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ジョー・サトリアーニ Part 1 「自分のリグでは Van Halen はとてもプレイできないとわかっている」

11月14日にハワード・スターンの番組でThe Best of All Worlds ツアーの発表を行い、ビッグニュースが絶えないサッチが、 Guitar World の取材に応えました。

www.guitarworld.com

The Best of All Worlds ツアーについて、オリジナルG3ツアーやヴァイ先生とのツアーについて答えた記事から、今週は Van Halenサウンドについて大いに語った前半を以下に和訳してみました。

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The Best of All Worlds ツアーの準備はどんな心境なのでしょう?

いきなり「これをいったいどうやったら習得できるんだ?」と考えるのはくじけそうな気分さ。サミーには「契約分のアート作品を描き終えるまでは準備できない」(訳者注:サッチは画廊と契約して、アート作品を制作していました)と説明したのだけど、マイクとサミーから延々と変更されるセットリストを渡されて、数日ほど確認する時間があった。彼らはあれらの曲を演奏することに興奮が止まなかったよ。

それに追いつくのは大変でしたか?

「その曲はプレイしたことがない、まだ覚えていない」とずっと言い続けていたよ。同様にハワード・スターンにも説明した。Van Halen が登場して大ファンになってから、もしそのプレイを覚えたら、自分のプレイに入り込むだろうとわかっていた。

だから88年頃に私は意識的にそのプレイを解析するのを止めたんだ。曲を弾いて楽しんだけれども、エディがそこで何をしていたのかを分析することはなかった。

ところが、数年前にアレックスとデイヴから(VHトリビュートの誘いの)電話があり、自分はどの曲もプレイの仕方がわからないことに気付いた。それを彼らに説明し、3~4週ごとに彼らに電話して「できないよ、すまない、私は適任じゃない」と言い続けたんだ。もっと適任な人が沢山いるというのに、彼らは「いや、あんたが適任だ」と言うばかりだった。

それはロス期の楽曲で、今やサミー期の曲もですよね。

異常だよ、自分の守備範囲外のことなら、パートを覚えるのもやっかいだろう。「どうやるんだ?私の守備範囲じゃない」となる。それでたっぷりの言い訳を用意して「台無しにしてしまうよ」と言ったのだけど、結局は楽しい経験になるだろう。夏のツアーが始まる前には何とかするよ。

 

そして重要な要素はエディのリズムプレイです。ソロは(曲の)1部ですから。この複雑なリズムにどのようにアプローチしますか?

有難いことに、曲が発表されて長いため記録が沢山残っている。レコードから私が聴きとれない音符も譜面やTAB譜が助けになる。

でも幾つかの曲、例えば "I'm the One" ではエディはバンドが入る10クリック前にスタートするのに、彼らは何とか合わせてしまう。彼らは高度に発達したリズムセンスを共有しており、全てのサウンドを楽しく聴かせながらタイムを合わせてプレイできるんだ。

でもこれをプレイするとなると、似たスキルを持ち上手くプレイできる人はいるよ、彼らの得意分野で自然にできるんだ。

私がこれに向き合ったとき、デイヴとアレックスに言ったのは、私はもう何十年もメロディをプレイしてきたから、ポケットの後ろに座ってきたということだ。メロディを効かせるためには退いて、バンドがグルーヴとリズムギターでお膳立てをさせないといけない。

ところが急に私はエディの書いた、彼が異なる機能を果たしていたパートを弾かねばならなくなった。彼は驚くべきコードワークの構築をプレイしている。"5150" などではサミーがメロディを歌うべく退いていた。つまり、私にとって最も奇妙なことは、急にメロディを弾かずビートの先頭に立って弾くことだ。エディがやったとき、決して前のめりに聴こえることはなかった。

あなたには独自のトーンとスタイルがあります。あなたがエディのパートを弾くかどうかに関わらず、ファンもそれを聴くことを期待するでしょう。そうでいながら、エディのサウンドに聴こえることも望まれるでしょう。どう対処しますか?

いい質問だ。先日2つの番組への出演を終えてから、私が盛大に失敗したということを脇に置いて、もちろん失敗したことは悩みのタネさ、でも立ち直るよ。

ともかくわかったことは、これが私にとってメンタルな案件であるということさ。そしてこれは私がかつて Deep Purple でプレイしたときに経験したものだ。"Smoke on the Water" をプレイして、自分のギターがリッチー・ブラックモアとは違うサウンドだという精神的苦悩を体験した。

頭の中の声でずっと繰り返されるんだ「そうじゃない、マーシャルとストラトじゃないと」って。でも私が使ったのはもっとゲインの高いもので、Boss DS-1 を100wの Marshall ヘッドに繋いでいた。リッチー・ブラックモアとは違う。

私のプレイに影響したよ。「構わない、音符とフレージングなんだ」と言い聞かせてみても、ファンとしてみれば、正しい(リッチーの)サウンドが聴きたかったから。

そして私の培ってきた考えでは、(オリジナルの)サウンドに敬意を払いたいが同時に、他人のサウンドに同化して個性を失いたくない。

おかしなことに、私は昨夜サミーとマイクとメッセージをやり取りしていて、1つ質問したんだ。「皆の意見では、ライブで最も成功したエディのリグは何だった?」彼らはエディと何年もツアーしていて、彼が色々試すのを見てきたのだから、興味があった。

彼らの共通意見は?

難しいよ。『Live Without a Net』のビデオを観たけど、エディは Marshall や Eventide、パワーアンプやらを使っていて魅力があった。粗い程でもなくコーラスはかけてあった。彼が新たなギアに移って、より良いサウンドになる曲がある一方で、古いギアでの方がしっくりくる曲があった。エディは刷新する過程できっと悩んでいたと思う。

『Live Without a Net』と93年の『Live: Right Here, Right Now』と15年の『Tokyo Dome Live in Concert』の違いは目を見張るものがある。まるで、ギターはどんなサウンドにすべきかについて異なる思想があるようさ。東京のライブでは、かつてないほどにエディはゲインを上げていて、コンプレスされている。EVH 5150 Ⅲ のゲイン構造からすれば理に適っている。

彼がそこに移行したことに完全な敬意を持っているよ。"Mean Street" のイントロをやるのにきっと大変な苦労をしたことだろう。私がハワード・スターンの番組でやったように「ゲインが高すぎる」というのを彼も経験したと思う。

ミドルレンジでゲインのピークを得たい、そうすればハーモニクスを大きく出せるからね。けれど一歩間違えると、表面ノイズが大きすぎる。でもそれを朝の6時(訳者注:今回の番組の収録時間)に試して対応するには「それは難しい」となるのさ。

 

あの番組で見たギアがツアーにも登場するのでしょうか?

私が使用したのは Fender Tone Master Pro (アンプモデラー&マルチエフェクター)だ。(何が良いか)わからなかったんだ。私の通常のライブ用リグは、12フレットより上の1弦でプレイできて、同時に全てファットなサウンドになるようデザインされているから合わない。自分のリグでは Van Halen はとてもプレイできないとわかっている。全く別物のサウンドだからだ。

でも私は EVH 5150 Ⅲ アンプは所有していて、これはボリュームを絞って使うのは難しい。それで Fender Tone Master Pro に行きついて、5150 Ⅲ モデルを見つけ、「素晴らしい、本物のアンプみたいだ」となったのさ。

ところが、高音弦で弾こうとすると「何が起こったんだ?」となる。なぜなら、まるで誰かが急にファットゲインのノブを6目盛りも落としたみたいなサウンドになるんだ。訳が分からない。モデリング・アンプの仕組みとハイゲインものを正しく出せない理由がわからない。

でもともかく、あれはラジオ局の収録だったから、低ボリュームで使えるリグを使う必要があった。デジタル変換された音の中でミドルレンジを狙う必要があった。

どの曲に取り組むのが楽しみですか?

"The Seventh Seal" のような曲をプレイするのが楽しみだね。ここではエディが壮大でシネマチックな作曲アプローチをしている。素晴らしいグルーヴがあり、ゴージャスなギターサウンドもある。それをプレイしようとすると、"5150" をプレイするときと同様に、自分の指を見て「ワォ、これは美しい」と言うのさ。

聴くのとはまた違って、彼らの曲をプレイするとこう思う。「最高に楽しい、エディがこれを弾いて楽しんだのは当然だ」エディが包括的リズムとメロディック・ギターのパートで成し遂げたことはただただ凄い。だから、プレイするのを楽しみにしている。もちろん、"Panama" や "Ain't Talkin' 'Bout Love" もプレイしたい。

(Part 2 に続く)

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