Stay Together

Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ Part 2 「たったの8小節なのに、何週間もかかっている!」

先週に引き続き、スティーブ・ヴァイの2時間に及ぶインタビューからPart 2 (2/2)です。現在制作中のニューアルバムについても語ってくれています。ヴァイ先生が8小節弾くために何週間も練習して未だ弾けないリフとはどんなものなのか、驚きと期待で一杯です。

========================================

Morc2016vaigc1 自分の守備範囲外のことにチャレンジして、後悔したこと、後日自分にとって大きなプラスになったことは何でしょう?

そうだな、例えばフランクのバンドに加わったこと。他にももっと上手くやれたんじゃないかと思うことはあるものだ。でも誰にとっても「間違う」ことがあるとは思わないんだ。何事にも行動には結果が伴う。これらの結果というのはいわば教訓でもある。つまり、本当の意味での「失敗」はないんだ。

今なら違うことをしただろうと過去にしたことを悔いることがあるかと言われれば、確かにそう思うことはある。違うことができたと今思うことはあるが、その場合には違う結果になっていただろう。それはいいんだ、私は今、違うようにやっているのだから。人は誰でも今自分が置かれた状況に基づいて行動する。それは人生におけるどの時点に於いても同じだ。過去を振り返れば、自分にとってそれに対処する為の精神的な道具となるモノがあり、自分の状況認識はこうであると告げている。自分のその時の決断はその認識に基づいて下される。それが実際だ。

これは誰にも言えることだが、誰しも今の自分の状況に基づいて判断を下している。誰しもその時点において自分の過去の経験からの知見を元に判断をする。つまり、その時点においてはその判断しかなされないんだ。事実としてそれが自分の決断だったのだ。それには結果が伴う。

後から「あれはいい決断だった」と思うかも知れないが、何かが起きて「別の道があった」と思うかも知れない。そして違う道を選ぶ機会があるかも知れない。実際の世界では、あらゆる状況に於いて同じ原理が提示されるんだ。そしてあらゆる状況において自分が下す決断はその時点におけるそれ以前の決断による結果を反映したものになるだろう。ゆえに私は過去の決断を変えることはできないし、そこから学び、今は違う決断をするだろう。そして今の決断が最良でなくても後で、(状況把握・対応能力など)より良い道具を身に付けるだろう。

「こういう決断をすればよかったのに」という様な過去に関する後悔を聞くことがあるが、過去のその時点においては、それが唯一の決断だったのだ。そんなことは起こり得なかったのだから、それを言うことは無意味だ。だから真実の許しを自分に与えることが必要になる。「起きたことはこうだ、受け止めて先に進もう」と考えること。自分を許すことが多くのストレスを和らげるのだ。

ストレスとは自己の選択によるものだ。ストレスとは自分の外側にあるものから発生する。そこから将来に対する不安や過去に対する後悔など、自分自身に対しての思考によるものなんだ。心配することは更なる心配を招くだけだ。だから自分の内側にあるストレスを認識したときに初めて、それを解くことができる。そしてエゴは常に自分以外のものを咎めるのだ。誰かのせいにしなくては気が済まないのだよ。

今取り組んでいるギタープレイは何ですか?

今は私に弾けないものを弾こうとしている。昨日は4時間やっていた。ずっとやっているんだ。私のニューアルバムに入れる "Candle Tower" (仮)という曲だ。実に奇妙なリフを考えついて、ずっとそれを弾こうと練習しているんだ。ある弦をベンディングしながら別の弦を押さえなくちゃならない。とても複雑でメロディックなんだ。素晴らしいサウンドなんだよ、今ここで聴かせられたらいいのだけど。

このリフは私を有名にすることも金持ちにすることもないが、心の目で見て想像するだけでもワクワクするんだ。それで懸命に練習している、おかげで私の指はボロボロになってしまったよ。何しろ弦を一度に別々の方向へベンドしなくちゃならない。しかも別の弦を押さえながらね。そしてスライドしてネック方向へもっていかなくてはいけないんだ。こんなのはギターで聴いたことはないサウンドだよ。短いリフだが、大量の練習が必要だ。

 

 

そのサウンドはキーボードか何かで弾いて聴いているのですか?

いや、これは私の頭の中で聴こえたスナップショットだ。このアイデアはなぜだかわからないけれど、私にとってとても興奮するもので、頭の中から消えないんだ。別に技術的なものではないが、全くもって奇妙なんだ。誰かがこれを効果的に使っているのを観たことはない。

もっと練習できたらいいのだが、指がボロボロになってしまい痛いんだ。こうして例えば3弦をベンドして、こうやって2フレット動くのだが、音程を保たなくてはいけない。練習して1小節弾けたら録音するつもりだ。それを集めてイメージを確認しして、全部を覚えようと思うが、まだそこまでたどり着けないのだよ。たったの8小節なのに、何週間もかかっている!

その頭の中の音はどうやって覚えていられるのですか、録音がないのに。

iPhone に入れている。おススメの方法なのだが、いいアイデアかどうかは気にせず、思い付いたアイデアを録音しておくのだよ。そうだな、週に20個ぐらいたまる。私はそうして集めたアイデアを「永遠の戸棚」と呼んでいる。

あなたの曲で作曲過程がお気に入りの曲とプレイして楽しい曲は何でしょう?

それは訊かれる度に違う答えになるかも知れない。私が曲を書くときには、自分にとって、また世界にとって何かユニークなもの、自分がまだやったことのないことを見つけるようにしている。私自身の不文律みたいなものさ。私は今でも成長しているんだ。それを全ての曲でね、とても難しいが楽しいんだよ。ほとんどの曲にはそれらの何かがある。

"Die To Live" や "Frank" を例にとると、これらはシンプルなギター曲だが、この中には私の心のボタンを強く押すちょっとしたエネルギーがあるんだ。"Love Secrets" は意識の流れに任せた作曲だ。抽象的でありながら、実に音楽的だ。構造的にもとてもユニークで奇妙なんだ。

プレイする場合は、セットリストにもよるのだが、ショウでギターをプレイするだけで楽しいのさ。そうだな、"K'm-Pee-Du-Wee" には私の楽器への愛が捉えられており、私にとってもそしてある数のファンにとっても愛おしさがある曲だ。この曲はツアー中に書いたもので、私の感謝の気持ちが込められたものだ。

手放したギターで売らなければよかったと思うものはありますか?

あるよ。これまでに多くのメインギターを手放してきた。例えば "For The Love Of God" を弾いたギターは Prince にプレゼントした。オリジナルの7弦プロトタイプを手放したものを買い戻そうともしたけれど、高額すぎたんだ。(友人へのプレゼントが転売された模様)私のオフィシャル・サイトにはこれまでに所有したギターのライブラリーがあるよ。

(最近のデヴィッド・カヴァーデイル氏のツイートによると、氏所有のスタジオ内にヴァイ先生のユニバースがあるようです。これはヴァイ先生のオフィシャル・サイト上のライブラリーには収録されていません)

無人島に持っていくアルバムは?

ストラビンスキーの春の祭典のいい録音のもの、トム・ウェイツのアルバムを何でも。彼のアルバム全てはいつも音源を持ち歩いている。「ウエスト・サイド・ストーリー」のサントラ。フランク・ザッパの Over-Nite Sensation 。これも訊かれるときで違う答えになるけどね。

生涯最高の決断は?

この世に生まれるという決断をしたのなら、それだ。(笑)

若い頃は自分が結婚に向いていないと思っていたが、学生のときに出会ったピアと10年つきあってから、結婚してもう40年になる。いい決断だったよ。結婚を長続きさせるには努力しなくてはいけないと言われているが、自分自身が努力するということなんだよ。全ての人間関係において最も重要なのはパートナーとの関係だ。

自分のことは好きですか?

人好きなところが良かったと思うよ。うまく言えないのだが、私はミュージシャンとして知られているが、私は随分と多くの時間を精神的分野の研究に費やしてきた。それはとても役に立ったよ。私が20代の若かりし頃、暗黒の時代とでも言うべき、精神的に落ち込んだ時期があった。そしてある時点で降参し、救いを求めたのだよ。そこで出会った書店があった。それから多くの本を読んで学習した。最も重要なのは人との関係だ。人をどう受け止めるかということだ。

私は人が好きなんだと気付いた。空港で人を見ているだけでも彼らに何がしかの感謝を感じたりする。もちろん、クレイジーな人や、一緒の部屋に居るのが嫌な人だっている。けれど、それが彼ら本来の姿だとは思わないんだ。人というのはとてつもなく深いものだ。そういう認識の元に彼らに近づけば、同様の反応が得られるだろう。

精神的な落込みからどう抜け出したのですか?

苦悩には2種類ある。1つは病気やケガといった肉体的な苦悩。もう1つは精神的な苦悩。これは自分の頭の中で創り出したモノによる作り話がもたらす恐怖やストレスだ。自分が作り出したものを信じることでそれが現実になるのだ。

さっき話したように、若い頃に私は突然売れて有名になり、いくつもの賞を取ることでエゴを招き入れ、自分について偉大なる者というアイデンティティを創り上げてしまった。エゴは人間を破滅に導く格好の妙薬なんだ。エゴから逃れられる人間はほんの僅かしかいない。私が知る人で、こういう状況にありながらも、堅実な人間であり続けた人物はただ1人、ジョー・サトリアーニだ。

以前ジョーにそれを訊いたのです。彼は突然あれだけの名声に包まれたにも関わらず、人として変わらなかった。有名になる中でも感情的な乱れがなかったのはなぜかと。彼の答えはこうでした。「そういった状況は自分には関係のないことだと、距離を置いて見ていた」

ああ、その答えが確かだと私も証言できる。彼はいつでも堅実で反抗者なんだ。実のところ、私を立ち直らせてくれたのはジョーなんだよ。彼は時間を無駄にしたりはしない、はっきりと真実を言ってくれる。

それこそが真の友ですね。

そうだ。つまり、私にはそういう時期があったんだ。精神的には貧しく惨めだった、幸せを得るためには多くの事柄を達成しなくてはいけないという考えは、その後一生惨めな生活をもたらすだろう。なぜなら、常に更なる何かを求めるからだ。私の心に大きな変革をもたらしたのがエカ・トーレの本だ。私は自分が頭の中で自分だけの現実を創り、それが自分を苦しめていたことに気付いた。

言うのは簡単で他人と議論することも簡単だ。自分の外の世界に原因を押し付けようとすれば、自分の言い訳をつくってそれで終わってしまう。自分の生活の質、家族や周囲の人たちとの関係は1つのモノにかかっているのだと気付いたのだ、それは自分の心の中にどれほどの平穏があるかということだ。

誰もが直感的レベルで自分自身の現実を創る、しかしそれが最大の自由で自分の人生の主導権を握ることなんだ。それこそが真の自由なんだよ。私は多くの精神的世界の著作を読んできたが、読み返してみると、どれにもそれが書かれていたんだ。ただ私が気付かなかったのだ。いずれの著作もあなた方個人を指して教えを与えていたんだ。外の世界について書かれているものは常にどこかの時点で誰かにとって役に立つが全能という訳ではない。

最近や今後の活動について教えてください。

Piano Reductions Vol.2

マイク・ケネリーが1枚目のアルバムを演奏した。見事な演奏だ。私には自分の曲をピアノ独奏曲にしたいというアイデアがあってね、彼らにアレンジをしてもらうんだ。とても幸運だったことに、2005年に私はマイクと仕事をしていて、彼は素晴らしい人だ。洞察力があって、彼は私の曲にあった私的で細かなニュアンスまで把握して、それをピアノで表現してくれた。

そういう作品を続けたいと思い、2枚目をマイクと準備に掛かったのだが、彼が忙しくなってしまってね。そうしたら彼がビデオのリンクを送ってくれたんだ。それは若い日本女性が私の曲をソロピアノで演奏しているものだった。彼女のプレイを見てがくぜんとなったよ。それでミホ・アライという彼女に連絡をとった。彼女はロスに住んでいて、このプロジェクトについて話すと、ぜひやりたいと言ってくれた。彼女は実に優れた演奏家で美しい。彼女とは半年に1度くらいずつ集まって準備できた曲からレコーディングしていった。

Vaideology

私は音楽理論が好きで、時間があるときは教えることも好きなんだよ。それで私の理解していることを本にしたいと思っていた。ギターや音楽一般、音楽の専門用語のより良い理解ができるように。例えば、若い人たちは基本的な金融の知識がないことで恐れを抱いてしまっている。同様に音楽理論も一部の人たちにとって恐ろしいものなんだよ。だから私はその神秘の扉を開きたかったんだ。

この本では基本的な音楽の用語や音楽理論の基礎的な事柄を網羅している。驚いたことに、とても良く売れているんだ。今、6ヵ国語に翻訳している。私には独特の文章のスタイルがあるのだが、この本ではできるだけ総合的にし、記載順を考えた。私はこれまでにいくつもの音楽理論の本を手に取ってきたが、何かが欠けていたり、ある主題について理解できないようなことを書きすぎていたりしていると思っていた。だからこの本は最も簡単に学べるよう、そして内容に尻込みしてしまわないように記載順にも気を配った。気負いせず手に取って読み易く、流れがあってもっと学びたくなるようにね。

Generation Axe (The Guitars That Destroyed The World - Live in China)

6月の発売予定だ。(発売日は6月28日)これは最もクールなギターアルバムになるだろう。アジアツアーでの録音だ。残念ながらこれには去年のツアーでやった "Bohemian Rhapsody" は入っていない。あれはとてもスペシャルだったな。けれど、これはアジアツアーのときに7公演を録音したものを私が編集したんだ。

活動予定

6月には Rio Montreux Jazz Festival 2019 に出演する。(ヴァイ先生は誕生日の6月6日にフェスティバル初日のトリを務めました。ライブの動画が公開されています。↓)7月には Vai Academy だ。

今は次のアルバム制作にかかっている。私の過去の作品のいくつかはとても濃厚で構造的、プログレッシブだけれど、これは Alien Love Secret のようなそぎ落としたギターアルバムになるだろう。

スティーブ・ヴァイ Part 1 「達成するまで挑戦を止めなければ、失敗することなどない」

Everyone Loves Guitar というPodcastスティーブ・ヴァイの2時間に及ぶインタビューが公開(4/26)されました。インタビュアーとの相性が良かったのか、ヴァイ説法ゾーンに入った先生は有難いお話を2時間喋り倒します。長~いトークの一部概要を編集し、Part 1 & 2 に分けて掲載します。

========================================

Morc2016vaitalk あなたは非常に優れた感覚というか第6感があるように思えるのですが、あなたにはメンターがいましたか?特に音楽の方向性について、「いいぞ、このままでいいんだ」と背中を叩いてくれるような?

皆と同じように私にも第6感などというものはない。しかし私のキャリアを振り返ると、1つとても役に立っていることがある。私はただ音楽を愛しているのさ。ギターを弾くということがたまらなく好きなんだよ。ギターは常に表現するための美しい道具だった。私の人生にはいろいろなことがあったが、1つ常に私が立ち戻る居場所があったのさ。創造の次元とでも言おうか。

ギターを構えて弾いていると私は想像をめぐらす、そこには外の世界や私自身や将来の成功など、何の期待もない。ただそこにあるのは純粋な創造の時だ。創造の衝動が生まれ、それが自分の身体に流れる。いつもそうなのだ、自分の創造のボタンを押すのだよ。それが最も好きな時で、第6感というものではない。言わば、自分の至福を追求するということだ。自分にとって刺激的なアイデアを追求するということさ。

そういった刺激というのはギターを弾く前から感じるのでしょうか?

いや、事前ではない。弾いているときに自然と起こるんだ。

なぜそれ程に自信を持てるのでしょう?

いや。自信というのは自分で何かが出来るのだと信じる必要がある。私は何も信じる必要はないんだ。ただやるんだよ。とても単純で簡単なことだ。例えばもし私がマラソンを走るのならば、私は十分な自信をつけなくてはならない。トレーニングしたりね。

自信という概念を超えた状態を説明するのは難しいな。傲慢に聞こえるだろう。とても単純なことだよ、素晴らしいアイデアが頭に浮かび興奮を覚えるのさ。そしてそれを追求するのみだ。我々は物事を複雑にしてしまう習性がある。どうやってこれをやるんだ?とね。それは常にアイデアがもたらす興奮を冷ましてしまう傾向にある。しかし、元々のアイデアに実直であれば、どうやって?という方法は自ずと姿を現すのさ。

浮かんだアイデアに対する素朴な興奮、純粋な喜びを持ち続けるならば、(その実行に伴う)障害や苦難は素晴らしい機会になるだろう。なぜなら、君自身がそれを機会と捉え、必要と考えるからだ。何かに取り組むことなくして解決は得られないのだよ。全ての挑戦はその答えにつながるのだ。しかし、「どうやって?」という不安な声に囚われるならば、これらの道がそこにあっても君の目には見えないものになってしまうだろう。

ロングアイランドのどこで育ったのですか?

カールプレイスという小さな町だよ。2ブロック先に住んでいたジョン・サージオは今でも友人で、彼が私のメンターだったのかも知れないな。当時の私は Led Zeppelin しか聴いていなかったのだが、彼が初めて Queen のコンサートに誘ってくれたり、Jethro Tull を聴かせてくれたりした。ジョー・サトリアーニの電話番号も彼にもらったんだ。それに町の不良少年グループとも仲が良くてバンドを組んでクラブで演奏したり、いろいろ楽しい思い出をつくった。

私は素晴らしい両親に恵まれて、母は物語に出てきそうなくらい理想の母親だったよ。私の父は当時バーテンダー酒類の営業をしていた。しかし彼は飲酒癖に囚われてしまい、家族の中で暫く問題だったんだ。でも幸運なことに、私が12歳のころ、彼は酒を止めたんだ。重い中毒者だったのに、ただスッパリとやめたんだよ、酒類の仕事を続けながらだ。酒のことを脇に置くと、彼は本当に面白くて素晴らしい人だった。私たちはとても絆の強い家族だったよ、今もそうだ。

子供の頃の一時期とはいえ、アルコール中毒の父がいたことは困難でもあった。家の中の問題を自分のせいだと感じてしまうようになる。そんなことを思わなくてもいいのに。私はドラッグの類には一度も手を出したことはない。12~13歳頃にタバコやマリファナを覚えたものだけど、15歳のときに悲惨な事件を見てから、決して手を出さないと決めたんだ。

フランク・ザッパと働いて圧倒された体験、また最も重要な教えは何ですか?

自分のヒーローと働くのはとても不思議な感覚だったよ。彼と一緒にいること自体が魔法のような体験だった。彼と話をするのは尻込みする体験だ。彼はとても注意深く話を聞き、言葉以上に話し手の意図まで汲み取ってしまう。そして彼の話を聞くときには心の準備をしておかなければならない、彼は常に真実を話すからだ。

フランクは私にとても難しいパートを与えたけれど、私には自分には必ずできるとわかっていた。スピードを落として何度も練習して少しずつスピードを上げていくんだ。誰だって必ず達成するという意志があればこの方法で弾けるようになる。私の意志はとてつもなく強固だった。達成するまで挑戦を止めなければ、失敗することなどない。私にとって挑戦は楽しみでもあった。フランクを驚かせると、とても嬉しかった。

彼から教わった最大のことは独立心だ。フランクは自由を体現していた人だ。彼の創造に対する意思は強固だった。彼は何かアイデアを得るとそれを探求し、形にした。誰かがやってくれるなどという甘えは一切ない。言い訳をするということは本当にやりたいと思っていないということだ。

あなたは完璧主義者だと思いますが、スタジオではどこまででも作業できます。どの時点でこれは完成したのだとわかるのでしょうか?

それは年齢と共に変化してきたな。私は元々サウンド・オン・サウンドのレコーディングが大好きでね、フランクと仕事をして多くを学んだよ。レコーディングについては完成したと確認するため、自分用のチェック項目があるんだ。「音楽らしく聴こえるか、エネルギーがあるか、正確か、サウンドは自分の求めていた最高のものか、等」主観的な評価だけれど、いくつもの規律がある。究極のところ、完成したかどうかは直感でわかるものだ。

私は多くのアーティストと話してきましたが、彼らの殆どは残念ながらビジネスにあまり関心がありません。あなたは若い頃から自分でレーベルを創ったりビジネスを行っていますが、それはどうやって学んだのですか?

創作活動とビジネスで使う脳は随分と違うものだ。私はなぜだかわからないが、いつもビジネスに取り組むのが好きでね。私は自分自身を管理し、面倒をみる責任を大いに楽しんでいる。その1つとして、自分の収入以下で生活することだ。収入の9割で生活し、1割をとっておくんだ。そうすれば金の面で不安に囚われることはない。

それから、多くの場合、ミュージシャンは(難しいものだと)ビジネスを恐れている。ビジネスは恐れるものではない、それは自分の役に立つものなんだ。基本的なビジネスを学ぶのは簡単だ。若いミュージシャンにとって自分のキャリアや金銭面でのコントロールができない障害になっているのは、難解なものだという恐れと人に任せて上手く行かなくなる恐れなんだ。

私の場合、一度たりともマネージャーが私に小切手を切るようなことななかった。私に報酬を渡せるのは私自身しかいない。私はこの責任と自由を楽しんでいるよ。

あなたの勤労倫理はどこからきているのですか?メンターがいたのでしょうか?

私は単に物事を成し遂げる感覚を楽しんでいるんだ。私の父は実に働き者で、3つの仕事を掛け持ちしていたよ。私の倫理の多くは兄のマイケルからきている。彼はとても厳しい勤労倫理の持ち主で、驚くほど働き者だ。私は創造するのが大好きなんだよ、同時に家族の時間を楽しむのも好きだ。

何かを達成するというのは、とても厳しいことではありませんか。人生でのバランスをどうとるのでしょうか?

それは君の期待値が大きすぎるからだよ。「物事を成し遂げる感覚」というのは世界を救うとか、世界的な成功を収めるとか、そんなことではない。例えば目玉焼きを焼くことでさえ、達成感が味わえるものだ。「物事を成し遂げる感覚」というのは充実した人生を生きるために最も強力で突出した道具なんだよ。

しかし、君の期待が現実離れしていると、その感覚を得ることはできない。なぜなら君はそれを未来に期待してしまうからだ。その場合、どれだけ君が物事を達成しても、決して達成感を味わうことはできない。それがエゴなんだ。エゴは決して満足しない。セックス、ドラッグ、金、これらにも言える。どれだけあってもエゴは決して満足しない。けれど一歩立ち止まり、素朴で純粋な喜びを見つけたなら、それは人生を発見したことになる。

全ての達成事項というのは一度に一歩ずつ、小さなものの積み重ねなんだよ。それら全てを楽しむことが人生に繋がるんだ。私は人生のある時期にエゴに囚われてしまった。常にもっともっとと求めていた。あれは終わることのない苦悩で牢獄に囚われているようなものだ。

あなたにとってこれまででトップ3の音楽体験は何だったでしょうか?

毎回違う答えになるかも知れないな。1つ目は音楽のことは何も知らなかったが、4歳の時にピアノを触ったことだ。すると、右側を触ると高い音が、左側を触ると低い音が出ることに気付いた。その時だよ、いろいろなモノがクリアに見えるようになった。それからだよ、私には音楽を聴くことで音楽が見えるようになったんだ。いわば音楽の構造が見えるのさ。音楽を創造するというのは終わることのない創造的プロセスだ。その音楽創造の方法が明らかになるんだ。

2つ目はギターを練習している人でも、他の分野で技能を磨いている人でも、これから話すことはあることだと思う。15歳でギター練習のときにあるピッキング・テクニックを練習に取り入れた。その時だよ、突然のひらめきのようにギターフレット上全てが広がり、自分で音楽理論が理解できたと思ったんだ。それまでは謎に包まれていたんだ。私には音楽を書き、様々な道具を作曲に活かすことができたけれども、それらをギター上に当てはめて理解することができなかった。ジョー・サトリアーニにギターを習い始めたとき、私は12歳だったんだが、それから3年間習っていた。ジョーは私のヒーローであり、素晴らしい教師だった。彼が音楽理論をギターに当てはめて教えてくれたんだ。

3つ目は確か Real Illusions ツアーのときだ。バルセロナ公演のとき、私はインフルエンザにかかってしまったようだった。1晩に2公演あったというのに。通常、ショウの最中には段取りやサウンドのことなど、様々なことが気になってしまうものだ。心が恐怖を感じてしまう。しかし、あの時は病気のせいか、激しい疲労のせいか、私は完全な降伏状態だった。自分のしていることだけに精神を集中したんだ。いや、まるで完璧な傍観者のような精神状態だった。クリエイティブな瞬間に高度に集中した意識下になる状態を私はウルトラ・ゾーンと呼んでいる。そのときの私のプレイは易々としていながら、エレガントで、美しかった。その日以来、ステージで演奏をするときにはあの状態を目指している。

========================================

Part 2 に続く

Experience Hendrix ライブ@ Pompano Beach FL 2019.03.03 夢のジミヘン・ギター祭り!

今年3月の話ですが、ジミ・ヘンドリックスの類まれな音楽を称えて度々行われてきたエクスペリエンス・ヘンドリックス・ツアーに行ってきました!もちろん、ジョー・サトリアーニを観るためです!

Img_2216

これはヘンドリックスのバンドメイトだったビリー・コックスとミッチ・ミッチェルをベースに、様々なジャンルのミュージシャンを迎えたオールスター・コンサートで、これまでにも多くの著名ミュージシャンが参加しています。

今年のヘッドライナーはジョー・サトリアーニ!過去にもこのツアーに出演したサッチですが、今年はこのツアーの為にトリオ・バンドを組みました。ドラムスに Chickenfoot の2回目のツアーでチャドの代役を務めたケニー・アロノフ、ベース&リードシンガーに Kings X のダグ・ピニック。演奏曲が全てジミヘンということを考えるとダグとケニーのチョイスは最高な予感でした。サッチがインタビューで語っていましたが、ダグのことは彼のバンドのビデオを観て知っていたそうなのですが、ダグが大のジミヘン好きでトリビュート・アルバム Tribute To Jimi Often Imitated But Never Duplicated を出していたことは知らなかったそう。

そして今年大きな話題を呼んだのは初参加のデイヴ・ムスティン(Megadeth)。彼がこのツアーに?と意外でしたが、ジミヘンは聴いてきたでしょうし、サッチのことも好きだったそうで、何だか嬉しい。
他にもこのツアー常連のザック・ワイルドはオジーの体調不良により日本でのライブがキャンセルされ、ツアーに合流できることになりました。ザックのことは昨年11月に Generation Axe でも観ているので、あれから2ヵ月後にまた観ることができました。常連といえば、エリック・ジョンソンドゥイージル・ザッパもこのツアーの常連です。彼ら2人を観るのは初めてでとても楽しみでした!

Generation Axe で雑談したギタヲタのお兄さんたちが口を揃えておススメしていたこのコンサート、ギター好きにはたまらないものになりそう。会場はポンパノ・ビーチの野外劇場。3月のフロリダは晴天続き。気温もこの日は夕暮れ時で25度くらいはありました。半袖Tシャツで心地よいくらいです。座席は前から2列目中央で視界も良好。最前列のオーディエンスはリストバンドをしており、彼らだけは席を立ってステージ前の柵まで行けるという仕組みでした。それ以外の人が柵前へ行こうとすると、セキュリティさんに押し戻される仕組みで、なるほど、これなら規律が保てますね。最前列のチケットが売り切れていたことが悔しいけれど。

日が暮れた午後7時半ほぼ定刻にライブスタート。私はあまりヘンドリックスには詳しくないのですが、"Freedom" "Foxey Lady" と続くオープニングナンバーは有名曲だから知っているし、オーディエンスも盛り上がっています。ドゥイージル・ザッパを初めて観た!共演者が多いからか、サポートにまわって共演を楽しんでいるという感じ。ボーカルをとっているアナ・ポポヴィックさん、ブルージーなハスキーボイスでかっこいいストラト弾きです。スライド奏法も聴かせてくれました。ドゥイージルはSGのイメージがあったのですが、ストラトぽいのを弾いていました。基本的にドラムとベースは固定で、曲ごとにギターと時折ほかの楽器(ラップスチールとか、鍵盤とか)のプレヤーが加わるという感じ。ステージにはドラムセットが2つ(ハウスバンドのとケニー・アロノフの)あって、その前に並んだ多種多数のギターアンプのラインナップは壮観です。

客層は30~50代くらいが中心でしょうか。デイヴやザックがいるので、メタラーもそこそこいましたが、全体的にはロック&ブルースのファン層かと思います。私はサッチTシャツを着て Steve Vai ロゴ入りのバッグを持っていたらギタヲタ系お兄さんに「そいつはクールだ!」とお褒めいただきました。

Img_2184 遂にエリック・ジョンソンが登場!遂にあのトーンを生で聴くことができました。美しい!ツアー初日でしかも野外劇場だったため、サウンド面ではPAもアーティストも調整に少々苦労している様子だったのですが、エリックは最初から完璧にあのトーンでした。ボーカルをとり、ソロでは流れるようなフレーズを弾きこなす、始終下向きかげんな姿。ここでドゥイージルとの共演も実現しました!更にサプライズだったのは "Are You Experienced" ではザックが登場してあの大きな体で鍵盤の後ろに座って弾いていたこと。そうだ、ザックは鍵盤弾きでもあったんだ!その後はギターに持ち替えたザックの土壇場に。パワー200%の弾きまくりザックは Generation Axe の時と同様に客席に降り、ほぼ会場を1周してオーディエンスの熱狂を誘っていました。こういうレビューショウにはザックは必要不可欠だね。これだけ客席を温められるアーティストはそういない。

ここまで1時間半弱ほど。ザックの後で休憩タイムが入りました。
ここまででも多数のアーティストの登場に興奮して頭も胸も一杯になってしまいましたが、まだまだ登場するアーティストは目白押しです。

ドイル・ブラムホール IIを初めて観ました。テキサスのブルース・ギタリストでプロデューサーとしても活躍しているそう。ホロウボディのGibsonプレイヤーのよう。いい声でしたが、途中で弦が切れてちょっと苦労していました。ちなみに彼は後日、エリック・クラプトンのバンドとして日本公演に参加していたようです。

演者の中では断トツで若そうなジョニー・ラング。アコギで登場して歌いだした彼のボーカルには圧倒されました。何この若者!めちゃ歌が上手い!彼のことはチェックしなくては!

ジョニーがエレキに持ち替えると遂にヘッドライナーの1人、デイヴ・ムスティン氏の登場でした!Tシャツに黒いジャケット、ジーンズという姿は Megadeth のステージ衣装のイメージしかなかった私にはとても新鮮に見えました。でも残念だったのは、ギターの音が小さめで、ずっと下を見て演奏していたので、あまり顔が見えませんでした。普段と勝手の違うステージに馴染めていなかったのかも知れません。

さていよいよ、サッチバンドの登場です。ここまではハウスバンドにギタリストが加わるというスタイルでライブが進んできましたが、サッチは自身のトリオバンドを率いてきました。サッチのギターが唸る!サッチもエリック・ジョンソン同様に最初から完璧なサッチのトーンで登場。やっぱりサッチのようなギタリストはどこでプレイしても際立つ。ケニー・アロノフとダグ・ピニックのリズム隊とのマッチングも素晴らしい!パワーとフィールがあって、ダグのボーカルはヘンドリックスの楽曲にぴったり。3人は全員上下黒を着ていて、スキンヘッドにサングラスという、外見も完璧なマッチングでした。(笑)それにしてもダグの手の長さは驚異的!

サッチを観に来てサッチ曲を1つも聴けないのは心残りではありますが、サッチが敬愛するヘンドリックスを弾くとこういう完璧なロックンロールになるんだなと感激。もちろんサッチのアイコニックなアーム使い他、奏法などはそのままでサッチ節を聴かせてくれました。ヘッドライナーに相応しく、サッチバンドは30分ほど連続で熱演を繰り広げてセットを〆ました。今回の3ピース・バンドは超クールだったので、ツアーやオリジナルorカバーの音源リリースとか、是非サッチの課外活動バンドとして続けて欲しいなぁ。

ライブ終了時には全出演者がステージに揃ってのカーテンコール。拍手の中、出演者の皆が退出しても、ザックだけはステージ先端に残り、ファン達と握手したり、ピックをあげていたり、ファンサービスに努めていました。根強いザック人気はこういう人柄が理由なんだろうなと、感心しました。

なお、Experience Hendrix は今年10月からの西海岸ツアーが発表されました。ムスティン氏とザックは今回含まれていませんが、スペシャル・ゲストが今後追加発表されるようです。ギターファンならきっと楽しめるライブイベントなので、私からもオススメ!


本日のセットリスト (別日のリストですが、多分同じ)

01. Freedom (Billy C/Chris L/Dweezil)
02. Foxey Lady (Mato/Chris/Billy/Henri/Chuck)
03. Can You See Me? (Chris L/Kevin/Dweezil/Ana)
04. House Burning Down (Dweezil/Chris L/Kevin/Ana/Henri)
05. The Sky Is Crying (Chris/Kevin/Mato/Calvin/Chuck)
06. Power Of Soul (Chris L/Kevin/Henri/Eric)
07. Love Or Confusion (Chris L/Kevin/Henri/Dweezil)
08. Bold As Love (Eric J/Chris L/Kevin/Dweezil)
09. Are You Experienced? (Eric/Chris L/Kevin/Zakk)
10. Rock Me Baby (Chris L/Kevin/Zakk)
11. Like A Rolling Stone (Chris L/Kevin/Zakk)
12. Little Wing (Chris L/Kevin/Zakk)
intermission
13. Come On (Let The Good Times Roll) (Doyle/Chris L/Kevin)
14. Izabella (Doyle/Chris L/Kevin)
15. Angel (Doyle/Chris L/Kevin)
16. All Along The Watchtower (Jonny L/Mato/Chris L/Kevin/Zakk)
17. Wind Cries Mary (Jonny L/Chris L/Kevin/Eric)
18. Spanish Castle Magic (Jonny L/Chris L/Kevin/Mato)
19. Fire (Chris L/Kevin/Henri/Dave/Jonny)
20. Stone Free (Chris L/Billy/Henri/Dave/Mato)
21. Purple Haze (Chris L/Kevin/Henri/Dave)
22. Hey Joe (Mato/Henri/Chuck/Billy C/Jonny)
23. Them Changes (Mato/Henri/Chuck/Billy C/Jonny)
24. Crosstown Traffic (Joe/Doug/Kenny/Henri)
25. Manic Depression (Joe/Doug/Kenny)
26. I Don't Live Today (Joe/Doug/Kenny)
27. If 6 Was 9 (Joe/Doug/Kenny)
28. 3rd Stone From The Sun (Joe/Doug/Kenny)
29. Voodoo Child (Joe/Doug/Kenny)
30. Red House (Mato/Chuck/Calvin/Billy C)

MORC 2019 ライブレポ Part 2: Tony MacAlpine, Richie Kotzen, Y&T

先週に引き続き、今年のMORCライブレポです。力尽きて書けなかったのですが、この他にも Tesla、KIX、Vixen や Nelson など来日機会のないバンドを観れたのは良かったです。

トニー・マカパイン Tony MacAlpine

MORCにトニーが乗船というのはなかなかのサプライズでした。80年代のシュラプネル・アーティストなので、80年代というところで乗船決まったのでしょうか。トニーは2月頭の Cruise To The Edge (プログ系のクルーズ)にも乗船しており、そのながれでしょうか。
今年のMORCにはシュレッダー・ギタリスト枠とでもいうものがあり、トニーとニール・ザザ、キャンセルになってしまいましたが Gus G. がその内訳でした。

トニー初回のステージは2月25日午後12時15分からの Pool stage。インスト音楽としては上々の集客だと思います。オープニングの "Stranger" でギター好きのオーディエンスは盛り上がっています。バンドのギタリストとのサビのツインがシビれる!やっぱりトニーのギターはかっこいいよ。

 

2回目のステージは最終日午後9時からのStar Lounge。最終日ということもあり、集客多数でした。歌モノ80'sハードロック好きオーディエンス多数に対しても自身のインスト楽曲で真っ向勝負できるトニーはやはりさすがです。ギタープレイで彼らをねじ伏せてましたから。

終演後に会場でたまたまジョエル・ホークストラに会ったのですが、彼が友人のミュージシャンと「あのプレイ観た?もうギター辞めようかと思っちゃうよなぁ」などと話していて、トニーのプレイに感銘を受けている様子でした。

 

リッチー・コッツェン Richie Kotzen

MORCでリッチーを観るのは初めて。ソロアーティストとして米国での人気がこの数年でかなり上がっているリッチーとオーディエンスの反応にも興味がありました。会場は中規模の Studio B ですが、かなり埋まっており、リッチーの人気が伺えました。

Img_1996

バンドは日本公演でもお馴染みのディラン・ウィルソン(B)、マイク・ベネット(Drs)で、いいケミストリー。ハスキーで味のあるボーカルと即興の生々しいギターソロを堪能できました。

26日は4曲目からスペシャル・ゲストとしてハウイー・サイモンを迎えて。本当はヌーノとの共演が観たかったのだけどなぁ。ハウイーさんは色んな人のライブにゲストで出まくってました。(彼って本業のバンドはあるのだろうか?)

27日のスペシャル・ゲストはハウイーさんに加えて、リッチーの奥様ジュリア(ご自身でもバンド活動しているベースプレイヤー)でした!今日がリッチー夫妻の記念日だそうで、奥様がベースで参加したライブはレア!その為か、カバー曲多めのセットリストでした。

 

2/26 セットリスト at Studio B 6:15pm

01. Love Is Blind
02. Remember
03. Help Me
04. Fooled Again (w/ Howie Simon)
05. Loosing You (w/ Howie Simon)
06. I'll Be Around (w/ Howie Simon)
07. War Paint

2/27 セットリスト at Studio B 10:00pm (Setlist.fm より)

01. Losin' My Mind
02. Bad Situation
03. Doin' What the Devil Says to Do
04. Stand (Poison song)
05. Shine (Mr.Big song w/ Howie Simon)
06. All Along the Watchtower (Bob Dylan cover w/ Howie Simon, Julia Lage)
07. Shapes of Things (The Yardbirds cover w/ Howie Simon)
08. You Can't Save Me
09. Peace Sign

 


Y&T

Y&T はMORCになくてはならない存在です。オーディエンスにも人気があり、ミュージシャン全員から尊敬されているバンド。トニー・マカパインに会ったときも、「今夜は何観るの?」と訊かれたので「Y&T」と答えると、「よっしゃ!」とフィスト・バンプされました。(笑)

ところで、私は26日のライブ前日の夜にメニケッティご夫妻のワインディナーに参加しました。これは船内のイベントの1つなのですが、非常に良かったです。米国でも評価の高い本格ブティック・ワインのメニケッティ・ワインを飲みながらそれに合わせたディナーを頂くというイベントで、食事中ずっとデイヴさんのワイン談義やツアー話など、興味深いお話を伺うことができました。途中でデイヴさんの大ファンでもある Tesla のフランク・ハノンが加わったり、ジェフ・スコット・ソートが挨拶に来たりと、やはり他のアーティストの尊敬を集めるデイヴさんです。

そうそう、今年にはカリフォルニアにテイスティング・ルームをオープンするそうで、そこでは規模の小さなライブ会場も併設するとのこと。ドン・ドッケンやキップ・ウィンガーにアコースティックのライブを打診しているそうですよ。

テーブルをご一緒したUKやドイツから来ている熱烈な Y&T ファンのご夫妻たちとのお話にも花が咲きました。ディナーの後、残っていたファン数名とメニケッティご夫妻とで2次会というか、ワインを飲みながらのお話会になだれ込み、それは深夜2時ごろまで続きました。私はさすがにこれ以上飲むと二日酔いで死ぬし、もう無理と1時ごろには退散したのですが、ご夫妻はお酒強いし、お元気です。少人数の2次会、せっかくの機会でしたが、ワインのせいで何のお話していたか忘れてしまいました。(無念)

さて、翌26日の夜、少々風の吹くプール・ステージに登場したデイヴさん、1曲目の "Hurricane" からノドもプレイも完璧です。昨夜はあんなに飲んで夜更かしだったのに、何この65歳!(驚愕)

これまでにリリースした全アルバムから1曲以上をプレイするというのを今回のセットリストのお題にしているそうです。名曲多数で、デイヴさんの衰えを知らないボーカルが凄いわ、ギターの聴かせどころ泣かせどころも強力。27日には "Midnight in Tokyo" もやってくれました。異国の夜に聴くと胸に深く響く曲です。

Y&T のライブでのお楽しみは最後の "Forever" でコーラスに登場するミュージシャンの顔ぶれを見ること。26日は前夜に引き続きのフランク・ハノンが登場していました。27日にはジェフ・スコット・ソートやハウイー・サイモンが登場。ここでの皆さんの楽しそうな顔を見るのが楽しみなのです。今年も素晴らしかった。


2/26 セットリスト at Pool Stage 9:45pm (Setlist.fm より)

01. Hurricane
02. Lipstick and Leather
03. Don't Stop Runnin'
04. Black Tiger
05. Come in From the Rain
06. Mean Streak
07. Earthshaker (w/ Frank Hannon)
08. Rescue Me
09. I'm Coming Home
10. 21st Century
11. I Want Your Money
12. Contagious
13. Summertime Girls
14. Sail on By
15. Forever (w/ Frank Hannon, Jeff Keith and more )

2/27 セットリスト at Studio B 7:15pm (Setlist.fm より)

01. Hurricane
02. Lonely Side of Town
03. Don't Stop Runnin'
04. Black Tiger
05. Come in From the Rain
06. Mean Streak
07. Midnight in Tokyo
08. 21st Century
09. Earthshaker
10. Rescue Me
11. I'm Coming Home
12. I Want Your Money
13. Sail on By
14. Forever (w/ JSS, Howie Simon and more )

MORC 2019 ライブレポ Part 1 : Queensrÿche, Neil Zaza, Eclipse

3月初旬にMORCから戻って以来、余りに書くことがありすぎてレポートが遅くなりましたが、今年のMORCも楽しかった!ライブの感想を少々記録しておきます。

Queensrÿche

遂に今年は2回とも彼らのライブを鑑賞!1回目は発売直前のニューアルバムからの3曲を含む、トッドさん加入以降の楽曲を中心としたセトリ。冒頭でニューアルバムのジャケットに描かれた人物が映像でステージに浮かび上がり、3Dのごとく動いて驚きました!リリース前のニューシングルをプレイしてくれたりと、3月1日のリリースを前にバンドは既にアルバムリリース後のツアーモードに入っていました。船上での彼らの人気は高く、大きなシアターもかなりの入り。好不調なく驚異的歌唱力で歌い通せるシンガーというと、船上では Y&T のデイヴ・メニケッティ氏に次いでトッドさんだと思っています。今回も素晴らしかった。

2回目は最終日の大トリともいうべきライブ。やはり、大入りです。昔からのファンを意識した選曲になるかと思っていましたが、新曲もやっていました。昔の人気曲が始まるとやはり盛り上がります。深夜12時を過ぎると、「3月1日になった!ニューアルバムのリリースデイ!」ということで更に盛り上がりました。彼らのフルセットのライブも観てみたいなぁ、来日待っています!

 

2/24 セットリスト at Royal Theater 7:00pm (Setlist.fm より)

01. Blood of the Levant
02. I Am I
03. Man the Machine
04. Toxic Remedy
05. Condition Human
06. Guardian
07. Selfish Lives
08. Open Road
09. Light-years
10. Eyes of a Stranger

2/28 セットリスト at Studio B 11:15pm

01. Blood of the Levant
02. I Am I
03. Man the Machine
04. Queen of the Reich
05. Walk in the Shadows
06. Take Hold of the Flame
07. Silent Lucidity
08. Jet City Woman
09. Empire
10. Eyes of a Stranger

 

ニール・ザザ Neil Zaza

船の上でのアーティストの競争は熾烈です。他のライブやイベントなど、多数の選択肢を持つ観客を何人自分のライブへ呼び込むことができるか、集客は目に見える結果となって表れるのです。
ニールは今年が初乗船な上に、インストギター音楽というのは相当なハンディキャップだと思います。初回のライブが2月24日の午後9時半のRoyal Theater。この枠は Extreme がやるハズだったものが変更され、ニールになりました。彼にこの大きな劇場の割り振りは厳しいな、と心配していたら、案の定ガラガラ。(汗)うわー、頑張れ!

ニールはパワートリオのバンド編成。上手い人たちを連れてきているのはさすが。オーディエンスを盛り上げるためにカバー曲を多くプレイしていました。有名曲だと皆さんノッてくれますもんね。A-Ha の "Take On Me" を強烈ヘヴィなアレンジで聴かせてくれたり、(ビデオはこちら)芸達者な人だ。

2回目のライブは2月28日の午後6時半のStar Loungeで "Purple Rain" をやってくれたのですが、これが鳥肌モノ。今までに聴いた中で最高にエモーショナルで美しい "Purple Rain" で、思わずスタンディング・オベーションしました。隣にいたおじ様も感動して立って拍手していたのですが、他のオーディエンスが立たないので、「おい、これは最高だったじゃないか!」と周りに言っていました。それ位、素晴らしかったと思います。

ぜひ今度は来日して素晴らしいギターインストを聴かせて欲しいなぁ。セトリは不明です。

 

Eclipse

ジェフ・スコット・ソートと仲の良いバンドなので、ライブを1回はチェックしようと思っていたのですが、17年に出ていたアルバムを聴いても、全体的に音が軽く感じて、あまり期待はしていませんでした。

そんな中、寝不足で疲れのたまっていた初日の深夜0時からのライブに行ってみると、演奏もボーカルも音が良いじゃないの。彼ら、米国にファンはいるのだろうか、と思っていたら、深夜の劇場の客入りはなかなか。メインフロアの広い客席はかなり埋まっているし、スウェーデンの国旗があちこちで揺れており、さながらサッカーの試合のよう。ファンがとにかく熱い!シングアロングの大合唱。曲はキャッチーだし、エリックのボーカルは力強い声。アルバムより断然いい。アルバムよりもライブが素晴らしいバンドに出会えるのはかなり嬉しい驚き。

Img_2100

すっかり彼らを気に入ったので、2回目のライブも観ることに。この日は彼らを観るために Extreme を途中退席したのですよ!船では選択を迫られるのです。

午後2時半のプール・ステージは日差しが殺人的な強さで少しの間、日向に居るだけでも焼けつくような暑さ。今日もスウェーデンの大応援団を引き連れての彼らのライブは熱い!
屋外のステージでも演奏がブレず、アコースティックとエレキギターで綴る楽曲も良い。エリックのフロントマンぶりは素晴らしく、喉の調子にもブレがない。ライブバンドとしての力強さを感じました。ぜひまた来日して欲しい。

なお、バンドのドラマーのフィリップ・クルスナーが腰を痛めているとのことで、以前のドラマーだったロバン・ベックを帯同していました。彼は WET のメンバーでもあり、今回の乗船メンバーには最適だったのかも。なお、Eclipse のメンバーが参加した SOTO のライブでの WET パフォーマンスについてはこちら

 

2/25 セットリスト at Royal Theater 0:00am (Setlist.fm より)

01. Vertigo
02. Caught Up in the Rush
03. The Storm
04. Wake Me Up
05. Killing Me
06. Hurt
07. Battlegrounds
08. The Downfall of Eden
09. Black Rain
10. Blood Enemies
11. Bleed & Scream

2/28 セットリスト at Pool stage 2:30pm (Setlist.fm より)

01. I Don't Wanna Say I'm Sorry
02. Never Look Back
03. The Storm
04. Wake me up
05. Jaded
06. Love Bites
07. Battlegrounds
08. The Downfall of Eden
09. Black Rain
10. Runaways

SOTO ライブ@ MORC 2019 新曲披露とWET集合のパフォーマンス!

ジェフ・スコット・ソート率いる SOTO の MORC乗船は2年ぶりです。2017年の自動車事故でベースプレイヤーのデヴィッド・Zを喪ったバンドは新たにトニー・ディッキンソンを迎えました。5月24日にはニュー・アルバム Origami の発売も控えています。(日本盤は5月29日発売)公開されたシングル "BeLie" のリリックビデオはこちら。今回も SOTO のライブは2回とも参加しました。

2月25日===============

Img_1911 オープニングは "Freakshow"。バンドメンバーを観るのも久しぶり。デヴィッドがいない現実を思うと辛くなりますが、新メンバーのトニーはデヴィッド同様にTSOでは4弦、SOTOでは6弦を使っています。TSOの彼を昨年観ましたが、そちらとは違って少々控え目なパフォーマンス。バンドの皆とは馴染んだのだろうか…

肝心のジェフですが、喉の調子が悪そう。シャウトが辛いんだろうな。ちなみに、翌日朝のジョエル・ホークストラのライブで歌う予定だったジェフですが、喉の調子を理由にキャンセルし、代わりに SOTO のG&Key担当で素晴らしいシンガーでもあるBJを派遣してくれました。友情には律儀なジェフらしいです。

2曲目は "Warth" で、アルバムでは Gus.G がソロを弾いていた曲です。今年のクルーズには Gus.G も参加予定でしたが、出航前日に欧州発の飛行機がキャンセルになり、出航に間に合わないという理由でクルーズをキャンセルしたのでした。もし彼が乗船していたら、この曲で共演が実現したのでしょうか?彼のキャンセルは本当に残念。

3曲目を歌い終えると、やっとジェフが話しました。

「俺たちの1回目のショウは SOTO の楽曲だけを主に演奏する。1stと2ndアルバムから演奏するが、ニューアルバムからの曲も少しやる。でも2回目のショウは全く違って俺の過去や別の活動の楽曲をやる。クールだろ?」

SOTO の2回のライブ構成は例年通りということらしい。船上ではほぼ同じ内容となるバンドもあるけれど、SOTO のライブは違うセトリで2回やってくれます。ジェフの長いキャリアからのヒット曲も聴けるのが嬉しい。

1stアルバムから "Final Say"、"The Fall" が続く。ギターのホルヘ・サランですが、ソツなく何でも弾くものの、ジェフのバックバンド歴が長かったせいか、一歩下がってのパフォーマンスが前回は物足りなかったけれど、今年はずっと前に出るシーンが増えていい感じ。ギター、キーボードとコーラスでマルチに活躍するBJは今年も安定の喉でジェフを支えています。コーラスとパフォーマンスに強かったデヴィッドの穴を皆で頑張って埋めているのかも。以前は余りコーラス参加していなかったホルヘが今年はコーラスも頑張っています。

ジェフが順にメンバーを紹介。そう、このバンドは国際色豊かなのです。ドラマーのエドゥーとG&Key担当のBJはブラジル在住。ホルヘはスペイン在住。トニーとジェフはアメリカ。エドゥはアルバム制作でもジェフの右腕になっているようで、いいフィールのあるドラマーです。

「次は5月発売のニューアルバム、タイトルは ORIGAMI からだ。この曲のライティングには(2017年に亡くなった)デヴィッド・Zが参加して、アルバムのベースプレイも彼のものだ。彼を称えよう!この曲は2年前のツアー中に書いた。ツアーバスの中で彼がベースプレイを録音したんだ。俺たちはそれを活かして曲を完成させた。"Detonate"」

Img_1934 新曲はヘヴィでメロディック、ベースのクールな見せ場もある良曲!これはアルバムで聴いたらデヴィッドを想って涙かも。次はなぜかジェフのソロ曲からの演奏。あれ?それは2回目のライブでやる曲では?今日は SOTO の曲をもっと聴かせて欲しいなぁ。

「次の曲は俺たちが書いたものじゃない。でも俺たちのやり方でプレイする」

と言って始まったのは、マイケル・ジャクソンのカバー曲 "Give In To Me"、これは2年前にシングルで配信されていて、ニューアルバムにも収録のよう。マイケルをこのバンドでカバーしたのも、マイケル大好きだったデヴィッドの影響じゃないかと思うのです。この曲のヘヴィなアレンジも好きだけど、今日はジェフの声がちょっと厳しそうだ…

"Cyber Masquerade" の終盤、ベースのトニーとジェフがステージ前に出てきました。

「俺の頭にはこれが聴こえるんだよ。"livin' the life I was born to live, Givin it all I've got to give" 皆で歌ってくれ!」

掛け声と共に、オーディエンスもシングアロング。でも声が小さいと、ジェフがマイクをしまって、アカペラでの掛け合いが始まりました。Sons Of Apollo でもやってたけど、ジェフのアカペラはぐっとくるんだわ!

掛け合いに続いて、映画 Rock Star から劇中の架空のバンド Steel Dragon の "Livin' The Life"(映画サントラでジェフが歌を担当)が始まると、最前列にいた観客からジェフにTシャツの差し入れが。ジェフが広げると、何とそれはお手製の Steel Dragon バンドTシャツでした!(写真参照。プリントされているバンド写真は映画のバンドメンバー)これにはジェフもウケていました。

最後に「ダンダン、ダンダン」とあのドラムが始まると〆の曲 "Stand Up"。舞台袖から戻ったジェフはさっき貰った Steel Dragon のTシャツを着てきた!これにはオーディエンスも盛り上がり、皆であの曲を合唱しました。(笑)

2/25 セットリスト at Royal Theater 2:30pm

01. Freakshow
02. Warth
03. Weight Of The World
04. Final Say
05. The Fall
06. Detonate
07. Drowning (JSS solo song)
08. Give In To Me (Michael Jackson cover)
09. Cyber Masquerade
10. Livin' The Life (Steel Dragon)
11. Stand Up (Steel Dragon)


2月28日===============

「SOTOの2回目のショウだ。今日はスペシャルを用意してあるぞ!」

の掛け声で始まったライブ。今日はお楽しみがいっぱいのハズ。(サウンドチェックの音漏れを聴いてしまったw)

セットリストの方は、Steel Dragon 曲はともかくとして、前半に初回のライブと同じ曲が2つというのは少し意外でした。ジェフのソロ曲も多数あるから色々やって欲しいなぁ。

「ゲストを呼ぼう、ハウイー・サイモン!おっと順番を間違えた。まぁいいか、一度出てきたのに引っ込むのはカッコ悪いよな。"Soul Divine"」

ハウイーさんが登場したのに、セトリの順番を間違えたジェフですが、そのまま進めました。ハウイーさんとは昨年ジェフのソロアルバムを制作しているので、新曲を期待したのですが、それは成らず。

「お前どこにいたんだよ?(笑)、お前が出てくると Whitesnake のコンサートみたいだな。じゃあ、あの曲をやろう!」

ハウイーさんの後に登場したのはジョエル・ホークストラ。多分ここの順番が入違ったのね。(笑)曲は2人の共作曲 "Look Inside Your Heart"。コーラス部はジェフがマイクをジョエルに向けて、ジョエルが歌っています。2016年にもこれは実現したのですが、今年はギターソロをジョエルが誘ってSOTOのギタリスト、ホルヘと一緒に前へ出てハーモニー決めてくれたところが良かった。

「俺がMORCにブッキングしてから、(ラインナップに)Eclipse もいたから、ずっとこの期待が渦巻いてたな。ああ、Eclipse のメンバーはここにいる。お前たちの期待通り WET をやるぞ。Eclipse から、エリック・モーテンソン、マグナス・ヘンリクソン、ロバン・バック!この曲はライブで一度もプレイしたことがないけど、やるぞ!」

やったー!Eclipse の面々が期待通り登場!しかもニューアルバムから "Watch The Fire" が聴けるとは嬉しい!

 

ここで少々過去の背景を書きますが、今年の WET 実現の起源は2年前に遡ります。2017年のMORCにはマグナスがプライベートで乗船しており、そのときも SOTO のライブにゲスト出演して WET を演奏したのでした。恐らくあの年にマグナスがMORCを体験して、ジェフの推薦もあって今年の Eclipse 初乗船に繋がったのではないかと思います。(そのときのライブレポはこちら

それぞれに忙しい面々でツアーはまず難しいと思うので、彼らがライブでWETとして演奏したのを観れたというのは、とても嬉しい。

「2017年にMORCで俺たちがプレイした時には、俺のブラザー、マルセロ・ジェイコブへの哀悼でメドレーをやった。その時には、別の人物がベースを弾いていた。デヴィッド・Zだ。これは2人の最高のベースプレイヤーに捧げる」

Img_2103 "Break Your Chain" で始まった Talisman のメドレー。やっぱり Talisman はいいよね。曲がいい!ベースの存在感が俄然強まる楽曲。 "Color My XTC" でのトニーのプレイを見ながら、ごめん、やっぱりデヴィッドを思い出す。(涙)すると突然、ジェフが演奏を遮り、プレイを止めます。バンドは何事か分からず、混乱している様子。

「演奏を止めろ。俺たちには後6分しか残ってないと言われた。こういうのは最悪だが、ライブは進めなきゃならないし、延長して次のバンドに迷惑をかける訳にもいかない。最後にやらなきゃならない曲もあるんだ。だからこうするぞ、ビートをくれ」

ドラムビートに乗せてアカペラで始まったのは "I'll Be Waiting"。ありがとう!時間がないからとこの曲を聴けなかったらもの凄い心残りになるところでした。コーラス部をオーディエンスと掛け合いしつつ、Aメロからコーラスでギターソロへと曲を短縮。その場でのジェフの采配にバンドがぶっつけで演奏を変えていく様子は観ていてシビれました。

あのドラムビートが会場に響き、ラストは例のあの曲です。「それ1回目のライブでもやったじゃないか」というオーディエンスの声に対し、

「いいか、俺はこの曲をやる為に船に乗ってるんだよ!」

というジェフの返し。今日もこの曲では先日お客さんにもらった Steel Dragon のTシャツを着ているジェフ!最後の曲ということで、終盤には Eclipse の面々が再登場し、エリックがジェフと歌っていました。

Talisman メドレーが途中で短縮されたり、イングヴェイ時代の楽曲をやらなかったり、というのは正直残念ではありますが、WET のメンバーが揃っての新曲初プレイを観れた感激の方が勝りました。

SOTO のニューアルバムが待ち遠しい。ぜひ日本にも来て、このバンドの楽曲、そしてジェフの持つ素晴らしい楽曲の数々を演奏して欲しいな。

2/28 セットリスト at Royal Theater 5:30pm

01. Drowning
02. 21st Century
03. Livin' The Life (Steel Dragon)
04. Eyes Of Love
05. Give In To Me (Michael Jackson cover)
06. Soul Divine (with Howie Simon)
07. Look Inside Your Heart (with Joel Hoekstra)
08. WET medley (with WET: Erik Martensson,Magnus Henriksson,Robban Back)
09. Talisman medley
10. Stand Up (Steel Dragon)

ジョエル・ホークストラ Part 4 「良いリズム・ギターを弾くことに加え、『いかに弾かないか』ということも重要だ」

Whitesnake のジョエル・ホークストラが自身のサイド・プロジェクトの VHF について、またギタープレイについて語った Part 4 です。私が2月に行ったインタビューはこれで全掲載完了です。ジョエルのWhitesnake 以外の活動について、ギタープレイへの考え方など、多くの方に知ってもらえたら幸いです。VHFは特に私の推しプロジェクトです! 質問と和訳:Green

==========================================

 

ー VHF の方はどうなっていますか?プロジェクトについても説明してください。

JH: VHF は(前作のEPから)4年になるかな。ドラマーのトッド(Todd Vinny Vinciguerra)は僕の友達で21歳でMI(音楽専門学校)に行っていたときのルームメイトなんだ。元は彼がジャムしてドラム・ビートをレコーディングした。そしてトニー・フランクリンに連絡したんだ。彼は素晴らしいプレイヤーで僕の大好きなベース・プレイヤーさ。あのトーンといい、グリッサンドといい最高さ、彼はタイトな固いタイプじゃなくて、ただあのサウンドとフィールが素晴らしいのさ。

それで彼がトッドのプレイの上にベースを入れたらとてもクールになった。それでEPを創らないかという話になって、僕も参加したんだよ。正直に言うと、あれは僕の作業が莫大だった。彼らが録音したものはクールだったけど、聴きやすいものじゃなかった。それで僕はギターで何トラックも入れて様々なことをやったし、(エフェクトとしての)ヴォーカルもいくつも入れた。そうした結果、聴き手に馴染みやすく、聴いて面白いものにできたと思う。

それで2作目をやろうという話がきたときに、僕が言ったのは、僕の作業量が多過ぎるってことだった。だって彼らのパートは、ドラム・パートなら1本で完成だ。でも僕はギターで8トラックも入れる。ドラマーの8倍の作業量があるってことさ。悪気はないけど、ギターパートを入れるというのは作業量が多いんだ。

それで僕が提案したのは4人目のメンバーを入れて少し作業を手伝ってもらうということだった。プロダクションやキーボード、ドラム・ループなんかをやってくれる人。これはメタル・アルバムじゃないし、僕らのテクニックを見せびらかすような必要もない。Pink Floyd の影響を受けた実験的音楽で、ストーナー・ロックっぽい感じかな。「見てくれ!俺はこんなに速弾きできるんだぜ!」みたいな音楽じゃない。そういうのは避けたいんだ。もうそういうのには飽きたよ、僕は違う分野をやりたい、僕の内側を表現するようなプレイで、テクニックに固執するのではなく。

ー VHFは普段あなたのやっている音楽とは少し違っていて、あなたのそういう面を人々が聴けるというのも良いと思います。

JH: バラエティということだよね。VHFのやっていることはアーティスティックな信憑性を高めてくれると思う。僕が単にハード・ロックをプレイしているだけでなく。特に Cher での僕しか知らない人は、「あいつはポップスを弾いてる奴だな」って思うだろうから、じゃあこれ聴いてみて、と言えるよね。まあ、VHF のアルバムっていうのは2~3枚しか売れないものだから、(笑)意義としては僕自身のアーティストとしての信憑性を高めるということ。最終的には自分の愛する音楽をやるということが重要なのさ。僕はああいう音楽が好きだからね。まぁ、どんな作品になるのか、楽しみに待っているよ。トッドが早々とセカンドの話を公にしちゃったけど、制作はまだこれから。でも僕もぜひあれをやりたいんだ。

ー 日本ではインストゥルメンタルの音楽にもファンがいると思いますよ。

JH: ああ、そうだね。欧州でもそういう土壌はある。米国ではまだトレンドにしか皆が注意を払わない感じだね。誰もがポップ・スターになりたがっていて、そういう音楽をやらなきゃと思っているようだ。僕はそういう世間的な流行にのったクールな男に成りたいなんて気持ちは何年も前に捨てた。そんなものはどうでもいいんだ。

僕はただ良い人間でいたい、勤勉に働いて、評価してもらえたらいい。僕がやっているギグというのは流行最先端の音楽ではない。Cher だってレトロな音楽だし、TSOだってレトロでニッチな分野の音楽だし、Whitesnake だってレトロだ。若い子にはアンクールに見えるだろう、でもそういう批判や戯言はもうどうでもいいんだ。

僕は自分のベストのスキルを出して演奏するし、与えられた全ての機会に感謝している。僕にとっては父親であることが重要だし、子供たちにより良い人生をおくってもらいたい。僕の人生で一番重要なことはそれだ。だから僕は世間のタレントコンテストみたいなものには興味がないし、ギタリストとして、ミュージシャンとして最高の自分を出すことに注力しているよ。それら全てのバランスをとった人生を目指している。

ー VHFの音楽はあなたのスキルだけでなく、アーティスティックな面も出ていて素晴らしいです。

JH: ありがとう。そういうことなら僕のインスト・ソロアルバムの The Moon Is Falling とかは正にそれだと思うよ。あれは風変りなギターサウンドを目指して、ペダルとかいろいろ実験的に用いたからね。変拍子だったり、アレンジも風変りで、自分に何かが起き始めるきっかけになったものだ。(訳者注:自主制作だったこのアルバムが米国のギター雑誌から注目されました)アーティスティックなイノベーターという方向を向いていた。ハード・ロック路線の僕のイメージが軌道に乗るよりもずっと前の話だ。僕がギターを始めたきっかけはハード・ロック音楽への愛なんだから、(今の状況が)しっくりきているよ。

Jhamp ー あなたにはギター収集癖があったと思いますけど、ギブソン以外のギターや、アンプやエフェクター・ペダルなどについての収集癖はどうですか?

JH: ギター収集癖は確かにあるよ。(笑)でもギアについては、それぞれのギグに最適な物さえあればいいから、特にないんだ。Whitesnake は特にレス・ポールサウンドが求められるギグだ。レブはハムバッカーでフロイド・ローズ搭載のいわゆるスーパー・ストラトサウンドだよね。だから僕がレス・ポールサウンドを提供することは重要だ。アンプは Friedman の BE-100 だ。アルバムでは Marshall も使ったけど、Victory 他 Mezzabarba も使っている。

Cher のギグでは、多様な楽曲をプレイしなくちゃならないから、ストラトテレキャスター、ジャズ・マスター、ダブルネックも使う。Jackson PC1 は Cher と前に出るところで弾いているから目立つだろう。あれもスーパー・ストラトだよね。あとアコースティックも弾く。

TSOでは視覚的な華やかさを狙って多種のギターを使う。あれはヴィジュアルが重要な要素になっているショウだから。僕が加わった最初の年はほぼ1本のギターで通していたんだ。でもショウを体験して、もっと視覚に訴え、楽しめるものにしようと考えたんだ。ここで全部言えないくらい、沢山のギターを使っている。11本か12本くらい。Flying V、Explorer、今年は Modern V も加わった。Friedman 製テレキャスター、ハワード・ロバーツのシグナチャーのセミ・アコースティック、あと Jackson にもちろんレス・ポールも。ここで忘れているエンドーズ先があったら申し訳ない。

全てはそのギグに何が最適かということ。その中で僕は楽しむことにしている。僕は新しいギターが大好きなんだよ。

ー アンプやペダルを大量に収集するのが好きなギタリストもいますよね。ジョー・ボナマッサとか。

JH: ジョーは飛びぬけた才能の持ち主で、大金を持ってるからさ!彼は本当に素晴らしいからそれに相応しいよ。僕もかつては大きなペダルボードを使っていたんだけど、今の Whitesnake ではあまりペダルは使わない。ディレイとリバーブがソロで要るだけさ。僕は Fractal Axe-Fx をエフェクトのみに使っている。モデリングは使わないんだ。だから、Friedman アンプと Fractal Axe-Fx 、それにトミーがくれる曲のテンポ bpm を聴いて、それくらい。切り替えはほとんど自分でやるけど、自分の立ち位置から離れるときにはギター・テクに切り替えてもらう。全体的には昔ながらの使い方だよ。

TSOでは Fractal Axe-Fx を全てに使っている。ステージにはアンプがないんだ。だってレーザーとパイロで全部溶けちゃうからね。(笑)Cher では大きなペダルボードを持ち込んだけど、結局は Friedman アンプと Fractal Axe-Fx を使った。僕の前任者のサウンドにできるだけ近づけたんだ。ギグごとに何かが変わるんだよ。

ー 優れたセッション・ドラマーのケニー・アロノフがこう言っているのを読みました。「ギタープレイヤーの最も重要な技能の1つはリズムギターの弾き方にあるのに、多くの奴には分かっちゃいない」と。ギタープレイに最も重要なものは何でしょう?

JH: ケニーの言うことには賛成だね。リード・プレイにも重要だ。リード・プレイがいいリズムのタイミングにシンクロしていなければ最悪だ。それから、良いリズム・ギターを弾くことに加え、「いかに弾かないか」ということも重要だ。だって、ボーカルが入っていて、オーディエンスが聴いているのに、うるさく弾いていては最悪だろう?

僕のアルバム Dying To Live を聴いてみると、ボーカルが入っているときのバックグラウンドのリズムギターはとてもシンプルなのに気付くだろう。ガチャガチャとリフを弾こうとは思わなかった、そんなことをする意味はないからね。だから僕は出来る限りシンプルにして、シンガーの歌が止まるとギターで応じたり、リードを入れたりしたんだ。もちろん、正しいリズムでのギタープレイは最も重要なことだよ。

ー ギターの上達に重要なことは?

JH: 練習あるのみだ。いろいろな方法があるよね、例えばエディ・ヴァン・ヘイレンは楽譜の読み方やクラシック系の人がやるような両手を独自に動かす練習はしてこなかったと思うよ。でも彼は彼のやり方でプレイを切り開いたイノベーターだ。タッピングの凄腕スタンリー・ジョーダン、ジャンゴ・ラインハルトイングヴェイ・マルムスティーンジョー・パス、トミー・エマニュエル、これらの優れたプレイヤーは皆それぞれ異なるユニークなプレイヤーだ。でも彼らは全て1点の共通点があって、皆がギタープレイの習得に長い時間を注ぎ込んだのさ。自分が注ぎ込んだものが返ってくるんだ。

ギタープレイには様々な方法がある、そこがいいところなんだ。そしてエゴを捨て去ること。自分が最高のシンガーだなんて思うのは自分にとっても致命的で、いつだって更に優れたシンガーが登場するものなんだ。だから大切なのは自分が成り得る最高の人間になって、日々創造的に過ごすことだよ。自分の向かう先がはっきりしないこともあると思う、それは創造し続けることで自ずと分かるようになるだろう。ポジティブに考え、純粋な心を持つこと、そうすることで人生は自分が思いもしなかった方向へ進むんだ。

僕はブロードウェイの Rock Of Ages でプレイしたけれど、子供の頃にいつかブロードウェイでプレイするぞ、なんて決して思わなかった。でもこのおかげで僕の経済的状況は完全に変わったんだ。僕はあのショウを6年やって、自分のライブがあるときにはいつでも代役に頼んでそっちへ行けた。僕は長年どうやって家賃を払うかっていうストレスに向き合っていたけれど、あのお陰でもうその心配はなくなった。そこで尊敬する人々にも会うことができたしね。

Cher についても同じ。子供の頃、いつか Cher にギターを弾くんだ!なんて一度も思わなかった。でも今そのギグをやって本当に恵まれていると思うよ。バンドのミュージシャンは皆素晴らしいんだ。それに音楽界のアイコンである人とプレイして、2万人のアリーナ会場でのライブをやっている。素晴らしい体験だ。僕は従来の僕のオーディエンスとは全く異なる階層の人々に僕のギタープレイを見てもらえるんだ。これは素晴らしい機会で、その上僕はこのギグでギタープレイを上達せさることができ、ギャラが貰えるんだ。

ー では最後の質問です。あなたは何度か日本をツアーした経験がありますが、一番の思い出は何ですか?

JH: 大好きなところは、ファンがお菓子やギフトを持ってホテルのロビーに来てくれたり、そういう歓迎の行為をしてくれることだね。米国なんかとは全然違うレベルのもてなしだよ。あんなことは米国では絶対に起こらない。

それにとても細かいところまで聴いているよね。ギター雑誌の取材のとき、「あのリックでのあなたのピッキングはこの方向ですよね?」とか言われたことがあって、うわぉ!ここの人たちは見ているんだ!ってびっくりした。米国なら皆飲んだくれて、「イェーイ!」って言ってるだけなのにさ。日本だと細かいことを熱心に分析しているよね。そういう文化は素敵だと思うよ。皆がとても優しいし、思いやりがある。

これは誤解を招かないようにどう話したらいいのだか迷うんだけど、多くの(ファンの)女性が僕と会ったときに泣いたり、震えたりしてたんだ。これ冗談?って感じだ、僕はスターには程遠いのにさ。それなのに。とにかく、とても可愛いよね。感動するし、ほんの僅かの間でも、まるで自分が Beatles になった気分さ。素晴らしいよね。

それに日本はとても美しい国だ。いい人たちで敬意をもって接してくれるし、とても清潔だ。それに全てが完璧に機能している。だって日本でエレベーターのボタンを押したら、ドアは静かにスムーズに開くだろう?米国じゃドアが開くのにガラガラ音がするよ。あと、空港の手荷物受取所!日本では静かに回転しているよね。米国じゃまるで戦車が動いてるみたいに、ガラガラ音がしてるんだ!(笑)