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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

MR. BIG 『The Stories We Could Tell』 古いカーステから聞こえるブルース・ロック味

当初の発売予定から大幅に遅れてMR. BIG のニュー・アルバム "...The Stories We Could Tell" が9月24日に発売されました。

急いで開封し、聴いた感想はナルホド、彼らの言うとおり、オールドでブルージーなロック・アルバムだなぁ、ということ。

ミッド・テンポの曲が多いし、近年のポールのギタープレイが反映されてて、ブルージーで音が太くなってる。直近のソロ・アルバム "Stone Pushing Uphill Man" でボーカル曲をギターでプレイした影響か、エリックにプラスしてもう1人のボーカルが入ったかのように「歌うギター」が散りばめられています。

特筆すべきはエリックのボーカル。やっぱり上手いねぇ~。歳を感じさせない歌声なんだけど、若い頃より少し厚みが出て、R&Bテイストのロック曲にどストライクでハマる。今のポールのギターテイストと素晴らしいマッチングだと思います。

パットが取り組んだというドラム・プログラムは言われなければ全く分からないほど。パットが叩いてると普通に信じちゃう。海外の音楽ライターがパットのプレイした最後のドラム作品だと思い込んで賞賛してたのも分かる。大変な作業量だったんでしょうね、これ。でもこの方法でここまで出来るのなら、今後の作品も同じ方法で製作して欲しい。

The Winery Dogs で大忙しだったビリーのベースがびっくりするほど大人しくて、どうしたの?と思いました。今回の楽曲を生かした演奏ってことなんでしょうか。メンバーで集まって作曲した前作とか、TWDのアルバムなんかはベース音のデカさ、フレーズにビリーの刻印が付いてたんだけどね。

アメリカの乾燥したハイウェイを古いアメ車でドライブする時、古いカーステから聞こえてくるブルース・ロック。そういうテイストのアルバムですね。 "Satisfied" なんかは "Alive and Kickin'" を思い出す。飛びぬけた派手さはないけど、こういう方向性も味があってアリだと思う。

初のタイトル・トラック(今までのアルバムにはアルバム・タイトルの曲はなかったんだよ!とエリックが力説していました。) "The Stories We Could Tell" はエリックによると皆でアコギを持って "Going Down" をジャムっているうちに生まれたそうで、"Down - down - down - down" のところが "The stories - we - could -tell" に見事ハマっています。(笑)

MR. BIG というと私はバラードも大好きなのですが、本作のバラードはどれもいまひとつピンとこなかったことが大変残念。曲ごとの変化が乏しく感じたので、いっそ "East/West" は全部アコースティックでやってくれたら味が出たのでは。

アルバムのライナーノーツを読んだら、本作が出来るまでの紆余曲折というか難産だった舞台裏が語られてて興味深かった。

2011年のワールド・ツアーでいかに4人が疲労したかという話はやっぱりな、と思いました。ツアーの間にタイトだったメンバー間の絆もゆるんだでしょうね。欧州ツアー移動中のランチ写真をネットで見かけたときに、これはキテるな、と思った勘は当たりでした。ランチをとる他のメンバーとエリックの距離が妙に離れてて、あ~、これってランチくらい静かに食べたいってコト?そういう雰囲気になってるの?って思ったのでした。

2011年10月5日のプラハ公演では、エリックの声が出なくて、シンガーなしの3人でライブを決行した事件もありました。詳しくは当時のブログ記事をどうぞ。この時はエリックが落ち込んでいたっていう話をどこかで見かけましたねぇ。

それから、ポールの難聴問題。2013年6月 9日に書いたブログでポール自身が語った難聴の話を書きましたが、それでアコースティック・アルバムを作ろうとしていた程だったとは!ポールがロック・ミュージシャンである限り、この問題とは上手く付き合っていく必要がある訳で、大事にしてもらいたいです。

様々な困難が逆にメンバーの絆を強くし、このアルバム製作でさらに強固になったのだとすれば、11月のツアーでそれが見れますね。涙なくしては見れないステージになりそうだけど。

プロモーション来日しているメンバーたちのアコースティック・ライブはどんなことになるのでしょうか。行けないけど、きっと多くのファンからの情報が聞こえてくるに違いない。それを楽しみにします。