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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

ユーモアのセンス

MR.BIGのドリル奏法、それが縁で日本のドリル・メーカーのマキタがMR.BIGのコンサートツアーを後援したことはファンは皆ご存知のことと思う。92年のツアーでの大きなマキタドリルの絵とブランドロゴが設置されたステージは今見直しても興味深い。さらにMR.BIGはマキタへの返礼として"I Love You Japan"を書き、ビリー・シーン曰く、「マキタの社員のために作った曲」としてプレゼントされているのも周知のとおり。

今、考えてみると、どうしてこんなことが可能だったんだろう、と不思議になった。ファンとしてはもちろん楽しい事だし、日本の会社とそんな縁があるなんて、なんだかうれしい。
でも、東証1部上場の電動工具メーカーとしては、どうだったんだろう?プロフェッショナルな大工向けに高品質の電動工具を提供し、世界的シェアを誇る同社にとって、MR.BIGがドリル奏法に自社の製品を使っていることは当初ポジティブに受け入れられたのだろうか?
そりゃ、もちろんライバル社のドリルを使っているのを見るよりは気分がいいかも知れないが、本来の使用方法と違うことや、ハードロックバンドがパフォーマンスの1つとしてやっていることに眉をひそめた役員はいなかっただろうか?
ロックバンドが自分たちで使っているだけでなく、会社として後援するということに社内で障害はなかったのだろうか?

もし私が同社の広告宣伝を担当していたとしたら、そんなバンドがいると知って、さらにそれは面白いと思ったとき、どうやって宣伝効果を描いて、上層部を説得できるだろう?

・会社のイメージとしてどうプラスに使えるか。
電動工具のメインユーザーである北米の大工さんたちにこのバンドでアピールできるか。
 (それこそ、カントリーを聴いている大工さんの人口の方が当時でも多そうな気がする)
MR.BIGの演奏をマネしたギターキッズがドリルで怪我をしたら、マキタに対して損害賠償訴訟を起こさないか。
MR.BIGを後援することで、本来の使用方法と違う使用を会社として認めてしまうことにならないか。
・株主や取引先等から批判されないか。

少し考えてみただけでも、非常にハードルが高い気がする。今の時代ならできなかった決断かも。
それにしてもマキタがMR.BIGのコンサートツアーを後援したというのは、傍から見て驚きだし、とてもユーモアのセンスがあると思う。
例えばこれがソニーのような会社だったら、「あるかもね」となりそうだが、マキタというのは失礼ながら結構地味な会社だから、そんな決断ができたことによけいに驚いてしまう。

マキタは愛知県安城市に本社のある会社で、安城というのは別名「日本のデンマーク」と称される、田舎なイメージのある街。そこにデカイ工場と本社があるのだが、ロビーには創業者の銅像があり、その奥にはポールとビリーが使ったドリルが展示してある。(これはウソです、ジョークです。置いてあったら面白いのにね。)愛知県にある「ものづくり」の会社だから当然に社員も地味で真面目そうな人たちだ。男性は水色、女性はピンクのスモックのようなユニホームを着ていた。(これは本当。メーカーですね。)

是非、当時の広報担当や部長クラスの人の話を聞いてみたい。どのように社内で根回しをして、経営陣を説得したのか、上に掲げたリスクとどう折り合いをつけたのか、是非、話を伺ってみたいものだ。
今の時代に足りないセンスはそこにあるかも知れないから。

今日は音楽ネタから脱線してしまった。
さあ、"I Love You Japan"でマキタドリルのスクリームを聞こう♪この曲はもちろんポール・ギルバート先生の作品。ポールは本当にユーモアのセンスがあるなぁ。粋ってこういうことね。(ウソかホントか知らないけど、ポール先生愛用のマキタ・ドリルは、音がGになるように特注されているそうです。)