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スティーブ・ヴァイ&キップ・ウィンガー Part 2 「何かを創造するとき、この世界にある全てのものは取得可能なのだ」

ヴァイ先生とキップによる作曲家対談は今日になって動画 Part 2 が公開されました。2人の会話は益々ディープになっており、聴きごたえがありました。その内容は来週以降に掲載していきます。

今週は先週の続きで、動画 Part 1 の後半部分をまとめました。

 

 

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Kip Winger:あなたにとっての基本となる和音言語はあるのかな?例えば、エレキ楽器のバンドでやることに対して、オーケストラ音楽において。

疑問なのはあなたがハーモニーを書いているとき、あなたは手書きで直接譜面を書くでしょう?ピアノで音を出しながら書くタイプではないのでは?

Steve Vaiああ、ここには無いよ。でも小さな鍵盤はあるんだ。

KW:では鍵盤で音を参照しながらもする?

SV:時折ね、私がやるのはコードを探す為だ。そしてその厚みを確認する為。1つのコードがわかれば、いわば全てがわかる。特定のモードにとどまりたいのなら、その類の調性が自分の創作しているものに理論的意味をもたらす。

例えばあるコードを書いたとして、それがメロディに使う音符を提供することになる。だから私は(鍵盤を鳴らして)コードを聴いて、そこでは理論はあるが、必要なら使うというだけだ。

より重要なのはしっかり聴くことだ。自分が弾いたもの、それが1つのコードであっても、それが調性を形作る。それがどのようにも影響するんだ。

これは私のすることなんだが、とても良いことがあるんだ。毎晩寝るときに、私は心を落ち着けて、自分の頭の中の音に耳を傾けるんだ、自分が何を紡ぎ出すのか何の予想も無しに。

(頭の中では)何の制限もなく、完全なる自由だ。オーケストレーション上の制約も無し。何かを創造するとき、この世界にある全てのものは取得可能なのだよ。そしてそれは自分の中にあるんだ。

誰にでもある、ただ雑念を払い、耳を傾ければいい。そうすればメロディが現れ、それを辿り、手を加えてみる。すると理論的思考が、「そうか、どう譜面に起こすのかはわかるぞ」と告げる。それが私の作曲工程に利用している手法だ。道具は物事を説明するのだが、それらは決して感情を説明することはできない。

KW:これこそ正に俺がスティーブ・ヴァイに訊きたかったことの核心だよ。なぜならあなたは1日中音楽理論に浸ることもできるが、あなたの音楽的声(個性)は正にそこ(感情)からやってきている。

俺はあなたの多くの作品を聴き、観察したところ、こう結論に達したんだ。この人物は特別な物を(内面で)聴いている。つまり、真の音楽的声を持っているのだと、とても希少なことだ。

あなたは心を落ち着けて内面の音を辿ると言ったけれど、心を無にするというのはとても難しい。今日あなたのアドバイスを受けて、俺は今日から毎晩トライしてみるよ。とても価値のあることだ。

SV:自分で自分の邪魔になってしまうのはとても簡単で、「やり方はわかるぞ」と思えば失敗なんだ。あらゆる思考は障害となる。明瞭に心を開いて聴くこと、何も所有せず何も支配せず、ただ自分がそこに在る感覚で、それは不思議な感覚だ。

KW:あなたは頭の中の音を聴き、それを譜面に書けると言ったけれど、その時点に到達すると…

SV:全て消えてしまう。思い出せないよ、余りに激しいんだ。

KW:それが疑問になっていたんだ。

SV:着座して作曲するときに居る場所は、作曲練習には役に立つ、なぜなら自分の世界を拡大しようとしているのだからね。つまり、自分のアイデア道具箱の規模拡大をしようとしているんだ。

そういったことは考えなくていい、どこにも行きはしないのだ。自ずと形を整えるだろう。頭の中では同じことを繰り返すことはない。

KW:曲を夢でみて書いたことはある?

SV:文字通りにという訳ではないが、若い頃に夢に興味を持って、形而上学的なものに憑りつかれていたんだ。夢を書き残したり、体外離脱をやってみたり、毎晩そういう体験をしている友人がいた。私にはできなかったけどね。

夢のいくつかはとても鮮明で驚くようなものだった。私はそれらを書き留め、音も記録したんだ。それが私のアルバム『Passion And Warfare』になった。曲のそれぞれは私がそれらの鮮明な夢の体験からみつけたものだ。

例えば、"Erotic Nightmares" という曲がある。中間部でギターがプレイするものは全て、私が夢で自分がプレイするのを見たものだ。30~40年前の話だが、(夢で)私はギターを手に取りボディに吹きかけ、フィンガリングして音を紡ぎプレイする、これは夢だから変なことが起きるんだ、するとフルートのような音がする。

夢で私は「そのやり方は知っている」と言うんだ。簡単さ、ボリューム・コントロールを使い、そのサウンドのPUを使い、あのディストーションを使って、アームをこう上げて、そうすれば音はこうなる。夢で私がしていた方法は不可能だった。しかし、私はその音を得た、アルバムで聴けるよ。

KW:あなたのギタープレイは作曲の延長線上にあるもの?それとも、それぞれ別のものなのだろうか?例えば、クラシック音楽を作曲しているとき、そこに関わる楽器奏者としての一部なのか、独立した作曲家として全くの白紙の状態なのか?その2つはどう互いに役立っているのか、もしくはその相互間を行き来しているのか、どうなのだろう?

SV:興味深い質問だね。

KW:俺は "Oil of Smoke" だと思うんだ。これは、俺が思うにロックバンドをオーケストラ楽団に組み込んだ中で最高の作曲だと思う。これ程に上手く両者を組み込んだ作曲は聴いたことが無い。

(17分辺りで譜面と曲が流れます)

それでどうしても訊きたいのだけど、あなたは自分の中の2人とどう向き合っているの?それは同一人物なの?

SV:実に良い質問だね。一度も考えたことがなかったよ。私は大抵、状況に対応するんだ。バンドがいて、私がギターを持ち即興をプレイしているとき、そこには作曲の要素はあるが、それは年月を経て変わってきた。

成長過程のミュージシャンにとっては、少なくとも私にとってなのだが、「よし、このスケールでいける」となる。このスケールは弾けるし、随分と練習もしたから速弾きもできる。しかしそれには飽きがくる。マシンのように弾くだけだからね、誰であっても限界がくる。しかし、メロディは決して消尽することはない、無限なんだ。

KW:その通り。

SV:私がティーンの頃には、メロディがただ浮かんでくることがあった。自分では気づくことはなく、大抵は「これはブルース・スケールなんだからいけるだろう」という感じだ。

やがて作曲に興味が深まると、クラシック曲の作曲とロック音楽とはそれぞれが目的に寄与した。その目的とは自分に聴こえる音のことだ。ただ(内面の)雑音を排して耳を傾けたときに最高の音が閃いたのだ。まるでダウンロードするように、君にはわかるだろう。誰もがインスピレーションに溢れた瞬間にやっていることだ。

そして(その閃きの)邪魔をしないことだ。私が邪魔してしまうときは、やっていることを論理的に処理しようとするとき。(ギタープレイの)運指の記憶を使ったり、私は常に閃きのある人間ではないから、そういうものを使ってしまうんだ。

KW:(常にインスピレーションに溢れているなんて)それは不可能だよ。インスピレーションはつかの間のものだ。まるで稲妻のようなもので、その瞬間に実体のないものをつかもうと、「待て!帰ってこい!」ともがく。その稲妻の記憶を保存することなどできない。だから俺はあなたに訊きたかったんだ、あなたはとても多作家だから。何しろ大変な仕事量だ。

SV:ああ、散らかっているね。スタジオ録音作品がある程度あり、クラシック作曲の作品、レコード会社の案件、と多岐に渡っている。もし私がスタジオアルバム制作とツアーだけに絞っていれば、もっと沢山のアルバムを制作できただろう。

KW:(あなたの作品は)初期から非常に質が高い。つまり、「ここで彼は(チャック・ベリーの)"Johnny B. Goode" をやって、あそこでは(ストラヴィンスキーの)"The Rite of Spring" をやっている」というように、あなたは早くからとても成熟した音楽家だ。

SV:私たちは両親が家庭に持ち込む音楽に影響を受けるものだ。私の親は『West Side Story』のアルバムを持ち帰った。それが私の転機となった、人生で最初の音楽的覚醒だ。それはドラマに溢れていて、私は派手にやるタイプでね、パフォーマンスが大好きなんだ。おかしな表情をしたり、おかしな服装をしたり、それを楽しんでいる。これについて弁解するつもりはない。

KW:そこが興味深いところなのだけど、スティーブ・ヴァイという世間に知られた人間とあなた自身について誤った認識が生まれていないだろうか?自分で訂正したいと思うようなことは?

SV:別に誤解はないと思っている。人の物の見方はそれぞれで、皆が異なる見解を持って、それを信じている。例えば、スティーブ・ヴァイは嫌な奴だとか、何とでも言われるだろう。そういった言葉はあちこちにあるが、私が気にすることはもうない。

そんな言葉から逆の誉め言葉まで無限にある。しばらくすれば、もうそれらに何の関心も持たなくなる。良い事を言われることもあれば、間違ったことや誤解に繋がることを書かれることもある。それもかまわない。まあ、訂正したいほど私について誤りを書かれたものは見かけないね。

KW:それは良かった。フランク・ザッパについて訊きたかったことがあるのだけど、それはフランク・ザッパやあなたと彼についてではなくて、もし、人生で彼と出会わなかったら、あなたはどんな人間だったと思う?

SV:それは難しい質問だ。『West Side Story』の体験の後、私の姉が Led Zeppelin を聴いていて、それが私のギター人生の起点となった。しかし、それら70年代の偉大なバンドでも私の作曲家としての興味を満足させることはなかった。あれらは譜面を書いて作曲する音楽ではないからね。

しかしある日突然フランク・ザッパの音楽を聴いたんだ。あれは衝撃だったよ。彼の音楽は他の誰もやっていないもので、私が求めていた全てがあった。強烈な作曲もあり、ロックバンドの作曲的要素もあり、自由で面白くてコメディ要素があり、変わったギタープレイがあった。ロックの感性もブルース要素もあった。

フランクはある意味、鉄板の音楽家で、彼の書くメロディは信じられない程美しい。彼のバンドに加われただなんて驚きだよ。今でも思い返すと信じられないんだ。

それでフランクとの個人的関係がなかったら?という質問かな?

KW:音楽的な影響の全てだ。スティーブ・ヴァイからフランク・ザッパの要素を取り除いたらどうなるのか?

SV:ワォ、それは難しい!彼の与えてくれたものを差し替えることのできる人はいないからね。

KW:あなたは明らかに彼の影響を受けているよね。思うに、あなたの音楽には俺が個人的により共鳴する声(個性)があって、だからもしあなたがフランクの影響を受けなかったらどんな人物だったのだろうかと疑問が湧いたんだ。

そしてその質問は次の質問に繋がるのだけど、俺には多くの影響を与えた作曲家がいて、「こうしてみろ!それじゃイマイチだ!」という声が聞こえるんだ。それで、あなたの作曲に影響を与えた、あなたの陰にいる作曲家は誰なのだろうかと思って。

(Part 3 へつづく)

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キップが「夢で見た曲を書く」という話をしていますが、以前私がキップにインタビューしたときに、Winger アルバム『IV』収録の "M16" は夢で見て書いた曲だと話していましたので感慨深いです。

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