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アンディ・ティモンズ Part.1 「弾いたときにフレディの声が聴こえるようになったんだ」

昨年12月にQueen の "Bohemian Rhapsody" をギター1本によるインストゥルメンタルでカバーして動画を公開、ギタープレイヤーたちの話題をさらった名手アンディ・ティモンズがインタビューに応えました。

映画が大ヒット、ゴールデングローブ賞の作品賞も受賞して再び脚光を浴びている "Bohemian Rhapsody"、私は昨年の Generation Axe 公演でギター5本によるインストゥルメンタル・カバーを聴いて感動に酔いしれたのですが、あの楽曲をギター1本でカバーしたアンディのバージョンはアレンジもトーンもまた格別で鳥肌もの。

アンディがこの挑戦について語っている内容は要チェックです!インタビューの一部を和訳してみました。

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この Queen トリビュートをやろうとしたきっかけは何ですか?

僕は少しばかりディストーションをかけたギターサウンドで曲を演奏する手法について真剣に学んできたんだ。ジャズ・ギタリストは「コード・メロディ」って言われるバージョンでジャズのスタンダードをプレイするよね。コードとメロディとベースラインをプレイしているんだ。でも少々ディストーションをかけたギターでは、高度なハーモニーの類がくすんでしまう。

2006年に僕は自分のバンドでアルバム Resolution を制作して、そこではオーバーダブを使わないと決めたんだよ。全ての曲が1本のギターとベース、ドラムだけなんだ。たった1本のギタープレイで、でき得る限りの方法でハーモニーとメロディを表現するのは地獄の苦しみだったよ。思うに、あのアルバムが僕のスタイルにとってのターニングポイントだった。

それから、The Beatles のアルバム Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band を同じ方法、全ての曲を1本のギターとベース、ドラムだけで表現したんだ。最初は僕だけでソロのアレンジをギターで考えていたんだ。どのコードもハーモニーも僕がカバーしたものは僕の頭の中にある記憶から曲の要素を表現したものだ。それが一連のギター演奏で僕が表現しようとしたものなんだ。

そして2018年に映画「ボヘミアン・ラプソディ」が公開された。僕はそれを11月2日、22回目の結婚記念日に観たんだ!テキサスで午前11時の上映に行って、結婚記念日のお祝いをしたのさ。多くのシーンで感動したよ。この映画が僕を駆り立てたんだ。僕は "Bohemian Rhapsody" の収録されたアルバム A Night At The Opera を聴いて育った。次のアルバムは A Day At The Races だった。何度も聴いたアルバムを聴き返すとともに、僕がさほど聴いていなかった彼らの作品も聴き返したんだ。

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僕はツアーに出なくちゃならなかったけど、暇をみつけては貪欲に楽曲を聴きこんでいた。YouTube動画なんかを見ていたよ。ツアー直前にも僕のオフィスで "Bohemian Rhapsody" に手を出していた。「これは無理かも知れない。でももし僕がこの曲のソロ・バージョンをプレイできたら?」少し着手し始めた頃、妻がメールを送ってきたんだ。僕は欧州にいて彼女は家の手入れをしていた。彼女は Queen を聴いていて、「あなたのバージョンの  "Bohemian Rhapsody" を聴くのが待ちきれないわ」と言ったんだ。

でもその頃には「僕がこれをやるなんて無理だよ」って感じで、どうやってもできないと放り出していたんだ。妻があんなことを言ってくるなんてことは今までに無かった。妻は僕が何かに取り組んでいるのを聴いて、何か出来つつあるのが分かっていても、「仕上がりが楽しみだわ」なんてことは言わない人だ。それで、「マズい!これはやらなくちゃ、彼女が聴きたいって言ってるんだから!」と思ったのさ。彼女がいたから続けられたんだ。

特定の部分をどう弾くかを考えつくと、弾いたときにフレディの声が聴こえるようになったんだ。それで「よし、ここは上手くいったぞ」と思ったよ。その時さ、これをやり遂げようと思ったのは。そしてアレンジを完成させると、記録しようと思ったんだ。音源を出そうと思ったのではなくて、家のスタジオでビデオを録ろうと思ったのさ。ビデオでは僕のプレイは何の編集も加えていない、ライブでプレイしたんだ。

僕が一度じっくり何かに取り組むと、どう見せたいのか、細かいディテールが頭の中にあるから、同時に難しくもあった。いろいろと細かいところを修正したくなってしまった。でもプレイした生のまま、曲の自然な表現として残すことにした。フレディの声をこの身体に感じ、ブライアン・メイの優れたギタープレイの全てを捉らえようとしたことは、光栄な体験だったよ。

Queen を調べていて、何か発見はありましたか?

ビデオの冒頭で僕がコインを見せるだろう?1947年の6ペンス硬貨、英国通貨だよ。あれでブライアン・メイがプレイした、同じものだよ。Queen 全てのアルバムでギターはあれと同じもので演奏されている。僕らギタープレイヤーはピックで弾くのに慣れているけれど、ピックは様々なプラスチックで出来ていて、それぞれ異なる音色を出す。子供の頃、彼らはコインをピックに使ったと聞いて、そんなのは無理だと思った。それで25セント硬貨は大きいから、それならこれに違いないと手に取ったんだ。

映画を観た後で欧州にいたとき、暇な時間を使ってブライアン・メイのインタビューを見たんだ。そこで彼はその特定の硬貨を使ったと言っていた。彼は1950年以前の硬貨がお気に入りで、それは硬貨の素材が異なるからなんだ。英国でも1950年以降は米国と同様に銀から銅の合金になったんだ。素材が変わるとサウンドも変わるということ。ブライアンは彼の誕生年の1947年製硬貨が好きなんだ。僕はブタペストのホテルの部屋にいた夜、eBayで1947年の6ペンス硬貨を検索した。2週間後に家に帰ると、eBayで注文したコインが届いていたという訳さ。

僕は知らなかったのだけど、あのサウンドを得るコインは端にギザギザがあって25セント位の大きさだろうと思っていた。実際には10セント硬貨よりわずかに大きい程度なんだ、とても小さいんだよ。それをあのビデオでの演奏を通して使った。あのボーカルのサウンドを出すのにとても役に立った。

あのコインのサウンドを再現できると、ブライアンのギタートーンが聴こえてくるんだ。彼のサウンドの重要な部分だよ。プラスティックではなく金属ではとても異なる音色になる。そしてブライアンのお手製のギターによるトーンも。彼の指と個性的な楽器とあのコインがあのサウンドを創っているのさ。あの曲を弾くにはあのコインでなくちゃね。ピックを替えたのは僕の挑戦のほんの一部だけど、あのコインであのサウンドを出そうとしたのはとても楽しかったよ。

近い将来にフルアルバムか、EPのリリース予定はありますか?

他にも沢山 Queen の曲をアレンジしているんだ。いつか Queen のカバーをレコーディングするかは分からない。でもこれに取り組むのは大好きなんだ、何しろ楽しいから。あのビデオを公開したら、もの凄い反響があったよ!それ程に皆の共感を得るとは思いも寄らなかった。でも僕らは今こんな話をしている。とてもクールだね!

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あの素晴らしいカバーが完成したのは奥様のモニカさんの一言だったんですね!結婚記念日にアンディがご夫婦揃っての写真を投稿しています。いつまでもお幸せに。