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ジョエル・ホークストラ Part 1 「Whitesnake のサウンドには幅広い多様性がある」

MORC2019ではなんと、Whitesnake のジョエル・ホークストラにお話を聞くことができました!内容が多岐にわたり、大変長いため、数回に分けて掲載します。今回は Whitesnake のニューアルバムについて Part 1です。

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ー 遂に Whitesnake のニューアルバムが発売されます。ほぼ1年お蔵入りしていました。

JH: 遂にだよ!確かにリリースは遅れた、ツアーとの兼ね合いもあるし、デヴィッドが病気になったこともあるし、回復には数週間以上かかったよ。"Shut Up & Kiss Me" のビデオ撮影では個別のクローズショットを撮影してからバンドのグループ撮影のために再度集まったんだ。

デヴィッドが回復してからはスタジオの問題が発生した。ハードドライブに問題が起きてしまったんだ。文字通り、クラッシュが起きてセッションを取り出せなくなってしまった。リリースのタイミングとしては去年の Foreigner とのツアー時も考えられていたけれど、結果として今年のツアーでのタイミングになった。良かったよ、遂にリリースできるんだ。

世間では「曲の出来が悪かったんだろう」なんて憶測を言う人もいたけれど、そんなの戯言さ、レーベルの Frontiers なんて、もう最初から曲の良さに興奮していたんだから。遂にリリースが決まって嬉しいよ、とてもエキサイティングなアルバムだからね。

ー "Shut Up & Kiss Me" はとても明るくノリのいいロック曲ですね。

JH: ああ、前の Purple ツアーでは凄くダークな "Burn" のビデオでプロモーションしていたから、デヴィッドが明るい曲にしようと決めたんだ。Whitesnakeサウンドにはとても幅広い多様性がある。"Shut Up & Kiss Me" はデヴィッドの言う「明るいスネイク」であり、ただ楽しい音楽なんだ。でもこの曲だけでアルバムを判断するのは早計だ。"Shut Up & Kiss Me" には "Slip Of The Tongue" との類似が感じられるけれど、各時代の Whitesnake からの影響が感じられるアルバムなんだ。

ぜひデラックス・エディションを手に入れて欲しいね。なぜなら、ブルース曲がボーナストラックになって入っているからだよ。初期からのイギリスのファン、ミッキー・ムーディーやバーニー・マーズデンが好きな人には、デヴィッドがブルースを歌っている曲があるから気に入ってもらえるだろう。

ー あなたが作曲に参加した曲が6曲あるんですよね?

JH: いや、ボーナストラックも入れると8曲だと思うよ。(誰が作曲に参加するとか)そういうエゴはないんだ。全てはデヴィッドが書いているんだ。僕がやったのは、リフを提供すること。いくつかの曲では僕が全てリフを書いたものもある。でももちろん、全ての曲のメロディと歌詞を書いているのはデヴィッドなんだ。時には僕とレブがほんの少し貢献したこともあるけどね。デヴィッドから「ここは何と言おう?」と訊かれて。とは言え、全てはデヴィッドの専門分野だ。僕がやったのはリフを書くこと。中には昔デヴィッドが完成させなかった曲を僕が仕上げたものもあるけれど。レブが仕上げたものも、僕ら3人が座って書いた曲もある。

スタジオにはデヴィッドのオフィスがあって、彼がナイロン弦のクラシック・ギターを手に弾きながら、「これが曲だ。コード進行はこうだ。ここからどうする?」という風に訊かれる。レブと僕が答えると、「よし、それだ。次に進もう」という感じだ。それでレブと僕が階下のスタジオに入って公式なデモを創る。曲のレコーディングの前に僕らはデモを創るのさ。Whitesnake は昔ながらのやり方で制作するんだよ。昔は皆がそうやっていたけれど、Whitesnake ではまだそのやり方でやるんだ。

Jh25_promo ー ギタープレイヤーにとって Whitesnake で曲を書くというのは夢ですよね。

JH: ああ、そうだね。デヴィッドは作曲の分野でとても寛大な人なんだよ。僕らはクリエイティブな貢献をする機会をもらえるんだ。彼は40年以上もこの美しいブランドを築いてきた人だ。Whitesnakeサウンドをね。デヴィッドは僕やレブからベストの力を引き出し、常に Whitesnakeサウンドを創るのにとても長けた人なんだよ。

時々「Whitesnake ぽくない」なんて(曲を聴いて)言う人もいるけど、違うよ。だってデヴィッド・カヴァーデイルなんだ、そのサウンドWhitesnake なのさ。彼は常にそうする。クールなのは、彼が多様性を楽しんでいるってことさ。Whitesnakeサウンドには40数年に渡って培われた幅広い多様性がある。その大きな Whitesnake ブランドの傘下に収まるものであれば、そのサウンドは上手く行くんだ。

常に僕らはそこについて同じ考えを共有している。僕らのやることをデヴィッドが聴いて、「いや、それは違う」ということは稀なんだ。レブと僕も同じだよ。一緒のスタジオ作業はとても早い。僕らのどちらも「このパートは俺のだ」なんてことは言わない。僕らは大局的にとらていて、皆が満足いくように雰囲気の良いバンドにしたい。そういうエゴが勃発するようなことはないんだ。

ー レブとのギターチームはとても上手く行っていますね。

JH: そう思うよ。レブはとてもクールなバンド仲間だ。ギターソロを巡って争うなんてことは無い。エゴなんてないんだ。デヴィッドが僕に望み、バンドがそれを望むなら、僕は喜んでサポート役を引き受けるよ。僕は良い音楽を良い人たちと高いレベルで演奏したい。ギターヒーローになる必要なんてないのさ。

要は考え方ということだよ、そもそも僕はミュージシャンであるということ。僕はデヴィッドにも、レブにも満足して欲しい。皆にとって良いバンド仲間でありたい。今のラインナップはとても上手く行っている。僕らは一緒に音楽を創り、デヴィッドはこのままツアーを続けたいと思っている。彼は Purple Album の後、引退を考えていたというのにね。このラインナップでのツアーをデヴィッドが楽しんだ。僕らには仲間意識がある。

デヴィッドは超ビッグスターなのに、バンドの一員であることが好きなんだ。彼は毎日バンドの連絡ツールに投稿して、ジョークやら何やらで笑いが溢れ、皆で楽しんでいるのさ。デヴィッドはネガティブな感情を嫌う人で、いつもポジティブなエネルギーに溢れている。僕もそういうタイプの人間さ。現実の世界では全ての仕事には困難もあるし、失望もある。けれどそういう嫌な気分は自分の中で治めようとしている。いつだって良いところを見つけようとしているんだ。

ー デヴィッドが一時は引退を考えていたのに、今のラインナップで続けようと思ってくれたのは素晴らしいことです。

JH: 僕とミケーレが入ってからはメンバーも変わっていないので、バンドとしての一貫性があること、仲が良いこともあるね。誰かビッグスターがいるというのではなくて、そういう人が悪い雰囲気の方向へ持っていくということもない。僕らはとてもウマが合うのさ。だって、もしデヴィッドの年齢で、もう人生に十分なお金があるのだったら、ただ良い仲間と楽しく過ごしたいと思うだろう。僕らの仕事は彼が続けたいと思えるよう、刺激することさ。

ー 日本でも Whitesnake というとジョン・サイクスのあのサウンド・イメージが多くの人にあると思いますが、ニューアルバム制作の上で、あの大ヒットアルバムはプレッシャーにはなりませんでしたか?

JH: そんなことは全くないよ。デヴィッドは僕らのどちらにもジョン・サイクスを真似て欲しいとは思っていない。どこかでコメントを書かれたのを覚えているんだけど、「デヴィッドは長髪ブロンドヘアのギタープレイヤーが欲しかったんだ」とか。彼はそんなことは意図してなかったと言った。もし長髪のブロンドということでミュージシャンを雇うのであれば、それは単なるロックのイメージだよね、彼はそんなことで僕を雇っていないし、彼が望むサウンドであれば黒髪のプレイヤーでも構わなかっただろう。

それに僕のプレイはジョン・サイクスとは違っているし、僕らはそれぞれ多くの人の影響を受けている。スキルを確認すれば、デヴィッドには何が Whitesnake に合うか、バンドとして機能するか分かるんだ。あとは人間として性格が良いか、仕事仲間として問題ないかということ。デヴィッドは67歳、当然のことだけど、くだらないことに付き合う忍耐なんてもう持ち合わせていないよ。ギタリストがソロを取り合ったりとかね。そんなことは起きない。今のバンドは皆がおおらかで、仲が良く、いつも笑い合っている。

デヴィッドはこの年齢で素晴らしい歌声を聴かせている。彼はスクリームして25歳のように歌ったりはしない、今の彼の音域で歌っている。アルバムではオートチューンなんてのは使っていない。そういうフェイクのプロダクションはしていない。デヴィッドの声は生々しく聴こえるよ。素晴らしいシンガーでカリスマなんだ。ただデヴィッド・カヴァーデイルの歌声なんだ。彼のアルバムでのパフォーマンスを聴いたら、皆は嬉しい驚きを覚えるだろうね。

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Part 2 へ続く

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