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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

ANVIL リップス 「俺は親父と同じ商売をしてるのさ」

ワールド・ツアー中のANVILのフロントマン、リップスがライブ前にメディアのインタビューに応えました。現在の厳しいミュージック・シーンについてのコメントは切なく、そして考えさせられる内容。

音楽配信ビジネスが拡大する中、アーティストへの正当な報酬が払われていないという問題を多くのアーティストが語っています。激変するビジネス環境の中、リップスの語る職業観はとても心に残る内容でしたので、インタビューの概要を和訳しました。

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さっきこの店の前を歩いてた人が、「ワォ、今夜は伝説のANVILがプレイするんだ」と言っていました。そう言われることはどうです?

長いことやってるってことさ。俺の人生はずっとこれだったから。歳をとったら伝説になれるってことなら、伝説にならなくちゃな!

あなたがプレイを始めたのはこの店にいる誰もが生まれるよりも前だったんですから。

俺は3月2日で59歳になる。俺は15歳からずっとやってるから。そりゃ長いことやってるな。

初めてのギグを覚えていますか?

6年生の時さ。演奏をカットさせられそうになって、俺がものすごく腹を立てたもんだから、校長室に呼ばれて、ビンタされたよ。体罰は他にベルトで尻を叩かれたりもしたな。暴力は暴力を生むだけだ。何の解決にもならない。彼ら(教師)は俺に向き合って話し合うべきだったよ。その方が賢くて意味があったと思う。俺は彼らに仕返しなんてしなかった、俺はメタル・ガイになっただけさ。(笑)

その頃から始めたのですか?

いやそれより前、4年生、10歳の時からプレイしているんだ。俺の家族は音楽とは縁がなかった。俺は家族の異端児なのさ。俺の親父は仕立て屋をやっててね、親父の店の2軒隣にあった楽器屋の男が親父の店でスーツを仕立てたんだ。そいつが代金を払えなくて、代わりにエレキギターを渡したんだ。それから始まったんだ。

あなた方のドキュメンタリー映画はバンドの助けになりましたか?

ああ、ものすごく。一夜にして成功したようなものさ。30年もずっとやってきて、突然皆が俺たちのことを知って気にしてくれたんだからな。そして今、映画から6~8年経ったけど、俺たちはアルバム"This Is Thirteen" を出して、次のアルバムも出して、上手くやってると思う。俺たちのアルバムが価値あるものでないなら、映画で取り上げられても何も変わらないはずだけど、俺たちの音楽にはクオリティもあるし、俺たちは意義のあるバンドだ。だから、映画は俺たちの助けになったし、おかげで俺は別の仕事をしなくても良くなった。

映画によってネガティブな面はありませんでしたか?

いや、あるとしたら、嫉妬する奴らがいるってことさ。でもそんなことは常にある。成功は人に妬まれる。でも俺の成功は皿の上にのせて配られたものじゃない。俺自身が生涯働いてつかんだものだ。もしそれを妬む奴がいるなら、「自分でしっかり働け!」と言ってやるね。俺たちを攻撃したって、そいつらの暮らしは変わらない。

ツアーを続けるのは大変だと思いますが、どうやって体調をキープしていますか?

しっかり寝ることだ。ドラッグもアルコールもやらないこと。健康な生活さ。難しいのは睡眠をとることさ。バンの車中で寝なくちゃいけないときも、楽屋のベンチで寝なくちゃいけないときも、とにかく俺は寝るんだ。俺は人生でずっとやりたかったことをやってる、いわば夢を実現してるんだ。だから(ツアーが厳しいとか)そんなことで不平不満を言うなんてありえない。俺はやってきたこと全て良かったと思うし、好きなんだ。不満を言うことなんて何もない。

若いバンドにアドバイスが欲しいのですが、もし今、あなたがバンドを始めるとしたら、どうやりますか?

俺がやってきたのと違うようにやれるとは思わないな。音楽業界なんてものは存在しないんだ。状況は全く違っている。いったいどうやって始めたらいいんだ?俺にも分からない。俺は80年代始めにバンドを確立できて、とても幸運だ。だから俺たちは今も生き残ってて、人に知られている。でももし、何もなく今から始めようとしたら、いったいどうやればいいんだ?

今夜俺たちのオープニングをやる6組ほどのバンドがあるけど、恐らくどのバンドもギャラは無しだ。これでどうやってやっていくんだ?そんな状況に耐えなくちゃならないんだ。ギグをやって、運がよければ誰かが気に入ってTシャツを買ってくれるかも知れない。その代金でレコーディング費用が払えるかも知れない。そんなんでどうやってやっていくんだ?俺たちのジャンルの音楽をかけるラジオ局はない、雑誌に広告を出してくれるレコード会社もない、インフラが何も無いのさ!

ジーン・ジモンズが言ったことは正しいのかも知れない。ロックは死んだのかもな。ロック音楽のビジネスは明らかに死んじまった。今の時代にバンドを始めるなんて、どうやるのか俺には分からないよ。

つまり、音楽をやるのは趣味にしておけということですか?

音楽をやるってのは、正しい目的のためでなくちゃダメだ。人生の満足感を得るためのものであって、金を稼ぐためにするものじゃない。金のためにやった瞬間に失敗する。なぜって、音楽はほとんどの場合金にならないからだ。

映画でお袋が俺のことを「息子は金を稼ぐことを諦めた」って言ったとおりさ、俺は諦めたんだ。俺は金を稼ごうなんて期待はもってない、なぜって、このビジネスには金なんてないんだ。誰が払ってくれる?何のために?つまり、こういうことなんだ。若いバンドにとっては、ステージで演奏して観客がいて、バンドにいるっていう満足感が味わえること、それがバンドをやる理由だ。金のためにやろうとしてるなら、それは間違ってる。

もし俺がバンド以外の方法で稼ごうとしていたなら、その方がずっと金になっていたはずだ。今だって、俺はANVILの音楽で稼いでるんじゃない。Tシャツの物販で稼いでるんだ。俺は親父と同じ商売をしてるのさ。親父は衣類を売ってた。俺はTシャツを売ってる。現実的には俺と親父の商売の違いは、俺はTシャツを売るのに俺の音楽を広告に使ってるってことさ。それが現実なんだよ。

いいか、今は家のカウチに座って著作権収入を待ってればいいような時代ではなくなったんだ。メタリカでさえツアーに出るのさ。回収すべき著作権収入もない、ラジオでかからない、アルバムは売れない、これじゃぁどうやって稼ぐんだ?メタリカTシャツだよ。そうやって皆は稼いで生活してるんだ。プロモーターの支払いはあるだろうけど、ステージ・セットの輸送に設置に、ローディーやスタッフへの支払いもある。大変さ。Tシャツを買うかどうかはファンにかかってる。

そうやって皆は生活してるのさ。そうやって家族の面倒をみてる。それが大事なことさ。そんなに悪いことじゃない、俺はこの生活全てを愛してる。

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現在の音楽ビジネスの状況と多くのバンドが経済的にいかに厳しいかという話は非常に重みがありました。それと同時に彼の音楽に対する情熱と潔いアティテュードに感銘を受けました。