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ジョー・サトリアーニ 「パフォーマー側の問題を解決しなければ、コンサートなどできない」

ジョー・サトリアーニがハワイのラジオ番組に遠隔で参加しました。このところサッチが積極的にメディアのインタビューに応えており、アルバム発売日直後のような活発さです。遠隔からの参加でも音声がかなり良く、実際にサッチはラジオのオーディエンス向けにちょっとした即興もプレイしています。意外にもブルースです!(動画36:33時点)

コロナの影響、マスク着用について、BLM運動など最近の社会問題についても語るサッチのコメントが興味深かったので、インタビューの一部概要を和訳してみました。

 

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Club Joe というライブストリーミングをシリーズでやっていますね。

ああ、世の中にはビデオカメラの緑のランプ(録画モード)に向かってアコースティックギターやピアノを弾いたり歌ったりするのが上手い人がいるよね、素晴らしい才能だよ。インストのギタリストにとっては少々違って、難しいんだ。というのは私のことなんだけど。

ここにはバンドはいないし、それでマネージャーに言ったんだ、生のオーディエンスの前で演奏にエネルギーを注ぎその瞬間を生むのは大好きだけど、ラップトップの緑のランプをのぞき込んでやるのは自分にはできないと。緑のランプではオーディエンスに向き合ったときのようにインスパイアされないんだ。それでファンと繋がるためにどうしたらいいかと。

世間には若い才能に溢れたシュレッダーがいて、彼らの才能を20秒にして凄いギタープレイを投稿しているだろう、インスタグラムにはその長さで十分だ。私たちはギタリストだけでなく全てのファンに楽しめるものにしたかったんだ。それで私の過去のカタログを取り上げて、ビゾネット兄弟を呼んだり、サミーやチャドやアンソニーを呼んだり、スティーブ・ヴァイやジョン・ペトルーシに声をかけたのさ。

少し前には Club Joe で Chickenfoot のメンバーが集まっていましたね。皆はどうしていますか?

ああ、サミーはいつものようにちょっとしたジョークのビデオを送ってくれたんだよ。彼のバンドの The Circle は毎週リモートでカバーをやってビデオを投稿してるよね。ちょうど "Right Now" をやってた。クールなアレンジだった。2日前にも彼には困らされたよ。撮影中に、何やってる?どっか行こうぜ!って来るんだから。(笑)彼から連絡が来てもう1曲創ろうぜ(Chickenfoot 曲)と言われたのだけど、私はアルバム3枚作曲している真っただ中だと言わなくちゃならなかった。

そのうちのインストゥルメンタルの1枚はライティングを終えて、リモートでのレコーディングを始めるところなんだ。今は私のライブバンドでアルバムを制作している。今年ツアーに行く直前にキャンセルになってしまったから。それでインストゥルメンタルの1枚、ボーカル入りの1枚、私とエリック・カデューでクレイジーなテクノアルバムを1枚をやろうと。なにしろ、来年の4月に欧州ツアーを開始するまでは家から出られないんだから。でも私は家のカウチに座って Netflix を観る気はない。アルバムを創るよ。

『Shapeshifting』の "All For Love" のムーディなギターが好きです。この曲について教えてください。

その曲を選んでくれて嬉しいよ。90年代後半にツアー用に購入したキーボードでオーケストラ曲を書いていたんだ。2分半の曲が書けて、これはいいなと気に入って数年後に ProTool に入れたんだ。ジョン・ポール・ジョーンズLed Zeppelin)とオーケストラ・プロジェクトの話をしていたから、彼にCDを渡したのだけど発展しなかった。それですっかり忘れてしまっていたけれど、アルバム制作時に思い出したんだ。

ギタープレイについて言うと弾くのが難しいのは速い曲じゃない。テンポの遅い曲こそ弾くのが難しいんだ。最も難しいのは自分の持てる才能の全て、感情表現の全てを使って、フレージングやトーンなど全ての質感に集中すること。ステージで速い曲を弾きフラッシーな演奏をしてオーディエンスを指さすようなことをするにはさほど才能は必要じゃない。

それでさっきの曲の話に戻ると、これを仕上げるときが来たと思ったんだ。ギターにアレンジして、レコーディングに向かった。最初の9テイクは酷かったよ。とても弾くのが難しいいんだ、高ゲインの中でギターを静かにさせるのも、あの曲のテンションでのプレイも。ミスの余地は無い。シンガーの素晴らしい歌の周りでギターノイズがしたら気をそがれてしまうだろう。インストギターの窮地だよ。10テイク目でコントロールルームの皆がこれだ!というプレイができた。でも本当に難しかったから、ライブで演奏したら失敗しそうだ。(笑)自分で落ち着いて聴いてみたら、わかったよ。私がいつもそうしたいと思っていることができたんだ、オーディエンスの心に触れるということ。

コンサートの再開についてはどう思いますか?

再開の方法はやがて見つかるのだと思う。通常の予防接種のように有効なワクチンが開発されるだろう。その一方で人々の心に不安は残るのだろうね。

私がアジアツアーをした何年もの経験から言うと、アジアの人たちは常にマスクをしているんだ、礼儀としてね。彼らは風邪をひいたらマスクをする。マスクをすることが社会的に嫌われる行為ではない、コミュニティに対しての礼儀なんだよ。アメリカではなぜか歪曲して受け取られ、自由を奪うものになっている。これは変えなくてはいけない。マスクをしている人は周りの人に対して善い行いをしているんだ。コミュニティや家族を守ろうとしているんだよ。マスクをしている人が周囲の人をゾンビだと思っている訳じゃない!アメリカ、特に本土でのフリーダム運動では物事を歪曲して、自由という概念に干渉することに対して何でも、周囲に不穏を築いているんだ。

もう1つ、コンサートについて言えば、皆はオーディエンスのことを気にしている。観客同士の距離が十分保たれるなら安心だとかね。でもそこでは重要なことを忘れているんだ。現地のクルー、バンドのクルー、そしてバンド自身。皆がパンデミックの時期にバックステージという最も最悪の状況に居ることになる。スペースが無いし、何でもシェアするし、1日の18時間を1都市ですごし、移動するというのを週の6~7日繰り返すんだ。

オーディエンスについては収容力の1/3のチケットを売ったらいい、それで解決するだろう。でもそれでは会場のオーナーやプロモーターが1ヶ月やそこらで破綻してしまう。それにパフォーマー側の問題を解決しなければ、コンサートなどできない。去年は Experience Hendrix のツアーを2つやったのだけど、5~6台のツアーバスには1台に12人乗っていた。共にバンクに寝て、コーヒーマシンや冷蔵庫をシェアする。バスルームやラウンジもさ。会場に着くと皆が集まって食事する、そこには現地のクルーもいるんだ。

これらの問題を解決するのはワクチンしかない。コンサート再開の方法はやがて見つかるとは思う。科学的にこのウィルスについて判明したことはいくつかあるけれど…とにかくマスクを付けること。そうしなければ他人に感染し、広げてしまう。

あなたが挙げた数々の問題は来年4月までに全て解決してツアーができるでしょうか?それとも来年4月というのは仮の日程ということでしょうか?

それには私がこのウィルスの脅威を実感した最初について話そう。妻と地元のスーパーマーケットにいたときだ、人々が奇妙な行動をしていたんだよ。レジの人に「何かあったの?」と訊いたら「この世の終わりです」と笑って言っていた。でも彼は怖がっていたよ。お客が店の棚の物を買い占めていたんだから。その後1日で私はマネージャーに電話してツアーをキャンセルすると告げたんだ。「ビジネスのことを考えるのは止めよう。自分の家族、バンドの家族、子供や親のことを考えよう。ロックよりも大切だ」と。

ウィルスの問題もありますが、今のアメリカはBLM運動を始め、警察の暴力や市民権運動や様々な問題を抱えています。あなたの考えを教えてください。

私が子供の頃からあった問題だ。私は60年代後半に子供時代をすごしたのだが、実に騒然とした10年間だった。近所で起こっていたので公民権運動の争いを目撃したし、両親の職場はその影響を受けていた。何年にもわたって我が家のディナーには様々な人種や国籍の人がやってきていたのに、(今起きている)こんなことは辻褄が合わないよ。今になって社会はそうでなかったのだと気付いた。ご近所にも人種差別主義者がいたことがわかったんだ。

この歳になっても社会が何も変わっていないと知るのはとても気が滅入るよ。オバマ前大統領や非白人女性の政府高官もいたから昔よりは事態が改善しているのだろうけれど、あるべき状態からはかけ離れている。だから私はBLM運動を支持する。私にはそれに反対する人の気持ちがわからないんだ。暴力については反対だ。破壊や人々が傷つくのを見たい人などいないと思う。でも誰もが平等に扱われることは正義だし、そのために立ち上がらなくてはならないと思う。政治家でもなく、私には解決策はないけれど、それができるリーダーシップのある政治家はいると思う。

私がとても心苦しく思うのは、私の世代が息子の世代にこのような惨状を手渡してしまったことだ。子供の頃は大人になったら、こうした問題は全て解決するんだと思っていたのに。いくらでも大きな音でギターを弾けるとか、自由に好きな人と結婚できるとか、職業選択の自由とか、居住地選択の自由とか、平等な人権とか、全て人種や性別にかかわらず。それができなかった、つまり私たちの世代は失敗したんだ。とても恥ずかしいし、恐ろしいよ。こんな世界を息子に。息子のキャリアにとっても、これが大人たちの与えた世界なんだ。

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普段は政治の話はしない人ですが、BLM運動については語っていましたね。親としての気持ちがにじむコメントでした。

それからコロナ中にサッチが制作するアルバムが少し前の時点から1枚増えています!さすが多作で仕事の早いサッチ!エリックと制作する予定のテクノ・アルバムというのは、『Engines of Creation』以来2人が集まって続編を制作するということでしょうか?あのアルバムはあまり受けが良くなかったような記憶ですが、20年後に再チャレンジなのかな。それらのアルバム制作のため、サミーとの Chickenfoot 新曲制作が立ち消えになったとしたら、ちょっと悲しいです。

『Shapeshifting』の "All For Love" の演奏がいかに難しいかの話が出ていましたが、『Shockwave Supernova』ツアーでみせた "Butterfly And Zebra" の演奏は素晴らしく、サッチのサウンドコントロールのテクニックに感激しましたので、きっとツアーで演奏しても素晴らしいのだろうなぁと思います。