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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ&キップ・ウィンガー Part 4 「1人で全てをやることはできない、それでは自分の可能性を潰すことになりかねないのだ」

引き続き今週はヴァイ先生とキップの対談 Part 4 です。YouTube で公開された動画 Part 2 後半の内容に入ります。後半は有難い VAI説法を沢山聞けます。

 

 

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Kip Winger:俺にもちょっと経験はあるんだ、俺の音楽はあなたの程、リズム的に緊張感のあるものではないのだけど、一部では少々難しいリズムもある。そこで気付いたよ、楽団が16分音符をスウィングさせようとするが、彼らにはそれが難しいということに。なにしろ彼らは古典の音楽を余りに長い間演奏してきたから、こういうリズムはできないんだよ。(歌いだす)

俺は初めて交響楽団の世界に入ったときに、とても気後れしていたんだ。皆は俺よりずっと音楽知識があるって。でもそこから出るときには、ここの人たちは俺の世界では仕事にありつけないなって思ったよ。

Steve Vaiああ。優れたオーケストラというのは同じような志を持つ人々で構成される。私が北オランダの楽団と仕事をしたときは、彼らは古典の大作を見事に演奏して、まあ得意なものとそうでないもの、ある年より別の年の方が良いということはあったがね。

だが、若くて探求心のある楽団に古典楽曲を渡しても完成させられないんだ。

KW:あなたがギタリスト用に書いた曲はどれだった?

SV:"Oil of Smoke"

KW:あなたはこれを演奏したんだよね?

SV:いいや。ピーターだ。あの曲は私がドゥイージルと Zappa Plays Zappa でツアーしていたときに書いたものだ。バックステージで頼まれてね。メトロポール交響楽団のピーター・ティルネスは優れたプレーヤーで、「創造の触媒」の、あのコウ(先週のブログ参照)が彼のコンサートを企画したんだ。彼はピーターのコンサートをやろうとして、複数の作曲家に接触したんだ。それで私は "Oil of Smoke" を書いたんだ。とても楽しかったよ、なぜならその曲はメトロポールが演奏するとわかっていたから、彼らの強みに焦点を当てたんだ。

KW:素晴らしいよ、繰り返すけど、あれはオーケストラとバンドの共演の中で最高の演奏だ。

SV:ありがとう。「完全に異なる両者」について君は気付いていたかな?ロック・ミュージシャンでロック・ミュージックを理解し、その血が流れながらも、作曲家の楽曲を理解する者は稀だ。

KW:とてもレアだね。希少人種だよ。

SV:そう、そして私がその1人であるとは気付いていなかった。ただ「これは良いアイデアだからやろう」というだけだった。

KW:だから良い曲が書けたのでは。あなたには既成概念がなく、純粋無垢の場所からアイデアが湧いてきたのだから。

SV:いつだって良いアイデアは偶然にやってくるものだ。良くある思考というのは、「これは本当に良いアイデアか?」というものだ。

KW:正にそれだよ、あなたのセラピーが必要だ。俺はそこが最悪なんだ、自分と(人を)比較したり、自信がなかったり。良い音楽アイデアが湧くと、そこを深堀りして進んで、曲の中まで進むが、脱出方法がわからなくなってしまう。あなたならわかるでしょう?意識変容状態に陥ってそこで永遠に身動きがとれなくなる。何とかして脱出方法をみつけなきゃいけないんだ。

SV:私の知る多くの人もそれに苦しんでいる。それは君の意識ですらないんだ。それは受け継がれたもので、自分がさほど優れていないという思考習慣だ。他人に受け入れられていない、自分を変えて何かに適応しなくてはならないと考える。それは真の自分でも誰でもない。

それは誰もが社会から受け継いだ恐れの条件思考なのだよ。そして世間を責めることはできない、なぜなら世間も同様に受け継いでいるのだから。

私も同じように思うことがある。今私が取り組んでいるものはただの屑なのか?そうだと言う人もいるだろう、しかしそれに何の意味がある?屑なものなどない。

自分で自分の首を締めてしまい、脱出の方法がわからないこともあるだろう、しかし実は道はあるのだ。

KW:常に道はある。

SV:その通りだ。それさえわかっていればいい。そして道を探してみると、楽しくなるのだ。君が作曲を続けている理由はそれだろう?

KW:確かに。挑戦するのは楽しい、最後に道を発見したらガッツポーズで喜べる。

SV:そう、それがご褒美さ。もう1つ、私が頭の中で不安を告げる小さな声を聞いたときにすること。その声には悩まされてきたが、近年では小さな声になったよ。

でもかつては「どうやってフランク・ザッパのギグをやるつもりだ?」と小さな声がしたのだ。

80曲もの曲の半数は完全に命知らずの難曲でギター演奏用ではないというのに、フランクがセットリストを決めるのは毎晩ステージに立つ1分前だ。私は寝る間も惜しんでひたすら練習した。そしてステージに歩きながら
「ああ、どうしよう。今夜あれをプレイするのか?」と不安になる。

誰でもあのような状況では小さな不安の声が聞こえてきて、心配せねばならない理由を挙げるのだ。すると強い声がこう言うのさ、「グダグダ言うな、さっさとやれ!お前にはできる。そうじゃなきゃお前はここにはいない」

ご参考:このザッパとのツアーにおける体験の詳しいお話は以下の過去記事の終盤で読めます。

staytogether.hateblo.jp

 

KW:どうすればできるのか悩んでた若者たち、聞いたか?こうするんだ!

SV:そこに辿り着く方法は、君が既にそこに居ると知ることだ。辿り着かないと思い込むのは、それはまやかしだ。恐れの思考が邪魔をしているのだよ。それさえわかっていれば、君はまやかしを信じることはない。

だから、次にそれが起こったらこうすることだ。「ああ、その声は聞こえるがほかっておこう、これがやりたいのだから自分はやるんだ」と思うのだよ。それから、他人にとってではなく、自分にとって自然で真っ当なインスピレーションを判別する力が必要だ。

そうでなければ、妄想の世界に浸かってしまう、妄想は決して上手くいかない。なぜなら、君がそこに辿り着いても、それは君が想像したものではないのだから。君にふさわしいものではないのだ。

君にふさわしいものとは、即座に君の内面と共鳴する「ああ、これか!」という瞬間だ。その瞬間にわかるだろう。容易に達成できるのだ。疑いの余地は無い、恐れは存在しない、これは君だけに仕立てられたもので、君を待っている。だから君はただ取り組むだけだ。

その気持ちが芽生えれば、自信に溢れる以上の状態に君はある。その状態とは「知る」ということ。妄想とは信じる必要がある。信じるとは知ることとは違う。「信じる」ということは実際には「わからない」ということだ。しかし「知る」とは強固で、侵されることはない。(= inviolate)君の道を歓びに満ちて示すのだ。

KW:(視聴者に向けて)いいかい、だから彼はロックのシャーマン(・ハロルド 思想家)なんだよ。シャーマン・スティーブ・ヴァイ

では1問1言回答で。フランク・ザッパから学んだ最大のことは?

SV:独立心。フランクは自由な思考の持ち主だった。彼は自分にとって的確な思考を選ぶことができた。そして、彼が憤りを感じていたことの1つは、人々が自由を自ら妥協してしまうことだった。彼は常にクリエイティブだったよ。常にオンの状態で面白くて。

KW:アーサー・スロートマンとは知り合い?俺の良き友人なんだ。

(訳者注:Arthur "Midget" Sloatman のこと。ザッパのスタジオ機器のテクを務め、後にスタジオ機器のカスタマイズを手掛ける自分の会社を設立)

SV:ああ、君の友人なのかい?

KW:家が1マイルの距離なんだ。彼がフランクの話を沢山してくれたよ。彼が組み上げた機材の話とか。

SV:彼から多くを学んだよ。彼は素晴らしい、フランクのギターにクレイジーなことをしていたよ。

KW:では、デイヴ・リー・ロスとの仕事で得た最大の学びは?

SV:ステージ・エンターテイメント。我々がやっているのはエンターテイメントなんだからね、もちろん楽器演奏ができることが前提だ。シアター公演なのだからね、デイヴは極上のエンターテイナーだ。

KW:バークリー在学経験で得た最大のものは?

SV:サポートだね。同じ希望や夢を抱いた学生たちと過ごすことで、私はそれらを抱きながらやっていく最善の方法をみつけた。物おじせずに、ただ仲間たちの達成したことを共に喜ぶのだ。そうすることで全てが変わる。

KW:そこは重要なポイントで、あなたはとても寛大な人だ。アンディ・ティモンズに聞いたけれど、あなたは早い時期に彼に声を掛けたそうだね。アンディは俺の大好きなギタープレイヤーなのだけど、信じられないほど…

SV:(深く同意して)全く驚異的だ。

KW:彼は俺のソロアルバムでプレイしているんだ。

SV:そうなのかい!?

KW:ああ、3枚のアルバムで。彼はずっと驚異的なんだ。それにあなたは 俺の "Ghosts" を Favored Nations でリリースしてくれた。あれは俺のクラシック曲の初リリースだったんだ。

それに、あなたがグラミーの委員会にいたとき、Led Zeppelin のグラミー生涯功労賞を嘆願していたよね、あなたはあの委員会で活躍していた。とても希少なことだよ、あなたは自己中心的でただ自分のことをやっているタイプの人間ではないのだから。外の世界へ広がる活動をしている、G3なんかもそうだ。

SV:G3 と Generation Axe があるのさ。私の態度は長いキャリアを通じて変わってきたのだよ。かつては孤立しているように感じたこともある、近視眼的で、人の助力を良しとせず、人との接触を避け、これを自分1人でやるんだと思ったこともあった。しかしながら、それでは自分の可能性を潰すことになりかねない。なぜなら、1人で全てをやることはできないのだ。

キップ、私たちは共にロック界の中で様々に異なる栄枯を潜り抜けてきた。例えば私の場合、80年代は速弾きギターが永遠だと思われていたが、そこにグランジの時代がやってきて、2~3年は雑誌を開くと私の批判記事ばかりで、私は抗議のために記録を残していたくらいさ。エルヴィスも The Beatles だって経験したことだ。彼らはレコードを焼かれていたよ。

こうしたことは感情移入してしまうと辛いものだ。私にとっては素晴らしい学びの機会になったよ、「栄光の磔体験」さ。この経験で何事にも依存しないことを多く学んだ。

KW:素晴らしいポイントだね。「栄光の磔体験」だなんて、正にタイトルだ。俺の場合は底辺まで打ちのめされて、それで自分が本当は何者なのかを発見することになり、そのときから今の自分を再建してきたんだ。人生は思いも寄らない様々な流れによって創られる。

SV:ああ、(困難があっても結果的に)君の最善の道となるんだ。エゴはそのようには考えない。しかし自分の誤った認知を垣間見るようになると、余裕を持ち、真に起こっていることを理解できるようになる。それは常に自分の利益に適っているのだ。

KW:何か後悔していることはあるかな?あのとき、ああしていれば別の結果になったのではないかと。全て問題ないと思う?

SV:私は実に恵まれた人生をおくってきたと感じている。もし物事が私の思う通りに起きなかったとしたら、ただそれは、そのようになるべきではなかったのだ。全てはそうなるべくして起こったことだ。そう言うと、「あなたは成功したからでしょう」と言われるが、そうではない。

試練なくしては人は機能しないのだよ。試練は必要不可欠だ。しかし試練は真の自分を知ろうとする者によって異なるもので、名前は挙げないけれどその者にはわかる。侵しがたいその人の本質なのだ。エゴが自分に告げることでなく、自分で物事を真実に近い状態で認知できるようになると、エゴは常に批判し、自己弁護し、孤立を求めるがそれが恐れなんだ。あらゆる種類の恐れはエゴの妄想なのだよ。

KW:エゴから逃れるのが難しい人もいるだろう。俺にとっては循環してやってくるんだ。

SV:ああ誰でも時にはそうだろう。悪いことは一気に起こるんだ。多くの精神的鍛練や瞑想をしていても、(エゴの)爪が突き刺さるときには、役に立たないと思えるだろう。「お前が完全に正しい、奴らが間違っている」そうエゴが告げるのだ。わかったかな。

(Part 5 に続く)