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Eric Martin、その謎

エリック・マーティンは文句なしに素晴らしいシンガーだと思う。それは、MR. BIGの過去のアルバムだけでなく、最新アルバム"What If..."を聞き、Around The World Tourを見て益々裏付けられたと思う。ライブではさすがに、昔より少々低いキーで歌っているけれど、艶があって、伸びがあって、MR. BIGのシンガーは彼しかありえない。

シンガーとしてのエリックはバラードでの秀逸さが最近のJ-POPのカバーアルバム企画でも目立っているけど、MR. BIGでのエリックはロックしたヴォーカルでも歌の上手さが証明されていると思う。新作では"American Beauty"、"Around The World"のヴォーカルは凄くカッコイイし、"Daddy Brother.."等のバンド看板ロックソングでもそれは同じ。さらに "Temperamental"みたいな曲も歌えるところがエリックの素晴らしさでもある。

ところが、ここからが私の疑問。過去に目を向けると、MR. BIGがバンドとしての活動を休止していた時期と、解散後にエリックはソロ・アルバムを数枚出している。全部聴いてみたけど、個人的意見ですが、あまり好みではない。イケてない。彼の良さが感じられない。繰り返し聴いてみようという気にならない。この時期のエリックのことをビリーが後に鳴かず飛ばずだった」と言っていますが、そうなったのも必然と思えるこの作品群。

エリックといえば、MR. BIGの看板シンガーであるだけでなく、主要なソングライターでもあるはず。バンドの歴史に輝く奇跡の名曲、"To Be  With You"はエリックの曲だし、その他にもバンドのバラード名曲集を作れば、"Just Take My Heart"や"Promise Her The Moon"などエリックの名曲が並ぶはず。最新アルバムでは、"Stranger In My Life" もエリックの作品。

そのエリックが魂注いで製作したはずのソロ・アルバムの楽曲がどうしてこんなにイケてないのか。実に不思議に思う。曲の路線もあちこちに飛んでて、彼がこれで何をしたかったのか、良く分からない。それに聴いていて思うのは、演奏がイケてない、ということ。技術屋集団MR. BIGの演奏に耳が慣れているせいか、ソロアルバムの演奏はなんというか、チープで浅く感じるのよね。中には、「これカラオケの伴奏ですか?」と言いたくなるようなのもあって、曲全体をチープにしている。エリック、ミュージシャンにお金かけるべきだったよ。とは言え、私はリッチー・コッツェンを迎えたMR. BIGのエリックの歌声も好きじゃないので、演奏の問題ではないなぁ。あの時代は全曲リッチーが歌ったほうが良かったんじゃないかと思ってます。まー、MR. BIGという名の別モノになるけどね、実際そうでもあったんじゃないかな。

MR. BIGのソングライティングでは、エリックが書いてきた曲をバンドのメンバーでアレンジとかしていたようなので、実はこのアレンジが重要だったのかな、と思う。ダイヤの原石を作る才能のあるエリックにはそれを磨いて、カットしてくれる3人が必要だったという訳。"They complete him"な関係。それは実はメンバー全員に言えることだったのでは。年月が経って、やっと全員がそのことに気がついて再結成できたのかな、と思う。

バンドの関係が悪かった頃、エリックはインタビューで孤立感、劣等感を感じていた、というようなことを言っていましたが、実は逆もあったのではないかと思う。ベーシストとして、ギタリストとして名声あるビリー、ポールですが、彼らの優れた演奏は何十年にもわたる努力の結果である訳です。2人ともソロでは歌も歌っていますが、シンガーの域ではないことは明らか。練習で補えない天性のギフトを持っている人にしかできないことがある。で、歌の場合、そのギフトをもっているのがエリックという訳。さして練習しているようにも見えなかったエリックがスタジオに登場して、ちょっと歌うとそれはすばらしい歌声になるというところに多少の嫉妬は感じるのではないかと想像。(ちょっと話が横道にズレました)

まー、この先エリックがソロアルバムを製作することもいつかはあると思うけど、ソングライティングの才能が結実して、次は素晴らしい1枚になりますように。