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スティーブ・ヴァイ 17分で1音の賛否両論

ヴァイ先生のオフィシャルサイトのNEWSページに6月27日付けの長いコメントがあります。
これは例のオーケストラ曲“The Still Small Voice”についてヴァイ先生がその公演を終えての想いをファンに向けて書いたものです。

ヴァイ先生の「クリエイティブ」であることに対する情熱と精神世界、一方で観客のリアクションに対する不安な気持ち、初演の夜のとんでもない出来事となかなかに興味深い内容でしたので、今更ながらですが、一部を和訳してみました。

長い文章ですが、ヴァイ先生独自のユーモアや信念が垣間見れるコメントですので、よかったら読んでみてください。

やぁ、みんな

70人編成のNorth Netherland Orchestra (NNO) が5月24日、25日にオランダ公演を行ったことは、私にとって素晴らしいことだったよ。私の新作曲 “The Still Small Voice”のプレミア演奏会となったんだ。
この曲のコンセプトはまさに一瞬のひらめきだった。そのアイデアというのは、“The Middle of Everywhere” から取り出したシンプルな3音のモチーフを私のギターで始めるというものだった。そして最後の音をギターのサステイナーを使って17分間保つというもので、その間オーケストラは音楽のタペストリーを奏でているんだ。

(中略)

曲の構想を固めたところで、観客が17分間も1音を保ち立ち続ける私をどう受け取るだろうかという現実に向き合った。多くの観客はオーケストラの前で弾きまくる私を期待しているだろう。(もちろん私も時によってはそんな演奏を楽しんでいる)
しかし、観客がこの曲に耳を傾けてくれれば、言葉にできないような、完全なる芸術美の感覚を体験してもらえるのではないか。
もしくは、単に私が奇人変人だということになるのか・・・私はどちらでもかまわない。

観客の反応についての不安は私自身のアイデア通りに曲を作りたいという強烈な発想の前に薄れていった。
私のファンの多くは私が彼らの予想しないことをやるというところが気に入っていると思うので、このコンセプトはある意味彼らの期待に応えることになると思う。

(中略)

“The Still Small Voice”を演奏したこの夜は私のキャリアにとってのハイライトになったと思う。ステージに立ち、1音を究極の集中力で保つ私は、その音の振動に洗われた。オーケストラの引いては押し寄せる超現実的な音の共鳴に観客はのみ込まれた。この体験を私は忘れることがないだろう。

私はまだ夢を見ているようだ。あのパフォーマンスは美しく私を捕らえている。ユニークなアイデアがひらめき、それを形作り、楽しんだことに大きな満足感を感じている。人生の贈り物のようだ。私の人生におけるクリエイティブな目的を光栄に感じるほどだ。このアイデアが生まれてこの瞬間に至るまで、このすべての経験に大きな感謝の念を感じている。

(中略)

初演後、400人ほどの前でミート&グリートを行ったのだが、私がインタビューを受けるために座ったところ、かなり興奮した女性がガードロープを突破し、文字通り私に襲い掛かった!彼女は私の襟をつかんで私の頭を揺さぶり、私の3インチ、いや1インチの距離で金切り声を上げた。

「あんなこともう2度とするんじゃないよ!こんなクソみたいなオーケストラ演奏なんてするんじゃないよ!私はチルバーグでのライブを見たんだ、あれは最高だった。何でこんなくだらないことやってるの!!!」

彼女の不快な息と唾が私にかかった。私はやっとの思いで助けを求めたよ。
まあ、こういう反応もあるわけだ。

幸運にもオーケストラのクリエイティブ監督や私の友人たちはこの夜の演奏をとても楽しんでくれた。
でも私にとって一番手厳しく、鋭い批評家であり、私の仕事に対する冷静な洞察力を備えた人物、そしてただ一人、私が快く指導を受ける人物である妻のピアから大きな承認を得られたのはうれしい。

(中略)

この夜の演奏を賞賛してくれた長年の友人にも、私をののしった女性にもお礼を言いたい。彼女のような感じ方もあるのだから。

このレコーディングは近いうちに発売できるようにしたいと思っている。

正直に言うと、今回の作品が良いのか悪いのかは分からない。あれは演奏したとおりのものだから。私はそれをとても楽しんだよ。一人の人間がクリエイティブに成したことの歴史的価値についてネットや批評家の間で何を言われるにせよ、自分の楽しめることを創造していく方がいい。

スティーブ・ヴァイ

23:10 6月23日 2013年
ブカレストルーマニア