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キップ・ウィンガー 「誰かに対してチャンスの扉を開くことはできる、でもその後は彼ら次第なんだ」Part 2 of 2

キップ・ウィンガーがライアン・ロキシーAlice Cooper)のライブストリーミング番組に参加した動画の和訳続きです。

 

『Pull』のプロデューサー、マイク・シェプリーの話はなかなか興味深かったです。以前、レブが「キップはタイムも完璧じゃないと許してくれない」と言っていましたが、キップがそうなったのはマイクとの仕事のお陰なんですね。

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 RR:そして "Conversations With Nijinsky" でグラミー賞にノミネートされた。

KW:作曲家としてノミネートされるのは信じられない驚きだったよ。簡単に入れるクラブじゃない。翌年に(アカデミー会員として)審査員に招かれたのだけど、とても意地悪なんだよ、いい意味でなんだけど。

RR:サイモン・カウが8人いるとか?

(訳者注:元アメリカン・アイドル審査員の音楽プロデューサーで毒舌で有名)

KW:もっと凄いんだ、25人いる。彼らは殆どの候補作を通過させない。度肝を抜かれたよ。そんなクラブに参加できてとても光栄だ。

RR:君は今でも Winger をやっているし、クラシックと両立しているよね。頭の切り替えはどうやっているんだい?

KW:最初は難しかったけれど、ちょっとした工夫をしたんだ。皆もできると思うよ。野球帽を何個か買ったんだ。

RR:文字通り違う帽子を被ってるの?(笑)

(訳者注:英語で1人で複数の異なった仕事/役割をする人のことを wear many hats とか wear different hats という)

KW:ああ、違う帽子を被るのさ。被って、よし今はクラシックをやると言って集中する。Winger なら違う帽子を被って集中する。タイムマネージメントだよ。この2時間、4時間、6時間はそれだけをやり、それぞれの分野の能力を伸ばす。俺はもう59歳だが。

RR:健康で若く見えるよ。好きなことをやっていると若さが保たれるんだ。

KW:正直に言うと、ある頃にはロックを辞めてクラシックに集中しようと思っていた。でも今では、ロックをやってきて本当に楽しい。クラシックの世界にフィットするには本当に小さな穴に糸を通さなくちゃならない。和声として適当であり、反復は不可、フェイクやコピーも不可、それらに適ったモノを見つけるのは強烈に難しい上に、個性を出さなきゃいけない。

RR:聞いてると、ポップ・ミュージックと真逆の世界だな。ポップは繰り返しがあって、他の曲と同じじゃなきゃいけなくてって感じだもんな。

KW:ああ、それで、ナッシュビル交響楽団との仕事を十分やって、俺はただロックしたくなったんだ。だから今年の後半は集中して Winger のニューアルバムに力を注ぎたい。

RR:じゃあここで、皆からもらった質問のコーナーに進もう。1つ目の質問は @ribbon_bear から(訳者注:私が事前に送信した質問です!)「アリスから学んだ最も重要な教えは何ですか?」もちろん俺も学んだよ。君は?

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KW:アリスはアメリカンロックの貴族階級なんだ。アリスから学んだことは…寛大であること。アリスはとてつもなく寛大なんだ。俺がバンドから抜けるとき、皆が俺をバカだと思ってた。でもアリスは「お前の道に進め!お前のやりたいことをやれ」って言った人だ。

RR:ワオ、いいね。アリスが背中を押したって訳だ!次の質問は「ロックンロールは死んだ?」

KW:いいや。新しいバンドが沢山ある。活きのいい若いバンドだ。ロックンロールのスピリットは死に絶えない。ところで、俺のクラシック音楽にもロックンロールのスピリットがあるんだ。それが俺がクラシック界に持ちこむものだ。

RR:では次の質問。「Winger のニューアルバムは?」

KW:レブと俺は12月に集まって数曲書いたんだ。その頃に幾つか Instagram に投稿している。数個の素晴らしく良いアイデアとそれ程でもない沢山のアイデアが浮かんで、今俺が言えるのは、相当良い4曲が俺たちのリリースする水準に達していること。でもそこでコロナが始まってしまった。俺たちは今少しばかりファイルシェアで進めているが、これは俺の好きなやり方じゃない。俺は同じ部屋に入ってアルバムを創りたいんだ。それで、今はファイルシェアでアイデアを交換しているけれど、(レブとの)10日間のスケジュールを押さえたいと思っている。それでできる。来年1月には十分リリースできるだろう。

RR:ボー・ヒルやマイク・シェプリーらのプロデューサーと仕事してきたよね。

KW:ここでマイクの為に祈らせてくれ。安らかに眠れ。彼はミックス・エンジニアのピカソなんだよ。俺の見解ではマイク・シェプリーより優れた人はいない。俺はアルバムの創り方を彼から学んだんだ。『Pull』を聴けばこれがバンドのアイデンティティだってわかる。その前の2枚の方が成功したけれど、『Pull』で俺たちは初めて自分の音を見つけたんだ。俺には前の2枚ではそれは聴こえない。

スタジオでレブがリズムギターを録ってるときだ、マイクが「ハシってる」(訳者注:曲のテンポより速く演奏すること)って何度も言うんだ。俺たちは「は?」だった。でもマイクは「ハシってる」って言うのさ。俺にはそう聴こえなかったんだけど、ある瞬間に視界が開けて理解した、「ワォ!わかった!レブはハシってる!」そこから音楽の中のマイクロニュアンスが全て聴こえるようになった。ボールが地面に落ちるところ、それがビートだ。正確にビートをヒットしないとな。

それにエンジニアリングやミックスやその他全てをマイクから学んだ。問題は、マイクから学んだせいで俺がアルバムを創るのには時間がかかるってことさ。マイクはマット・ランジ(訳者注:Def LeppardAC/DC をプロデュース)と18年程仕事をしてた。正確な仕事だったよ。

クラシックでも同じだ。オーケストラの前にスコアを出して、オーボエに対し正確なアーティキュレーションが何か、それを知っていなくちゃならない。そうでなければ、自分が思ったように演奏されない。

音楽制作でも同じだ。でもそれは価値評価じゃない。パンクバンドならジャムして1曲一通り演奏すれば十分エキサイティングだろう、だからどちらが上とか下という話じゃない。ただ俺のやり方ではそれが必要なんだ。俺に聴こえるように正確にしたい。

RR:じゃあここで質問。Winger ってバンド名はアリスが名付けたの?

KW:いや違う。最初は Sahara って名前だったけど、同名のバンドから差止めの手紙がきたんだ。それでどうしようってことになって、どうなったのか思い出せないな、多分アトランティックの社長が「もう Winger にしておけ!」って言ったんだったかな、俺は嫌だなと思ってたし、レブはがっかりしてたよ。

RR:Beach にしたかったんだろ?

KW:ああ、あいつは Winger Beach にしたかったんだ。そしたらアリスが「Winger は凄く良いバンド名だ」って言うんだ。アリスがそう言うのだから、俺もクールなのかなと思ったんだ。俺は長年アリスのビジネスサークルと関係を持っていられることを誇りに思う。これはデカイことだ。彼はとても慈悲深いボスで、彼の下で働くと、皆がその台を支えたいと思うのさ。

RR:ニタ・ストラウスを Alice Cooper Band に推薦したのは君だね?

KW:ああ。アリスのビジネス・マネージャーと話していて、オリアンティが辞めるから女性ギタリストを探していると聞いたんだ。ちょうど Monsters of Rock Cruise でニタとコートニーに会っていたから、俺に心当たりがあると答えた。ボブ・エズリン(アリスのプロデューサー)に連絡してニタに電話した。

RR:与えられたチャンスを最大限にモノにしたのが彼女だね。完全に期待に応えた。

KW:全くだ。誰かに対してチャンスの扉を開くことはできる、でもその後は彼ら次第なんだ。

RR:その通りだ。俺にとってはそれがギルビー・クラークで、アリスが俺と彼のプレイを見て気に入ってくれたんだけど、彼にはタイミングが悪く、それで俺にやるべきだと勧めてくれた。

KW:俺にはケインとボー・ヒルが扉を開いてくれた。ボーがアリスのレコーディングに呼んでくれたんだ。それからケインがアリスのギグを勧めてくれた。そしてドアを開けたらその先は自分次第なんだ。

RR:君の次の目標は?

KW:もう目標は達成したんだ。次のはまだない。ナッシュビル交響楽団との仕事でまだ何曲か書いているけれど。次は Winger のアルバムと俺のソロアルバムを仕上げたい。後はただ作曲を続けたい。歳をとったけど人生の目標というのは将来にはパリの路地を歩いていることかな。(笑)まあ、今やってること以外のことをやるつもりはない。今やってることを続けていくよ。

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《おまけ》

キップのいた部屋には時間ごとにメロディが鳴る時計があって、時折インタビューを遮ります。そのときの会話が傑作でした!

RR:(時計のメロディに遮られ)それ、まさか君が書いた曲とか?(冗談)

KW:違~う!(メロディを少し聴いて)ダイアトニックのメジャートニックなんて俺は使わない。

RR:やっぱ答えが違うな!俺にはペンタトニックしかない。(笑)