6月9日にニューアルバム『Six』をリリースする Extreme のヌーノ・ベッテンコートが音楽プロデューサーで著名Youtube番組を制作するリック・ビアートさんの番組に登場しました。
リックさんが少し前に "Rise" のソロを解説した動画が話題になったそうで、2人の会話は盛り上がります。
2時間半近くに及ぶ対談はかなり興味深いものですが、今週はほんの障りの冒頭部分をまとめてみました。ヴァイ先生は新譜を聴きたいとヌーノをお家に呼びだした模様です。(笑)
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RAT ペダルについて話そう。
俺と同じ理由でRATペダルを使う人で知ってる人はあなたくらいだよ。ディストーションを得る為に使うんじゃない。
ディストーション・ペダルはアンプのクリーンに繋ぐだろう、ディストーションを上げて、ボリュームを調整する。でも12か13歳の頃に発見したんだ、ディストーションの目盛りを9時に、ボリュームを3時の目盛りに上げて丁度(目盛りが)羽のように広がった十字の状態で時折プレイすると、誰も何も聴こえないと言うんだ、まるで電池切れみたいに。いや、これでペダルは作用してるんだ。
Generation Axe のツアーでもそれをやってたら、「何やってるんだ、何も聴こえないぞ、医者にでも行ったら」と言われた。違うんだ、これで何かパーカッシヴなものをプレイするんだ、何かボトムエンドにくるやつ。例えば "Rise" のソロみたいな。
このペダルがなければ、あれはあんな風にキック・ドラム風のサウンドにはならない。だからRATペダルはいつも俺のギターからインしてアンプヘッドに入るのさ。するとボトムエンドが、キックドラムってのが最適の表現だと思う。(弦への)アタックやコードも全てが厚く、ビッグでファットになる。サウンドが締まるんだ。
それが長年自分のDNAの一部になると、(RATペダルがなくても)もちろんギグはできるけれど、そりゃ俺はプロだからやるよ、でもずっと文句言ってるだろうな。
君にとって他に重要なペダルボードの中身は何だい?
それだけだ。俺がプレイしてきた全てはギターサウンドそのままなんだ。もちろん、美しい曲のギターにコーラス掛けたり、ソロにディレイ掛けたりは好きさ。でもそういうのは曲に特定のトーンが定まってからだ。全ては自分の指とギターから。
良い例がエドワード・ヴァンヘイレンだ。彼のプレイを聴くと、いかにサウンドがダイレクトで、彼の指が弦に及ぼすことを感じるだろう。サミーの参加した時代、コーラスを使いだした頃の音源を分離すると、いかに多くのエドワードのDNAを失っているかに気付くだろう。
アタックの感触が失われるんだ。
そう、俺はエディの前で彼のリグをプレイしたらはっきりわかったよ。俺は遂に彼のサウンドが出せる、皆に自慢できると思ったんだ。弦には彼の汗までついてた。彼のDNA付きで彼のアンプで、俺は彼のリハーサルを見たところで、彼が俺にここで弾いてみろと言うんだ。遂にこれを弾けるのかと興奮したよ、ところが自分の音しかしなくてがっかりしたんだ。悪夢さ。
エディは何て言ってたんだい?
あれはドゥイージル(・ザッパ)のアルバムを手伝ってたときに彼から紹介されたんだ。幻滅するから自分のヒーローには会わない方が良いって言うけど、エディはビッグなハグをして、口にキスしてきたんだ。俺はそれは特別のことだと思ったけど、彼は皆にそうしてるんだ。(笑)
彼のリグをプレイしたいって祈っていたときだよ、「休憩するから弾いてみな」って。夢が叶ったと思ったけど、問題はエディが目の前にいたことだ。彼は「この新しいペダルを試したいんだ、弾いてみてよ」って(かがんでいろいろ操作しながら)言う。彼が目の前でペダルをいじってるときに、一体何を弾いたらいいんだ?
それで、俺はそのときちょうど『Pornograffitti』でスタジオで弾いてたところだったから、タッピングとストリング・スキッピングを使った "Get The Funk Out" のソロを弾いたんだ。もう一度弾こうとしたら、彼は「そのクソみたいなものは弾くな」と言うんだ。「しまった、そうか(蒼白)」と固まってたら、彼は振り返って「冗談だよ」って笑うんだ。(笑)
エディの音は出せないんだと知ってがっかりしたけど、そのおかげで学んだんだ。(ギターサウンドとは)自分と指、ピックのどこをどれくらい持ち、どれ位のハーモニックが出るのか。そういった細かなことは普段考えないけれど、それがプレイヤーの個性を創るんだ。もちろんそれだけでなく、(音楽的に)創造的でなければならないけれど、トーン面に関しては、指と弦とアンプに掛かるものが少なければ少ない程、最も自分らしいサウンドになる。
それを理解してからは、指と弦とアンプ以外のものは欲しいと思わなくなった。RATペダルだけが例外なんだ。
もう1つ、スティーブ・ヴァイの話をしよう。彼がツアーに出る前に(Extreme の新作)アルバムを聴きたいと言うので、彼のスタジオに行ったんだ。彼はスピーカーの前に座って聴いていた。「アルバム全部を止めずに聴きたい、アルバムとして味わいたい」と言ったのに、彼が止めるんだ。
「止めないって言ったじゃん、スティーブ・ヴァイの批判聞かされるの?」ってびびってたら、「違う、どうやってギターサウンドをここに存在させたんだ?」と。「スピーカーのこと?」と訊くと、「いや、(私の指は)スピーカーを指しているけれど、言いたいのはサウンドが聴き手の耳、目に入り込むということだ。どうやったんだ?」とスティーブ。
「何もしてない」が俺の答えだ。リヴァーブも使わず、直でマトモに分厚く弾いて、ミスもそのまま。俺はいつもドライで生のレコーディングをする、それが自分の音なんだ。
"Rise" のソロではディレイを使っていないのかい?
いいや、アンビエンスくらい。少しばかりディレイを使う時もあるけど。あのMVを公開してから24時間で俺のスマホが爆発したんだ。何でブライアン・メイが?リック・ビアートが?ルカサーもメッセージくれた。同業者が連絡してくるんだ。
私のところにも君のソロについて大勢から連絡がきたよ。
俺の言いたいことはそれで、あれは曲もソロも真っ当なものだった。俺は別にあれがアルバムで最高のソロとは思わないし、最高の曲だとも思わない。でも気付いたんだ。
皆は飢えてるんだよ、ギターの入った曲に。人々は(ビデオを)見て聴こえるもの、それを感じるんだ。気付かされるんだ、楽器に対する身体的、感情的な炎と情熱を。
ビデオはあのソロ自体と同様に重要だと思う。スピリットと歓びを見て感じる必要があったんだ。かつて俺たちがエディを見て、ギタープレイの歓びを感じたように。
ギタープレイってことだけじゃない、彼ら(ギターレジェンド)のプレイを見て、あれを感じたい、ロックバンドをやりたいって思ったのさ。ステージでプレイしたい!って思わせた。(インスタグラムのテクニカルプレイヤーが椅子に座って弾いているのと違い)苦労してもバンドでステージに立ってプレイしたいと思ったのさ。エネルギーと興奮を誰かと分かち合いたいから。