ジョエル・ホークストラ(Whitesnake)が、ライアン・ロキシー (Alice Cooper) のPodcastに登場しました。ロック界のレジェンド・バンドでギターを弾いているという立場の似た2人の会話はなかなかに興味深いものがありました。前半部分はジョエルの生い立ちから彼のキャリア前半の話なので割愛し(当ブログの過去記事参照)後半部分をまとめてみました。
スカイプでの通話は Whitesnake が欧州ツアー中だったようで、ジョエルはミラノの高級ホテルにいるようです。そんなハイソなホテルでも、マイケル・ジョーダンのジャージ姿でロビーをうろうろしていたようで…いかにもなアメリカンw。
延期されていた Whitesnake の来日公演が10月10日発表されました。2020年3月です。来年の彼らは日本公演後もツアーするようですね。
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RR:君と話していて思ったんだ、君のやってきた山のような仕事は全て、11歳で初めてギターを手に取ってこれだ!と思った君の夢を実現する一歩一歩のプロセスだった。そうして現実のキャリアを築いてきたんだ。
JH:そうだな、僕の夢というのは現実的だったと思う。プロのミュージシャンになるということだったから。それは決して豪邸に住んでスポーツカーを何台も所有して、なんてことじゃない。むしろ、家族を養って、別の仕事で収入を補わなくても生活していけるかってことだ。だから今僕の人生を振り返るとずっとギタープレイでやってこれたから、リッチになれたかということではないけれど、やり遂げたな、とは思うよ。
RR:俺はいつも言ってるんだ、自分でヨットを持つんじゃなくて、ヨットを持ってる友達を持つ方がいいんだよ。
JH:ああ、わかるよ。君のやってきたギグだと、行き先でVIP待遇を受けたことが沢山あるだろうね。だから自分のヨットを掃除しなくてもいいんだから、それがいいよ。
RR:Whitesnake のツアーはどうだい?特にレブ・ビーチ。彼は信じられないくらい話上手なんだよ。
JH:ああ、絶対聞かされるんだよね。でもレブは素晴らしいバンド仲間であり、優れたギター・プレイヤーだ。皆は彼が凄いリードギター・プレイヤーだと知っているだろうけど、実は素晴らしいリズムギター・プレイヤーでもあるんだ。Whitesnake にはクールなリフが沢山あるから、僕らは完璧に合わせてリズムプレイをするのを楽しんでる。
ロックライブでの派手なプレイに幻想を持った人もいるだろうけど、実際にはそんなのはショウの4%くらいで、後はリズムプレイなんだよ。(ライアン、ここで大きく頷く)
(ギグをやる上で)大切なことは時間を守ること、準備していくこと、付き合って気持ち良い人間であることさ。
優れた演奏家になることと素晴らしいキャリアを持つことは別のことで、そのバランスが大切なんだと思う。人生は才能を競うタレント・コンテストじゃないってことを理解すべきだ。常に人に敬意を持って接すること、演奏能力によって人間の価値を測ったり、そんなことはバカバカしいよ。
RR:ああ、君はプロとしてあるレベルのプレイを求められる。今、君が言ったのはプロのワーキング・ミュージシャンとしての定義だと思うよ。当然ながら楽器演奏ができなくちゃいけない。でも、時間通り現れて、他の人たちと時と場所に応じた付き合いができること。
JH:そうだね。君なら良くわかると思うのだけど、こうしてツアーに出ると、君はアリス・クーパーを代表することになるし、僕は今なら Whitesnake を代表することになる。僕の振る舞いや発する言葉はブランドを表すものになるんだ。それはデヴィッド・カヴァーデイルが40年かけて築いてきたものだ。
だからプロとしてそれにそぐわないことをしてブランドを傷つけるようなことはしてはいけないんだ。クルーに対する態度もそうだし、外の世界に対してポジティブな態度でいること、礼儀をわきまえ、感謝の気持ちを持ち、お互いに親切であること。ちょっと話が哲学めいてきちゃったけど、とにかく僕がツアーに出るときは、Whitesnake でも TSO でも Cher でも、そのブランドを代表しているんだ。
RR:ああ、レガシーを代表しているんだよ。
JH:そう。何をするにしても、それを肝に銘じておく必要がある。
RR:今年、ニューアルバム Flesh and Blood が出たけれど、レブとのプレイやプロダクションなんかはどうだった?
JH:デヴィッドの頭の中には Whitesnake のアルバムがどんなサウンドか、山のようなアイデアがあるんだ。それに皆はどの時代のサウンドか、メンバーは誰かってことに興味があるよね、そこはアリスと同じだ。そしてアルバムのサウンドを決めるのはデヴィッドさ。だから僕とレブの仕事はそれをサポートして貢献すること。デラックス・エディションで言うと僕は7曲で共作した。とは言え、メロディと歌詞は全てデヴィッドが書くのが Whitesnake だ。
だから、彼にこのサビを思い付いたよ、と言って歌ってそれが曲になるなんて事は無いんだ。僕らの仕事はデヴィッドが気持ちよく歌うための土台を提供することだ。リフだったり、コード進行だったり、彼をインスパイアできるもの。多くの場合、彼が既にサビのアイデアを持っていて、そこからどうするかということだった。彼はとても直感に優れていて、作曲が早い。そこが僕は好きだし、彼は書き過ぎたりしないんだ。そこもいい。ロック曲ってよく盛り込み過ぎになったりするけれど、「最良の曲は短時間で書かれる」って言うだろう、その通りさ。
僕らは殆どの場合、共通認識を持って作曲の作業を進めていたし、デヴィッドが舵を取り、これは違うという時には直ぐに指摘してくれる。彼は時間を無駄にしない、そこがとても好きだよ。僕とデヴィッドの仕事の相性はとても良かったし、僕とレブともそうだった。
曲ができてくると僕とレブは階下にあるスタジオに入ってドラムマシンを使ってデモを録ったんだ。どちらかがベースを弾いて、曲のベースを創り上げるんだ、そしてデヴィッドのOKを貰ってからデモをバンドメンバーに送り、皆が自分のパートや曲の形式を覚える。そして各自がスタジオにやってきてレコーディングするんだ。通常はドラムが最初で、それからそれぞれのパートのレコーディングになる。
その制作過程で自分ではなくアルバムとバンドのことを考え、僕が提案した内容が評価されて共同プロデューサーに迎えられたことはとても嬉しいよ。デヴィッドはとても寛大だ。
RR:人間関係が構築されてきたことによって、前作の『Purple Album』に比べて、全く新しい方向性になっているのかい?
JH:進化しているね。『Purple Album』について話すと、僕がいかにクリエイティブな難題に取り組んだかという点について、皆はとても過小評価していると思う。なぜなら(僕がレコーディングに参加した段階では)レブは全ての曲のギターをレコーディング済みだった。
原曲は殆どがギターパートは1つなんだ。もちろんジョン・ロードが鍵盤でサウンド効果を加えているけれど、このバンドではギターに重きを置く。だから僕はもし現在のセッション・ギタリストがこの曲をWhitesnake としてレコーディングしてオーバーダブを入れるならどうするか?を考えねばならなかった。僕は多くのセカンド・ギターのパートを考えなくちゃならなかったし、アレンジも違うし、原曲とはキーも変わってる。
あのアルバムをただのカバーアルバムだと思っている人もいるんだけど、あれは全く違う解釈でレコーディングした別モノだ。あれで僕はとてもクリエイティブな仕事をしたと思う。でも多くの人は『Flesh and Blood』の僕の仕事の方がクリエイティブだと思っているんだ。なにしろ僕は実際の貢献よりも大きなクレジットを入れてもらっているから。共作者に名前を入れてもらっているけれど、全て曲のサビを書いているのはデヴィッドなんだ。
RR:実際より大きなクレジットをもらったときは有難く受けておくんだよ。ほとんどの場合は正当なクレジットよりずっと低く見積もられるんだから。
JH:まあ、そうだけど。僕は現実的に自分を見ているだけなんだ。
君のバンドメイト(訳者注:ニタ・ストラウスのこと)が 「Ego Kills Talent」(エゴは才能を殺す)ってTシャツを着てるじゃないか、僕が思うにエゴはタレントだけじゃなく、キャリアも壊してしまうと思う。エゴで人柄が変わり、周りの人から離れてしまうんだ。
RR:全くだ。そのためにいったいどれ程のバンドが解散したか考えればいい。数えきれない。
君には優先事項がしっかりセットされているから、ギターや君のやってきたプロジェクトを見ても、それが表れているよ。こうして話してみて尊敬する。
JH:ありがとう。今度会ってその印象を砕くのが待ち遠しくてたまらないよ。(笑)
若い人たちに言いたいのは、キャリアというのはその最小単位まで分割して見ていくと1日をどう過ごすのかということに行きつくのだと思う。毎日をクリエイティブに過ごすことが大切なんだ。
RR:ゴールが何であれ、1歩ずつ何かをしていくことだ。待っていても始まらない。