティック・ソロ曲の演奏から始まって、Y&Tの友人にドラムとベースを弾いてもらってのバンド形式になるのはいつも通り。今年はゲストが一緒にツアーしている相棒のブランドン・ギブスでした。サプライズなお友達ゲストがないのはちょっと寂しかった。

しかし今年は振舞われる粗品が凄かった。以前はジョエルのCDとかグッズ程度だったのに、USB接続のスピーカーとかLPレコードの再生機とか、まるで電気屋さんの初売り会場のようでした。(驚)


Accept 3/3 スタジオ 18:30

硬派なメタルバンドという程度のイメージしかなかったのですが、初めて観ました。今年の南米と欧州ツアーには助っ人でジョエル・ホークストラが参加するとのことなので、彼がゲストで最後に登場するカモと期待したのですが、何と本人は客席前列で自分が代役を務めるフィルの動きやバンドとのフォーメーションを確認する為か、動画を撮影していました。勉強するまたとない機会だったのね。

3本のフライングVで弾く厚いギターがメタル・ファンの血を熱くするショウでした。

 

H.E.A.T. 3/3 シアター 23:00

今のシンガーになってから観るのは初めて。メンバーが若いバンドはフレッシュでエネルギー溢れていていいねぇ。

バックで流す映像はニューアルバムのMVに制作した動画を編集したもののようで、バンドメンバーの紹介も動画でまとめてあってナイス。

シンガーのケニー・レクレモがどんどん前に出て観客を煽り、パワー溢れる歌で熱量を上げるという見ていて楽しいライブでした。若いって素晴らしい。

 

Queensrÿche 3/2 シアター 21:45, 3/5 プールステージ 17:15

彼らはMORCの後、間髪を空けずに Cruise to the Edge (プログレの船)にも乗船していましたね。クルーズをハシゴするのってどんな感じかな。(笑)

初日のシアター公演はゆっくりと後方席から、2回目のプールステージはステージ右の脇から観ました。ベテランの手堅いパフォーマンスで、集客もしっかりでした。

 

 

スティーブ・ヴァイ この秋 BEAT に参加して King Crimson を演奏!

以前のインタビューでヴァイ先生がこの秋に「あるバンド」に参加するという話をしていましたが、そのバンドが80年代の King Crimson を演奏する BEAT であること、そしてこの秋のツアーが発表されました。

先生が話していた前振りのインタビューはこちら

staytogether.hateblo.jp

9月から始まる北米ツアーの詳細はバンドのウェブサイトでチェックできます。

beat-tour.com

ツアー発表に合わせて、音楽プロデューサーの著名YouTuber、リック・ビアトさんの番組にメンバー全員が集まってのインタビューが公開されました。

 

 

音楽的に高尚そうなバンドのお披露目に音楽IQの高そうなリックさんの番組を選ぶとは、さすがのプロモーション。

エイドリアン・ブリュートニー・レヴィン、ダニー・ケアリーとヴァイ先生が並んで座り、リックさんの質問に答えつつ、バンドの音楽が深堀されていきます。

今週はこの動画のうち、主にヴァイ先生の発言前半を中心に一部をまとめてみました。(King Crimson を聴いてこなかった私は色々調べつつ… なお、先生の動画後半でのコメントはこちらでチェックできます。)

=============

リック:このプロジェクトはどう始まったのかい?

エイドリアン:デヴィッド・ボウイのメモリアルツアーのプロデューサー、スクロート(Angelo Scrote)と話していて、私が参加していた80年代の King Crimson の音楽は何とかして再び演奏されるべきだと思った。

それでロバート・フリップに電話して、2年後には私たちが共にやった最初のアルバム『ディシプリン』が40周年を迎えるから、何かやらないかと言ったんだ。話し合ったけれど、最終的に彼は断った。でも彼は「君がやりたいなら、やったらいい」と言って手伝ってくれた。

そこで私は最初にロバートの代役を決めなくてはならないと思った。誰かいないかという話になって、私に思いつく唯一の人物はスティーブ・ヴァイだった。それで、スティーブに電話したら、このアイデアに興奮してくれてね、この音楽が好きだと言ってくれたんだ。

それで、私とスクロートとで構想を始めて、スティーブがある人を推薦してくれたけど、結果的にその人物は都合がつかなかった。

ベースプレイヤーを探すところまで行く前にパンデミックが始まってしまったんだ。それから2年してスティーブに電話したら、「ああ、でも18ヵ月のツアーが決まっている」という。

とにかくやっと最終的にこれが可能になったんだ。そして運の良いことに、その時にはピーター・ガブリエルのツアーが終わってトニーが参加可能になった。

それから、TOOL を観に行ったんだ。古い友人のダニー・ケアリーほど、ビル・ブルーフォードを見事にプレイできる人は考えられなかった。彼は『ディシプリン』が彼自身の音楽人生のターニングポイントだと言ってくれた人だからね。こうして我々が集まったのさ。

ティーブ:若い頃にロバート・フリップを知った。彼の音楽では何か他とは違うことが起こっていると思った。ロバートの音楽脳と創造性に魅了されたよ。まだ当時はまともにギターが弾けなかったけど、彼の音楽はチェックしていた。

もちろん King Crimson は好きだったよ。80年代に発表された3枚のアルバム(『ディシプリン』『ビート』『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』)は実にモノリス級だ。これらの音楽は複雑さという意味で私の持っていた特定の趣向に触れるものだった。それ以外のものでは触れられないものさ。それでありながらあの音楽には親しみやすさがあった。

エイドリアンとトニーがいて、あのバンドには親しみやすさの美しいバランスがあった。彼らのパートの音楽への貢献は実に素晴らしい。その音楽をじっと聴いていると、そこで音楽的に何が起こっているのかわかる。私はそのテのことに興味を惹かれるからね。フランクとの仕事も経験したから。

リック:エイドリアンと君たち2人共だね。

ティーブ:ああ、(エイドリアンが参加したフランクのハロウィーン・コンサートのビデオ)『ベイビー・スネイクス』を何度も何度も観たからね。

エイドリアン:あれは3時間もあるよ!

ティーブ:ああ、何度も観たさ。(笑)その後の皆の活動もフォローしていたんだ。あれらの作品(King Crimson の80年代3作品)は至宝だよ。それを自分が演奏するだなんて思いもしなかった。

最初にエイドリアンが連絡をくれた瞬間には、彼が King Crimson のことを言っているのだとわからなかった。ただ、エイドリアンと自分でできることを考えて興奮したんだ。私たちは異なっているけれど、奇妙なものが好きだから。

でもそれが King Crimson のことだと理解したら、身体をショックが襲ったよ。最初に思ったのはロバートがどう思うかということだった。彼はまるで科学者のようだ。それは彼のピッキングのテクニックについてだけではない。彼の音楽脳さ、複数の拍子を持つ音楽リズムパターンへのアプローチの仕方だ。このバンドでは常に行われていて、私にはとても魅力的だ。

でもロバートのピッキングテクニックは彼の個性であり、彼はそれを完成させた。そうして私は彼らの音楽を聴いていて、あるとき非常に詳細な譜面の本を見つけたんだ。ファンがバンドのプレイを詳細までこだわって書籍にした、壮大な聖書のような本さ。

これまでも何度かこのようなシチュエーションでやってきたように、私はこの音楽とそのファンに敬意を込めて、私のプレイをしようと思う。

今回は加えて、この音楽をプレイするためには本腰を入れて部屋に籠って練習する必要があることに興奮している。ロバートのプレイのテクニックのいくつかを学ばなくては。

一方で一部は私らしいプレイになるだろうね。最初のショックが治まってから彼らの音楽を聴くと、何と美しく壮大であるのかと感動したよ。

=============

4月4日にヴァイ先生がフリップ氏との2ショット写真を公開しました。3月3日にサンタモニカでフリップ氏のトークショウが行われたので、先生が訪問したようです。

以下に先生のコメントをまとめました。

=============

幸運にもファーザー・ロバートが街に来ており、私との面会を了承してくれた。私は彼をとてつもなく尊敬し、賞賛している。1969年から、彼の天才的音楽脳は2度も音楽ジャンルを書き換えた。彼の強烈に統制された個性的ギターテクニックは彼だけのものであり、驚異的だ。

私たちは BEAT について楽しい話ができた。そこで彼がこれを祝福してくれていることに安心すると同時に興奮したよ。彼はバンド名まで提案してくれた。

私がバンドに参加すると知った時に彼がどう思ったかを訊ねると、「私のギターパートを弾けるのは君だけだ」との答えだった。滅多にないことだが、私は言葉を失うほど驚いたよ。なぜなら、ロバートのギターパートを彼のように弾ける者など誰もいないのだから。

 

 

現在は北米ツアーのみが発表されていますが、動画の中でのエイドリアンさんの発言に日本への思いも感じ取れますので、BEAT での来日ツアーも期待できるような気がします。楽しみがまた1つ増えました。