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ジェフ・ワトソン 「私は好奇心旺盛なイノベーターなんだ」

Night Ranger 脱退後、何をしてるのかしら~?と思っていたジェフ・ワトソンが長い沈黙を破ってメディアのインタビューに登場しました。ジェフのことはほとんど知らなかったのですが、電話インタビューに応えるジェフはとても楽しそうに話していて、語られるエピソードがとても興味深かったので、一部を要約&和訳してみました。ジェフって意外に色々なことしてたんですね~。

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生い立ちについて

家族はサンフランシスコ湾周辺の出身で、私は幼少時代をサクラメントですごしたんだ。父は州の議員だったから議事堂に近いところに住んでいたんだ。父はフォークミュージックの活動もしていて、私は5歳の頃からギターを手にしていた。周りの大人たちは皆音楽をやっていたからね。でも小学校に入る頃には他のことに気を取られてギターをやめてしまっていたんだ。普通の環境に育った普通の子供だったよ。

高校生の頃に学校のイベントでバンドが演奏をするのを見て、エレキギターにとても興味を持ったんだ。それまで私は12弦のアコースティック・ギターを弾いていたから。私のフラット・ピッキング・テクニックはそこからきてるんだよ。

ギターは独学で覚えた。たしか母からクリスマスにギターと本をプレゼントされたと思うんだけど、1日でそこにあった曲を全部覚えてしまった。それに子供の頃から私は曲と詩を書いていたっていう変な子供だったね。

私の奇妙なピッキングについてはこれまでにも話したことがあるけど、私はアップから入るし、普通の人とは逆のアングルで弾いてる。12弦を弾いていたから、ストリング・スキッピング・テクニックが自然に身に付いたんだと思うよ。でもこれは私にとって良かったことで、私は自分をテクニック系のギタリストというよりも、イノベーターだと思っているんだ。

あなたの独特なスタイルは演奏における音の選択に影響していますか?

どうかな。私はただ自分が聴いてハッピーに感じる音を選んでいるんだ。だから私はスケールどおりに弾かないんだ。もちろんスケールは学んだけどね。高校時代に聞いていたのはジョニー・ウィンターやディープ・パープルなんかだった。
Night Ranger 初期の頃のアルバムで聴けるソロは当時私が練習のために弾いていたリックからきている。自分で聴いて楽しいと思えるものさ。

ティーンエイジャーの頃に再びギターを弾くようになって、それはもう夢中になって練習したんですか?

そうだね。上手くなりたかったし、弾くのが楽しかった。私は普通と違う弾き方をしていたから、どうやって自分のアプローチで弾きこなしていくか、レコードを聞きながら練習した。自分で後悔していることは、若い頃にリズム・ギターをあまり練習しなかったこと、それからカバー・バンドでの活動をしなかったこと。これは失敗だった。そうしていれば私はもっと上手いプレーヤーになれたと思うし、ジャムでの活動がもっと出来ただろう。

私は自分で書いた曲を演奏する活動ばかりしてきたから。これは自分の活動を制限してきてしまったと思う。でも私は自分のスタイルを確立するために真剣にやってきたよ。

最初のバンド活動は?

カレッジに進んだんだけど、生活のために中退したんだ。その頃は歌うウェイターをやってたよ。そこでジェフ・ワトソン・バンドのボーカリストに会ったんだ。いや待て、最初のボーカリストはMR. BIG のエリック・マーティンだった。彼は本当に素晴らしいボーカリストだよ。

レストランの仕事はニッカーボッカーとベストにボウタイをして帽子を被って働いてた。給仕をしながら、途中で曲を歌うんだ。忘れたい記憶だね。そのレストランを辞めた直後に自分のバンドを作った。楽器店で働きながら、地元のバーでライブ活動を始めたんだ。でも私はカバー曲ができなかったから、曲が限られてしまっていた。

その頃、サミー・ヘイガーがプレイするのを見る機会があった。それでサミーのレコード会社に電話して、サミーのところのギタリストよりも自分の方が上手いからギターを弾かせてくれと言ったんだ。そしたらプロデューサーがサミーの電話番号を教えてくれて、自分で電話しろって言ったんだ。それでサミーに電話した。

サミーは「そうか、じゃぁ、ギタリストが必要になったら電話するよ。」って言ったんだ。後日、私のライブのバックステージにサミーのギタリストがやってきて、「お前か、サクラメントから来たガキは。俺の仕事を盗ろうとするんじゃねぇ」ってすごまれたよ。凄く怖かった。(笑)

その後、そのギタリストが亡くなって、サミーが電話をくれたんだ。「よし、坊主。こっちへ来い」ってね。それで夜中に車でサミーのところへ走ったんだ。サミーに自分のプレイを見せて、サミーは彼のバンドとプレイさせた。でも当時の私には十分なスキルがなかったし、心構えも出来ていなかったんだ。でもこの出来事のおかげで、彼のバンドメンバーが私の働いていた楽器屋から機材を買ってくれた。それで彼らとコネクションが出来たのさ。

そしてサミーのバンドにいたアラン・フィッツジェラルドが私のバンドのデモテープを聞いてプロデュースをしてくれるようになった。私の友達がサクラメントラジオDJの仕事をしていたから、そのテープを繰り返しラジオでかけてくれるようになった。

全てサミーのおかげなんだ。私のバンドはテッド・ニュージェントのオープニングとか地元で大きいライブに出ることができた。

その後、ルームメイトのジャックとその知り合いでバンドをやろうってことになった。それがRangerなんだよ。ジャックはとてもアイデア豊富でメロディックな曲を書く。私はどちらかというとパープルやサバスなんかのメタル系の要素を持ってる。

2人のリード・ギタリストのアイデアはとてもいいと思ったね。私はバンド・ガイで3ピースってタイプじゃないし、ブラッドはファンク・バンドの出身でカバー・バンドの活動も長い。私はテクニック系のプレイヤーだったから、ブラッドのようなプレイヤーはとても頼りになる。

Night Ranger 解散後のソロ活動について

当時はレーベルがバンドの方向性を決めていた。私たちの書いた曲では彼らが納得しなくて、ソング・ライターを連れてきた。でもそのバラードはもうRangerの曲ではなくなっていたよ。
80年代にはバンドが成功できて素晴らしい時をすごせた。でも音楽業界の急速な変化について、今なら分析できるけれど、当時は何をどうしたらいいのか分からなかった。急激な下り坂でこたえたよ、まだ若い子供だったからね。

ソロアルバムを出す前から既に色々な活動をしていたんだ。私は好奇心旺盛な方でね、イノベーターなんだよ。あらゆるスタイルを弾きこなせるようなタイプじゃなくてね。私が出会った素晴らしい友人はティーブ・モースで、彼は私が多くの曲を書きためているのを知ると、アルバムを作るべきだって言ってくれたんだ。

もう1人、とても仲の良い友達が(シュラプネル・レコードの)マイク・バーニーでね、彼がバンドをやっていた時に私もRangerで出演していて、彼のアンプが壊れたのを私が直してあげて以来の友人なんだ。

初ソロアルバムの"Lone Ranger" はマイクのレーベルが契約してくれた。マイクの紹介で他のギタリストのアルバムでもプレイしたよ。トニー・マカパインとは仲良くなった。彼はグランドピアノを素晴らしく演奏してたと思ったら、ギターを持つととんでもないしね。とにかく、私の友人のギタリスト達は、私が恥ずかしくてもうギターを辞めたくなるくらい素晴らしいプレーヤーなんだよ。

私は彼らほどギターが上手くないし、ただ独自のプレイがあるというだけだ。でも曲は沢山書きためていて、100曲くらいある。少しずつリリースしていこうと思っているんだ。今年の1月にシングル"Squirrels & Kerosene"をリリースしたところなんだよ。この数年間は映画やTVの音楽の仕事をして家族を養い、普通の人間らしく暮らしていたけれど、これからミュージシャンとして活動を再開する予定だ。

それで"Lone Ranger" は別にラジオでながれるとかそういう風には思っていなかったけれど、ある日スタジオにジョー・サトリアーニが来て何曲か聴いて、凄く褒めてくれたんだ。後日ジョーのレーベル(リラティビティ)から誘いをもらったけど、私はマイクととても仲が良かったから、シュラプネルからアルバムは出したんだ。

Mother's Army の方は活動する予定はないのですか?

実はつい数週間前に、ボブ・デイズリー、アンスリー・ダンバー、ジョー・リン・ターナーと4枚目のMother's Army アルバムのデモを作ったところなんだ。5曲できてる、楽しみだよ。当時はグランジの時代で、アメリカではレコード契約ができなかった。日本では契約できたけどね、本当にいい曲が入ったアルバムだった。

Night Rangerの再結成後はどうだったのでしょう?

日本から電話があって、Night Rangerの再結成をしてライブアルバムをやらないかって話があったんだよ。ジャックに話したら、すぐにやろうとなって、ジャックの家にあるスタジオでリハーサルした。ブラットにもケリーにも暫く会っていなかったけれど、あっという間に昔のとおりにプレイできた。頭で考えるよりも本能に従ってプレイするのが上手く行くってことさ。

その後のアルバム製作は以前のようには行かなかった。全員がそれぞれ別の事をしてきた後で、一つの船に複数の船長がいるようなものだった。私はチーム・プレーヤーになろうとは思ったのだけど、自分の下した決断には責任があるし、それを背負って生きていかなくてはならない。当時、妻の父が危篤で私はオーストラリアに行って、戻ってくると自分はバンドのメンバーではなかったんだよ。あまりこの話はしたくないな。

その後はどんな活動をしていたのですか?

いろいろやってたよ。映画音楽とか、ドン・ジョンソンの「刑事ナッシュ・ブリッジス」ってドラマで番組用に曲を書いた。ドンのソロ曲をプロデュースし、私の家でレコーディングしたりした。"Vertical Frontier" ってロック・クライミングの映画音楽も書いたよ。それからディズニー映画の「魔法にかけられて」にも出た。(笑)CM曲も書いたり、ただそうして家族を養って歳をとったのさ。

今年のNAMMショウのRandy Rhoads Remembered に出演しましたね?

ああ、その経緯は凄くいい話だから教えよう。私の母はTSO(全米で感謝祭から新年シーズンに行われる大規模なロック+クラシックのショウ)の大ファンでね、毎年見に行っているんだ。TSOに出演しているのがジョエル・ホークストラ(現Whitesnake, 元Night Ranger)だってことに私が気が付いて、FBで彼にメッセージを送ったんだ。

「やぁ、私はジェフ・ワトソンで、君がNight Rangerでプレイしてるパートを私が元は弾いていたんだけど、連絡をくれるかい?」ってね。そしたら彼はすぐ返事をくれた。とてもいいことを言ってくれて、彼とはすぐに親しくなったよ。それで私の母のクリスマス・プレゼントにTSOのパンフレットにサインしてもらえるかい?と頼んだら、彼は直ぐにキャスト全員のサイン入りパンフレットを送ってくれた。おかげで母に最高のプレゼントができたよ。

そのやりとりの過程で彼が、「あなたは近年あまり表に出ていませんが、ブライアン・ティッチーという素晴らしいドラマーがやっているショウがLAであるんです。そこで僕と一緒に出てくれませんか?」って誘ってくれてね。もちろん!と答えたさ。

私は自分の作曲した曲しか演奏してこなかったから、人の曲を演奏するのは得意じゃないけど、頑張って曲を覚えたよ。ジョエルはそれを手伝ってくれた。LAのホテルではジョエルの部屋で練習してたんだ。ジョエルがスティーブ・モースのファンだって言うから、ちょうど彼もLAに来ていたので、私が彼に電話してホテルに呼んで、皆で楽しい時間をすごしたよ。

ライブでプレイするのは私にとって本当に久しぶりの経験だったからとても緊張していたよ。私はYoutubeとかネット上のコメントは見ないようにしてるんだ。だから映像も見ていない。ルディ・サーゾ他素晴らしいミュージシャンと演奏できて良かった。

特にジョエルはあらゆるスタイルを弾きこなせるし、8フィンガーのタッピングも素晴らしく上手くて、性格も素晴らしい。こんな機会に恵まれたのは、全部(TSOのファンだった)母のおかげだよ。(笑)それに今回のショウの結果、Randy Rhoads Remembered のツアーに誘われて、5月からツアーに参加するんだ。

それに、私のシングルも出す予定で、ジョエルにはソロで参加してもらう予定だ。なんとか時間を見つけてくれるだろう。ドラムはスティーブ・ヴァイのところで叩いてるジェレミー・コルソンが参加してくれる。

なぜ今、シングルを発表するのですか?

息子が高校を卒業するし、ちょうどいい時期だと思うんだ。曲もたくさん書いたしね。私がNight Ranger を辞めてから本当に長く経つけれど、多くのファンがメッセージをくれたり、私を覚えていてくれて感謝しているよ。

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若き日のジェフの行動力には驚きました。サミーへの直接売り込み!そういう姿勢が人生を変えるのですね。

ジェフはオリジナルばかり弾いてきてカバー曲をやってこなかったことを後悔しているようですが、ギタリストにはそういう悩みもあるんですね。サトリアーニが、カバー曲ばかりやっているとそれで仕事にありつけても将来がない、オリジナリティが必要だと言っていましたが、その逆の悩みもあるということ。

今年1月に実現した元祖8フィンガーであるジェフとその後継者ジョエルの共演の裏にあったエピソードはとてもいい話です。ジョエルは15歳の頃、Night Rangerのポスターを貼った自分の部屋で、ジェフの8フィンガーをコピーすべく真剣に練習していたそうですから、今回の共演は彼にとっても感慨深いものだったのでは。2人の共演の動画(上)では、ベースアンプの調整待ち時間に、ジェフがNight Ranger の "Don't Tell Me You Love Me" のイントロリフを弾いて、それにジョエルが応えるシーンがあったりして、ワクワクします。