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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ 「プロとアマの差を際立たせるのはヴィブラートだ」

3月24日から、ヴァイ先生は毎週火曜と木曜(現地時間)にライブ・ストリーミングを行っています。
火曜日:Alien Guitar Secrets Live ギターに関するQ&A
木曜日:Under It All シリアスなQ&A 哲学関連
どちらもフェイスブックを使って行われ、1回2時間前後のトークが繰り広げられます。(先生は話好き)終了後には動画がYouTubeで公開され、ヴァイ先生のオフィシャルサイトにアーカイブ保存されます。

毎回先生の興味深いお話が聞けるため、ヴァイ信者には強力おススメのコンテンツです。
トピックが多く、内容を追いきれないのが現状なのですが、今週の Alien Guitar Secrets から興味深かったトピックをピックアップして概要を和訳してみました。

 

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指板上の音を暗記する良い方法があれば教えてください。

まずは開放弦の音を覚える。EADGBEという風に。そしてナチュラル音の前後に#と♭があることを理解。それから指板上の全てのE音という風に順番に覚えるといい。便利なダイアグラムのウエブサイトがあったから共有しておこう。(こちらのサイト

アンプのノイズ問題へのアドバイスは?

ノイズの原因は様々だ。アンプヘッドに直でつなぐと、ヘッドはキャビネットに、また電源に繋がれている。運が良ければノイズはない。だが、ストラトなどのシングルコイルのPUはノイズが出やすいし、照明に囲まれているとそれも影響する。それで照明とギターの信号を遮断する機器を買う必要がある。私がライブでプレイするときは、ギターがノイズを拾わないスポットをステージで探すんだよ。

レスポールやJEMのようなダブルコイルのPUをアンプヘッドに直でつないでもノイズが起きるが、これはシステムに供給される電力の質によるものだ。解決法として私は FURMAN を使う。プロテクターのようなものだ。これを使うと信号がクリーンになるので多くのノイズが除去されるんだ。

他の方法としてはギター信号を2つに分岐させるのだが、今までに多くの人が私にスプリッターボックスを作ってくれたけれど、上手くはいっていない。多くはトーンに影響がでるし、DCノイズが生まれる。設置やアースの仕方での対応も必要だ。ノイズの原因は他にもいろいろあるけれど、私にはトーマスがいるからね、出来る限り最高の状態にしてくれる。

ヴィブラートのテクニックを教えてください。

ギター演奏でヴィブラートは実に重要だ。多くのギタープレイヤーがなかなかいい演奏をしていたのに、ヴィブラートで台無しにしているのを何度も観てきたからね。プロとアマの差を際立たせるのはヴィブラートだ。重要なのはイントネーションだ。基音に対する#と♭。

タテに指を動かすロックのヴィブラートとヨコに指を動かすクラッシックのヴィブラートがあるが、私は両者を取り入れて円を描くようにしている。そうすると#と♭を交互に出しながら、コントロールも可能だ。

更にヴィブラートの習得には深さとスピードをコントロールすることだ。深さというのは基音に対してどれだけ#や♭に行くかということ。その幅の違いで表現は変わってくる。またスピードによってサウンドのコントロールが可能だ。いろいろな深さやスピードでやって実験してみて欲しい。もう一つ重要なのは、全ての指でヴィブラートの練習をすることだ。そして全ての弦、全ての指板の音でも練習して欲しい。

それらを全てマスターしたら、2弦を使ったヴィブラートの実験を初めてくれ。2音にヴィブラートをかけて、さっき1音でやった練習を応用するんだ。それが出来たら、3弦を使ったヴィブラートも練習してみよう。音が消えず、平行に動くように、そしてここにアームを使うこともできる。ベンドした状態でのヴィブラートも練習しよう。ここでも基音に対する#と♭の動きを意識する。

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MORC2016 より。左下にステージ後方で観ているウリ・ジョン・ロートの姿が。

97年のバンクーバーでのG3で、あなたとジョー・サトリアーニが後でプリンスと会っていたという噂は本当ですか?

ハハハ!それは違うんだ。でも私は大のプリンスファンでね。ある日、同じ街でお互いの公演があったんだ。それで私はG3のライブが終わったらプリンスを観に行こうと思った。それで私の出番が終わったら、タクシーに乗ってそっちの会場に行こうと考えていたのだが、サイン会があるからどこにも行けないとスタッフに言われたんだ。ライブの後で300人にサインしなくてはならないと。それで私は少々怒ってしまってね、しばらく機嫌が悪かったんだ。

私は普段、できるだけファンには良い態度で接したいと思っているのだが、そのとき、ドアで待っているファンが何人かいたんだ。彼らに声をかけられて、機嫌の悪かった私は「NO!」と突っぱねたんだ。歩き去ってから最悪な気分を味わったよ。数日後の(オフィシャルサイトの)メッセージボードを見た人はいるかな?そこに批判を書かれたよ。ああ、私が悪かったんだ。これを見ているなら、謝罪を受けてくれ。でも私はあの夜、プリンスを観損ねたんだよ。

でも数日後に彼はまた同じ街でショウをやっていて、その時は行くことができたんだ。そしてライブ後のパーティに招待され、初めてプリンスに会ったんだ。彼は素晴らしかったよ。

そうそう、何年も前に Fire Garden ツアーだったかで日本へ行ったときのことを話そう。今もあるかわからないが、Blue Moon という店があって、そこには山ほどブートレグがあるんだ。店に入って見回した私は、何て度胸のある奴なんだ!(怒)と山ほどの私のCDを見て怒りがこみ上げたんだ。

そして店主に詰め寄ると、「おい、ここにニール・ヤングが来てこれ(自分のブートが売られていること)を見たらどう思うんだ?ジミー・ペイジが見たらどう思う?」と言ったんだ。でも顔をあげると、店の壁にはジミー・ペイジロバート・プラントが笑顔でCD一杯の買物カゴを持っている写真が貼ってあるのに気付いたんだ。「…じゃあ、プリンスはどう思う?」と棚を見たら、「え、これもあるの?これも?欲しい…」となって、店主には「お好きなだけお持ちください」と言われたよ。もう写真を撮られて壁に貼られても構わなかった。(笑)

それでプリンスのブートレッグを沢山持ち帰ったのだけど、その中にペイズリー・パークでのライブがあって、ベッドで聴いていたんだ。それでCDの曲名を見ていたら、"Tender Surrender" とあるんだ。そりゃあ、プリンス好みの曲のタイトルかもね、私の曲よりもずっと有名なプリンスの曲かもな…と思ったのだが、ヘッドホンで聴いてみると、私の曲のソロパートが聴こえてきたんだ。それでもう1度CDの曲名を見てみると"Tender Surrender" by Steve Vai とあるじゃないか!それはもう嬉しくてね、彼に『Alien Love Secrets』アルバムを送っていたのを思い出したんだ。彼が気に入ったんだ、しかもこの曲でジャムしてる!もう興奮した私は夜中だというのに、ツアーチームの部屋のドアを叩いて、「見てくれ!プリンスが私の曲をプレイしてるんだ!」と言って周ったよ。(笑)

でも後日、それは私の曲じゃないことがわかったんだ。ジミ・ヘンドリックスの "Villanova Junction" だったんだ。きっとブートレグを作った奴が間違えたんだろう、曲が似ていたから。すっかり勘違いしてしまったけど、それが私のプリンス話だ。

20年プレイしてやっとあなたの "Tender Surrender" をマスターできました。

多くのギタープレイヤーが私の曲をカバーしてくれて嬉しいよ。彼らは時間をかけて私の曲を学んでくれているんだからね。特に若いミュージシャンは好きな曲をカバーするのはいい練習になると思う。耳を鍛えられるし、どう弾くかを考えるプロセスも良いだろう。私の動画を見て、リフの弾き方をコピーするのもいい。

君らにアドバイスしよう。私はあの曲を弾くときは自分の心の中の風景をあの曲に合わせるんだ。あの曲には私の多くの特異性が含まれている。私にとって快適で人からは少々奇妙なものだ。そういうところが私の美点なんだろう。勧めたいのは、曲を聴いて君の特異性は何かということを考えてみることだ。メロディを輪郭として、そこから脱線したっていいんだ。そして自分にとって自然に感じる自分独自の味付けは何だろうか?それを見つけて欲しい。

ギタープレイには何がしかのルールがあるし、集団でのプレイにもある。でも君自身の表現ということでは、ルールなどないのだ。私も君らと同様に私のヒーローたちのプレイをコピーした。そして自分にとって興味深いことを盗んできたのだが、いつだって何か自分のひねりを加えていた。自分にとって自然に感じるように。

あなたがジャム時にオーディエンスに腕を伸ばすしぐさを見かけますが、Led Zeppelin の "Nobody's Fault But Mine" でのジミー・ペイジとの共通点はありますか?観ていてクールです。

(ジミーを真似ているのではなく)クールに見えるからやっているんだよ。私はパフォーマーだし、それが好きだ。演出は好きだし、キャラクターに成りきる感じも好きだ。私が演じるのはちょっと変わったスティーブ・ヴァイという男だよ。私のビデオを観るとこういう動きを見るだろう?(腕を伸ばして指し示すしぐさ)これは自然に浮かんだもので、気に入ったからやったんだ。オーディエンスとの繋がりを作るチャンスだ。

それに大抵、"Whispering A Prayer" をプレイする前には時間をとって自分の心を静め、全てのオーディエンスとアイコンタクトを取ろうとしているんだ。なぜなら、オーディエンスの中にいて、ステージの人と目が合うのがどんな気持ちか、私には分かっているからね。クールじゃないか。私はライブでオーディエンスと繋がるという感覚が大好きなんだ。

ファーストアルバムタイトルを『Flex-Able』にした理由は?

制作当時にはLPを創る意図はまだなかった。Guitar Player 誌が "Attitude Song" をソノシート(訳者注:英語では Flexi disc)で収録していたので、大きなソノシートで作るのもいいかと思っていたんだ。ソノシートはペラペラで曲がるので、そのまま「Flexible」にしようと思ったんだ。ところが、アートワークを依頼したデザイナーがスペルを間違えたんだ。でも気に入ったから修正しないでくれと言って、あれになったんだ。Flex(曲げる)- Able(~できる)なんて気が利いている。

ジャケットのイラストではギターのネックが曲がっているだろう、Flexible(柔軟な、曲げやすい)は実に相応しいと思ったんだ。私は柔軟な変わった男で、演奏する音楽にも大きな幅がある。それに私のギターは時にゴムバンドみたいな音だろう?(笑)そんな私を端的かつ詩的に表していると思ったんだ。そこでもし私が将来成功したとして、ファーストアルバムが『Flex-Able』でも耐えられるか?と自問した。問題ない!と思ったので、そうしたんだ。

ライブでプレイするのにナーバスになるソロはありますか?

特にナーバスになるものは無いよ。プレイしていると「さあ、このパートが来たぞ!」というのはあるけどね。

フランクとツアーしていたときは大変だった。80曲もレパートリーがあって、バンドは全部覚えて、モノにしていなくてはならなかった。フランクはショウの直前にセットリストを決めるんだ、ステージに出る直前だ。しかも毎晩全曲違う。これは私にとってもの凄いストレスだった。

81年から82年のツアーで私がフランクとギターでプレイしていた曲は、ギターでプレイする為に書かれたものではなかった。フランクは五線譜に曲を書くから、それがギタープレイに収まる訳はないんだよ。それでもプレイしなくちゃならない。"Moggio" と呼ばれるようになったその曲は正に命懸けという感じで、あるリフがあるんだが、それは長いギターメロディでしかも速弾きなんだ。とても難しくて、常に練習をしていなくてはならなかった。

恐らく80曲のうち6割の曲には死ぬほど難しいギターパートがあったと思う。1晩にプレイするのは20曲だけど、全てを常に練習して備えなくてはいけないんだ。でも "Moggio" がでてくると、そこにはどんなに練習しても難しい2小節のラインがあるんだ。それはギターでプレイするパートでは断じてない。

それでも私は集中してプレイしているのだけれど、いや、あまりに練習を積んでいるので集中していなくても弾けるくらいだった。でもそのパートがやってくるのを意識するとナーバスになった。私はステージに立つとナーバスと感じたことはなかったのだが、そのパートだけは失敗したくないと思ってナーバスになった。面白いことに、本当にナーバスになると大便をしたくなるんだよ。(笑)そのリフが始まる直前にそれがやってくるんだ。

先日、ちょうどそのプレイを聴いていたんだ。『You Can't Do That on Stage Anymore, Vol. 6』だったかな?(訳者注:『You Can't Do That on Stage Anymore, Vol. 5』のこと)59歳になったスティーブ・ヴァイがそれを聴いていて、当時の私はいつも自分のプレイが十分でないと満足していなかったんだが、先日それを聴いて、「誰がこんなとんでもないプレイをしているんだ?」と自分がプレイしているとは信じられなかったのさ。

あんなに難しくて、それでいていいサウンドになっているとは覚えていなかったから。そしてあのパートがやってくる前に私は自分が35年前の今ステージで弾いているスティーブに戻った気がして、ナーバスになったんだ。トイレに行きたくなって。(笑)そして聴き終えて、見事に弾ききっているのがわかった。その出来は5回に3回くらいの確率だったけどね。

 

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