前回、MR.BIGにバンドの再結成後の奇跡を期待したいという話をしたけど、新作の"What If..."にもそのチャンスはないだろうかと勝手に考えてみた。で、自分としては"Stranger In My Life"にチャンスがあるんじゃないかと思う。
この曲は、戦争から帰還した兵士が、心を病み苦悩するもの。商業的には曲が長すぎるとか、歌詞の意味がディープすぎるとか、今のヒットチャートに受け入れられない、と言われているようだけど、こういうディープでドラマチックな曲が時として意外にも人々の心を捕らえる時期というのがたまにはあってもいいんじゃないかと思う。
米国はテロとの戦争において、最近大きな転換点を迎えたけれど、長年の戦争の結果、この曲にあるように心に傷を抱えた兵士はたくさんいるだろうし、この曲に描かれる苦悩は程度の差こそあれ、多くの人の共感を呼ぶんじゃないかな。"To Be With You"だって、当時のヒットチャートに上り詰めるとは本人たちも予想してなかった訳だし、この曲にそんなチャンスがあってもいいのでは。
私がこの曲を気に入っているのは、ドラマティックなサビのメロディと、意味深でダークな歌詞、そして後半からポールが弾きまくるギター。（このパートが曲をよりドラマティックで切なく、大きなものにしていると思う。）
The man I'm supposed to be
Now is the enemy
僕がそうなるべき人間は
今や（僕自身にとっても）敵だ
I wonder who I am
Will be someone to remember
After the glory ends
Hiding in my disguise
I'm a stranger, a stranger in my life
僕はいったい誰なんだ
記憶に残るひとかどの人間になれるだろうか
栄光の日々が終わる時
仮面の中に自分を隠し
僕は自分の中に存在する他人なんだ
この1stパートのサビ、歌詞もいいし、"Hiding in my disguise"のエリックの声がエモーショナルでいいじゃないか。
I made all the right mistakes
Now I'm a ghost in the big parade
僕がおかしたのは正しい過ち
今の僕は盛大なパレードの中の亡霊
I wonder where I've been
Where is the dreamer I remember
Losing a long lost friend
Hiding in my disguise
I'm a stranger, a stranger in my life
僕はどこに行ってたんだ
僕が覚えている夢みがちな自分はどこにいる
まるで、（自分という）親友を失ったようだ
仮面の中に自分を隠し
僕は自分の中に存在する他人なんだ
2ndパートのここがまたいいですね。"I'm a ghost in the big parade"が物凄く詩的でディープ。特にエリックの"the big parade"の発音にパッションがこもっていて、歌詞と共にぐっとくるんです。"the big parade"が何を指しているのかは、リスナーに委ねられている訳ですが、想像がふくらみますね、人生そのものだったりするのかな。
この曲を書いたのはエリックだから、彼からこういう歌が生まれるのかと、驚きつつ、その才能に感激です。確か、空港でみかけた兵士の孤独そうな姿がインスピレーションの元になったとか。
I woke up, all choked up out of my head
My heart is wide open re-writing how this story ends
全く息ができない感覚で目が覚めた
僕の心はさらけだされたまま、この物語の結末を書き直そうとしている
（※和訳は、自己流の解釈を加えました。）
ラストにつながるこのブリッジ・パートのメロディがいいんだ、これが。
"I woke up, all choked up out of my head"なんて悪夢にうなされて夜中に飛び起きる主人公の姿が浮かんでくる歌詞だよね。"out of my head"のコーラス・ハーモニーがまた切なく美しいじゃないか!
そしてポール先生の弾きまくりパート。先生曰く、「ちょっとLED ZEPPELINっぽい雰囲気があって"Kashmir"の薫りがする」（BURRN!1月号参照）そうだ。とにかくドラマチックに響くギターの声が曲を美しくスケールアップしてます。ラストのブライアン・メイ風サウンドも余韻がしみこむ感じでいいじゃないですか。
