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ジョエル・ホークストラ Joel Hoekstra’s 13 ニューアルバム『Running Games』発売!

ジョエル・ホークストラのサイドプロジェクト、Joel Hoekstra’s 13 から2枚目のアルバム『Running Games』が2月12日にリリースされました!

当ブログを常時チェック頂いている方にはいかに彼が私の推しであるかご存じかと思いますが、ニューアルバムがあまりに傑作だったので、初めてこのアルバムでジョエルを知った人にも彼がどんなアーティストなのかをお伝えすべく、ライナーノーツ風にジョエルとアルバムの紹介を以下に書きました。

記事下には、ニューアルバムの好きな曲アンケートも用意しましたので、ぜひ回答していって下さい。後日、ジョエルに集計結果を報告しようと思います。

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『Running Games』が遂に完成しリリースされた。前作の『Dying To Live』から5年余り、Whitesnake、TSO、Cher のツアーで多忙を極めていたジョエル・ホークストラが2作目にどんなアルバムを提示してくるのか楽しみだったが、期待を大きく上回る傑作となった。

制作の経緯

2019年2月にジョエルと Joel Hoekstra’s 13 の2ndアルバムについて話したとき、彼は既に全曲の作曲を終えてパートのレコーディングに入っていた。「次のアルバムには良い曲が入るからリスナーに気に入ってもらえると思う」と語った彼の瞳に迷いは微塵もなく、それほど自信作なのかと驚き、完成を楽しみにしていたのだ。あの自信には明確な根拠があった訳だ。1年後に再会したときにはレコーディングはあれから余り進んでいないようだったが、その直後から始まったコロナ禍で参加ミュージシャンの作業が大きく進んだようだ。

元々、前作の『Dying To Live』は彼が Night Ranger に在籍中にハードロックで自分を知るファンに向けて、ストレートなハードロック曲を書こうとしたところから始まっている。自主制作のEPとして始まったプロジェクトは、彼が Whitesnake 入りを果たしたことによって Frontiers の目の止まることとなり、フルアルバムでリリースされた。

アルバムの楽曲

ハードロックと言っても、1作目はスラッシュ・メタルに近い曲調のものから、ポップスに近い曲、更にデュエット曲まで彼の幅広いジャンルの好みを反映してかなりレンジの広い楽曲群だったが、今作では曲のレンジを絞り、本人の言葉を借りると「最もヘヴィなもので DIO 、ライトなもので Foreigner 」の範囲にレンジが設定されている。

的を絞ったと言っても、ボーナストラックを入れての13曲はバラエティ豊かで、ヘヴィなロック曲からメロディックなミドルテンポの曲、ブルースロック、疾走感あるハードロック曲、タイトルトラックの “Running Games” はブラジリアンを思わせるアコースティックギターが印象的な味わい深い〆のバラードとなっている。ボーナストラックは世界市場用と日本限定の2曲あるが、どちらも良曲でボーナストラックにしておくには惜しいほど。特に日本盤の “I Won’t Lie” はこれを日本限定としておくのは世界中のファンに申し訳ないほどだ。

 

ソングライティング

前作でもジョエルのソングライターとしての才能に感銘を受けた。確かに楽曲のレンジが広くアルバムとして聴いたときに混乱したリスナーもいたかも知れないが、今作では王道ハードロック作品として非常にクオリティの高いアルバムになった。ちなみにジョエルは前作でのソングライティングの腕を認められ、Whitesnake 最新作『Flesh & Blood』ではデヴィッド・カヴァーデイルと8曲で共作している。最終的にはプロデューサーとして迎え入れられているのをみれば、彼のアルバムへの貢献がわかるだろう。

参加ミュージシャン

『Running Games』主な参加ミュージシャンは前作と同じオールスターが揃っている。ドラムは元DIOのヴィニー・アピス、ベースは元Blue Murder のトニー・フランクリン、キーボードは Sons Of Apollo のデレク・シュレニアン、ボーカルは Symphony X / TSOのラッセル・アレン、バックコーラスは Sons Of Apollo /TSO のジェフ・スコット・ソート

前作ではボーカルがラッセルとジェフの2人で半々となっていたが、(ラッセルのスケジュール都合による)今作ではリードボーカルは全てラッセルとなり、ジェフはバックコーラスのみという、この上ない贅沢なジェフの起用の仕方をしている。そして2人の声のブレンドが秀逸!前作ではボーカルがハードロック界を代表する2人なのは豪華この上なかったが、今作はラッセルに絞って一貫性を持たせたようだ。リズム隊のヴィニーとトニーはジョエルの求めるハードロックのフィールを表現するのに不可欠なチームで、今作でも見事な仕事をしている。

前作との違いはもう1つ、今作ではキーボードのデレクのプレゼンスが大きくなっている。イングヴェイ・マルムスティーンの楽曲を連想させるような鍵盤とギターのリックの掛け合いがスリリングに長尺で展開する曲もある。曲を重視するため、「速弾きの自己満足的な長いギターソロは入れたくない」というジョエルは前作でギターソロを簡潔にしていたが、デレクとの掛け合いという要素が入ることで、長尺のソロを解禁したようだ。

ミックスとマスターをクリス・コリアーが担当したのも前作と同様だ。前作でジョエルはジェフ・ピルソン(Dokken, Foreigner)に紹介されクリスを起用したそうだが、前作のサウンドの良さに感激したデヴィッド・カヴァーデイルがクリスを起用し、Whitesnake 最新作『Flesh & Blood』のミックス他、過去作のリマスター・リミックスを何作もクリスに担当させてリリースしている。(最近発売された Rock, Love, Blues のトリロジーアルバムも全てクリス)今や白蛇の音をコントロールしているクリスは本作も見事なサウンドに仕上げている。

レコーディング

『Running Games』は全てのトラックを各アーティストが自宅スタジオ等でレコーディングして創られている。コロナ禍ということもあるが、元々地理的に離れて暮らし、スケジュール調整の難しいアーティスト達のため、ファイル交換式でのレコーディングが都合が良いのだろう。ジョエル自身も細部にこだわるタイプのため、納得できるまで気兼ねなくテイクできる今の作業環境は気に入っているようだ。ジョエルのギターは全てプラグインを使って録音されている。Whitesnake 最新作『Flesh & Blood』はスタジオで録られているので音を比べてみても面白いかも知れない。私見だが、少し明るく輪郭のハッキリしたサウンドになっている気がする。

ライブ

このメンツを集めてのライブは当然に実現のハードルが高い。しかし2017年に1度だけ Joel Hoekstra's 13 名義でのライブが実現している。私は幸運にもそのライブを観ることができたが、ヴィニー、ラッセル、ジェフ、ジョエルの揃ったライブの迫力は圧巻だった。(残念ながらトニーは都合がつかず)昨年ジョエルは「(Joel Hoekstra's 13 名義で)短くてもいいからツアーしたい」と言っていたが、コロナ禍もあり、更にハードルが上がってしまった。難しいだろうが、いつかどういう形かで再度ライブが実現する日が来ることを期待しよう。

キャリア

ジョエルのギタリストとしてのキャリアを紹介しておこう。彼は少し遅れて生まれた(1970年12月13日生、13は彼のラッキーナンバー)が故に80年代のギターシーンを逃したものの、努力と勤勉さで長い下積みキャリア中に幅広いジャンルとプレイスタイルを身に付けたギターの名手で、正に遅咲きのギターヒーローだ。AC/DCの影響で11歳からギターを始め、ハードロックギターの道を邁進するが、カレッジではジャズやクラシックギターを学び、GITに進んで再びエレクトリックギター漬けの日々をおくる。

多くのギグをこなすうちに Night Ranger のケリー・ケイギーと共演し、ジェフ・ワトソン脱退後、レブ・ビーチをピンチ・ヒッターにツアーしていたバンドでレブの後任となった。今ではレブ・ビーチと共に Whitesnake のギタリストとなっているところも感慨深い。

プレイスタイル

ティーンの頃に師事した8フィンガータッピングの技巧派 T.J.ヘルメリッチから教わった8フィンガーがジョエルの代名詞のように思われるが、何でも弾けるテクニックを持ち、アコースティックの名手でもある。クラシックの演奏家の親を持つこともあり、音楽理論にも強い。スティーブ・ルカサーやジョー・ボナマッサら大物ギタリストたちにも彼の高い技術は称賛されている。通常は Les Paul を愛用(「プレイアビリティを犠牲にしても、コードの響きが重要」と本人談)しているが、ショウに合わせてストラト他様々なギターも弾く。

カナダの老舗著名ロックバンドTriumphのギタリスト、リク・エミット(Rik Emmett)氏からもこんなコメントが寄せられている。(引用元の記事はこちら

「この世にはロックギタリストのエリート・グループというものがある。少数の卓越したプロフェッショナルたちで、完璧な技術と情熱を持ってプレイできる人らだ。ジョエル・ホークストラはその1人で、しかもそこにステージプレゼンスとカリスマ、身体的特徴とを加味するなら、彼は完璧なロック・ゴッドの逸材だ。彼とは共にステージに立ってプレイする幸運に恵まれたし、彼の様々なバンドでの活躍を見て、彼の新曲 "Finish Line" を聴くと、彼は成熟した火を噴く怪物だ。この曲のギターパートからは火花が飛んでいる。彼は長身でレスポールを肩に掛けるとウクレレに見えてしまうくらいだ。私は小柄だからこれには威圧されるし、自然の不条理を感じるよ」

 

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アルバムの好きな曲アンケート作りました、お気軽に回答していって下さい。