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MARCIN(マーシン) ライブ @梅田クアトロ 2024.05.09  新世代の天才ギタリスト初来日公演

今年の Vai Academy にも新世代の注目ギタリストとして講師参加し、ヴァイ先生やマテウス・アサトとも共演したポーランドのアコギ王子の日本初ライブを大阪でキャッチしてきました。

キャパ650人という梅田クアトロはソールドアウト。デビューアルバムすら出していないアーティストが初来日公演3つ(追加公演含む)をソールドアウトって凄いよね。

どんなオーディエンスが詰めかけているのかと思って観察してみたところ、男女半々くらいで年齢層も幅広い。インストのアコギを聴きに来るというよりポップスやクラシックのコンサートに近いのかな。メタル系ギターインストの偏ったオーディエンスとは違うのね。日本のレーベルはソニーだし、今後の活躍が期待できそうなギタリスト。

欲を言えば、東京であった Ichika との共演を大阪でも見たかった。以下ライブレポです。

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バックドロップのみのシンプルなステージに登場したマーシンは、動画で見たとおりの小柄で華奢な青年ですが、ベースとドラムを加えたバンド形式でプレイして存分にその超絶技巧を披露してくれました。凄い。演奏を終えて話す様子はシャイな好青年ぽくて対照的。

英語は彼にとっても第二言語だから、ゆっくり簡単な言葉で話してくれます。そこに数回の来日で覚えたと思われる日本語の単語を沢山加えて話してくれるところからして、語学力が高そう。

「次の曲は日本に来る前はやる予定じゃなかった。とても短いし、難しいから。でも日本に来て沢山のエネルギーを感じたからやってみるよ。ガンバリマス!」

"Just The Two of Us" 好きだなぁ。

「2人だけって曲だけど、実際には僕1人だけどね」とおどける様子も可愛い。

「次は僕のニューアルバムでR&Bのアレンジに取り組んだ曲。子供の頃好きだった曲だよ。ジャスティン・ティンバーレイクの "Cry Me a River"」

私にとって "Cry Me a River" と言うとジャズのスタンダード・ナンバーしか思い浮かばない。ジャスティン・ティンバーレイクの曲は知らないなぁ。子供の頃に聞いた曲がジャスティンって世代の違いを感じるワ。

「僕は辰年生まれで今年は辰年、ドラゴンが好きなんだ。バックドロップのデザインにあるようにね。僕は音楽でドラゴンのような僕の面ともう一つのクラッシックな面、ハーモニーを表現したいと思っている。次の曲は新しいオリジナル曲 "Classical Dragon"。日本でライブ演奏するのは初めてだよ」

という新曲はモダンなクラシックという印象でした。

「僕のギターは僕にとって言わば「サムライの剣」なんだけど、これは日本の星野楽器の Ibanez、 僕のシグネチャーなんだ。実はこのギター制作を率いたシンジ・イシガミが今夜ここに来ているんだよ。ブラボー、拍手を!」

バンドが退いてバッキングトラックも無しの文字通りソロで始まった次のパートはクラシックのギターアレンジが続きました。

 

パンデミックで世界がロックダウンになったとき、できることが限られたからオンラインで演奏をしていたそうですが、パンデミックが終わると、多くのオーディエンスを得ていることに驚いたそう。

「これは本当に人間が観ているのか、ただのデジタル数字なのかと思ったけれど、こうしてライブをやってみて本物の人間が観てくれていたんだ、嬉しい」

"Alors on Danse" を終えてから彼の奏法を教えてくれたのですが、これがなかなかに興味深かった。

左手でリズムを刻み始めるのですが、アコギで左手だけでこの音が出せるのかと。そして右手でキックドラムをいれようとボディ上部をスラップし始めて、これだけではドラマーには及ばないからとボディ下部を高速で叩くリズム技をみせる。

更に、メロディが必要と、右手でネック上部をタップ。凄いわコレ。ネック上で8フィンガーのタッピングしてるようなモンだよね。アコギだよ?しかも適宜パーカッション入れながら。

 

「僕はポーランド人だから、そう言っても日本人はポーランドといえば何か浮かばなかったようだけど、ショパンと言うとすぐに通じたんだ。ポーランドと日本の国旗は同じ赤と白だから、何か通じ合っていくといいね。次は僕の愛国心を表現したショパンの曲」

静かに弦を爪弾き、美しい音色を紡ぎだす演奏は味わい深かった。彼も演奏後に感情的になっていました。

次は彼がここに来ることを可能にしてくれた、クラシックとメタルとオリジナル曲のメドレーを披露してくれました。ここで5番を聴けるとは。

「アコースティックのギターライブでは7割がチューニング時間で残りが演奏なんだよ」と言いながらチューニングをする彼。チューニングで出る音を指して、「とても実験的な僕の新曲」とジョークにするところも可愛い。

激しい演奏を終えると

「高校では体育の授業をサボっていたから、今のプレイが僕の運動練習だよ」

と笑いをとりました。

「ライブが終盤に差し掛かって寂しいよ。日本には歴史の伝承とかドラゴンとかモンスターの言い伝えがあるよね、でもポーランドではそういうのが廃れてきていて、それで僕は森に棲む年老いた魔女の曲を書いたんだ」

これまた超絶技巧ものでした。アコギでなぜこんなことができるのかと感嘆するばかり。

「最後の曲は愛がテーマのオペラからの曲。愛こそが全てだよ、皆に愛を」

締めの "Carmen" は彼の代表演奏曲と言っていい、ギターとパーカッションの見事な演奏でした。

鳴り止まない拍手に応えて再登場したマーシンは、このツアーを実現するのに尽くしてくれた関係者一人一人に感謝を述べました。

「日本に来る前はマーチを持ち込む予定はなかったんだ。だってとても遠いから輸送費が高い。でもプロモーターがファンにはマーチが必要だ!と言って日本で1週間で作ってくれたんだ。凄い効率だね」

マーチで売ってた唯一の商品、Tシャツを3人の演者が着て登場。

「最後の曲は新曲で僕の名前についての曲。トッテモムズカシイ!」

最後も見事な演奏で聴かせてくれました。ニューアルバムが楽しみです。

 

本日のセットリスト

01. Asturias
02. Just The Two of Us
03. Cry Me a River
04. Classical Dragon
05. Moonlight Sonata
06. Paganini's Caprice No.24
07. Alors on Danse
08. Chopin Nocturne
09. Beethoven's 5th Symphony + Toxicity + new song
10. Kashmir
11. Toccata
12. Baba Yaga
13. Carmen
encore
14. new song

(一部、順序や曲名は違うかも)