ロン・"バンブルフット"・サールがツアー中にルーマニアでインタビューに応えました。言語が違うせいか、直球でのディープで抽象的な質問に対し、とても誠実に答えているロンの姿、言葉が印象的でした。(終盤はちょっと疲れていますが、笑)
後半ではロン教授の哲学授業ぽくなっています。難しい言葉は使わない人ですが、ヴァイ哲学と同等以上に日本語訳に悩まされつつ、インタビューの半分ほどを和訳してみました。
大きなビールジョッキで紅茶を飲んでいる姿も微笑ましいです。( ^ ^ )
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Sons Of Apollo に参加しましたね。このスーパーグループの狙うゴールは何ですか?
ただ僕たちのやるべきことをやるのさ。5人の個性ある人物が集まって僕ら独自のサウンドを作る。その音には明らかなそれぞれの個性があるけれど、それが一緒になることでそれ以上のものになるんだ。
ビリーのベースサウンドは耳にすれば直ぐに分かるだろう。マイクだって同じだよ。彼は皆が認めるトップドラマーの1人だ。デレクはキーボード界の"ベスト ギタープレイヤー"だ。ジェフ・スコット・ソートは、"Rising Force" で彼の声を聞いたときに驚いたよ、素晴らしいシンガーだし、いい奴だ。
だから僕ら全員を1つの部屋に入れて、アルバムを作ろう!とやって1週間と半であれが出来たんだ。
何があのアルバム製作の原動力となったのでしょう?
マイクとデレクのヴィジョンから始まったものだ。彼らがバンドを作ろうとして僕らが集まったんだから。スタジオに入る1週間前からデレクやマイクとリフのアイデアを交わしていた。スタジオではそのリフから発展させて1日の終わりには曲が出来ていたよ。ジャムしていたものも録音していたし、とても自然に出来ていったね。
テクノロジーに頼ってお互いの家で作業して出来たものではないんだ。バンドとしてあるべき方法で作ったアルバムさ。同じ部屋で一緒にプレイしたんだ。ライブで僕らがプレイするものは実際に僕らが(スタジオで)プレイしたものになる。真正直に作ったものだ。そしてそれは最近ではすっかり失われてしまっているものだと思う。
Art Of Anarchy、このバンドでのあなたのヴィジョンを教えてください。
このバンドでも Sons Of Apollo でもそうだけれど、メンバーそれぞれの個性がとても強いんだ。それこそバンドとして重要なことさ、全員が集まって強い個性が生まれること。
スコット・スタップは彼の言葉一つで彼だと分かる。彼が作るメロディは耳に心地よい。モイヤーはとてもクールなグルーヴを作る、モダンなロック・グルーヴだ。ヴォッタ兄弟は古風なメタルヘッズで、フレッシュなエネルギーを持ち込んでくれる。
そして僕はジョージ・マーティンのように特定のメロディやハーモニーや、プロダクションで加えるいろんなモノとか。それから僕のギタープレイを加えて、あとは皆で曲を書くしね。メンバーそれぞれがいい才能を持ち込んでいると思う。
3月にアルバム Madness をリリースしたのだけど、タイトルトラックはアメリカのチャートで23位まで昇った。とてもいい結果だと思う。
あなたのクリエイティビティ、演奏技術の背景にある身体的、精神的な要素は何でしょう?
うーん、身体的、精神的な平穏と苦悩のコンビネーションかな。皆が持っているものだと思うよ。
あなたの作品のシード、アイデアの元は何ですか?
何でも。ちょっとした気分や、ずっと頭に残っているおかしなメッセージだったり。グルーヴやメロディだったり。何か別のものからインスパイアされたり。
例えばアルバム Little Brothers Is Watching では、"Argentina" は元々Guns N' Roses で新曲を書こうとしたときのものだ。結局そうはならなくてソロアルバムに収録した。"Dont Know Who To Play To Anymore" もそうだった。
"Clots" はガンだと診断された時に歌詞が浮かんだものだ。僕の体中で血を流している塊のことさ。絶望や自分の寿命に直面する感覚、永遠に生きられるんじゃない、何かが自分の命を奪っていくんだという気持ちが曲になった。
"Little Brothers Is Watching" は3年ほど前にイングヴェイ・マルムスティーンとツアーをしていた時に、浮かんだアイデアなんだ。
大きな何か、"ビッグブラザー" が僕らを上から監視しているという。でも実際はその逆で僕らが監視しているんだ。YouTubeやSnapchat、Instagram、FacebookLive なんか全てでね。僕らはそういったものを見たり、自分をさらけ出したり、お互いに監視し合っている。そうして僕らは大きな何かが僕らを監視しているって思っているんだ。
つまり、ぼくらそれぞれが "リトルブラザー" であり、それが1つの集合体となれば"ビッグブラザー" よりも巨大なものになるんだ。それが曲になった。
"Cuterebra" は1967年位の時期、ジョージ・ハリスンの Beatles 曲で彼のボーカルの揺れているような感じ、そんな感じをあの曲で表現したかったんだ。
ブラジルにいたときに、デヴィッド・ボウイの展覧会で、手描きの絵やアルバムカバーのデザインなどを見ていて、なぜかそれが僕に近づいてくるように感じたんだ。それが "Sleepwalking" になった。特定のコードチェンジやプリコーラスの入り方に少し "Ziggy Stardust" ぽい何かが入っている。
現在のような政治的な緊張、社会的危機の時代に音楽を作ることは難しいことでしょうか?
そんなことはないよ。人間が存在する限り続けられることさ。僕らは少し前に起こったことを忘れるし、その前のことも忘れる。けれど、常にどこかで多くの人に起こっていることなんだ。そしてそれは僕らが経験したことよりもずっと深刻だ。
僕らは70年前の人に比べたら不平を述べることは何もない。僕らがしちゃいけないのは不平不満を述べることだよ。なぜなら僕らは手のひらに全ての知恵を握っていて、いつだってアクセスできるんだ。
僕らはただの猿人なんだよ。ただ知らないのさ、僕らが自分たちが作ったもの程の価値がないってことを。まだその準備ができないのさ。この先もずっとね、なぜなら僕らはただの猿人なんだから。
けれど、全世界を描いた絵を見ているとしよう、そこで「何だよ、これが大統領なのか?」なんて言うこともできるけれど、沢山の美しいものを見ることもできるし、全てを見ることもできる。
でも覚えておかなくてはいけないことは、その絵が自分を定義するんじゃない、自分がそれを定義するということさ。そのことを人々は忘れてしまうんだよ。そうして多くの場合、自分で努力しないことの言い訳に使っているんだ。
世界が問題を抱えているからといって、それが自分を定義する訳ではないんだ。自分が世界に貢献することで形作っていくものなんだよ。人々にそういうリマインダーが要るとは思わないけれど、自分にもう少し責任を持つべきだと思う。皆が世界に少しづつ貢献することで、明日は少しだけ良い日になるのだから。
あなたにとって音楽の意味とは何ですか?
うーん、愛を交わすことかな。身体的精神的にね。愛というのはSEX、キス、ハグ何でもいいけれど、それは僕らの身体的な音楽だ。そして音楽とは、僕らが自ずと持つ精神的な振動である愛のようなものだ。それこそが音楽で、音楽は全ての人を共感させる力がある。プラグインして僕らの精神に電気を流すようなものだ。僕らが人生をかけて求めているものなのかも。
完璧な状況で音楽に触れることで、人はそれを決して忘れないし、どんな気持ちになったかも忘れない。心の中で歌い続けるんだ。それは薬物治療なんかを超えたもので、浄化するんだ。壊れたものを修復してくれるんだよ。
あなたの人生の信条、哲学は見つかりましたか?
一生無理だね。人生というのは終わりの無いもののようで、出来る限り遠くへ行きたいけれど、いつもスタート地点にいるんだよ。どんなに遠くまで行っても、そこがスタート地点なんだ。僕はあらゆる面で子供で生徒なんだ。僕がどれだけ無知か量ることもできないよ。僕の信条は・・・僕にはまだまだ学ぶことがある、ってことかな。
アーティストとして創作面で成し遂げたいことは何ですか?
今は眠りたい。(笑) 多くのミュージシャンがそうだと思うけれど人々を感動させ、幸せな気分にしたいよ。
ロン・"バンブルフット"・サールとして次のステップは何でしょう?
Sons Of Apollo の曲を練習する。アルバムで僕がどうやってソロを弾いたのか思い出さなくちゃね。そして来年はツアーに出て、出来る限り多くの人にプレイする。そうして皆と繋がりたいんだ。